あかんこれ~ブラック鎮守府に艦娘として着任したので、艦娘たちを守ろうと思う~   作:白紅葉 九

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第六話 新提督着任

 変態男が逮捕されてから三週間後。

 同時に、私たちが鎮守府に戻ってから一週間後。

 

 ついに今、新たな提督が鎮守府に着任した。

 

「ご紹介に預かりました、新任提督の(あずま)未来(みらい)です。

 本日より、ここ横須賀第十三鎮守府に着任させていただくこととなりました」

 

大和撫子のような雰囲気を醸し出すその女性。

 しかし、その容姿はどの艦娘とも似ても似つかない。

 

 建造艦は、解体されると普通の女性の姿に戻る。

 ただし、ドロップ艦の解体は死だ。正確には、深海棲艦のように粒子となって消えるらしい。

 

 

 特別、東提督に関して嫌悪感を示している者はいない。

 いや、提督という存在そのものに対してなら、大多数が嫌悪感を示しているけど。

 恐らく、東提督からしたら袋の鼠、蛇に睨まれた蛙、みたいな心境だろうね。

 

 私も、もし提督になって最初に所属したところが、暗い表情をした艦娘ばかりだったら、そんな気持ちになるかもしれない。

 この提督が、それを何とかしようと空回らなければいいと切に願う。

 

 

 そして、東提督に親愛の目線を向けている艦娘。

 簡単に言えば、東提督の初期艦だ。

 

 この世界の初期艦は、ゲームと違って駆逐艦のなかからほとんどランダムで決定される。

 しかし、偶然にも東提督の初期艦は吹雪さんだ。

 しかも、改二。おう、それでいいのか。

 

 情報によれば、吹雪さんは東提督が艦娘だった時代から交流のある相手らしい。

 元艦娘であるとバレかねない要素を隠さないのかと困惑したのだが、二人の左手についている指輪を見て納得する。

 

 それがあれば、自分の好きな相手以外には性的なことを強要しないだろうと、みんなも安心できるかもしれない。

 

 ……いや、同性愛者なうえ、誰でもいいタイプの変態かもしれないという警戒を生むだけかも。

 流石に、大本営もそんな人物は斡旋してこないとは思うけどね。

 

 

 初期艦の情報は詳しく知らされていなかったのだが、これなら吹雪さんに第一艦隊の旗艦を任せても問題なさそうだ。

 

 第一艦隊には、精神的に強い部類の者と、トラウマを思い出す出来事がなければ普通に動ける者を組んでおいた。

 そのため、吹雪さんもすぐ馴染めるのではないだろうか。

 

 艦隊編成に関する内容や懸念点は、事前に大淀さんへだいたい伝えておいた。

 後は大淀さんが、どこまで東提督に伝えるかだろう。

 

 といっても、大淀さんに対しても全てを伝えているわけじゃない。

 流石に、大淀さんにみんなのトラウマを詳らかに説明するわけにはいかなかったからね。

 

「新たな艦隊編成について発表します」

 

大淀さんの言葉を受けて、艦娘たちの間に強い緊張が走ったのを感じる。

 大淀さんはそんなみんなの反応を気にした様子もなく、第一艦隊から発表を始める。

 

「第一艦隊、旗艦吹雪。

 同じく随伴、長門、陸奥、翔鶴、北上、響」

 

長門さんと陸奥さんが多少安堵したような表情を見せる。

 

 臨時居住地にいた二週間。

 

 この二人は、一緒にいる時が一番リラックスしているように見えた。

 なので、いったんここは姉妹艦同士で同じ艦隊にすることにした。

 

 それと、イメージ的な話もある。

 長門さんは第一艦隊の戦艦みたいな、代表的な立ち位置に向いていると思った。

 

 金剛さんも似た立ち位置にはいるけど……。

 どちらかというと、金剛さんは代表というか、駆逐艦たちのお母さん的なイメージだ。

 なので、その点で長門さんとは役割分担をした形となる。

 

 陸奥さんには、長門さんをサポートして貰いたいと思っている。

 言ったら変な重圧がかかると思ってそのことは話していないが、自然と察している部分もあるだろう。

 

 

 翔鶴さん、北上さん、響さんは一人でも大丈夫だろうと判断した人たちだ。

 翔鶴さんと北上さんに関しては、一人の方がいいだろうというのもあるけど。

 

 翔鶴さんは、川内さんと同じで部屋に引きこもっていた艦娘の一人だ。

 前任提督に性的なことを強要され、自分が醜いと思い部屋から出られなくなっていた。

 

 しかし、説得を続ければ、憧れの一航戦から言われた言葉なのがよかったのか、部屋から出られるようになった。

 まだ、誰かと距離を縮められるほどトラウマは消えていないので、これは時間の経過を待つしかないだろう。

 

 北上さんは、カウンセリングをしたときにあまり自分のことを話さなかった。

 

 しかし、食堂などで姉妹艦を避けている様子を見かけたため、おそらく姉妹艦が轟沈するのを目の前で見たのだろう。

 しかし、逆に言えば、姉妹艦が関係しなければ通常状態とそう変わらないわけだ。

 

 響さんは、史実で一人外国に行った経験があるおかげなのか、別れというものに耐性を持っていた。

 

 そのため、うちの鎮守府で私に続き二番目にトラウマが浅い艦娘だと思われる。

 単純に艦隊の機能性なども考えて、響さんは第一艦隊所属となった。

 

「第二艦隊、旗艦金剛。

 随伴赤城、龍驤、川内、暁」

 

第一艦隊は六人艦隊だったが、第二艦隊、第三艦隊、第四艦隊は人数の関係で五人艦隊となる。

 

 この艦隊が正直一番悩んだのだが、機能性の関係で暁さんと響さんは別艦隊に入れたいとは思っていた。

 

 しかし、別れに耐性があった響さんとは違って、暁さんは他の艦娘と同じでそれなりの傷を負っていた。

 だけど、食堂で金剛さんの行動を模倣している姿を見てこの編成を思いついた。

 

 

 この艦隊のメンバーには、事前に川内が極端に周囲の人間や物事に怯えていることを伝えている。

 

 その頑丈に閉ざされた心を、暁さんには開いてもらいたいのだ。

 それこそ、姉がやるように、みんなを明るく元気にさせられる人になってほしい。

 

 その見本として金剛さんと、その成長を阻まず見守ってくれそうな龍驤さんがいる。

 

 川内さんは、私と同じ艦隊なら出撃すると事前に承諾を得ていた。

 

 金剛さんと龍驤さんは、たぶん大きな傷を負っているだろうに、完璧な仮面で隠している。

 なので、具体的なトラウマはわかっていない。

 

 彼女たちが変に爆発しないように見守る意味でも、私はこの艦隊に所属している。

 

「第三艦隊、旗艦古鷹。

 随伴扶桑、山城、陽炎、不知火」

 

この艦隊はわかりやすく、姉妹艦同士と姉妹艦同士。

 そして、それを取りまとめる役目として古鷹さんがいる。

 

 扶桑さんと山城さんは、下手に離すと引きこもるどころの話を越えて、心中しそうな勢いだった。

 なので、この二人を別の艦隊にするという考えは全くなかった。

 

 いや、だって、艦隊の発表前に覚悟の決まった顔してたんだよ?

 あれ、どんな艦隊でもいいじゃなくて、別の艦隊だったら死ぬの顔だったよ? 二人を別々の艦隊とか無理じゃない?

 

 幸い陽炎さんと不知火さんは共依存(そこまで)じゃないが、やはり姉妹艦がいると心強く感じるのが艦娘だ。

 機能性の面でも特に問題ないからこの編成に決めた。

 

「第四艦隊、旗艦天龍。

 随伴木曾、島風、時雨、夕立」

 

わかりやすい遠征艦隊である。それ以上のコメントはない。

 

 天龍も木曾も駆逐艦に好かれる性格をしているし、駆逐艦たちも二人には心を許している。

 天龍と駆逐艦のみでもよかったのだが、念のためで同じ軽巡である木曾も所属させた。

 

 時雨と夕立は姉妹艦だが、島風は姉妹艦がいない。

 そこらへんも、天龍と木曾ならうまくやってくれることだろう! たぶん!(丸投げ)

 

 ちなみに、大淀さんや鳳翔さんは、艦隊に所属せず鎮守府で仕事をこなしてもらうこととなる。

 明石さんや間宮さんも同じだ。

 

 “あの子”に関しては、いったん艦隊に所属せず部屋で過ごすこととなった。

 大本営にも平和的に会話をして、そのことを許可してもらった。

 

 前任の不祥事を見抜けていなかった時点で、大本営に対しては楽に交渉が進めることができる。

 そんな話を明石さんにしたら、なぜか怯えられたのだが。

 

 

 

 

 

 諸々の連絡等が終わり、着任式は終了した。

 やはり、まだ東提督に対して警戒が解けていない人が多く、提督と積極的に関わろうというものはいなかった。

 

 私は東提督が執務室に行ったのを確認してから、工廠へ向かった。

 そこでは、着任式を参加しなか(サボ)った明石さんが、一心不乱に何かを作っていた。

 

 これは、今日が着任式だったことも忘れているな……。

 私はそう結論付けて、明石さんに話しかける。

 

「明石さん、着任式が終わりましたよ」

 

「そうですかー、お疲れ様ですー。

 着任式が終わったんですねー。

 ……──あああぁぁああっ、忘れてたぁぁあああ!!!」

 

何かを作っていた手を止め、頭を抱えて叫ぶ明石さん。

 

 そんな明石さんを横目で見ながら、給料で買った金平糖を棚から取り出す。

 すると、私の周りにわらわらと妖精さんたちが集まってきた。

 

【お菓子だ!】

【甘いやつだ!】

【ぼく大好き!】

【私もー!】

 

「提督に見つからないように隠れてくれたからご褒美だよ。

 一人二つまでね」

 

金平糖をお皿に出すと委員長主導の下、全体に金平糖が配られていく。

 その数なんと約七十人。なので、一人に二つ金平糖を配ると合計で約百四十個が一日で消費される。

 

 一年近く何もご褒美が上げられなかったのもあって、その分たくさんあげている。

 だけど、やっぱり消費速度が速いな。

 

「赤城さんって、妖精さん相手だとため口ですよねー。

 私にもため口で話してくださいよ!」

 

「善処します」

 

「その回答、いまので二十三回目ですよー……」

 

二十三回もやったのならいい加減諦めればいいのに。

 

 今日から東提督がこの鎮守府に着任する。

 そのため、気軽に野良妖精さんたちと会えなくなる。

 

 私が野良妖精さんを見えると知られたら、ちょっとややこしいことになるからだ。

 当分は艦娘として平穏に過ごしたい私にとって、それは面倒くさい。

 

 出撃の時は人数を減らせば問題ないが、前みたいに四六時中一緒にいることはできなくなる。

 なので、なるべく野良妖精さんたちとの接触を減らすことにした。

 

 出撃中、一見喋っているだけに見える野良妖精さんも、戦闘中は色々としてくれている……多分。

 いや、してくれているんだけど、その時の野良妖精さんは付喪妖精さんに伝わるように妖精語を使って話していて、私には聞き取れないんだよね。

 

 なので、おそらく色々やっているとしか言えないのだ。

 まぁ、サボっている子がいたら委員長に聞いて、金平糖を没収するかな。

 

 

 ちなみに、先程出撃の人数を減らすといったが、そもそもの出撃回数自体も減る。

 毎日二回出撃だったのが、週四十時間未満労働になるのだ。休みがあるって素晴らしい。

 

 具体的には、出撃する野良妖精さんは各科長+名前持ちの八名のみで出撃する。

 

 あれから委員長以外にも特殊なスキルを持った者が現れたため、それらはわかりやすく名前を付けている。

 といっても、大体が役職名だが。

 そのため、いまここにいる大部分の妖精さんとは、今後しばらく会えなくなる。

 

【先生と会えないのかー……】

【それって、お休み?】

【長い休みだから、夏休みだー!】

 

「確かに、夏休みみたいだね。

 それなら、一つ宿題を出そうか」

 

【いやだー】

【ブーブー】

【最終日に片付ける!】

 

「内容は簡単。

 好きだなって思える艦娘や人間を最低一人見つけて、その人の傍で過ごしてみて。

 そこで過ごしてみてどう思ったか、夏休み明けに私に教えてね」

 

【好きな人見つけてくるのかー】

【もしかして、婚活というやつなのではー!?】

【先生からの初めての宿題だ!】

 

「期限は未定。

 あっ、でも、相手に迷惑はかけたらダメだからね」

 

【はーい!】

【わかった~!】

 

「……話は終わりましたか?」

 

「はい」

 

ずっと私の方をじっと見ていた明石さんは、話の区切りがついたのを察したのか、そう聞いてきた。

 そう、今日は妖精さんと話に来た……というのもないとは言えないが、もう一つ工廠でやることがあったのだ。

 

 というのも、この鎮守府に戻ってきて真っ先にやったとある検査で、私は引っかかったのだ。

 それは悪い意味ではなく、いい意味でだけど。

 

「では、改めて。

 ──赤城さんの二回目の改装を行いましょう」

 

今回の検査で引っかかった、つまり改装する資格があると認められた者は意外と多かった。

 

 資源的には大本営からたんまり貰ってきていたので問題ない。

 いやぁ、責任問題って大変だよね。(暗黒微笑)

 

 前任提督は資源が減るのが嫌だったのか、条件を満たしていても改装を行っていないメンバーがいた。

 無印から改にするくらいなら躊躇わずやってほしいものだが、それさえもやっていなかった者たちがいたわけだ。

 

 

 という訳で、提督が来るまでの一週間くらいで、短時間でできる無印から改にする改装を行っていた。

 なので、改から改二にする私の改装は多少遅れたという訳である。

 

 前回の改装で使っていた機械よりなんだかすごそうな機械を使用し、色々とされる。

 前回は特殊な改装条件で時間がかかったが、今回は一般的な改から改二への改装時間と変わらないだろう。

 

 

 ──人、それをフラグという。

 

 

 なんだか既視感のあるどんがらがっしゃんという音が外で聞こえたかと思うと、これまた既視感のある機械と、既視感のある水が置かれた。

 

 ひとまず機械を明石さんが操作するのも見ていた。

 そして、明石さんが大きなため息をこぼして水を渡してきたので、受け取って飲み干す。

 

 意識はすぐに落ちていった。

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