あかんこれ~ブラック鎮守府に艦娘として着任したので、艦娘たちを守ろうと思う~   作:白紅葉 九

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第三話 改装

【起きてー】

【改装終わったよー】

 

そんな声が聞こえ、私はゆっくりと目を開けた。体を起こすと、全裸ではなく服を着ていることがわかった。

 

 それに加え、なんだか違和感がある。

 まるで、初めて見る光景を見たことがあると思う既視感のような、そんな感じの感覚。

 その違和感の正体はすぐに判明した。

 

【改装したから、付喪妖精さんが仲間になったよ!】

【艤装を動かせるぞーわっしょい!】

【左から零式艦戦52型にー、彗星にー、九七式艦攻にー、海軍太刀型軍刀だよー】

 

「説明ありがとう」

 

私は置いてある艤装に近付いた。

 それぞれの艤装に一人ずつ、計四人の付喪妖精さんがおり、全員が私を見ている。

 

「よろしくね、付喪妖精さん」

 

私がそういって手を差し出すと、付喪妖精さんたちは何も言わずその手に触れる。

 その時、一瞬だけ手元が光ったと思ったら、目の前にあったはずの艤装と付喪妖精さんは消えていた。

 

 その事実に一瞬驚くが、すぐに過去に妖精さんから言われたことを思い出す。

 『念じる』! えーっと、艤装……展開ッ!

 

「わっ……変わった?」

 

【念願の遠距離装備!】

【そもそも艤装自体が念願なのだー】

【それは言わないお約束ー】

 

手元に弓が、背中に矢筒が現れた。

 なんとなくだが、背中の矢筒から付喪妖精さんの気配が感じられた。どうやらそこにいるらしい。

 

 

 

 

 

 そうして、私は第二艦隊に移動となった。

 第二艦隊は案の定、期待することもなく予想通りに暗い雰囲気が艦隊を支配していた。

 それでも、第三艦隊より戦場の報告とかで騒がしいのが不思議な話だ。

 あまりにも会話という概念がないから、普通の基準を忘れそうになる。

 

『敵影発見! 攻撃開始!』

 

「第一次攻撃隊、攻撃開始!」

 

艤装と付喪妖精さんが増えたことで、航空機を動かせるようになった。

 動かせると言っても、細かな操縦は付喪妖精さんに任せているのだが。

 

 あの後、弓で発艦させてわかったことなのだが、付喪妖精さんはあの四人だけではなかった。

 あの四人の付喪妖精さんはその武器の代表、つまりその武器にいる付喪妖精さんの隊長のような存在であった。

 

 それぞれには、隊長を含めて、零式艦戦52型と彗星には二十人、九七式艦攻には三十二人、海軍太刀型軍刀には十人の付喪妖精さんがいた。

 それらをステータスで見ると野良妖精さんとはだいぶ違った。

 

≪零式艦戦52型(付喪妖精さん) F20≫

≪彗星(付喪妖精さん) F20≫

≪九七式艦攻(付喪妖精さん) F32≫

≪昭和12年海軍式軍刀(付喪妖精さん) F10≫

 

見られたのはこの四種類のみ。

 野良妖精さんに聞いたところ、Fというのは野良妖精さんで言うレベル1みたいなものらしい。

 野良妖精さんのスキルの欄で見覚えがあるものだ。

 

 これが高ければ高いほど、その付喪妖精さんは高い技術力を持っているというわけだ。

 経験を積めば、野良妖精さんのレベルやスキルと同じで上がっていくようなので、これからに期待という奴だろう。

 

『深海棲艦撃破、進軍します』

 

損傷軽微とも言わず進軍が決まる。

 第三艦隊でもそうだったが、一度も損傷の報告が出たことがない。なので、大破で進軍することも稀にある。

 大破進軍が行われた場合、私はなるべくその人に攻撃が当たらないよう気を付けて行動している。

 そのためか、幸いなことにまだ目の前で艦娘を亡くすような経験はしていない。

 

 ちなみに、現在の私の状態は小破。

 具体的に言うなら、二週間近く前からこの状態だ。

 そう、入渠の条件は『功績順に、大破した艦娘を提督の判断で入れる』だ。

 私が小破である限り、入渠の機会が訪れることはない。

 

 ちなみに、私がこの鎮守府に来て、つまりこの世界に生まれから半年が経過した。

 第二艦隊に所属してからだいたい二か月、つまりこの鎮守府に来てから三か月ほどの頃に第三艦隊から第二艦隊に移動した。

 

 

 移動する前、つまり改装する前は確か中破だった。

 その傷はなんと、改装したら見る影もなく消えていた。

 どういう原理かはわからないが、野良妖精さんによればそれ以上は深淵になるそうだ。

 

 第二艦隊に所属してから、現在二か月目。

 航空機の扱いにまだ慣れていない頃に貰った一発以降は、特に目立った傷もなく心身共に健やかに過ごしている。それが塵積(ちりつも)で小破にはなっているが。

 ちなみに、軍刀は何故か提督に使用を禁止された。

 

 そういうわけで、私は一度も入渠したことがない。

 この世界に来た頃は楽しみだった入渠は……今では逆に短時間で肉体改造をする不気味な温水に思えてならない。

 

 

 ここまで私が傷を負っていないのには理由がある。それが、妖精さんの存在だ。

 というのも、戦闘において回避ばかり意識していたからか、回避スキルを持つ野良妖精さんが成長していたのだ。

 

 どうやら妖精さんは、委員長みたいな例外を除いて、基本的に一つのスキルしか持たないらしい。

 誰が何のスキルを持っているのか混乱するので、わかりやすく分けてみることにした。

 

 イメージ的には学校なので、それぞれ火力科、装甲科、回避科てきな感じだ。

 結果的に、上手くそれぞれの科が八人ずつに分かれた。

 例外は特殊科に一人の委員長だけだ。委員長は統率Sなので、特殊科行きである。

 

 そうやって分けたら、火力科長や装甲科長が自然的に発生していた。どうやら、妖精さんたちが相談し合ってリーダーを決めたらしい。

 なんだか、どんどん野良妖精さんの組織化が進んでいる気がする。

 

 結果的に、出撃に参加する妖精さんが曜日ごとのローテーションとなった。

 ちなみに、委員長と科長たちはブラックよろしく毎日強制参加である。(休み申請可)

 当人たちは楽しんでいるようなのでいいのだが……。

 

 そして、お気づきの方もいるかもしれないが、最初は三十人くらいしかいなかった野良妖精さんが今では四十九人いる。

 もうそろそろ二クラス分くらいになりそうだ。

 

『敵影発見!』

 

「第一攻撃隊、発艦!

 みんな、よろしくね」

 

弓を引くと、付喪妖精さんたちが乗った航空機が飛び出していく。

 野良妖精さんたち十二名は、何をしているのかわからないが、表情を見る限り何かをやっているらしい。

 

 ちなみにだが、委員長は戦場に参加したりしなかったりと様々だ。

 というのも、参加していない時は鎮守府で待機中の野良妖精さんと頻繁に関わり、役職名のまま委員長みたいに動いてくれている。

 正直、艦娘であり元人間の私には妖精さんを完全に理解することはできないので、とても助かっている。

 

『深海棲艦撃破、海域制覇。

 帰還します』

 

【あれ、帰還するのー?】

 

その妖精さんは黄緑色の帽子を被っている。

 妖精さんを見分けやすくするために、帽子で科が判別できるようにしてあるのだ。

 

 黄緑色の帽子は索敵の妖精さんだ。

 私は無線をオフにしてから妖精さんに話しかけた。

 

「どうしたの、索敵科の妖精さん」

 

【だって、八時の方向にまだ敵居るよー?】

【たぶん海域のボス! オーラがばーんってなってる!】

 

妖精さんが言った八時の方向の海をよく見ると、潜水している深海棲艦がいることがわかった。

 潜水艦だから発見されてなかったのか……!

 すぐに無線をONにして、艦隊に報告を入れる。

 

『八時の方向、敵潜水艦発見!』

 

『ッ、全員攻撃体勢!』

 

あっぶなー。妖精さん、よく気づいてくれた。

 最悪、背後から奇襲されていたよ。

 

【気づくの遅くなってごめんねー】

【けど、誉め言葉は素直に受け取るのだ! へへん!】

 

えらいえらい。

 

 今度なにかご褒美をあげよう。

 といっても、ご褒美であげられるようなものは何もないんだけど。

 いつか、この子たちに大好物らしい金平糖をたらふく食べさせてあげたい。

 

【じゅるり】

【楽しみ!】

 

さてさて、考え事はいいが、とりあえずこの敵潜水艦の対処を考えよう。

 といっても、今回航空機は動かせない。潜水している相手に航空機は無力なのだ。

 

 なので、やるとしたら単身アタックなのだが……駆逐や軽巡の砲弾が飛び交う戦場で単身突撃は危険すぎる。

 故に見学しかないのだが……。

 

 深海棲艦もバカじゃない。

 いや、結構魚型げふんげふん、駆逐艦は考える力があるのか疑問に思うくらいにはバカだが、潜水艦、それも人型となると知能が多少つきはじめる。

 といっても、本当に多少だけど。

 

 あと、問題としてはこちらの戦力もある。

 全員が改であり、改二は一人もいない。

 オブラートに包まず言えば、弱い。これでよく第二艦隊を名乗れるなっていうレベル。

 まぁ、数人しか改がいなかった第三艦隊と比べればましではあるけど。

 

 そもそも、私は三か月で改になれたのに、他の人がなれないのは何故なんだろう。

 それこそ、彼女たちは一年や二年いてもおかしくないだろうに。

 

 正直、現状なら、私が一人で深海棲艦を相手した方が早く倒せる。

 勿論、私には強力な味方である妖精さんがいるというのも大きいのだろうけど。

 ただ、ついこういう愚痴が出てしまう程度には……あまりにも、弱い。

 

 

 

 

 

 私は昔から、人よりも少しだけ抜きん出ていた。

 だからこそ、私は人と馴染むのが苦手だった。

 

 なんだか、他人がまるで自分の二分の一のスピードで進んでいるように見えてならなかったのだ。

 

 遅い。あまりにも遅すぎる。

 最初は手を抜いているのかと思ったが、違った。

 それが彼らなりの全力だったのだ。

 

 そのことに気づいてから、なるべく他人に合わせるようにした。

 今回だって、そうやって合わせてしまえば問題ない。

 合わせば、きっと……虐められることはないはずだから。

 

【だいじょうぶー?】

【無理しないでー】

 

ありがとう。

 ……よし、すこし落ち着いた。

 ありもしない現実との差異に嘆いても仕方ない。

 

 私は私にできることをやるだけだ。

 それに、精神的に負けていたら、勝てる勝負も勝てない。

 

 ──この言葉という概念が消えた場所で、私は私なりに生き抜いてやる!!

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