あかんこれ~ブラック鎮守府に艦娘として着任したので、艦娘たちを守ろうと思う~   作:白紅葉 九

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第二十話 姫級討伐

 吹雪さんが目覚めたという報告と共に、吹雪さんが記憶喪失かもしれないという情報が私の耳に入った。

 想定内の反応、というか想定通り過ぎて逆に怖いくらいである。

 

 ひとまず、事前に考えていた通りに対応をすることとなった。

 

 

 記憶を忘れていると言っても、吹雪さんに寄生虫っぽく住み着いているやつは、私のことを覚えている。

 そのため、私が吹雪さんに近づくと警戒される可能性がある。

 だから、私はその寄生虫を騙すために同姓同名の別人として振る舞うことにした。

 前に元帥と話していた時のような、張り付けた笑顔だ。

 

 

 その作戦は成功し、私は吹雪さんと接することができている。

 

 そうして、吹雪さんが目覚めてから一週間が経った日。

 ついに、本格的な作戦開始となった。

 吹雪さんには艦隊の再編成を変えていると伝えて、旗艦川内さん、随伴金剛さん、吹雪さん、夕立さん、島風さんというガッチガチの攻撃艦隊であることをおかしくないと認識してもらう。

 

 ここまでガッチガチの攻撃艦隊なのも理由があって、最近鎮守府近海での出撃の時に、深海棲艦との接触率が増加しているのである。

 その裏に、深海棲艦を指揮する者、つまり姫級がいる可能性を考慮し、この編成となっている。

 といっても、姫級の目撃情報があるわけではないので、二艦隊を編成するところまではいっていないが。

 

「艤装展開! 吹雪、抜錨します!」

 

「川内、出ます!」

 

「鎮守府に平和を持って帰るネー!」

 

「……艤装展開! 一航戦赤城、出撃します!」

 

「さぁ、ステキなパーティしましょ!」

 

「私には誰も追いつけないよ!」

 

そういえば建造艦は艤装展開と言って艤装を出していたのを土壇場で思い出し、艤装を展開した後ではあったが言った。

 吹雪さんはそれに多少の違和感を感じ取ってはいるが、そこまで気にしている様子はない。

 

 私と吹雪さん以外が艤装展開と言っていないことで、この鎮守府のドロップ艦の多さが分かるだろう。

 といっても、この艦隊が、偶然ドロップ艦が多いだけなのだが。

 

 全体の人数差としては半々くらいである。

 それでも、他の鎮守府に比べれば圧倒的に多いのだが。

 

 

 

 最初に深海棲艦と遭遇した時、やっとそれは吹雪さんの内側から表層に出てきた。

 

 深海棲艦との戦闘中、吹雪さんの攻撃がほとんど当たっていない。

 思考誘導をされている証拠である。

 

 吹雪さんを除いた艦隊のメンバーには、吹雪さんの内にいる存在の説明をしている。

 その上で、気づいていない演技をして深海棲艦のボスを引き出すという作戦である。

 

 そうして私たちは、吹雪さんにおすすめされた、おそらく深海棲艦の拠点があるであろう南西へと進むことになった。

 その途中で、もうすぐ夜であり、正規空母の活動時間ではなくなっていることを会話に織り交ぜる。

 

 南西に行くにつれ、深海棲艦が多くあらわれる。

 この時の為に、道中の弾薬の消費は極力抑えている。

 

「……仮第五艦隊、撤退します!」

 

ソウハイカナイナ

 

旗艦である川内さんが撤退の合図をした後、吹雪さんの体を乗っ取った深海棲艦はそう言った。

 吹雪さんと深海棲艦の見分け方は簡単で、吹雪さんは敬語なのに対し、深海棲艦はタメ口を使っている。

 

 まぁ、深海棲艦はそのことを自覚していなかったようだ。

 それくらいの知能であれば、騙すのは簡単である。

 

「ふ、吹雪!?どうして邪魔をするの!?」

 

我ハ吹雪デハナイ!

 我ニハ軽巡ヘ級eliteトイウ、姫様カラ授カッタ名前ガアル!

 

「ひ、姫級!?そんなっ……!」

 

「姫級と戦えるほど、弾薬に余裕はないデースッ……!」

 

フハハハハハ!貴様ラハココデ海ノ藻屑トナルノダ!

 

その深海棲艦が話を引き延ばしているのに気づき、私たちは気付いていないふりをしながら、それに協力する。

 

 そしてついに、それは現れた。

 その圧倒的な威圧感と戦闘力は、戦うまでもなくわかった。

 それくらい、強大な力の差を感じた。

 

 周囲を見るが、その威圧感に怯えている者はいない。

 ひとまず安心だ。

 

「カンムスガ、ゴセキ……」

 

姫様!

 

「ヘキュウカ…ヨクヤッタナ」

 

ア、有難イオ言葉……!

 

「サァ……ワタシ、センカンセイキガ、アイテヲシヨウ」

 

戦艦棲姫……。

 正直、最悪な想定の一つが当たった。

 

 決して楽をして勝てる相手ではないだろう。

 それこそ……この戦いは、吹雪さんに掛かっているかもしれない。

 

 私たちもそれなりに練度はあるから、一対五であれば勝率予想は六割になる。

 しかし、今は戦艦棲姫に加え吹雪さんの体を乗っ取った深海棲姫の二対五となっている。

 吹雪さんに対して大破させるレベルの攻撃は行えないし、そのせいで戦艦棲姫との戦いも動きにくくなるだろう。

 

 それを戦艦棲姫も気づいているから、吹雪さんの体を乗っ取った深海棲姫をそばで戦わせているのだ。

 

 二対五の勝率予想は一割。

 はっきり言って、撤退を奨めるレベルほど悪い状態である。

 しかし、そうしないのは、その予想に加え、もう一つの予想があるからである。

 

 吹雪さんが目覚める確率の予想は――

 

 

 

「――赤城さん」

 

 

 

その声は、砲弾の舞う戦場の中にあるというのに、やけにはっきりと聞こえた気がした。

 その声の主である吹雪さんは、視線を逸らすことなく私の目を見ていた。

 それで、私は吹雪さんの記憶が完全に思い起こされたことを理解した。

 吹雪さんは私の目を見ながら、言った。

 

「ごめんなさい」

 

その謝罪には心当たりがあった。

 というのも、吹雪さんの中に深海棲艦が入った時、私は吹雪さんに同じ言葉で謝罪をしたからだ。

 

 私はその時、吹雪さんと私の仲が一生元に戻らない未来を予期してそう言った。

 あまりにも、仲が戻る未来が絶望的になかったからだ。

 

 この謝罪は、その未来を予期していながら吹雪さんに真実を打ち明けられないことへと謝罪だった。

 

 言うつもりのない本音だったが、吹雪さんは気付いてしまったようだ。

 わずかに、それに喜んでいる自分がいることに驚いた。

 吹雪さんはこの言葉の意味を理解しながら、私を否定ではなく許容で受け止めた。

 

「ただいま」

 

彼女の顔は、いつも通りの笑顔だった。

 でも、ぶち当たっていた大きな壁を乗り越えたような、晴れやかで、一歩大人になったような素敵な笑顔だった。

 

 それに、私は無表情を返す。

 なんだか、それが良い気がした。

 普段考えてばかりなのに、そればかりは勘でちょっと変な気もしたが。

 

「おかえりなさい」

 

やっと言えたその言葉。

 

『鎮守府から返ってきたら、おかえりって言い合いませか?

 それを言うと、雪風は諦めないで頑張れる気がするんです!』

 

深海化をして帰って来なくなった仲間と重ねる。

 

 正直、吹雪さんの作戦に関しては不安が大きかった。

 だって、日本で初めての取り組みなのだ。

 事前に何もないまっさらな状態で、憶測だけで作戦を立てる責任と恐怖。

 ひたすら突っ切って、なんとか成功にこじつけたような感覚が強い。

 

『赤城さんは、なにか願いってないんですか?

 例えば、休みがもっと欲しいとか、あのクソ提督が死んでほしいとか』

 

あの時は答えられなかった問い。

 今なら答えられる気がする。

 

 ――この鎮守府の艦娘をみんな守る。

 

 そのために、まずはこの戦いに勝って、生きて鎮守府に帰るとしよう。

 

「妖精さん」

 

【全員、準備は万端ですよ!】

 

東提督に提督適性を持っていることがバレた後は、妖精さんの存在を隠す必要もなくなったので、全員を出撃に連れてきている。

 やっぱり、妖精さんが揃っているこの状態が一番全力を出せる。

 そうして、私は戦艦棲姫に対峙する。

 

「――さぁ、返り咲いて参りましょう」

 

開戦の合図をして、航空機を発艦させます。

 私は改二戊になり夜間戦闘が可能になった空母なので、夜戦を行うことができます。

 

 夜なのに発艦が出来ている空母を見て慌てている戦艦棲姫に対して、攻撃を加えます。

 これで、戦況は一気にこちら側に傾きました。

 

 しかし、決定打が足りていない状態です。

 

「全員、一斉に攻撃を入れるよ!

 用意――てえぇー!!」

 

そのことにいち早く気づいた川内さんの指示で、一斉攻撃が行われます。

 旗艦として、周囲の状況と敵の状況をはっきりと認識できている証拠です。

 

 その一斉攻撃で、わずかに戦艦棲姫に焦りが見え始めます。

 このままでは逃亡の恐れがありますので、隙が出来ないように仕留めたいところですが……。

 

「赤城さんッ!」

 

吹雪さんが私に視線を向けてきました。その意志を汲んで、頷き返します。

 戦艦棲姫に対して、隙ができないように航空機で一斉に攻撃を仕掛けます。

 戦艦棲姫の身動きが取りづらくなるように、そして――吹雪さんに意識を向けさせないように。

 

「チョコザイナ!

 カンムスフゼイガ、ワタシノジャマヲスルナァァアア!!!」

 

航空機に気取られる戦艦棲姫は最後まで気づくことができませんでした。

 すぐそばまで接近している吹雪さんの存在に。

 

 戦艦棲姫の背後、その近距離で吹雪さんが砲撃を放ちました。

 それが決定打となり、戦艦棲姫の体は崩れ落ちました。

 

 

 

 

 

 そこからは早かった。

 ボスが居なくなって指揮統率の取れなくなった深海棲艦を各個撃破していき、拠点を制圧。

 その後、応援に来た艦娘にその海域の制覇を任せ、鎮守府へと帰還した。

 

 そうして、その数日後。

 吹雪さんが深海化から治ったのを祝うための食事会が開催された。

 間宮さんや鳳翔さんの作った美味しい料理の数々に、みんな大喜びである。

 

 気づけばそんな食事会も終わり、私は執務室の方に尋ねていた。

 要件は以前間宮さんと話していた件である。

 吹雪さんの深海化があり、なかなか東提督に伝える機会がなくずっと言っていなかったが、期限もそう長くないので伝えることにした。

 

「東提督、伝え遅れていたことが一つあるのですが」

 

「どうしたの、赤城さん」

 

「――間宮さんは、今月いっぱいで本来所属している鎮守府に帰ります。

 そのため、この書類に判子を押して頂けますか」

 

「……え?」

 

東提督は呆けた顔をしている。急に間宮さんが居なくなるっていったら、こういう反応をしても仕方がない事ではあるけど。

 

 といっても、私もただ伝えるのが遅れただけというわけではない。

 一つの案を考える時間、及びそれを実行する時間が必要だったのだ。

 

「また、給糧艦がいなくなるということで、一つ提案をさせていただきたいことがあります」

 

「なにかな……?」

 

実は、この鎮守府の提督が東提督に変わってから、私たちは電子機器を使うことが許可されるようになった。

 前の提督は、私たちが上層部にブラック鎮守府であることを密告することを恐れて使わせていなかったのだ。

 そのため、それまで鎮守府外との連絡手段を、私たちは持っていなかった。

 

 なぜ急にこの話をしたかというと、つまり今の私は外の情報を気軽に知れて、なおかつ気軽に外部と接触できる状態にあるということである。

 

「給糧艦である間宮さんの代わりに、人間の料理人を雇用してみませんか」

 

この選択が吉と出るか凶と出るかはわからない。

 だからこそ、これには挑戦する価値がある。

 

 東提督の答えは――




作者から

と、言うことで、これにて、第一章に当たる部分が完結となります!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ここまで見てくださった皆様、大変ありがとうございます!!!!!!!!!!!

これまでは毎日十八時投稿でやってきましたが、次章からは不定期(もしくは定期になるかも。わからない)六時投稿となります。
ただ、作品のストックが全然ない状態なので、多少次話投稿が遅れるかもしれません!!!!!!



さて、次章に関する説明は以上として、ここからは作者の個人的な話となりますので、興味のない方は是非小説の評価、お気に入り登録をしてからページを閉じていってください!!!

お前に興味があるんだよ!!!というニキネキの皆様は、少しばかり耳を傾けてくださるとありがたいです。

私は本作が処女作です。それは、他名義や他サイトで投稿をしたことがあるわけではなく、小説投稿というものが初めてのことでした。
正直、開始してからは不安が強かったです。というか、不安はまだちょっとあります。「この作品は面白いのか?」「みんなに認められているか?」と、毎日のように考えていました。
パソコンに前に来るとその不安は強くなり、胃痛がするくらいでした。
でも、パソコンを開くと、そこには温かい感想の数々と、多くの方に見て頂いた証として、評価やお気に入り、他にもPVやUVなどの数値がありました。
すごく嬉しかったです。
更新を望む声や、「これはこうなのか……?」という考察もあり、皆様がこの作品を楽しんで読んでくださっていることがとても伝わってきました。
「この作品いいね!」という一言が、何より私の執筆活動の励みとなりました。
その期待に押し潰されそうな時もありましたが、本日まで毎日投稿を成し遂げられたのは、間違いなく皆様が見ていてくださったおかげです。
本当にありがとうございました!

……それを皆様に伝えたかっただけです。(*ノωノ)

改めまして、本作をここまで読んでいただき、ありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!!
これからも、応援よろしくお願いします!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
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