咲方Projet‐Sakihou Project‐ ~幻想郷が咲の世界入り~   作:みんせい

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サブタイトルの〇年生がごっちゃになっているようですが、()のキャラに合わせているのでこうなっています。前回の話が前戻ったわけではありません。

ということで今回から照・久・早苗が3年生。咲が1年生の話です。
原作の1巻に相当するところです。ようやくここまできた。

あと話を読めばわかりますが、1年生は咲だけはありません。

それとここからオリジナルキャラがでてきます。


1年生 春 入部まで(宮永咲)

 清澄高校の側には川が流れており、それに沿うように桜が等間隔に埋められている。春になればそこは一種の名所にもなり、そして新しく清澄高校に入学する生徒達を歓迎してくれるのだ。また今年も多くの生徒がその桜を見ながら、またはそばを通りながら清澄高校へと向かっていく。桜に見とれて遅刻しそうになっている宮永咲もまた、その1人だった。

 

 

 

 危なく遅刻しそうだった。あんなところに綺麗に咲いた桜が並んでいたら、それはもう見るしかないと思う。お姉ちゃんに言われていたのに遅刻なんてしたら家族総出で文句言われちゃう。

 私はこの度お姉ちゃんと同じ清澄高校に入学した。もともと他の学校に強い希望もなかったし、お姉ちゃんが高校生になってからある意味いい方へ変わっていくのを見て、私も変われたり、いや変わりたいって思って選んだ。お姉ちゃんがいうには高校生になると世界観が変わるっていうけど、何がどうしたらお菓子好きでぼけっとしたり、急に真剣になったりと掴みどころのない人が変われるんだろう。

 

 昇降口で名簿をもらい、自分の教室に入る。もう人がいっぱいいて、中にはあれこれ喋っている人も。これは出遅れたのかもしれない。そう思うとなんか気落ちしちゃう。仕方なく自分の席に座ってカバンを机横のフックにかけて、視線を前に戻すとなんかすごいのに目がいった。そしてどういうことだろって感想を持った。なんでこの人、もう寝てるんだろう。とか、赤く目立つリボンがすごく可愛いけど印象強すぎるとか。そんなこと思った時に先生が入ってきて。なんとか起こさなきゃって思って、手を伸ばしてその人の背中に触れた。それがあったからかゆっくりと起き上がって、私を見た。とても綺麗な顔立ちしてるなって。それが第一印象だった。

 

「なんか用?」

「あ、え・・・先生が来たから起こしたほうがいいかなって」

「あー、ありがと」

 

 その子は無愛想にお礼を言って、前を向いた。はっきり言って怖い。

 

 入学式と簡単な学活が終わって今日のところはおしまいって感じかな。でもなんかずっと緊張しているのかな、あんまり実感が湧かない・・・けど、これからだもんね。高校生活を満喫して私も変わるんだ!

 

「あんた、表情がコロコロ変わってほんと飽きないわね」

「ひゃー!!」

 

 突然声をかけられて思わずあらぬ声が出ちゃった。恐る恐る前を見ると私の声がうるさかったのか、手で耳を押さえながら不機嫌そうな前の子がいる。どうすればいいのかわからなくてお互いに見てるだけ。でも、本当にこの子綺麗な顔立ちだなー・・・

 

「驚かせて悪かったわね。あんたがなんとなく気になって。気分害したなら謝るわ」

「う、ううん!そんなことないよ!私も急だったからつい。こちらこそごめんね」

「あんたが気にしてないなら別にいいわ。さっきの自己紹介で話してたけど、あんた宮永っていうのよね」

「うん、宮永咲です。えっと、ごめんね。自己紹介の時テンパってて他の人の話、聞いてなかったの」

 

 本当に何言えばいいかわからなくて、ずっと考え込んでいたから何もわかってない。本当にごめんなさいしか言えないよ・・・それを聞いたら、あっちはプッと笑いだして。

 

「笑わなくていいじゃん!」

「ごめん、そんなつもりはなかったけど面白くて・・・私の名前は博麗霊夢よ。改めてよろしく」

「博麗さん・・・」

「あー、名字は慣れないから名前でいいわ。私もあんたの事、名前で呼ぶから。それでいいわね?」

 

 なんかこう、有無を言わさずどんどん話進めていくのすごいな。横暴に思えるかもしれないけど、私には羨ましいことだよ。

 

「うん、それでいいよ。えーと、霊夢ちゃん?」

「ちゃん付けされたのも初めてよ・・・やっぱあんた面白いわね」

 

 なんだかんだで私の高校生活で一番初めて友達になった人は凛としていて、それでいてなんか掴みどころがなさそうな自由っぽい霊夢ちゃんだった。

 

 

 

 入学してから1週間。授業が始まってようやく普通の学校生活になったって感じに。私は文系ならついていけるけど、理系がなぁ。その点霊夢ちゃんはどの教科もトップクラスの実力の持ち主だった。もし都会だったら本当にすごい学校に行ってるんだろうなぁ。でもご飯食べてる時はガサツっぽく見えるけど。というか現在進行形でご飯頬張っているのはなんだかなぁ。見てるのもあれだし、話題変えよう。

 

「そういや、もーすぐ部活決めないといけないね」

「あー、そうね。もうそんな時期ね」

「霊夢ちゃんは決めたの?いろんなところ見学して声かけられてるよね?」

「もう決めてるわ。だから他に参加してただけよ」

「へー・・・ってもう決めてたの!?」

「咲にしては反応早かったじゃない。その反応はグレイズぐらいよ」

「よくわからない単語出さないでよ。どこにするの?」

「麻雀部よ。私の従姉がそこにいて、部員が足んないから入ってくれってせがまれてるのよ」

「え・・・麻雀部」

「なに、なんか気に触ることでも言った?」

「ううん、私のお姉ちゃんも麻雀部にいて誘われてたから・・・こんなことあるんだね」

「あんたのお姉さんがいるの知ってたわよ。それも従姉から聞いてたし。だからあんたに声かけたってのもあるし」

 

 へぇ〜・・・そうだったんだ。お姉ちゃん、そんなこと一言も喋ってくれなかったよ!もう、そういうことなら前もって教えてくれればなぁ。というか霊夢ちゃんもさっさと言ってくれればいいのに。

 

「言っとくけど、あんたが従姉経由で知ってただけでそうでなくてもあんたとは友達になってるわよ」

 

 霊夢ちゃんが笑顔で言ってくれた。ずるいなぁ、そう言われると何も言い返せないし、ちょっともった不満がどっか言っちゃったよ・・・

 

「ということで今日、いくわよ。麻雀部」

「うん・・・って私も?」

「当たり前じゃない。どうせ咲は決めてないんでしょうに。どうせだったら部活も一緒にやればいいじゃない。私もあんたのお姉さん気になるし、咲もうちの従姉見られるし、姉妹揃って同じ部活ってのも悪くないでしょ」

「それもそうだね。じゃ、放課後だね」

 

 部活のこと、お姉ちゃんになんにも言ってないけど大丈夫かなぁ。

 

 

 

 全部の授業が終わって、霊夢ちゃんと一緒に麻雀部の部室がある旧校舎に足を運んだ。前のものってだけあって木造建てでところどころギシギシいってる。霊夢ちゃんはもう場所がわかっているのか躊躇うことなく進んでくれる。そして階段を上がった先に大きな扉の部屋までたどり着いた。

 

「なんか前までは教室が活動場所だったらしいけど、昨年度の結果と部長さんの努力で特別教室に移転したそうよ」

「へぇ・・・あそこに欠けてるけど看板からして元々は図書室みたいだね」

「そしたらそれだけの広さが期待できるってことね。それじゃ、入りましょ」

 

 霊夢ちゃんが扉を開ける。すんなり開いて結構ガバガバだなぁって思うけど霊夢ちゃんに続いて中に入っていく。中は元図書室ってだけあって広かった。麻雀卓が2つ、それに休憩スペースみたいになっているセットがあって、あれはパソコンかな。すごいな、中学校じゃ絶対になかったものばかりだよ。それにベッドって・・・ここで寝るのかな。

 

「これはすごいわね。何でもそろってるじゃない」

「ほんとだね・・・やっぱり高校って違うんだね」

「で、誰もいないか。開けた私が言うのもあれだけど、適当すぎない?」

「それは・・・私も思う」

 

 霊夢ちゃんがちょっと申し訳なさそうな表情で言ってきて、私も思わず苦笑いした。そこから会話が止まって、どうしようか悩んだ。2人で顔を見合わせて、霊夢ちゃんが「早苗かそっちのお姉さんが来るまで待つしかないか」って言ってくれて待つことにした。

 

 待つこと15分。のんびりと待っていると扉から音がする。ノック音が3回、やけに丁寧だなって思ったら扉が開いて。その開いた先にはちょっと髪の長い、左右2つ縛りしたメガネの女の子がいた。そのままスカーフの色まで目がいって、同じ色・・・だから同じ学年ってことだよね。

 

「あー、悪いけど私達はここの部員じゃないから質問には答えられないわよ」

「そうですか。そうすると私と2人は同じ目的ということですか?」

「えっと、麻雀部の見学ってこと?」

「そうですね。まさか他の人もいたなんて。姉さんも言ってくれればよかったのに」

「姉さんってことは、あんたの姉もこの部活にいるってこと?」

「ええ。竹井久っていうんですが、ご存知ですか?」

 

 確か部長さん。よくお姉ちゃんの会話に出てきた人の名前。というとこの人は部長さんの妹さんってことだね。だけど、確か部長さんは私のお家に来た時に会ったことあるけど・・・こんな丁寧というか失礼だけど堅物って感じじゃなかったような。

 

「あんたも早苗がよく話している部長のその妹ってわけね。私はあんたのお姉さんと一緒に活動している東風谷早苗の従妹の博麗霊夢よ。で、こっちが同じく」

「部長さんと一緒にいる宮永照の妹の咲です。えっと」

「私は竹井悠です。よろしくお願いします」

「よろしく。でも私のイメージだとあんたのお姉さん、かなりフランクだったと思うけど。あんたからはそんな気、微塵もしないわね」

「霊夢ちゃん!あんまりズカズカ話したら失礼だよ!」

「いいんです。あの姉がそもそもフランクすぎて私に苦労ばっかりさせて、こうなっただけなので。ほんとに適当に生きてたらだめだと言われているのに、全く。もし2人に姉が迷惑かけていたら先に謝っておきます、ごめんなさい」

 

 竹井さんが頭下げてきた。別に何もないのに。なんか丁寧というか、もう完全に兄弟姉妹の被害側の典型例だよ、なんか可哀想。

 

「大丈夫よ、私達はそんなのないから。そんなに畏まらないでほしいわね」

「そ、そうだよ。同じ学年だしもっと楽にしていこうよ」

「すみません。なんか小中、これで暮らしていたので染みついてて」

 

 竹井さんにも座ってもらって、その後はずっと妹勢は苦労するんだよね・・・なんて話が続いた。お互いの姉に対するあれこれをしゃべっていると面白かった。竹井さんもなんだかんだいって部長さんのこと好きなんだって伝わるし、同じように霊夢ちゃんもそんな感じ。なんだかすごく親近感湧くし、もっと仲良くなれそう。そんな話で盛り上がっていると扉の向こうから声が聞こえてきた。この声がたぶん、今まで私達が盛り上がっていた対象の3人のはず。

 

「久のせいでまた余計なことに付き合わされた」

「まぁまぁ、クラスと学校に貢献したと思えばいいじゃないですか」

「そうよ。そのおかげでこんな広い部室もらえたんだから。私に感謝してよね~」

「久の手柄みたいに言われると不服に感じる」

「それは同意します」

「ちょっと、ひどいじゃない・・・って、いいお客さんがきてるわね」

 

 3人はようやく私達に気づいたみたい。お姉ちゃんも気づいたみたいでもっていたお菓子をポキっと折ってもぐもぐしている。妹でもそれは恥ずかしいよ。

 

「姉さん、待たせすぎです。人を呼んでおいてこれはひどいです」

「ごめんごめん。ほら私、学生議会長じゃない。いきなり学校のために活動しなきゃいけない時があってね。それがこのタイミングだったのよ」

「それでも連絡手段はあるはずです。毎度言いますけどもっと部長としても議会長としても上の役職を持っているならしっかりと自覚してですね」

「わかってるわよー、それはまた今度聞くわ。それは置いといて、悠。来てくれてありがと。歓迎するわ」

「はぁ・・・それはありがとうございます」

 

 竹井さん、完全に呆れてめんどくさいって顔してる。もうこれが日常茶飯事なんだろうなぁ。そしたら部長さんが今度はこっちに向いてて、私と霊夢ちゃんに話してきた。

 

「あなたが早苗の従妹の博麗さんね。それとこっちが照の妹の咲ちゃんね。改めて、麻雀部部長で悠の姉、竹井久よ。これからよろしくね」

「よ、よろしくお願いします」

「よろしく。で、早苗に頼まれたんだけどこのまま入部届出せばいいの」

「そうね~、それはそれでありがたいけど何もしないで入るってのもね。麻雀部なのにお互いの実力もやり口も知らないで入部ってのもつまらないでしょ。入部前に一局打ってみない?」

「え、麻雀するんですか。私達、疑われたりしますか?」

「いやいや。お互いがそれぞれ家族いるんだから私達も妹のことはわかるけど、それ以外はわからないじゃない・・・例えば悠は前年度中学校長野選抜だから折り紙付きだってのも私は知っていても2人は知らないでしょ?」

「え、竹井さんってそんなにすごいの!?」

「あんまり言いたくありませんが。それも姉さんに巧みに乗せられて大会に出たのが運の尽きでした」

「いいじゃない、箔ついたんだし。そして博麗さんと咲ちゃんは聞いた話だと、去年の冬にここの2人にそそのかされて交流大会でたって聞いたけど、私達姉妹は照と早苗が撮ってくれた映像と牌譜だけしかわからないから実際に見てみたいってのもあるわ。」

 

 そういえばお姉ちゃんと近所のお兄ちゃん、京ちゃんと一緒にそんな大会出たなぁ。ただ単にお姉ちゃんとお兄ちゃんのデートもどきするための口実に使われたぐらいだと思っていたけど。こんなところでつながるなんて。

 

「あったわね、そんなの」

「そうですよ霊夢さん、思い出してくれましたか。寒い!の一択で引きずりだすのが大変だったんですから」

「だって事実寒いし、めんどくさいじゃない」

「あはは・・・とにかくです。霊夢さんはあの時、東京の大学リーグで戦っている人に勝ってたりするんですよ!」

「そうなの?そんなの覚えてないわよ」

「それに咲もその大学リーグ所属の人と戦って勝ってるんだよ」

「え・・・そうなの?知らなかった」

 

 あの時は麻雀楽しんでいたからあんまり対戦相手とか気にしなかったけど、強い人もいたんだ。

 

「すごいです。現役大学生に勝つなんて」

「あー、ホント適当にやってたら勝ってたようなもんよ。さらさら覚えちゃいないわね」

「そんなわけだから・・・お互いを知るために打ちましょ。こっちから照、だすから」

「いや、そこでさらっと長野県新人戦個人1位を出さないでもらえますか?」

「しょうがないじゃない。照が盤面にいることが一番力量は借りやすいんだから。ほらほら、さっさと卓につきなさい」

 

 部長さんがどんどん先に進めてしまった。私は何も言えなくてお姉ちゃんのほうを見たら、ドンマイみたいな顔してた。もう、諦めるしかないんだね。

 

「ごめんなさい、姉さんは大体こんな感じなので」

「まぁ、いいわよ。この手は別に嫌いじゃないわ。それにここに来たのは自分の意思だから。せっかくだし打ちましょ」

「霊夢ちゃん、強いなぁ。じゃあ私も頑張るよ」

 

 

 

 麻雀卓に私、左に竹井さん、右に霊夢ちゃん、そして対面にお姉ちゃん。そういやお姉ちゃんともやるの、久々だな。そもそも他の人とこうやって打つのもさっき言った大会以来だから。なんか緊張しちゃう。どうしよう、勝っていいのかな。これで変なことして霊夢ちゃんとかに嫌われたら。

 

「咲、これからは自分の好きに打っていいんだからね。他の人の顔見てびくびくする必要、ないから」

「どういうことよ。なんか意味深じゃない」

「別に大したことじゃないよ。私と咲にしかわからないことだから、気にしないで」

「ふーん、そこで供託とかしなきゃ別にいいわよ」

 

 お姉ちゃん、優しいなぁ。霊夢ちゃんが疑っちゃうのもわかるけど、すごく嬉しい。うん、私のやれることをやろう。

 

 東一局。基本、お姉ちゃんは様子見をするに違いない。ということはまず警戒するのは竹井さん。霊夢ちゃんはよくわからないから竹井さんが経歴上、一番強いはず。配牌も悪くないし、このまま進めよう。数巡後、一向聴まできたけどなんか嫌な気がする。捨て牌を見て、とりあえず大丈夫そうなものを選ぼう。

 

「リーチです」

 

 そんなことを思っていたら竹井さんがリーチかけてきた。これは警戒。とにかく現物を捨てておこう。

 

「ツモです。リーチ・ツモ・平和で20符3翻で1600-800です」

 

 開かれた竹井さんの手牌は綺麗に作られたものだった。こんなに鮮やかに作ってくるなんてすごいな。って見惚れている場合じゃないよ。私もアガるためにしっかりしないと。

 

 東二局。さっきより流れがよくないなぁ・・・とりあえず最短でいけるやり方で。

 

「ポンです」

「それ、チーです」

 

 竹井さんがどんどん鳴いてくる。え、さっきと毛色が違う。とするとそろそろテンパってる可能性があるよね。どうしよう・・・ここらへんとか。

 

「ロンです。南・チャンタ・ドラ1です」

 

 ひえー、当たっちゃった。これもまた綺麗な手を作ってる。ほんとに実力者なんだってまじまじと見せられちゃってる。とにかくどうにかしないと。

 

 それから局が流れて南入。もう東場が終わっちゃった、まだ何もしてないのに。心がしょんぼりしちゃうな。ちらっと竹井さんを見るとすごい不機嫌そうな顔してるし、霊夢ちゃんもむすってしているような感じだし。お姉ちゃんは完全に様子見だし。

 

「すみません、ちょっといいですか」

「別にいいけど、えっと竹井妹」

「宮永先輩、その呼び方はやめてください。普通に悠でいいので。それはそれとしておいて、あなた達はそんなものなの?私が思っていたのと違うのですが」

「はぁ?別にいいじゃない。麻雀はそういうゲームでしょ」

「そうかもしれませんが手加減されているのは不服です。さっき言ってましたが、姉さんの持っていた映像と牌譜を見せてもらったんです。それを見る限り、2人がもっとできるのは知っています。宮永先輩に手加減されるのは仕方ないかもしれませんが、2人にされるのはむかつきます」

「あー・・・別に手加減してるわけじゃないわ。私も早苗に教えてもらってやってるだけだからわからんところがあるのよ。でもね、そこまで言われてできません、ごめんなさいって引き下がれるほど私、おしとやかじゃないわよ。いいの、やるなら徹底的にやるわよ」

「構いません。こちらとしても望むところです。それと宮永さんも本気、出してください」

「え、私はちゃんとやって」

「もっとできますよね。知っているんですよ、宮永先輩とは違った異常なアガリしていたことを。それを出してください。そうじゃないとこの先、あなたにどう言っていいかわかりません」

 

 竹井さんは凛々しく言っているように思えるけど、泣きそうな感じもする。私がそうさせちゃっているんだって思うと、私も心が苦しい。

 

「咲、もう一回いうよ。ここにあなたのそれを否定する人も拒絶する人もいない。やっていいんだよ」

「お姉ちゃん・・・」

 

 まだ決めてなくて宙ぶらりんなのは私だけだ。だめだ、それは。逃げちゃ、だめだ。

 

「わかった、竹井さんががっかりしないように・・・やるね」

 

 私の心の奥から何かが焚き付いてる。すごく燃えてくる何かがこみあげてくる。これを絶やしちゃいけないんだ。そんな私を見てか、竹井さんも霊夢ちゃんもお姉ちゃんも表情が変わった。

 

「へぇ・・・いいわね、咲。あんたがそんな表情するの、初めて見たわ」

「それです、私が知りたかったやつです。ようやくやりごたえあります」

「私のやれること、だすからね」

 

 南一局。早くも親の霊夢ちゃんから異常な何かを感じる。それを他の2人も感じている。これがもしかしたら霊夢ちゃんの実力ってことになると相当凄いってことだよね。でも打ち方も捨て牌も滅茶苦茶。まるで読めないよ。なんだろ、これ。

 

「悪いわね、リーチ。オープンよ」

「な、なんでオープン!?」

「なんでって、私がやりたいからに決まってるからじゃない」

 

 竹井さんがびっくりしてるのもわかる。しかもその手牌、役なんにもないよ。え、どういうこと?

 

「不思議、まったく意図もわからない」

「そりゃ私もわかってないから気にしないで。でもこうするのがいいって思っただけよ」

「意味不明ですよ。こんなのわけがわからない」

「わかってもらう気もないし、わからせる気もないわ。でもこれが私よ」

 

 それから3巡して、霊夢ちゃんが山牌からもっていって、牌をひっくり返してニヤッと表情を変えた。

 

「悪いわね。あがっちゃった」

「ほんとに意味不明です・・・」

「あらら、早苗。あんたの従妹、相当捻じ曲がっているわね」

「この自由さが霊夢さんのウリなんです。私の常識の範囲外ですから」

「こら、そこ。人のこと範疇外みたいに言わないでくれる?」

 

 とか霊夢ちゃんが先輩達に言ってるけど、これはそう思えちゃう。一見、ただのオープンリーチだけど、本当にすごいもの見ちゃったんじゃないか。私、ある意味運がいいのかも。お姉ちゃんもナニコレみたいな表情してる。それ見たの、お母さんと一緒に打ってた時に見せた以来だ。竹井さんもなにかショック受けているのか自分の手牌が全部見えてる。その中に霊夢ちゃんのアタリ牌を4つももってる。そりゃオープンだから捨てないだろうけど、そんなに当たり牌くるものかな。それを躱して自模る霊夢ちゃんもすごいけどさ。

 

「さぁて、次。やりましょ」

 

 次の局も霊夢ちゃんのやりたい放題だった。ポンとチーで鳴きまくって裸単騎までもっていくし、しかもその待ち牌が白って。どういうことなの。

 

「あら、またアガったわね。もうけってところかしらね」

「へー、なんか変わってる。これはこれで面白いかも」

「私の常識も変わりそうです。どういうことですか」

「わからないのよね。勘というかなんというか。さっき早苗も言ったけど私がやりたいようにすると常識外かもしれないわ。でも妙にしっくりくるのよね」

 

 こうやって動ぜずに自分持ってるのはすごいな。感心しちゃいけないけど私もそれぐらいの気持ち持たないと。ここで負けるわけにはいかないんだ。

 

 そしてオーラス。霊夢ちゃんもよくわからない打ち方で場が結構荒れてるけど竹井さんがなんとかあがったり、私もあがったりでようやくここまで来た。私の親だから、ここでなんとかしたい。配牌して、理牌し終えるとようやく私向きの手牌になった。ここで仕掛ける。数巡してようやく材料もそろった。竹井さんから出た牌で始めよう。

 

「それ、カン」

 

 捨てられた牌を拾い、横に4つ、牌を置く。そして嶺上牌を引く。これじゃない、けど確実に感じている。もう一回呼ぶ声が。

 

「もう一回、カン!」

「え、まだあるんですか」

「うん、だから・・・咲かせるね」

 

 私の言葉に竹井さんはクエスチョンマークを浮かべるような表情しているけど、お姉ちゃんは笑顔でいてくれている。もう一回、嶺上牌をもってくる。これだ、これが最後の牌なんだ。咲かせるための、牌。

 

「ツモ。嶺上開花、ドラ8。倍満です」

 

 咲いた。久々に咲かせられた。私の一番大好きな花を。

 

 数秒、シンとした時間が過ぎて、あれ・・・と思って周りを見ると竹井さんは目をまん丸にして小さくパチパチって拍手してくれてる。霊夢ちゃんは台に頬杖をつきながらまじかーって苦笑いしてる。お姉ちゃんは満足そうに笑ってくれている。それらを見て、私はすごく満足した。

 

 

 

 対局が終わって、一息。お姉ちゃんから飲み物もらって、全員でまったり。東風谷先輩の作ったクッキーがおいしかった。話は概ねこの部活についてのことだった。お互いの試合のことをしゃべるのかと思ったけどそういうわけじゃないみたい。

 

「という感じね。うちはゆるい部活だけどしっかり活動したいから、そこのところはよろしくね」

「わかったわ。じゃあ改めて入部するわ。で、どう呼べばいいの?」

「あー、どうしよかしらね。早苗、どうすればいい?」

「霊夢さんは基本フランクですからね。うーん・・・先輩つければいいんじゃないですか?」

「ま、そっちがいいんならそうするわ。よろしく久先輩、照先輩」

「なんかこそばゆいわね。私達、先輩って呼ばれる機会あんまりなかったから」

「慣れてくしかないよ。改めてよろしくね博麗」

「そうね、よろしくね。霊夢」

「呼び方はどっちでもいいけど私も慣れないといけないわね。それと先輩とか呼んだことないから、そっちもね」

「で、悠。どうするの?」

「入りますよ。そのために清澄来たようなものですし」

「そう、ほんとごめんなさいね。私の我儘につきあってもらって」

「もう慣れました。でも、こうやって同級生にすごいのが2人もいたのでよかったです」

「そういってもらってなりよりです。私も霊夢さんを誘って正解でした」

「そうだね。最後に咲、どうする?」

「もちろん、私も入る。今、心から皆と麻雀やりたい、勝ちたいって思ってる。だからがんばりたい」

「なら決定ね。よろしくね、咲ちゃん」

 

 すごく和やかな時間だった。ここだったら私もやっていけるって思える。それだけ強い何かがここにある。

 

 次の日、教室で私と霊夢ちゃんはお昼ご飯を食べようと私の机にお弁当を置いた。お弁当を開けようかと思ったら、近くに竹井さんがいた。

 

「その、私も混ぜてもらっていいですか?」

「当たり前よ。どうぞ」

「うん、今スペース開けるね。えっと、竹井さんの椅子・・・」

「名前で。悠って呼んでほしいです。私も2人のこと、名前で呼びたいですし」

 

 その言葉に霊夢ちゃんは笑顔になって、私もなんだか心がポカポカするような温かさを感じる。

 

「うん、もちろんだよ悠ちゃん!」

「なんだかこの歳でちゃん付けされるのは恥ずかしいですね・・・」

「咲のは悪気なしだから慣れるしかないわ。私も慣れたから悠も慣れるわよ」

「そうですね、慣れます。改めてこれからよろしくお願いします、霊夢、咲」

「こちらこそだよ!」

「あの姉どもより輝かしいところみせつけてやりましょ」

 

 こうして私には2人のクラスメイトとチームメイト、そして大切な友達ができた。お姉ちゃんが高校に行って変わったのも部長さんと東風谷先輩に出会えたからだって言ってた。私にも同じように大切な友達がここにいる。だから、2人と一緒にこれから頑張りたいって心から思えた。

 




★宮永咲について
〇前の話でも書きましたが、この作品における宮永家は仲が良好なので、咲は麻雀自体は嫌いではありません。ですが、麻雀自体をそこまでやってたわけでもないです。
〇家族麻雀設定が途中でなくなっている世界観なので、副次能力としてあった±0の修正能力はありません。嶺上開花とかカンの類はそのままです。

★博麗霊夢について
〇霊夢の能力【空を飛ぶ程度の能力】は捉え方が色々あると思います。ですのでまだ決定ではありませんが、当面は自分のやりたいようにやるとすごいことになる、ぐらいの認識でいます。早苗といい、なかなか能力を活かしきれないような。
〇霊夢自身のことは次回の話で盛り込みます。

★竹井悠について
〇彼女は本作品のオリジナルキャラです。久の妹です。見た目は久と一緒です。が、ちょっと身長を小さくて常に左右二つしばりの髪型で眼鏡をかけた真面目さんです。
〇彼女の能力は後日、詳しくやります。実力は作中にもありましたが中学校の長野県選抜に選ばれているのでそれなりに高いです。
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