意図せずウマ娘達から目の光を奪うお話   作:みっちぇる

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久しぶりの初ウマぴょいです

今日から投稿再開しますのでよろしくお願いします!



第10話(ウマ娘視点)

「おう、サブ公。ちょっと聞いとくれよ!」

 

 アンタの姿を見かけるとつい構ってしまうのはなんでだろうね。サブトレーナーの癖にアタシたちに怒られたり、終いには教えを請ったりと、頼りない姿を見せているせいかもしれない。

 どんな後輩よりも心配ばかり掛けるし、危なっかしくて仕方ない。

 

 それでも、アタシを含めて誰一人アンタのことを嫌ってる奴はいない。あのいつもムスッとしているブライアンでさえ、サブ公の話になると興味ないフリして耳をこっちに傾けている。

 

「サブ公、アンタ、ちゃんと運動してるか?まさか運動はアタシたちに任せて、ラクしようとしてないかい?そんなのヒシアマ姐さんが許さないよ!!」

 

 トレーナー試験の勉強も大事だけど、しっかりとしたカラダづくりの大切さを解らせる為にアタシが一緒に体を鍛えてあげたこともあった。

 

 アタシの後ろに付いて来いよと、軽くジョギング程度のスピードで走ったのに遠くからゼェゼェ息を切らして文句を言っている姿に、根性が足りないと活を入れてやる。

 

 その後に筋トレもさせたが、少〜しアツくなってしまってサブ公がダウンしてしまった。

 顔見知りの面倒は、徹底的にみたくなっちまうアタシの癖が出てしまい、ちょっとだけサブ公に罪悪感が湧いていた所に「世話女房だな」なんてハズいことを言ってきやがった。

 

 つい背中を思いっきり叩いてしまい、サブ公が吹き飛んで行ったのを慌てて追い掛けて、白目になって気絶しているサブ公を焦った表情で介抱しているフジにジト目を向けられたが、アタシは悪くない。

 

「なぁ、サブ公?後輩から聞いたけど、アンタ最近昼飯も食わずに仕事してるそうじゃないか。

……はぁあ!?金がない!?なんだい、それで飯抜きだったってわけかい!!

ったく、次の給料日までアタシが弁当作ってやるよ。ちょうど後輩にも約束してたし、一人や二人増えた所でどうってことないさね。

……だぁあもう!!抱きつくな鬱陶しい!!」

 

 アタシ達の為に食事する時間まで削って働いてくれてたんだと思ったら、ただ単にお金がないなんて情けない理由で心配掛けさせたバカの頭に拳骨を入れる。

 

 大きくため息を付いて、頭を擦っているサブ公に弁当を作ってやると言った途端、突然アタシに抱き着いて来たバカの頭にもう一度拳骨を入れると、またその場に座り込んで頭を抱えているサブ公は、本当に年上なのか疑わしくなってくる。

 

 全く、なんでアタシがアンタの面倒見てるんだか。普通逆じゃないのかい?お金の管理も出来ないダメな男なんて、アタシくらいしか構ってくれないよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だけど、こんな日常を楽しんでいるアタシがいて、いつかは学園を卒業しちまうことを残念に思っているアタシがいて、これからもアンタの面倒を見る事は嫌ではないアタシがいて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなアタシはもういない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ずっとサブ公が苦しんでいるのに、すぐに気付けなかったアタシの責任だ。どんなことをしてもアタシがサブ公を救ってやる。

 

 だからそんな諦めた面するんじゃないよ。必ずアンタを助けてやるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トレセン学園に二つある寮のうちの一つ”美浦寮”の寮長を務めるウマ娘”ヒシアマゾン”は、まだ朝日が完全に昇りきっていない早朝から弁当作りに励んでいた。

 

(サブ公のやつ、少し痩せたか?どうせまた飯抜きで働いてんだろ。ほんとしょうがないやつだね)

 

 呆れた口調でサブトレーナーの心配をする彼女の言葉とは裏腹に、その表情は少しだけ笑みが溢れていた。

 

 フライパンの上からパチパチと肉が焼ける音と、香ばしい野菜の香りが部屋の中に漂っている。

 程よく焼き上がった料理を手際よく巨大な弁当箱に数個程詰めていき、最後に一つだけ普通サイズの弁当箱を用意して残ったおかずを全て入れていく。

 

 人間であれば一日分はあるであろう量の弁当をいくつか用意し終わった彼女は、エプロンを外し一息ついた。

 

 いつも後輩たちに弁当を振る舞っている彼女からすれば、一食分増えることなどたいして手間にはならない。

 だが何度も彼に弁当を作ったことがあるとはいえ、異性に料理を食べてもらうと考えてしまえば、普段より念入りに味見を行ってしまった。

 

 別にアイツから褒めてもらいたい訳ではない。ただ元気になって欲しいだけだ。

 自分に言い聞かせるように言い訳をする彼女の照れ顔は幸いなことに誰にも見られることはなく、ぶつぶつとサブトレーナーの文句を言い始めた彼女の口は止まることはなかったが、彼に作った弁当だけは丁重に扱っているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午前の授業が始まる前に後輩たちに弁当を手渡し終わったヒシアマゾンは、最後に残った弁当をサブトレーナーに渡すべく彼の部屋に向かおうとした所で、彼女を呼び止める声に気が付き顔を向けた。

 

「姐さん!おはようございます!

この間はありがとうございましたっ!!」

 

「おお、おはようさん。

どうだい?身体の方はもうバッチリ回復したかい?」

 

「はいっ!もう大丈夫っす!姐さんに言われた通りちゃんと病院に行って注射打ったらすぐに治りました」

 

「まったく、カゼ引いてるってのにトレーニングするやつがあるかい。

ウマ娘なら自分の体調管理くらいしっかりしときなっての」

 

「押忍っ!すみませんでした!!」

 

 廊下の隅から隅へと響くほど大きな声で謝り、頭と尻尾を勢いよく下げ続けている後輩に苦笑いを浮かべるも、元気になった姿を見て満足そうに頷くヒシアマゾン。

 

 フラフラな姿でトレーニングに向かおうとした後輩を寮の部屋に送り返し、次の日も体調が悪ければ病院に行くように念を押したのが功を奏し、これ以上悪化する前に治ったことは先輩として、寮長としても嬉しかった。

 

 少しばかり世間話をした後、そろそろ手に持っていた弁当をサブトレーナーに渡しに行くと告げその場を後にしようと足を運ぼうとした瞬間、何かを思い出したかのような表情でサブトレーナーの話を始めた後輩に出掛かった足を引っ込める。

 

「そういえば、自分が注射打った日にサブトレーナーさんと偶然病院で会ったっすよ」

 

「なんだって!?

……サブ公のやつと何か話したかい?」

 

「すっ、すいませんっ!!あの時頭がボッーとしてて、サブトレーナーさんと話したのは覚えてるんすけど、話の内容はほとんど覚えてなくて……

なんか手術とかお金がどうのこうの言ってたような気もするんすけど……」

 

「なっ……」

 

 後輩の言葉にあ然とした表情を浮かべ、思わず手に力が入り持っていた弁当箱がミシリと軋む音が僅かに響く。

 

 サブトレーナーと知り合って数年は経つが、彼が大きな病気に掛かったことなど記憶にない。

 たまに仕事が忙しくて目に隈が出来ていたり、お金がなくご飯を抜いて痩せた姿を見た事はあるが、病院に行くほど体調が悪くなったことはないはずだ。

 

 だが何より気がかりなのが、彼から手術という言葉が出てきたことで一層彼女を不安にさせる。

 

 もしかして何か大きな病気を抱えているのではないか。一体いつから?もしや昔から自分たちに内緒で病気と戦っていたのではないか?

 

 思考が深くなるにつれ、背中に感じる汗が冷たくなっていくのがよく分かる。それでも彼なら大丈夫と自分に言い聞かせ続け、気付けば彼の部屋の前まで辿り着いていた。

 

(クソっ、なにビビってるんだ!!アタシらしくない!)

 

 いつもと変わらないはずのドアがやけに大きく感じる。まだ門立ちから帰って来ていないかもしれない部屋の主を確認するだけなのに、体が重く感じていた。

 

 意を決しドアを開けると、見慣れた景色が目に飛び込んで来るが部屋の主はまだ帰って来ておらず、ゆっくりとドアを閉めて中へと進んで行く。

 

 今までも何も言わず弁当箱だけ机に置いて立ち去ったことあり、そのまま置いて帰ろうと一瞬悩むが、やはり後輩から聞いたことを直接問い詰めなければ気が済まない。

 授業が始まるギリギリまで彼を待つ事にして、沈黙が支配する部屋の中で彼の机に向かう。

 

 珍しくキレイに整頓された机の上には、作業途中であろう書類とボールペンが無造作に置かれていた。

 机の真ん中に弁当箱を置き椅子に腰掛けようとした所で、ふと引き出しから何かの書類の束がはみ出していること気が付いた。

 

(ん?なんだいこれは……)

 

 ついその書類を引き出しから抜き取り何気なく内容を確認すると、そこには普段口にすることはないような病名がいくつか書かれており、続きの書類には病名に対する説明が詳しく載っていた。

 

(これって……サブ公……)

 

 パラパラと書類を捲っていくにつれ、手の震えが抑えられなくなっていた。見たことがない漢字で書かれた内容は全ては分からなくても、彼の体が病に侵されていると理解するには充分なものだった。

 

 そして一番最後に出て来た書類だけは今まで見た内容とは打って変わり、なぜかフランスのことについて書かれていた。

 

 全ての書類を一通り目を通し、静かに元の位置に戻した後、そのまま彼の帰りを待たずに部屋から退出して重い足取りで教室へと向かう。

 

 同級生からも慕われ、熱血漢という言葉が似合う彼女の普段の姿とはまるで別人のように覇気がない。

 

 今彼女の頭には彼に対して様々な感情が混ざり合い、思いっきり叫びたい気持ちになっていた。

 今まで何も疑問に思わなかったが、なぜ彼がいつも金欠だったのかようやく合点がいったのだ。

 

 治療を受ける為には当然お金が掛かる。それこそ難しい手術を受けようものなら尚更費用は増えていく。

 恐らくサブトレーナーは前々から病に侵され通院を繰り返していたのだろう。だがとうとう彼の体に限界が来てしまった。

 そこで手術を実施することになったが思った以上に病状が進行し、海外での治療を余儀なくされ、彼は必死にお金を貯めているのだ。

 

 食事を抜いた程度で手術代が貯まるはずがない。それでも諦めない彼の姿勢は、彼女の冷えきった心に火を点ける。

 

(悪いねサブ公。アンタの自分自身とタイマン勝負にアタシも入れさせてもらうよ)

 

 彼の病気が何なのかは知らない。手術費用がどれだけ掛かるかも興味がない。ただサブトレーナーを助けるだけだ。

 レースに勝って勝って勝って……有名になれば人一人助けることくらい我儘も聞いてもらえるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちょっとだけ待ってろよサブ公。すぐにヒシアマ姐さんが助けてやるからな。

 ここからはもうタイマンじゃないよ。全員まとめて相手してやる!!誰が相手だろうと、アタシの邪魔はさせないよ!!




キャンサー杯お疲れ様でした(出遅れ)

ようやく少し動ける程度まで回復しました
皆もくしゃみをする時は気をつけるんだゾ
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