誰よりも強い勝者
その未来は輝かしく誰もが憧れるウマ娘
そう、彼女は一流のウマ娘キングヘイローである。
おーっほっほっほ
高笑いが聞こえてくる
彼女の名前はキング
誰よりも強い勝者
その未来は輝かしく誰もが憧れるウマ娘
そう、彼女は一流のウマ娘キングヘイローである。
彼女は一流である。だからこそ、どんなときも、たとえ泥水をすすろうと決して首は下げないのである。
そんな彼女に、試練が迫っていた。
「おーっほっほっほ。一流のウマ娘であるこのキングはけっして首をさげないわ!」
「ふーん。じゃあ、もし今日一日首を下げるようなことがあったら、これから高笑い禁止ね」
「ええ、受けて立つわ!」
「そんなことよりこのサイダーあげるよ」
「あら、このキングに貢物かしら?いい心がけね。この感謝は忘れ……」ブシャー
これは、決して首を下げない一流のウマ娘キングヘイローと、セイウンスカイの誇りをかけた戦いである。
授業の時間
この一流の学校であるトレセン学園では、ただ走ることのみを鍛えるのではなく、科学的根拠に基づいたトレーニングを行うために、座学も取り入れられている。
それはつまり、『起立・礼・着席』の授業開始時と終了時の挨拶をする必要があるということである。
「ねぇねぇ。もう一度確認するけど、キングは今日一日頭をさげないんだよね?」
「おーっほっほっほ。一流に二言はありませんわ。再三確認をとらなくたって、安心してくれて結構よ!」
「じゃあ、授業開始時の挨拶、どうやって礼をするのかな?」
「…………あっ」
ーーなんとかしなくては。
キングヘイローは如何にして挨拶を切り抜けるかを考えていた。
一流のキングに、礼を欠くなどという考えは一切ない。
だからこそ、キングヘイローは窮地に立たされていた。
チャイムが鳴り、号令が始まる
「起立!」
セイウンスカイこちらを向いている。
「礼」
キングヘイローが『礼』をする。
「着席」
クラスメイト達が着席する。
そして、授業が始まった。
授業後
「いやー、考えたね。まさかお辞儀ではなく『カーテシー』をするなんて」
「おーっほっほっほ。一流のウマ娘は首をさげなくても礼をすることなんて簡単ですわ!」
キングヘイローは頭を下げるお辞儀ではなく、洋式の頭を下げない『カーテシー』をすることで、頭を下げなかったのである。
「さっすが一流。でも、次の授業はどうするの?茶道体験があるよね。にじり口で首を下げることになると思うけど」
「それは……、その……、あの……、お、おーっほっほっほ!」
にじり口。それは、すべての者が茶室の中では平等であることを示すために、設けられた非常に小さな入口である。その小ささは、そこを通る者が強制的に礼をせざるを得なくなるほどの小ささである。
「それでは、皆さんおひとりづつお入りになってください」
その教員の言葉とともに、クラスメイトたちが入っていく。
ところでだが、にじり口はいくら小さいといっても、そもそも人が入れるサイズに作ってある。
だから、よほど頭が大きくもない限り、簡単に入ることができる。
しかし、セイウンスカイは入口の前で立ち止まってしまった。
なんだかにじり口で詰まってしまうのでは、と不安になったのである。
後ろにもクラスメイトは並んでおり、早く入らなければならない。
しかし、セイウンスカイは躊躇してしまっていた。
ーーキングを煽っといて、当の自分が入れないなんて……。情けないなぁ。
そのときだった。キングヘイローがなにかを教員に相談しにいくと、セイウンスカイはキングヘイローと共にどこかへ連れられて行った。
ああ、これは補習だな。とセイウンスカイは察した。
しかし、これはおかしい。あの意地っ張りなお嬢様が正々堂々と授業をうけず、自分をダシにしてサボろうとするはずがない。
すると、連れられた先は補習室ではなく、茶室の裏側だった。
「ねぇ、これどういうこと?ここで補習するの?」
「補習?なにを言ってますの?ここは亭主、つまりホスト側の場所ですわ!一流のウマ娘はお茶が点てられるということで、先生に選ばれましたの!スカイさんはそのアシスタントですわ!」
キングヘイローはもともと、亭主役に立候補していた。亭主役であれば、にじり口ではなく、亭主用の茶道口を通ることになるからである。
そして、にじり口に入れないセイウンスカイをアシスタント役に推薦したのである。
ーーなんだか視界が滲んでくるや
セイウンスカイは友情に感謝した。
なお、この後キングヘイローは亭主役としてがっつり頭を下げていたが、セイウンスカイは視界が滲んでいて見えなかったことにしたのであった……。
ゲート難の同期を助ける一流のお嬢様。さすがです。