あかんこれ~ブラック鎮守府に艦娘として着任したので、艦娘たちを守ろうと思う~   作:白紅葉 九

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第三十話 <(゜∀。)

 私と東提督は艦隊編成を相談し合った。

 

「吹雪と赤城さんは必要だ。後は戦艦かな」

「金剛さんなら、同じ艦隊だったので癖がわかります」

 

「鳳翔さんは先程演習を終えたばかりで疲労しています。

 その上、ブランクもあるので実戦投入は控えるべきです」

「わかった」

 

「時雨さんと夕立さんも今回は控えてもらいます」

「二人なら疲れは取れていると思うけど」

「個人的に、姫級ではないものの姫級に足る実力を持つ深海棲艦に心当たりがあります。

 当たって欲しくはないですが、警戒するに越したことはないかと」

 

「木曾を入れる余裕はある?」

「はい、東提督が言わなければこちらから言おうかと」

「うん。

 面倒な一枚岩たちとの関係を完全に断ったことを、対外的に見せつけたい」

 

「天龍も入れようか」

「……はい、異論ありません。

 でも、なぜですか?」

「なるべく、赤城さんが癖を知っている人を入れたい。

 その方が、何だかうまく行く気がするから」

 

「旗艦は」

「すみませんが、私にやらせていただいても?

 吹雪さんがやるにしても、私には単独行動の許可をいただきたいです。

 ただ、そうなると命令系統が分離するので……」

「命令系統はハッキリさせないとね。

 わかった、赤城さんを旗艦とする」

 

「あと一人、翔鶴か山城か」

「……東提督はどうお考えですか?」

「そうだね……翔鶴にしよう。

 今回の戦場はおそらく敵味方の航空機が入り乱れる。

 山城は航空巡洋艦になりたてだから混乱する可能性が高い」

 

「余った人たちには、当初の予定通り雑魚敵狩りをしてもらいましょう」

「……赤城さんも雑魚とか言うんだ」

「……見た目も駆逐艦()なのでちょうどいい表現ではないですか」

「雑な誤魔化しだ」

 

そうして、結論が出た。

 

横須賀第十三鎮守府 仮遊撃艦隊

旗艦 赤城

随伴 金剛・翔鶴・天龍・木曾・吹雪

 

 

 

 

 

 ふと、思った。

 あの頃、ブラック鎮守府から解放されたばかりの私だったら。

 

 金剛さんや翔鶴さんが、トラウマに怯えず出撃する姿を想像できただろうか。

 天龍さんや木曾さんが、何の負い目も感じずに仲間と笑い合う姿を想像できただろうか。

 時雨さんや夕立さんだってそうだ。いまいち影の薄い山城さんも。

 

 決して、一人も、簡単な悩みを抱えている者なんていなかった。

 

 それらを解決に導いたのが、東提督の力だと言うのなら。

 

 ……私も少しだけ、彼女に頼ってもいいのかな。

 

『──佐世保第二鎮守府防衛戦、開始!!

 お前ら、勝つぞッッ!!!!』

 

武下提督の合図で、その戦いの火蓋は切られた。

 

 

 

 

 

 空を覆うような大量の航空機。見える範囲にあるのは自軍のものと敵機とで半分ずつ。

 私が出した航空機は、現在離れた場所で偵察を行っている。

 

「索敵科長、新規の敵影はありますか?」

 

【う~ん……見えないかな~。でも、違和感があるよ~】

【わ、私も……! 何だか、今日の海は怖い……っ】

 

「……潜水している可能性もありますか」

 

深海棲艦がどこから来るのかは判明していない。

 敵基地から産まれるという説もあるが、建造する装置らしきものが見つかったことはない。

 

 そのため、妖精さんと同じで突然発生という説が今の主流だ。しかし、もう一つ、説がある。

 それが、深海から発生するという説。もしそれが本当なら、敵は潜水艦じゃなくても潜水できる可能性がある。

 

『赤城さん、危険だけど違和感のある場所に直で向かおう。

 少しでも情報が欲しい』

 

「了解しました。

 仮遊撃部隊、敵予測地点に移動します」

 

『うん、高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変によろしくね』

 

「つまり無策ですね」

 

行き当たりばったりの進行か。

 そもそも敵影が見えていないから作戦の立てようもないっていうのは、その通りなんだけど。

 

【な、何だか、近づくにつれ肌がゾワゾワくる……】

【各科長は最大限の警戒及び、いつでも戦えるように戦闘態勢を整えておいてください】

 

幸運科長に続いて回避科長まで違和感を提言してきた。

 やはり、何かがいるという前提で向かうべきだろう。

 

 私も、警戒するようみんなに指示しておくか。

 

「未だ敵影発見はありませんが、いつでも戦えるよう──」

 

『──報告!!

 十時の方向、不自然な揺らぎを発見!』

 

「全艦退避!! 陣形を崩さずに!!!」

 

吹雪さんの声を聞いて、私はすぐ指示を出しながら十時の方向を見た。

 そこには確かに、不自然な揺らぎとしか言えない海の揺れがあった。今にも、海の中から何から這い出ようとしているかのような。

 

「対象水面の揺らぎ、砲撃用意! ……てぇー!!」

 

六人分の砲撃と航空機のよる射撃がその海を通る。

 銃弾が何かに当たる手ごたえ。間違いなく、そこには深海棲艦がいた。

 

「砲撃停止!

 警戒を怠らないように」

 

砲撃が止み、一瞬だけ辺りが静かになる。

 聞こえるのは遠くから聞こえる敵味方の撃ち合う音。

 

 そして……。

 

「……イッ、タイナァ~……」

 

その深海棲艦は、深い闇のような水底から現れた。

 集中砲火されたにも関わらず、小破ほどの傷しか負っていないその敵は、こちらを見てニカッと笑った。

 

「デモ、ソウコナクッチャ!

 タクサン、タノシイアソビ……シヨウネ!!」

 

それはまるで、新しい遊び道具を貰った子供みたいに。

 純粋なまでの無邪気な邪気を孕んだ笑みだった。

 

 そして、それを凶悪に歪めた。

 

「キヒヒッ!!」

 

「雷撃警戒ッ!! 各自回避を!」

 

私は知っている。大まかな彼女の攻撃方法を。

 なぜなら、前世に彼女相手に、何度もゲームで苦しめられてきた記憶があるから。

 

 だからこそ、知っている。ここからは一秒も無駄にできない。

 無駄にすれば……──死ぬ。

 

「委員長、対空最大警戒!!」

 

【了解です!!】

 

「イックヨ~!!

 ガンバッテ、ナガクタエテネ!」

 

駆逐艦()みたいな尻尾が大口を開け、そこから大量の航空機が出てくる。

 私の航空機は全部で七十八機。ただし、一部を偵察に出しているためこの場にいるのは五十四機だ。

 翔鶴さんは七十六機で未発着。発艦して戦場に出るまで多少のラグがある。

 

 こちらの航空機。

 計、百三十機。

 

 対して、敵の航空機。

 計、百四十機。

 

「ははっ……バカだろ……」

 

思わず零れた言葉が私の気持ちをまさに物語っていた。

 

 人数としては、空母二人に対して一体の深海棲艦だ。

 だというのに、航空戦ではこちらが劣っていると言わざるを得なかった。

 

 偵察に出していた航空機はすぐに戻ってくるだろう。

 しかし、劣勢にある今、こちらの航空機の数が減らされてしまえば、例え合流しても戦力を拮抗までにしか持っていけない。

 

 そこに、勝ち目はない。

 

『赤城さん、報告を!!』

 

「東提督……撤退を前提にして動きます」

 

『ッ……──敵は、なに?』

 

敵の警戒ポイントは主に三つ。

 先制雷撃。幸いにして事前察知が可能だったため、こちらに被害はなかった。

 開幕の航空戦。現在劣勢だが、こちらも今のところ被害は出ていない。

 そして、素の火力。その砲撃は艦娘の装甲を容易く破る。

 

 他に二つ、向こうは夜戦が可能であることと、潜水艦に対しても攻撃が可能ということも注意点ではあるが、今回は関係ない。

 

「敵は、戦艦レ級」

 

私の目の前にはあの超弩級重雷装航空巡洋戦艦(ぼくのかんがえたさいきょうのせんかん)と言われた、戦艦レ級がいた。

 

「攻撃方法は魚雷による水中からの攻撃、百四十機の航空機による対空攻撃。

 そして、並みの駆逐艦なら一撃で刈り取る火力の砲撃です」

 

通信を経由して、敵の情報を東提督と現在進行形で戦艦レ級と対面している仮遊撃艦隊の艦娘に伝達する。

 そうしながら、私自身も敵深海棲艦の情報を脳内で整理する。

 

「装甲及び火力は姫級戦艦並みと仮定します。

 その上、夜戦能力と対潜能力を獲得した航空戦艦です。

 まさに……」

 

もしかしたら、と想像していた相手だった。

 同時に、どうか違ってくれ、と願っていた相手だった。

 

「──あれは『破滅』という概念、そのものです」

 

『……本部で作戦を練る。

 それまで、時間稼ぎをお願い』

 

「了解しました」

 

もし、あれを発見できず、佐世保第二鎮守府に近づかれていたら。

 そんな未来を想像して、ゾッとした。おそらく、この鎮守府が数日か数週間か、使い物にならなくなっただろう。

 

 そのわずかな期間で、深海棲艦は容易く領土を拡大し、日本はそのまま破滅していた可能性もある。

 本当に、深海棲艦に情報を売ったやつは……やってくれましたね。

 

『……武運長久を祈ります。

 ──必ず、生きて帰ってきて』

 

「最大限、善処します」

 

確約はできない。できるような相手じゃない。

 

 焦る私たちを見て、戦艦レ級は更に笑みを深めた。

 

 

 

 

 

 それは鎮守府を破滅へと導く、小さくも強大なる悪魔──

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