あかんこれ~ブラック鎮守府に艦娘として着任したので、艦娘たちを守ろうと思う~ 作:白紅葉 九
「拝啓、前世の私へ。
私は目が自由に光るようになりました」
「ワー、オメデトウゴザイマスー」
常時死んだ目の私の横で、珍しく死んだ目をした明石さんがぱちぱちと乾いた拍手をしている。
どうしてなのだろうか。
目が覚めたら、目が自由に点滅する化け物になっていた。いや、艦娘なのだが。
心当たりはな……いや、待て。
確か前、妖精さんが、目が金色になったとか、改二の気配がするとか言っていた気がする。
「妖精さん、何か知っていたりする?」
【わかんないー】
【先生、改二戊になったんだねー】
【空母なのに、夜戦ができるよ!】
なるほど。空母なのに夜戦が出来るのか。
……心当たりしかないな。
この鎮守府に来た当初、第三艦隊に所属していた時は夜戦が主であった。
やっぱり、過ごしている環境が成長に大きな影響を与えるっていう事だろう。
うん。私も明石さんと同じく現実逃避をさせてほしい。
「明石さん、私はどうやら改二戊になったようです」
「改二戊……?
ちょっと聞き覚えがないですが、それで?」
「夜戦ができます」
「は……?」
【目がねー、ぴかーんって!】
【でもね、ずっとじゃないよ!】
【目が光っているときは改二戊で、光ってないときは改二!】
「改二と改二戊を自由に行き来できるようです」
「ぷぁー……」
【頑張れば改二護にもなれるよ!】
【改二甲にも!】
「頑張れば改二護や改二甲にもなれるようです」
「……ぁー」
【あと、改二姫にもなれるよ!】
【見た目はね、空母ヲ級!】
「空母ヲ級みたいなのにもなれるようです」
「……ぅわあぁ」
【ごめん、ほとんど嘘!】
【改二戊は本当!】
【夜戦ができることも本当】
「改二戊だということと、夜戦ができるということ以外は嘘だそうです」
「……ぅぅぅえええええ!?!?!?
いまの時間は何だったんですかぁ!?」
「さぁ、妖精さんに聞いてください」
【いたずら心ー】
【妖精さんはお茶目なの!】
「聞こえないですよぉ!!」
項垂れている明石さんを放っておいて、目を光らせる条件を調べていく。
これか? ……なら、これ?
いくつか試した後、目が光るスイッチを見つけました。
当たり前ですが、目が光っても、改二戊と改二を行き来できるわけではありません。
「あっ、目の光制御できるようになったんですねー?」
「はい」
「ッ!?」
私がそう返すと、明石さんは一瞬怯えたように驚きました。
このモードに入ると、なぜか人から怯えられるようになるのですよね。
──ただ、
そのまま怯えられていても仕方がないので、目の光を解除する。
すると、明石さんは大きく息を吐き、脱力した。
「びっくりしましたぁ~、今の何ですか!?
急に殺気みたいな、でも殺意は感じられない、そんな感じの気配になりましたけど!?」
「望んで殺したい相手はいませんよ」
現実は非情だ。
だって私は、深海棲艦を殺したいと望んだわけではない。
それでも、命令があるなら私は殺さなければいけない。
しかし、成長する糧になるなら、誰であろうと私は情け容赦なく殺しますが。
いけない。先程敬語になったせいで感情が荒ぶっている。
ひとまず、工廠での用事は済んだから部屋に戻ろう。
「妖精さん、またね」
【ばいばーい】
【夏休み明けにね!】
【出校日は?】
【ない! 自由だー!】
わらわらと工廠から飛び出していく妖精さんたちを見ていると、なんだか微笑ましい気分になる。
だって、本当に夏休みが楽しみな子供みたいだったから。
私がそれを眺めていると、横から一人の妖精さんが現れた。
その子は名前持ちだった。
【先生、僕も長期休暇を頂けないだろうか】
そう私に言ってきたのは生徒会長こと会長だった。
会長のスキルは火力、装甲、回避、対空、索敵、幸運の六種類だ。
現在一番スキルが多い妖精さんで、六つの科をまとめてもらっていた。
しかし、科長以外夏休みに入ったのでその役目は必要なくなる。
「いいよ、存分に遊んでおいで」
【ありがとう、先生】
会長は礼をした後、他の妖精さんたちに混ざって工廠から出ていった。
さて、現在一人目の名前持ちが工廠から出ていったが、他の子はどうなのだろう。
【先生! 俺も、夏休みに旅に行ってきてもいいか?】
そう言って飛び出してきたのは放送委員長。
伝達SSSのスキルを持った子だ。
好奇心が旺盛で、前から旅に出てみたいと話していた。
しかし、危険があるかもしれないと今までは止めていた。
役目としては、妖精語で妖精さんたちに向けてラジオをしていたらしい。
しかし、正直、あまり放送委員長のことを活かしきれていないと感じていた。
そのため、この夏休みは私も、放送委員長も変われるいい機会になってくれるのではないかと思う。
「いいけど、ちゃんと宿題はやってね?」
【うへぇ~】
嫌そうな感情を前面に出しながら、放送委員長は工廠から出ていった。
ああいう態度ではあるが、指示されたことはテキパキとやるタイプだし、ちゃんと宿題もやってきてくれるだろう。
……多分。
どうしよう、心配になってきた。
【あの~、みかんも夏休みがほしいな~って……】
「みかんはだめ。補習」
【はい……】
みかんの名前はみかん。
スキル食料SSSを持っている妖精さんだ。
まったくそのスキルの意味がわからず、何となくその時食べたかったみかんを名付けたはいいが(その時、みかんは『非常食!?』と驚いていた)、実際どういった役割があるのかわからない。
おそらくこのまま役割が見つからなければ非常食になるだろう。
【役割見つけてくるから食べないで~!!】
「ごめんごめん、半分は冗談。
行ってらっしゃい」
【半分!? はい、行ってきますぅ~……】
みかんはふらふらと工廠から出ていった。
本当にあの調子で大丈夫なのだろうか。
まぁ、やればできる子だと信じて送り出すしかない。
別に私としては非常食でもいいし。
【せんせえ、うちもお休み、貰ってもええかな】
「うわぁ、大事なところがいなくなっちゃった」
京都弁みたいなその子は保健委員長。
スキルは治療と処置。
このスキルのおかげで、自然回復の速度が上がった。
重宝していたスキルを持っている子なので、抜けると結構な痛手となる。
「行ってらっしゃい。
なるべく早く帰ってきてね!」
【それはどうやろね】
保健委員長はそう言って薄く笑うと、ぷかぷか浮かびながら工廠から出ていった。
だいぶ、少なくなっちゃったなぁ。けど、まだ出ていく子がいる。
【先生、わたくし……──正義探しの旅へ出かけようと思いますわ!】
「風紀委員長……君は、そのキャラを貫いていくんだよ」
【もちろんですわ!!】
風紀委員長。
秩序というスキルを持っている。
いまいち詳細がわかっていないが、とりあえず規律とかルールとか正義とか、そんな感じのスキルらしい。
新天地でそれがおもしろげふんげふん、想像もできない方向に進んでいってくれたらと思っている。
【それと……わたくし、いま恋人がおりますの】
「そっかー、恋人……恋人?」
【わたくしの恋人の団長ですわ】
【我は応援団長こと、団長である!】
ええええええええ!?!? そこ二人、できてたの!?
全くそんな素振りなかったのに!?
ええーっと、団長は、魅力SS、幸運A、付喪Cのスキルを持った妖精さんだ。
付喪のスキルのおかげなのか、とても付喪妖精さんに好かれている。
現に今も、団長の隣に四人の付喪妖精さんが……そっか、お別れは野良妖精さんだけじゃなかったのか。
【達者でな! 先生!】
【ご自愛くださいませ】
「うん、団長も、風紀委員長も、付喪妖精さんも、またね」
とうとう、科長以外で残った妖精さんは一人だけになった。
その子は、何も言葉を発さない。
「これからもよろしくね。
――委員長」
【はい、先生】
私を今日まで一年間、ずっと支えてくれた委員長。晴れの日も雨の日も風の日も嵐の日も、ずっと一緒にいた。ずっと一緒に、困難を乗り越えてくれた。
振り返って、科長たちを見る。みんな、覚悟の決まった顔をしていた。
「みんな、夏休みのどっきり大作戦だ。
滅茶苦茶強くなって、みんなを驚かせよう!」
【【【【【【【おー!!】】】】】】】
≪赤城改二戊(提督・艦娘) レベル99 妖精さん85名
艦載16名 烈風改二戊型(一航戦/熟練)
艦載16名 流星改(一航戦/熟練)
艦載20名 九七式艦攻改(熟練)試製三号戊型(空六号電探改装備機)
艦載14名 彩雲
艦載12名 昭和12年海軍式軍刀(熟練)
野良妖精さん7名 特殊1・火力1・装甲1・回避1・対空1・索敵1・幸運1
付喪妖精さん78名 F10・E31・D22・C15≫
≪委員長(野良妖精さん) レベル5 統率SSS・指揮SS・知能C≫
≪火力科長(野良妖精さん) レベル5 火力SSS・統率B・告知C≫
≪装甲科長(野良妖精さん) レベル5 装甲SSS・統率B・認知C≫
≪回避科長(野良妖精さん) レベル5 回避SSS・統率B・感知C≫
≪対空科長(野良妖精さん) レベル5 対空SSS・統率B・探知C≫
≪索敵科長(野良妖精さん) レベル5 索敵SSS・統率B・明知C≫
≪幸運科長(野良妖精さん) レベル5 幸運SSS・統率B・予知C≫
「装備作成頑張りました」
「お疲れさまです、明石さん」
作者から
「なんか知らない妖精さんが登場したと思ったら居なくなった」と思ったみなさん、私もです。
小説 プロット 大事 検索
いずれ登場すると思うので許してください何でもしますから!
ところで、特殊タグを使ってみたのですが、ちゃんと機能しているでしょうか?
見づらい等あれば、感想などで教えていただけるとありがたいです。