意図せずウマ娘達から目の光を奪うお話   作:みっちぇる

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相変わらずビンゴがクソなので初ウマぴょいです

いつも誤字報告ありがとうございます!
たまには誤字なしで投稿したい……

今回は前後に分けて投稿します
続きはまた今度



幕間2(前半)

 なぜこんなことになってしまったのだろうか。男は今の現状に頭を抱えているが、目の前にいる三人のウマ娘の笑顔が彼を更に追い詰める。

 

 彼女たちが持つ美貌も相まって、三人の笑みは男なら誰もが魅了されるのは間違いない。だがそれは唯一人の例外を除いての話である。

 

 実際に目の前で縮こまっている彼には威嚇しているようにしか思えなかった。

 彼自身は彼女たちに何か粗相をした記憶はない。それは当たり前だろう。実際に彼は何もしていないのだから。

 

 彼女たちは何もしなかった彼に対して機嫌を損ねているのだ。故に彼は気付けない。

 だから彼はただ時間が解決してくれるの待つしかない。それが最善の方法ではないと理解していながら……

 

 

 

 

 

 

 先日の快晴がウソのように曇り空が空一面支配している。いつ土砂降りになってもおかしくない。そんなコンディションの中でもチームリギルのメンバーはターフ上で念入りに柔軟を行っている。

 いつもより気合が感じられるのはレースが近いからか、はたまた彼がいるからか。

 

「おはよっ、サブトレーナーくん!今日も一日、アクセル全開で飛ばすわよ!」

 

「おはようマルゼン。今日はよろしくな!」

 

 彼、サブトレーナーに話掛けたのはマルゼンスキー。周りのウマ娘たちが挨拶をするタイミングを伺っていたことなど気にすることもなく、彼に余裕綽々で近付き一番間近に陣取った。

 マルゼンスキーとサブトレーナーの仲の良さは他のウマ娘たちもよく知っている。トレーニング前によく彼をからかっている姿を見掛けるし、たまに二人でお出掛けをしていると聞いたことがある。

 

 しかし、リギルメンバー達はいつもの光景に違和感を覚える。なんというか、妙に距離感が近いのだ。

 確かに今までの二人の関係を考えれば別におかしいことではないのだが、マルゼンスキーが彼に接する態度が優しくなっている。

 

「ちゃんと朝ごはんは食べた?具合は悪くない?悪くなったらすぐあたしに言うのよ!」

 

「わ、分かったからちょっと落ち着け!みんな見てるから変に誤解されるだろ!」

 

 優しいというか過保護になったというのが正しいだろう。ほとんどのメンバーが二人の様子を観察しているというのに、マルゼンスキーだけは意に介さず彼のお世話をしようとしている。

 

「マルゼンスキー?そこまでにしといた方がいい。サブトレーナー君も困っているだろう?」

 

「もぅ!そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃなの〜!

……もしかしてあたしだけじゃなくてルドルフにもお世話してもらいたいのかな〜?」

 

「っ!?……サブトレーナー君?何か私にして欲しいことはないか?できる限りのことはすると約束しよう」

 

「あ、あぁ、できれば二人共すぐ俺の側から離れてくれ。エアグルーヴとブライアンの視線がヤバい。俺が二人を誑し込んでると勘違いしてるみたいだし」

 

 生徒会に所属する二人から殺気を飛ばされ、慌ててルドルフとマルゼンスキーに離れるように頼むサブトレーナー。

 渋々彼から距離を取る二人は不満顔を隠す様子などなかった。

 

 まるで親の仇の如くエアグルーヴとナリタブライアンの二人に睨まれ続けているサブトレーナーは、遠くからこちらに向かって歩いてくるトレーナーの姿を見つけると、一目散にその場から逃げ出し、トレーナーのもとに駆けて行った。

 

 リギルのメンバーはそんな彼の姿を見てクスクスと小さな笑みを浮かべている。情けなく走る後ろ姿はどこか愛おしく、憎めない。

 彼を睨みつけていた二人も、次第に苦笑いを浮かべやれやれと首を横に振る。

 

「フフッ。サブトレーナーさんとトレーニングするの久しぶりデェース。今日は楽しくなりそうデスね?」

 

「……」

 

「グ、グラス……?」

 

「……ええ。とっても楽しみですね〜エル?」

 

 彼に圧をかけていたのは二人だけではなかった。その事実を知っているのは自分だけだろうと、エルコンドルパサーは隣でにこやかに笑うグラスワンダーを見て理解する。

 どうかサブトレーナーさんが無事でいられますように……エルコンドルパサーはそう思わずにいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 軽い全体練習を終え、各自指示された個別メニューを確認し、それぞれ練習場所へと散って行く。一部のメンバーは筋力トレーニングの指示があり、学園の中に移動している。

 サブトレーナーも筋トレ補助の指示を受け、学園内にあるジムへと足を運んでいた。

 

「あの〜、お二人さん?今日は何だか距離が近くないですかね?」

 

「うん?君にもしもがあるといけないからな。なるべく近くにいた方がすぐに対処できるだろう?」

 

「そうね〜。勝手に無茶をしてお姉さんを困らせるようなチョベリバな人は、放っておいたら何するか分からないもの」

 

「ア、アハハ〜。サブトレーナーさんは両手に花ってやつデスね?……グ、グラス?」

 

「……」

 

 マルゼンスキーとシンボリルドルフに左右を挟まれ、後方からは刃物で突き付けられたような視線がサブトレーナーを襲う。

 美女に囲まれ、男なら羨ましがられる状況に普段なら鼻の下を伸ばしている所だが、なぜか今は具合が悪い。

 朝食べたご機嫌な朝食が逆流しそうだ。冷や汗もベッタリとシャツに付着している。

 

 ここにエアグルーヴとブライアンがいなくてよかった……。サブトレーナーは心底安堵するが、未だ身の危険を感じる背後からの視線をどうにかしなければと頭をフル回転させ、左右から感じる柔らかい感触を堪能していた。

 

 

 

 

 

 

 

 人間とウマ娘では生まれ持ったパワーが違う。それを体現するかのように、人間の一流アスリートでも困難なメニューを軽々とこなしている。

 

「よし、一旦休憩に入ろう。みんな水分補給を忘れずにな」

 

 サブトレーナーからの言葉に各ウマ娘たちはトレーニングを中断し、身体を休めていく。水分補給をする者、軽く柔軟をする者、それぞれが有効的に休憩時間を過ごしている。

 

「サブトレーナー君。君もしっかり水分を摂っておいた方がいい。

私たちより身体を動かしていないといっても、汗を掻いてない訳ではないからな。

ほら、私のでよければ飲んでくれ」

 

「ああ、ありがとうルドルフ。ちょうど買いに行こうと思ってたんだ。助かるよ」

 

 そんな中、サブトレーナーが小銭を数えている姿を見かけると、予備のドリンクを持って颯爽と彼に手渡すルドルフ。   

 まるで彼の事は全てお見通しと言わんばかりに、瞬時に彼の隣へ移動し欲しい物を手渡す姿は、正に熟練夫婦を連想させる動きであった。

 

「あら、ルドルフに先を越されちゃたわ。

ふふっ、あの子も随分と積極的になったわね〜」

 

「グ、グラス!?バーベルを片手で持ち上げてどうする気デスか!?」

 

「……」

 

 まだ目を合わせてはいけない。彼の本能が、熱い視線を感じる先へは顔を向けるなと全力で警報を鳴らしている。

 

 勝負は昼休憩だ。ルドルフからもらったドリンクを一気に口の中へと流し込み、汗を掻いて年相応に見えない色気を出すウマ娘たちから、己を我慢する時間がまた始まるのだった。

 

 天国と地獄のような状況を同時に味わいながら、ようやく午前の終わりを告げるチャイムがジム内に鳴り響く。

 

「よーし!午前はこれで終わりだ。もう外は雨が降り始めたみたいだから、午後は一旦全員集まっておハナさんから指示があるから遅れないようにな」

 

 サブトレーナーからの指示を聞いてそれぞれ荷物を持ってジムから退室していく。メンバーのほとんどが更衣室で着替えを行ってから食堂に向かう。

 サブトレーナーも一度自室へ戻って着替えるべくジムを出ようとした所で声が掛かった。

 

「ねぇサブトレーナー君?たまにはあたしたちと一緒にご飯食べましょうよ。せっかくの機会だしもっと親交を深めましょ?」

 

「あぁ、マルゼンスキーの言う通りだ。君のチームメンバーとして、少しは私達と親睦を深めてもいいんじゃないか?」

 

「チームメンバー……ですか?」

 

「あれ?グラスは知らなかったのデスか?

会長とマルゼンスキーさんはサブトレーナーさんのチームに入る予定らしいデスヨ?」

 

「……ふふっ。そうだったんですねぇ……」

 

「あ、あぁ。まぁトレーナーになれたらだけどな。

そ、それより一緒に食べるなら早くしないと時間なくなるぞ!部屋片付けとくから昼食持ってみんな来いよ。

それとエル!エルは絶対来てくれよ!!頼んだぞ!!」

 

 若干困惑しているエルコンドルパサーを無視して、必死に頼み込むサブトレーナー。頼むだけ頼み、自室へと素早く移動しすぐに姿が消えた。

 四人はそれぞれ違う表情を浮かべ、昼食を取りにその場を後にする。彼女たちは何を思うのか、答えを知る者は誰もいない。




武士だの怖いだの誤解されているグラスは、本当は一途で優しくて尽くしてくれるいい子なんだと証明したいです!
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