あかんこれ~ブラック鎮守府に艦娘として着任したので、艦娘たちを守ろうと思う~   作:白紅葉 九

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第二十五話 東提督の恩師

 本日は、演習をするために別の鎮守府に来ていた。

 

 しかも、普段は近くの鎮守府と演習していたのだが、今日は佐世保第二鎮守府が対戦相手である。

 佐世保第二鎮守府は、歴戦の艦娘たちが多くおり、艦娘の数も我が鎮守府とは比べ物にならないほど多い。

 

 佐世保第二鎮守府の提督と東提督が知り合いのようで、その縁で演習をしてもらうことができた。

 

 

 本日の演習は特殊な形式で行われる。

 それぞれの鎮守府から艦娘を十名ずつ選出し、その十名のみで、六人艦隊を組み三回試合を行うというものだ。

 試合ごとで、限られた人数で編成を組まなければいけないので、艦娘を選ぶのも大変だ。

 

 試合は、ペイント弾を使用して行い、制限時間が過ぎた後に大破艦の数で勝敗が決する。

 大破になった艦娘は、轟沈と同じ扱いとなるため、駆逐艦などは最悪一発で戦闘不能となる。

 

 制限時間は、第一試合と第二試合の制限時間は一時間、第三試合は二時間で行われる。

 第一試合と第二試合の間に小休憩があり、第二試合と第三試合の間には昼休憩がある。

 

 燃料や弾薬、お昼ご飯などは、ありがたいことに、佐世保第二鎮守府の方々に用意していただいた料理を食べることになっている。

 

 

 現在、私たちは佐世保第二鎮守府につき、もうすぐ第一試合が始まろうとしている。

 私は第一試合には出ないため、東提督と佐世保第二の提督に許可を貰い、佐世保第二鎮守府をぶらぶらすることにした。

 

「ここが甘味処間宮だクマー。

 いつも艦娘たちがここでご飯を食べているクマー」

 

「雰囲気が落ち着いていて、とてもいい場所ですね」

 

現在、私が話しているのは佐世保第二鎮守府所属の球磨さんである。

 私が佐世保第二鎮守府をぶらぶらしたいと言った時、向こうの提督のご厚意で球磨さんを案内に付けてもらったのだ。

 

 そのため、球磨さんと一緒に佐世保第二鎮守府の探検中である。

 

 ちなみに、同じ艦娘ではあるが違う鎮守府所属の艦娘なので、接する時は無表情にならないように気を付けている。

 感覚的には、知り合いにはタメ口で話すけど、初対面の人に敬語で話すような違いである。

 

「昼食もここで取ってもらう予定だクマ!

 この鎮守府の間宮さんは超料理がおいしいから楽しみにしているクマー!」

 

 私は間宮さんの方に視線を向けた。

 

≪――(野良妖精さん) レベル2 料理A・火力E≫

 

「……それは、楽しみです」

 

本当に楽しみだ。

 料理なんてスキルを持っている妖精さんは初めて見た。

 いったい、そのスキルによってどれだけ美味しくなるのだろうか……。

 

 

 

 

 

 それから、色々な場所を案内してもらった。最後に、提督室に来た。

 流石に機密情報とかがあるだろうからと遠慮したのだが、どうやら佐世保第二鎮守府の提督から、最後に提督室に来させるように言ったらしい。

 球磨さんが提督室の扉をノックした。

 

「球磨だクマー。

 提督に言われて赤城を連れてきたクマ!」

 

「どうぞ」

 

大淀さんのような声が聞こえた。佐世保第二鎮守府の大淀さんだろうか……。

 大淀さんのような声ではあるが、私の鎮守府の大淀さんとは、ほんの少しだけ違う気がする。

 

 許可を得た球磨さんは、扉を開ける。

 そこには、予想外の人物がいた。

 

「初めまして、横須賀第十三鎮守府の赤城さん。

 ――俺は武下歩、ここ佐世保第二の提督をやっている者だ」

 

まさか、武下提督本人がいるとは思っていなかった。

 いや、彼が居ていいはずがないのだ。

 

 なぜなら、いまは――

 

「『第一試合の最中のはずなのになんでいるのか』っていう顔をしているな?」

 

「……すみませんが、正直そう思っています。

 説明していただくことは可能でしょうか?」

 

「おう、そんなに固くならなくていいぜ。

 答えは単純……だけど、素直に言うのも面白くないな。

 まぁ、アンタなら察しているんじゃないか?」

 

そう、武下提督はおちゃらけるように言う。

 確かに、察している。というか、察せざるを得なかった。

 

 東提督から聞いた武下提督の話から、武下提督の人物像を予想するに『お調子者ではあるが、艦娘に対して真剣。特に人の命を扱う物事には、決して間違いが起こらないように信念を持って実行できる人』という感じだろう。

 

 そんな彼が、演習をほっぽり出すとは考えづらい。

 ならば、答えはこれになる。

 

「もう、第一試合は終わった……というわけですか」

 

「おっ!? マジで正解しやがった!!

 ……どうしよう大淀、俺、正解した場合のことなんて考えてなかった……」

 

「知りません」

 

武下提督を冷たくあしらう大淀さん。

 それを球磨さんは慣れた様子で見ている。

 

 なるほど。

 お調子者というのは間違いないようである。

 

「いやぁ、しかし、未来から聞いていた通り、めっっっちゃ頭が良くて、観察眼や分析力がやばいっていうのは本当のようだな」

 

ほう……東提督はそんなことを言っていたのか。

 でも、予想でしかないが、東提督はそんな促音たっぷりな表現はしていないと思う。

 

「申し訳ありません、挨拶が遅れました。

 横須賀第十三鎮守府の赤城です。

 本日はお招きいただきありがとうございます」

 

「いや、だからそんな固いのは……いや、もしかして、アンタの場合は素か?

 その固さはうちの加賀や不知火といい勝負だぜ」

 

私の鎮守府にも不知火さんはいるが、この鎮守府には加賀さんもいるのか……。

 やはり、日本有数の実力を持つ鎮守府なだけあって、艦娘の数は豊富そうである。

 

 私の鎮守府は、提督が東提督になってから、一度も建造していないため、全然増えていない。

 唯一、大井さんが鎮守府に移動してきたくらいである。

 

 本来ならもっとばんばん建造していくべきなのかもしれないが、東提督の方針としては今のところ建造をしないに固まっているようだ。

 理由としては、最近波が安定していなかったり、強い深海棲艦が増えてきたりしており、新しく来た艦娘に対して教育をしてあげられないというのが大きい。

 

 出撃と教育を両立しろってなると、ブラックな労働になる可能性が高いのである。

 やっと平穏になりつつある我が鎮守府に、そういう要素を入れたくないのだろう。

 

「って、こんな話をするためにアンタを呼び出したわけじゃないんだ!

 赤城……お前にとって、東未来はなんだ」

 

武下提督は真剣な表情でそう訊ねてくる。

 どうやら、これが本題らしい。

 

 といっても、質問が漠然としすぎていて、何が聞きたいのかはいまいちわからないのだが。

 

「良い提督だと思います。

 指揮能力、作戦立案、観察眼……秀でて良いわけではありませんが、どれも人並以上に持っています。

 ただ、多少直感で物事を選んでいるようにも感じますが」

 

「なるほどな……」

 

武下提督は腕を組み考え出す。

 望む答えはこれで合っていたのだろうか。

 

 提督として、東提督は未熟な点は多くあるが、それを乗り越える幸運や忍耐を持っていると私は思っている。

 課題だと思っていた分析力は、様々な艦娘のトラウマと向き合い、解決に導くことで、着実に良くなっていっている。

 

 武下提督は、組んでいた腕を解き、その瞳を私に向けてきた。

 その目は、まるで私の全てを見透かしているように感じた。

 その目は、私の全てを暴かれるように感じた。

 かくしていた、ものを。

 

 ――ゾクッ

 

 背筋に()()が走る。

 これは、()()

 

 それとも……――()()

 

 私のそんな感情をよそに、武下提督は口を開いた。

 

「それは、“艦娘の赤城としての答え”だろう。

 そうじゃなくて、“お前個人の答え”は何だ」

 

私個人の、答え……?

 

 私、個人の……。

 

「……――こわい。

 あのひとが、わたしの考えを上回ってくるあの人が、怖い。

 ……どうしようもないほど、こわい」

 

常に、漠然とした不安に駆られている。

 ただ、そんな不安は生産性がないから無視をしているだけで、不安の原因はいまだにわからない。

 

 ただ、東提督の行動が、私の不安に起因していることだけはわかる。

 だから、私は東提督のことが怖いのだ。

 

「――なら、どうしてお前は、横須賀第十三鎮守府で暮らしているんだ?」

 

「ッ……!!?」

 

その言葉に動揺をし、一瞬呼吸が止まる。

 それくらい、私はその言葉に驚いた。

 

 何故なら、私はそのことを自覚していなかったからだ。

 自分の所属する提督が嫌なら、違う鎮守府に行けばいいという、ごく当たり前な思考を行っていなかったことに。

 

 しかし、一度気づいたら、もう早かった。

 私の、人より多少優れた頭脳は、その答えに一瞬でたどり着いた。

 

 ああ、だから私は、こんなにも怖かったのだ。

 

 私は武下提督に目を向けた。

 言葉はすんなりと口から出てきた。

 

「私の居場所はあそこにしかないんです。

 だから、私の居場所を奪おうとする東提督が、怖くて堪らない」

 

私はあの鎮守府で、“愛”を知ってしまった。

 仲間として、戦友として、教師として。

 

 前世じゃ絶対に手に入れられない“愛”を。

 

 一度“愛”を知ってしまったら、もう“愛”を渇望することしかできなくなってしまった。

 

 いや。

 ずっと渇望していたから、手放せなくなったのだ。

 

 だから、こわいのだ。

 

 わたしを、この世界の主人公ではないと否定する存在が。

 わたしを、この世界にいるべき存在ではないと否定する存在が。

 わたしの得意としていたものを全部越え、私の存在意義を否定する存在が。

 わたしの居場所はここではないと否定する存在が。

 

 ――わたしを否定する、全ての存在が。

 

 

 

「やっぱりお前って、未来と似てるよな」

 

 

 

……東提督と、私が似ている?

  今の話のどこを聞いたら、そんな結論に達することになるのか、私にはわからない。

 

 きっとそれは、推理とか予想とかを超えた、直感的な何かなのだろう。

 もしくは、経験から得た勘か。

 

 どっちでもいいが、どうせ私には理解のできない代物だ。

 

 私が無言で武下提督を見ていると、武下提督は腹を抱えて笑い出す。

 

「ハハハッ!!

 未来と全く同じ反応だな……くふふっ……」

 

「……そうですか。

 それで、どうして、私と東提督が似ていると思ったんですか?」

 

正直、微塵も興味はなかったが、それではコミュニケーションという名の言葉のキャッチボールが致命的になってしまうので、一応聞いた。

 すると、武下提督は私と目を合わせて一言言った。

 

「秘密♪」

 

な、何なんだこの人……。

 

 前世の職場の上司とは、別のベクトルの理不尽さを感じる。

 前世の上司の時は割り切っていたのもあり特に感情を動かされることはなかったが、この人の場合だと少しイラつく。

 

 私が何とも言えない感情で武下提督を見ていると、佐世保第二の大淀さんが口を開いた。

 内容は、第一試合と第二試合の間にある休憩時間までもうすぐという連絡であった。

 

それを聞き、私は提督室を後にして、球磨さんの案内で演習場に向かった。




作者から

久しぶりにお気に入り登録をしてくれた方の人数を見に行ったら、すごくたくさんいてびっくりしました(語彙力の消失)
本当にありがとうございます!! 感謝! 感激! 雨! 霰!

夏の暑さに負けず、皆様頑張りましょう!!!!!!!!!
こまめな水分補給も忘れないように!!!!



追記
本作の更新が滞ってしまっており、大変申し訳ありません。
活動報告で報告した通りの現状でございます。
もうしばらくお待ちください。
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