あかんこれ~ブラック鎮守府に艦娘として着任したので、艦娘たちを守ろうと思う~ 作:白紅葉 九
――東未来side――
20XX年5月31日
ついに明日から、提督として活動する。
着任先は最近ニュースにもなっていた、ブラック鎮守府のなかでも相当劣悪な環境にあったという横須賀第十三鎮守府。
所属艦娘は元々いた22名に、間宮さん、鳳翔さん、そして吹雪を加えた25名。
初日で鎮守府を追い出される可能性も視野に入れておいた方がいいかもしれない。
しかし、私は艦娘を艦娘として輝かせるという目的がある。
そのために、この逆境を乗り越える覚悟はできている。
明日、艦娘のみんなと会うのが楽しみだ。
20XX年6月1日
本日、横須賀第十三鎮守府に提督として着任した。
最悪、目が合った瞬間砲口を向けられる覚悟はしていたのだが、そんなこともなく、恙無く着任式は終わった。
ちょっと拍子抜けという感じは否めない。
しかし、着任式の時に、ほとんどの艦娘から向けられた敵意むき出しの視線を見たら、そんな呑気にしていられないのも確かだ。
もし、少しでも艦娘に対して失礼に扱うことがあれば……その時は想像に難くない。
艦娘と関わるときは、最大限の注意を払うようにしよう。
20XX年6月2日
着任して二日目は、大量の書類整理に追われるかと思えば、そんなことはなかった。
どうやら大淀さんがやった訳ではないようで、大本営に聞いたら匿名の艦娘がやったと答えていた。
大淀さんに聞いても心当たりはないと答えられた。
これは本当に心当たりがないのか、まだ私に対する警戒心が抜けていないのか。
とりあえず、匿名の艦娘を探す前に、いくつかの書類整理と、鎮守府の現状を大淀さんから聞いた。
どうやら、まだ鎮守府の清掃が終わっていないようだったので、吹雪と共に鎮守府を点検する大淀さんに付いて回った。
20XX年6月3日
本日も大淀さんと共に鎮守府を見回っていた。
艦娘たちの寮へ行ったのだが、潜水艦寮は特に酷い状態で、流石に使えないと判断し解体工事をすることになった。
寮に対して艦娘の数が少ないのに加え、現在この鎮守府には潜水艦がいないので立て直しをするのは今のところ予定していない。
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20XX年6月6日
一体前任は、艦娘にどれほど酷い仕打ちをしたのか。
そう考えずにはいられない。
今日、私は大淀に砲口を向けられた。
大淀が一瞬撃つのを躊躇っていなかったら、私は今頃病室にいただろう。
今回の件で、随分吹雪を心配させてしまった。
でも私は、艦娘を艦娘として輝かせるために、提督としてちゃんとトラウマと向き合いたい。
そう言ったら、吹雪は「提督はそういう人ですよね」と笑っていた。
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20XX年6月8日
激動の一日だった。
気分転換がてら修練室に行ったら、そこで訓練していた赤城さんに斬られそうになった。
その後、大淀から艦娘の間で取り決められた三つのルールを聞いた。
そして最後に、『名無しの解体願い』の謎を解くことになった。
武道場に行ったら赤城さんが居たのには驚いたが、無事事件は解決することができた。
……しかし、艦娘同調率が世界で二位と三位、日本では一位と二位が同じ鎮守府にいるってすごい状況だと思う。*1
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20XX年6月18日
近代化改修を全ドロップ艦と一部の建造艦に対して行った。
基本八時間以下で終わる改装*2とは違い、近代化改修に関する諸々は初めて受ける場合、数日間かかることがある。
建造艦は艦娘になるときに艦娘同調率の検査を受けているので、同調率の変化がない場合はすぐに終わるのだが、今回は複数名変化があったようで眠っている。
念のため、一部の建造艦のみにしておいてよかった。
まだ検査を行っていない艦娘は順次検査をする予定だ。
20XX年6月19日
早速問題が起きた。
川内さんが出撃をしないと言っている。
というのも、川内さんは赤城さんが艦隊にいることが前提で出撃を行っていたようだ。
近代化改修の詳細を事前に言えないのが仇となった。
しかも、新しく加古さんの問題も発覚した。*3
これら全てを、赤城さんは巧妙に私から隠していた。
……赤城さんは、一体何者なのだろうか。
疑問は残るが、今は目の前のことに集中することにしよう。
20XX年6月20日
川内さんと話し、どうして川内さんが一人で出撃に出られないのか話していく過程で、川内さんが赤城に対して強い尊敬の念を抱いていることがわかった。
そのため、「出撃したら赤城さんは喜ぶだろう」と説得し、何とか明日から出撃してもらえることになった。
やっと一つ問題を解決したと思ったところに、さらに問題が降りかかってきた。
金剛さんだ。
一見普通に見えていたのだが、その闇を垣間見たことで、やっと金剛さんの持つ深い深い闇に気づくことができた。
「艦娘に関わらないで欲しいデース」と言われたので「提督として艦娘を導く義務がある」と返したら、「お前程度に導かれるほど、私たちは落ちぶれてないネー」と返されてしまった。
もしかして、私は無意識のうちに艦娘のことを下に見てしまっていたのだろうか。
わからない。
20XX年6月21日
今日、加古さんの部屋へ行った。
私が執務室で自分の心もわからず葛藤していた時、川内がやってきて、「私、一人で出撃できた。ありがとう」と言った瞬間、私の心は決まった。
私はこの笑顔を見たくて、提督になったのだ。
加古さんのトラウマを解決するのは、私が艦娘だった時の話をするのが一番だと思った。
建造艦は解体されたら、艦娘の容姿から人間だった時の容姿に戻る。
そのため、鎮守府で私が艦娘だと知っているのは、吹雪だけだった。*4
だから、艦娘について話すのは、勇気が必要だった。
私は覚悟を決めて、艦娘だった時の話をした。
……あの人が自ら申し出て、解体された話を。
20XX年6月22日
次の日、加古さんは部屋から出てきた。
そのことにひたすら安堵した。
そして、案の定金剛さんはそのことを嗅ぎつけてきた。
しかし、執務室での会話で、金剛さんが抱えている闇の本質に気づくことができた。
だが、その過程で、私を試すためだとは思うが、艦娘を貶すような発言をしたのは気にかかった。
そのため、その罰もかねて、私も金剛さんの闇を無理矢理暴く方法で解決することにした。
20XX年6月23日
金剛の闇は解決できた。
しかし、これでわかったことがある。
この鎮守府の艦娘は、闇を持っていないように見える者も闇を持っているということだ。
現在、闇を解決できた者は大淀、天龍、川内、加古、金剛の五名。
まだ多くの艦娘が闇を抱えている。
今まではトラウマを触発しないように受動的だったが、これからは積極的に問題を解決していくことにしよう。
20XX年6月24日
大淀から、金剛への罰が重すぎると怒られた。
罰として普段の三倍以上の書類を処理することとなった。
処理し終わった後、「赤城さんならもっと重い罰を与えますよ」という大淀の言葉に恐怖を覚えた。
そういえば、艦娘の持っている闇について調べるために、過去の出撃の資料を読んだのだが、その中で赤城さんの資料、特にその被害報告は驚いた。
赤城さんの被害報告は、そのほとんどに“損傷無し”と書かれていたのだ。
あり得ないと思ったが、実際私がこの鎮守府に来てから損傷を受けたことは一度もなかった。
損傷があった箇所については、原因の欄全てに“○○を庇い損傷した”と記されていた。
本当に謎が多い人だ。
そういえば、近々大規模侵攻が行われる可能性が高いと大本営から通達が来たから、気を付けておこう。
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20XX年7月1日
吹雪が深海化したと報告があった
どうしよう
どうすればいい
わからない
作者から
感想、評価、誤字報告ありがとうございます!!!!!
多くの方に見て頂けて、とても嬉しいです!!!!!!!!!!!