咲方Projet‐Sakihou Project‐ ~幻想郷が咲の世界入り~ 作:みんせい
仕事とかの合間にコツコツコツとやっていたのが原因ですが、とりあえず目途が立ったので投下になります。
時間が空いた分、また話とかも練っているような最中です。
今回は準決勝後、1日空き日がある状態で話を進めています。
県大会決勝前日、清澄高校の麻雀部でメンバー一同集まって先日行われた準決勝の動画を見ている。昨今のITの発達によって牌譜だけでなく、対戦動画も随所公開されるようになってきている。
今、映し出されているのは鶴賀学園のやつ。咲・霊夢・悠の1年トリオはそれを見ての反応は三者三様。悠は同じ中学県代表だった南浦を意識していることは間違いないし、霊夢はかったるそうにしている。咲といえば強い相手が同学年にもいると知ってかワクワクが止まっていない様子。
「あらら、ゆみのやつ。こんな強力なメンツ集めてんのね。そりゃあ自信もって言うわけだわ。こっちにあんだけイチャモンつけてたくせに」
「ゆみさんと智美さんだけでも警戒だったのに増えちゃいましたね」
「でもこうやってわかるだけでも儲けもんだと思うけど」
「どう、照から見てあちらの1年の感じ」
「んー、実際に場で立ち合わないとわからないけど。この子は王道なやり方だと思う。そこまで奇を喰らうって印象はない」
「そうですね、気掛かりなのは南場での和了率が高いことでしょうか」
「確か中学校の時もそんな感じでした。優希が東場で稼いだ分以上に南場で逆転している印象が強いです」
「ならそれで決まりね。そうとわかればこの子の対応は何とかなるわ。で、もう1人。こっちの東横さんかしら。こっちは?」
「うーん、なんだろ。なんか掴みづらい。画面上だと普通に見えるけど。咲はどう?」
「うーん、お姉ちゃんと同じかも。なんか、変」
「霊夢さん、どうですか?」
「んー・・・そうね。存在が感じられないわね、なんか影みたいに思える時があるわ」
「ありゃまぁ・・・うちのセンサー群がビンビンに反応しているわね。そしたらこの子はちょっと警戒かしら」
「結果と打ち筋は普通ですよ。それ以外にあるってことですか?」
「ま、実際の場でありえなさそうなことが起こるのは10年くらい前からのトレンドみたいなもんよ」
久の言葉に悠は若干納得しているようなそぶりを見せて、話をきった。そのトレンドの枠に該当するのがこの場に何人いるのか考えればそう思うのも仕方ないだろうか。
「さて、風越は前と一緒だから対策は大丈夫として、龍門渕はどうするのかしらね。結局準決勝は3人目の国広さんでトビ終了だったし」
「純粋に実力が上がってますね。でも6人目は分からずじまいですが」
「そこは気にしても仕方ないわ。みんなに確認してもらいたいのは天江衣のこと。多くはないけど牌譜と対戦動画見て、こういう選手だと認識しておきましょ」
久がマウスをいじって映像を切り替える。映し出されたのは天江衣の去年、全国大会に出場した映像だった。内容は他の3校を圧倒してトップで終わる、そんな内容だった。3年生トリオはこれをもう知っているからそこまでじゃないが1年生トリオはほぼ初見。やっぱりまずったかなと思い、久はさりげなく隣を見やる。
悠はちょっと前に久と一緒に見ていた。けど改めてみても戦慄が走る。見れば見るほど謎に包まれるような選手としか言いようがない、というのが感想。も自分が戦ったらまず勝てないことはわかっている。だから恐怖心もついてくる。でもこの人の麻雀も世界観も気になる、知りたいと言う探究心がくっついてもくる。
咲はワクワク感がハイになりそうなのをなんとか押しとどめている。こんな感触を持ったのは姉の照と幼馴染のお兄さん、駒ヶ根哲也とガチンコでやった時か、正月のお年玉チャレンジ麻雀でブチ切れてボコボコにされた母親ぐらい。正直、咲の世界観じゃその3人が最強に近い存在。それと同じ感触を画面越しでも伝えてくれるこの人はすごいんだって明らかに分からせてくれた。
そして霊夢は目の色が変わった。この手の感じは異変解決の時に出てくる妖怪達のそれと似ているのだ。天江衣から発する気、なのかオーラなのか。それがヒシヒシと伝えてくれる。こっちの世界に来てまさかこんな機会に出会えるとは思えなかったからか、それともその時の記憶が蘇っているのか。自分でも気づいてないけど、彼女の口角は楽しげに上がっている。
『あの天江衣の麻雀を見てこの反応って・・・ホント、この子達って見てて飽きないわね。我ながら凄い子達入部させちゃったわね』
久がそう思う。それは頼もしいの一言。また反対側を見れば同学年の親友達がなんともないような表情でこっちを見てる。これはこれで頼もしい。同じような感想を持ってくれているのだろうと安堵を与えてくれる。
天江衣の勝利が確定した場面のところで部室のドアが開いた。そこには顧問の大日向先生が立っている。先生は一間を置いて、声をかける。
「そろそろ部活終了時間ですよ。明日の簡単な連絡をして下校ですよ」
先生が明日の行程が書かれたプリントを配って、補足説明をする。
「ということで明日も現地集合です。遅刻しないように気をつけてくださいね」
「わかりました。照、寝坊は厳禁よ」
「失礼な。私だってやる時はしっかりやるし」
「はいはい、そこで煽らないの。そうそう、明日のオーダーも発表しましね」
その言葉に一同が、はい?と言いたくなるような表情をそれぞれ浮かべる。先生はそれを気にせずスラスラとオーダー発表をした。そして次に出た言葉は「えー!!??」という叫び声だった。
「いやいや、それはあまりにもないです!大日向先生、考え直してください!」
「久さんに言われても直す気はないわ。全国で勝ち抜くのであれば、これぐらいのことできないとねぇ」
「先生、1年の3人がかわいそうです」
「そうです、私たちがそんなに頼りないんですか!?」
「照さん、早苗さん。貴方達は私の教え子の中でも最上位の人たちだと思っています。だからこそ、貴方達に頼ってはいけないのです。中部大会も全国大会も甘くありません。これはうちの試練でもあるんですよ」
先生の言葉に熱と重みがこもっている。こう言われてしまっては3人がどんな言葉を言おうとひっくり返ることはない。
「はぁ・・・わかりました。どうにか受け入れます」
「そうよ、これは貴方達の試練でもあるわ。頑張りなさい」
「まさかこんなタイミングで重責が増えるなんて」
「うーん、世の中は難しいですね」
3年生トリオが悩むその姿を先生は「ふふふ・・・」と楽しげに微笑むだけ。
それぞれが帰宅した後に1年生トリオはそれぞれの携帯でポコポコ連絡を取り合っている。この3人、こういったやりとりを結構やってたり。
「で、そっちの様子はどうよ。早苗はなんか神社の本殿でお祈りしてなかなか部屋に戻ってこないけど」
「なんか東風谷先輩らしいです。霊夢がやってるって言うと信用度ないですけど」
「なによ、私だって立派な巫女よ。やる時はやるわよ」
「霊夢ちゃんの巫女さん姿、見たことないね」
「そんなんで良ければ、そのうち見せてあげるわよ。でも早苗があんなに熱心に祈るのは久々な気がするわ」
「東風谷先輩も心配なんでしょうか」
「そうね、そうだと思うわ。正直早苗から高校の話聞くたんびにそこまで大変じゃないでしょ。って思ってたけど、今は違うわね。大変といえば大変だわ」
「そうだね。私も霊夢ちゃんの言葉、わかるよ。お姉ちゃんも同じこと言ってたし」
「それを共有して負担を減らすために私達が入部したんです。それぐらいがんばらないと」
「そうね。そんで、そっちの先輩達は?」
「姉さんは他の牌譜見たりしてあーでもない、こーでもないって唸ってます。もう対戦相手わかった素振りしてます」
「もしかしたら本気でわかってるのかも」
「まさか。うちだってオーダーをさっき知ったばかりよ。いくら久先輩でも無理でしょ」
「だと思うんですが、姉さんのあの様子・・・良くないこと企んでいるやつなんですよ」
「触らぬ神になんとやら、ってやつだね」
「そうね。藪から棒に突っ込むのは良くないことだわ」
「そうですね、放っておきます。宮永先輩は何を?」
「うーん、近くの小川らへんにいるんじゃないかなー」
「へぇ、なんか意外ね。もう寝てるかと思ってたわ」
「なんか考えたり、思うところがあるんだって」
「へぇ、それは意外です。姉さん以上にそういったこと無縁かと思ってました」
「で、それがなんで小川なのよ」
「多分哲也さんと一緒にお話ししてるんだと思うんだよね」
「へぇ・・・例のあの人ね」
「あぁ、合宿で対戦したあの人ですか」
「悠、あんた。そこじゃないでしょ。この時間に男女2人が仲睦まじく話してんのよ。邪推ぐらいしなさいよ」
「まぁ、それは姉さんと高遠先輩のやりとりから何もないのを知ってるとなって」
「あはは・・・たぶんお姉ちゃんと哲也さんも今回も何もないと思うんだけどねー」
「そ、ならいいわ。じゃあ話変えるけど、明日のオーダー。あんた達は納得したの?」
「正直よくわかりません。姉さん達はそれとなく伝えられたって言ってましたけど」
「でも私たちがどうこうできるものじゃないし、任されたところでがんばるよ」
「私達より霊夢の方が大変ですよ。まさか・・・」
「それはわかってるわよ。こんな戦績なのにってことでしょ?」
「でも戦績とか関係なく霊夢ちゃんに任せるってことだよ。すごいことだよ」
「ま、なるようにするしかないわね。迷惑かけると思うけどよろしくね」
「お互い様です。私もできること、がんばりますから」
「うん、私達で中部大会・全国大会に行けるようにがんばろ!」
夜が更けるごとに少女達の気持ちと意気込みが増すようで。
翌日、朝から宮永家ではバタバタと音を立てながらあっちこっちでせわしなく動いている。それを醸し出しているのは咲。どうやら寝坊とまではいかないが、ちょっと起きるのが遅かったかもしれない。
「ほら、そうやって遅くまでやりとりばっかしてるからそうなる」
「お姉ちゃんだって遅かった!」
「私はちゃんと時間通りに起きてる。そこが咲との違い」
勝ち誇ったような表情をする照に対して咲はむー・・・とむくれ顔をするが、自分は時間通りに起きれなかったのは事実。
「照も咲にあれこれ言ってないで早く食べ終えなさい。咲もいい加減に匙加減覚えない。高校生の大事な時にこれじゃ、これからどうするの」
「はぁ~い・・・」
咲も母親にまで言われてはどうすることもできない。しょぼくれながら椅子についた。
「まぁ、いいじゃねーか。まだ時間もあることだし。そうだ、俺が送って行こうか。それなら時間より余裕がでるだろ」
「あなたがそうやって甘やかしてばっかりだと意味がありません」
「お父さん、いいの!?お願い!」
「咲ばっかり。私も乗るからね」
「当たり前だろ。母さんもいいだろ?」
父親の言葉に母親がため息一回つく。しょうがなく認めるのサイン。それが咲を笑顔にさせるに十分だった。
それからトントン拍子に準備やらが終わり、咲と照が父親の車に乗り込む。発車する前に2人が乗っている後部座席の窓を母親がコンコンとノックしてきた。照が窓を開ける。
「あとで父さんと一緒に行くけど・・・私の娘達なんだから、完膚無きに勝つのよ。いいわね?」
「あはは・・・できるだけのことします」
「だいじょーぶ。咲もだけど、今年のメンツは本当に強いから。優勝以外、ないから」
「そう、ならいいわ」
おそらく母親独自のエールを受けて、車が動き出す。照も咲もよくあの母親から自分達のような性格になったもんだと思っているに違いない。現に父親がそう思っているのだから。
しばらく走らせていると父親が2人に声をかける。
「なぁ、今日の相手は強いのか?」
「うーん、どうだろ。個人戦と違ってまだ誰と対戦するかわからないから」
「どんな人でも楽しくできると思う」
「そうか、お前ららしいな。答え方が母さんそっくりだ」
「それはない」
「それは違うと思うよー」
「いや、お前らが知らない母さんもあるってことだ。ただ、同じように答えてたけどよ、あいつは勝ってきてたからな。だから、大丈夫だと思うんだが。おっと、駅だ」
これは父親からのエールなのか。両親揃って不器用かもしれないがそれでもこうやって応援されているのは素直に嬉しい。車が止まって、咲も照も外に出る時、父親に言った。
「なんかお父さんの言葉聞いて安心しちゃった。今日、大丈夫だと思う」
「母さんと似てるってのはちょっと癪に障るけど、いけると思う」
「おう、行ってこい」
父親からの言葉を背に受けて、咲と照は決勝の会場へと向かった。
★宮永家について
この作品では宮永家については特段何もなく過ごしている設定です。
それがあって照も原作では母親にくっついて東京に行って・・・という件だったと思うのですが、この作品ではそれもないのでこうやって長野に住んでる次第です。
母親に関してはほぼオリジナルのようになっているのは許してください。
父親は原作の1巻にでていたのを参考にしてます。