咲方Projet‐Sakihou Project‐ ~幻想郷が咲の世界入り~   作:みんせい

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今回は文章が長くなってしまいました。この話における大会の形も記載した結果です。
特に団体戦は変更している点があります。文章で伝えられればいいんですが。

ちなみに前回投稿した幕間(風越)の話にある大会の話と合わせてもらえるといいかなと思います。

今回、新たな学校とキャラが出てきます。


1年生 初夏 合宿(竹井悠)

合宿。それは部活動においては特殊なイベントだろう。それに対する思い出は人それぞれに違いない。結果的に面白かったと思う人もいれば、まるで地獄のようなものだったと答える人もいるだろう。だが、合宿を経て実力や考え、意識の向上があるのもまた事実で。ここ、清澄高校麻雀部は創部して初めての合宿を迎える。それが笑壺になるか苦壺になるか。それこそ人それぞれだろう。もちろん竹井悠もまたそのうちの1人であることも。

 

 

 練習試合が終わった次の週の初め。私達は先生に呼ばれて部室に集まっていました。昨日姉さんが「きっと合宿のこともだけど、大会についても触れると思うのよね〜」なんて言っていたので、今日はミーティングになるんでしょう。そして今、こうやって皆さんが揃って先生から説明があるわけなんです。

 

「それじゃ、これからのことを話しましょうかねぇ」

「合宿のことでよろしいですか?」

「いえ、違いますよ。久さん、早苗さん。これを配ってくれる?」

 

 姉さんと東風谷先輩からそれぞれプリントを渡されて、最初の表紙を見てみると『長野県大会に関する重要書類』と書かれていました。これが姉さんの言っていた大会のことなんでしょう。でも大会は中学校とどう違うのでしょうか。

 

「それじゃあ、プリント見ながら進めるわね。まず、初日と2日目で団体戦を行います。ここは日程を見て把握しておいてくださいね」

「ひゃー、団体戦って時間食うのねー。待つのめんどくさそ」

「霊夢さん、相変わらずですね。スクリーンやパブリックビューイングで観戦できるので意外と楽しめるんですけど・・・まさか寝たりしませんよね?」

「さすがにそこまでじゃないわ。でもめんどそうなのは変わらないわ」

「でも私達もイメージできないものもあるから、なんとも言えない」

「うちとしても初めですからねぇ。団体戦も個人戦もそうだけど、事前申請してチェック受けたものであれば持ち込みは可能ですから」

 

 へぇ、飲み物とか持ち込めるんですか。中学時代は不可でしたので、これは高校生の特権って気がします。こういったことで実感するというのもなんか今までと違います。

 

「では続けますよ。団体戦は基本5人1組でメンバーを選び、その中で順番を決めます」

「え、そしたらこの中から1人外れるってことですか!?」

「いえ、そこに控えの人が1人入れてもいいのです。なので最高で6人まで登録できますね。控えの人は対戦前のオーダー表提出前に元々登録されていた人と交代もできます。ただし事前に決めた順番をいじることはできません」

「ということは最初のメンバーの順番固定で、試合ごとに控えと元のメンバーの誰かと入れ替えが可能ということですね」

「悠さんの言う通りです。これが基本になります」

「なるほど・・・よかったー、せっかくみんな頑張ってるのに誰かは外れるのは嫌だもんね」

「咲さん、そう言えるのも事実ですけどうちは逆にカツカツってことにもなります。また風越みたいに部員が大勢いるところもあるのであまりそう言った考えを持たない方がいいですよ」

「そうね、早苗の言う通りだわ。うちは全員出れるってメリットあるけど、逆の言うと安心感で競争がないわ。その点は風越の方がハングリー精神高いのよね」

「わわっ!確かにそうですね。東風谷先輩と部長さんの言う通りかも」

 

 確かに咲の言うことはわかります。私も一安心しますし。どっちがいいかと言われると悩みますが、うちはここにいる人達で戦い抜くってことですもんね。これはこれで大変だと思います。

 

「これでいけばよかったんですけどねぇ」

「まだ何か?」

「今年から全国大会でのルールが変わりましてね。それが県大会でも決勝で適応になるそうなんです」

「え・・・先生!それってどういうものですか!?」

 

 あの姉さんが妙に慌ててる。この光景見るのは姉さんだけにホント久々です。と言うことは先生がおっしゃることはまだ未出の情報ってことになりますね。

 

「県大会決勝、そして中部大会以降は3人1組のチームを2つ作って、それぞれで半荘を行い、2チームの合計点数で順位をつけるというものらしいです。変更理由は時間や負担軽減とか多くの人に打ってもらいたいとか、憶測はいっぱいありますねぇ」

「そうなんだ・・・より多くの人がいるチームが有利だね」

「それだけじゃないわ。本当の意味で総合力が試されるってことよ。うちなんかの人数が少ないところやエースと他の人の力量が離れているとだいぶ不利になるわ」

「なんでエースがいるところが不利になるのよ。別にそこは関係ないと思うけど」

「霊夢さん、従来の団体戦は1人半荘を2回行うんです。エースがそこで稼いで次に繋ぐっていうのがスタンダートな戦法なんです」

「つまりエースの打つ機会が減ったからってこと?」

「それだけじゃないわ。片方のチームに固めてももう片方のチームがダメだったら巻き返すのも大変よ。だから総合力っていわれちゃうのよね」

 

 姉さんの慌てっぷりは何か考えがあって、それがガラガラと崩れ去ったって感じでしょうか。相変わらず抜け目ないと思う反面、こんなこともあるのかと思います。でもそこまで慌てる必要あるのでしょうか。

 

「質問です。そのルールに変わったとして、うちに何か問題でもあるんでしょうか?人数もちょうどいるわけですし別にいいような」

「そうだよね、うちはそんなに気にしないような」

「私達6人を半分にすればいいんでしょ?簡単に思えるけど」

「1年生はそういう感じになるわよねー・・・戦力を2つに分けるていうのは予想以上に困難なことなのよ」

「確かに私達は1年3人、3年3人。区切りはいいですね。だけどこれをどう分けるかというのは色々考えちゃいますね」

「とりあえず私と久が分かれるのは確定だね」

「やっぱそうなるわねー・・・配置も考えないと」

 

 そうなるに決まってるじゃないですか。長野県個人1位と3位が同じグループは良くないですよ。東風谷先輩も7位ですから、やっぱりうちは恵まれています。

 

「私がどっちに入るかでバランス考えないといけないですもんね」

「早苗はこっちだよ。早苗にどでかい手がきたらそのまま引き継ぐだけだし、そうじゃなかったら私が盛り返せばいいから」

「あら、私の方が調整は上手いから早苗はこっちよ。というより照は1年抱えてフォローする側でしょ」

「それこそ計算できる部長の久がやるべき」

 

 あれ?姉さんと宮永先輩が睨めっこを始めました。間に東風谷先輩が入って止めようとしてます。こんな反応する姉さん、初めてかも。本当にここは新しいことばかりですごいところです。

 

「はいはい、2人で勝手に話進めないの。いいですか、それを含めて合宿の成果で決めたいと思っています。それだったら異論はないですよねぇ」

「私はいいですけど、照はごねそう」

「私はごねない。いちゃもんをいつもつけるのは久」

「全くねぇ・・・それじゃあ、合宿のこと話すわね」

 

 この後はなんかギスギスした姉さんと宮永先輩がなんとも言えない空気作ってくれましたが、それを先生と東風谷先輩が上手く軟化させながらつつがなく説明と部活が終わりました。

 家に帰ってきてから気になったので姉さんに聞いてみました。

 

「姉さん、なんで宮永先輩とあんな感じに?」

「あー、あれ?あれは半分ネタみたいなものよ。あの変更は本当に予想外だったからどうしようかと思ったけど、上手いこと照も合わせてくれたわ」

「ということはあれは演技だったと言うんですか?」

「いや、驚きは本当よ?チーム分けは半分アドリブね。あーなったからには私と照は分けざるを得ない。でも早苗の扱いで早苗自身もあなたたちにも影響は強く出るじゃない」

「そうですか?早苗先輩はわかりますが、私達にも出るのですか?」

「出るわよ。どう出ると思う?考えてみて?」

 

 うーん・・・私たちが分けるとなると1:2になりますね。でもどう分けたってあまり変わり映えしないような。先輩が多くいる方に入るか、それとも1年が主力になりうるのか。その違いぐらい。そもそも大将格がそれぞれいるわけですから純粋に1軍と2軍になるわけでもありませんし。

 

「やっぱりどっちに割り振られたとしてにうちじゃ大した変化があるように思えません」

「悠はそう感じとるのね。そう思っているならそれでいいわ」

「含みがある言い方でなんか嫌です」

「まぁ、あなた含めてうちの1年は規格外ってことよ。普通の1年なら先輩が多いところに入れられたら萎縮したり、先輩からのプレッシャーって受けるもんよ。逆に1年が多めのところに入れられたら、あなたは主力として活躍しなければならないってプレッシャーがあるもんよ。それを感じなかったり考えないってことは貴方達は大丈夫って思えること」

 

 んー、そんなもんでしょうか。霊夢はもう空気とかそういった考えを持たない人ですし、咲は今となっては麻雀やれればなんでもオッケーな人になってますし。私は・・・どうなんでしょうか。

 

「ちなみに一番動かしやすいのはあなたなのよ?大丈夫かしら」

「どうでしょう、正直実感も想像も湧きません」

「ま、それでいいのよ。私はあなたに無理はしてもらいたくないもの」

 

 そういって姉さんは腰を上げて自分の部屋へと戻っていく。無理してほしくない・・・か。でも私も無理した姉さんを見たくないんですよ。

 

 

 

 あれから数日、合宿の日です。最寄りの駅からバスでいける旅館ということでしたが日にちも旅行シーズンじゃないおかげか、あまりいないみたいです。部屋に案内されると同時に咲と霊夢が「温泉行こう!」って言いはじめて、すぐに捕まりました。まぁ、温泉はいいんですけどこんなのが合宿でしたっけ?

 

「悠は固いわねー。こんないい旅館なんだから入らないなんてありえないわよ」

「悠ちゃん、なんか小難しい顔してるけどなんかあったの?」

 

 あれ私、そんな顔してたんですか。霊夢も「そうよ」なんて言ってくるもんですから相当だったんでしょうね。とりあえず姉さんと話した内容を2人にしゃべったんです。

 

「あー、なるほどね。久先輩が言いたいことはわかるわね。確かにそう思ったとしてもおかしくないんじゃない?」

「私達の場合、先輩というよりお姉ちゃんたちだから身内っていうのもあるけど」

「お二人は今の話聞いて何も思わないんですか?」

「別にー?相手は身内じゃなくて目の前に映る人たちじゃない。そんなの考えても無駄よ」

「うーん、確かに考えちゃうかもしれないけど。私は麻雀打てる方が嬉しいな」

「やっぱり。私が思ってる通りでした」

「そうやって予想出来ているんなら、あんたらしくやればいいんじゃない」

 

 霊夢は簡単に言いますね。その図太さはやっぱり羨ましいというか、別物ですね。

 

 

 

 温泉の後は泊まる部屋とは別に麻雀を打つ部屋が用意されていて、そこで本格的なトレーニングを行うみたいです。といってもやることは普段とあまり変わらない気がしますが。これなら部室で行うのと変わらないのでは。

 

「そろそろ来る頃だと思うんですけどねぇ」

「来るって・・・誰か呼んだんですか?」

「えぇ、今回は私達の学校だけでなく他の学校もお呼びしたんです」

「へー、意外。どこを呼んだんですか?」

「諏訪聖稜高校ですよ。そこならいいトレーニングになるでしょ」

 

 その高校名を先生がおっしゃった瞬間、姉さんと宮永先輩の表情が変わりましたね。何かあるんでしょうか。

 

「諏訪聖稜がくるんですか、あんまりよくない気がしますね」

「私も久に同意。先生、そこは本当に良くないです」

「もう決まりました。あなた方からしてもいい練習になるでしょう?」

「お姉ちゃん、なんでそんなに嫌がっているの?」

「姉さん、諏訪聖稜ってありましたっけ?私、知らない学校ですが」

「そりゃそうよ。だって男子校だもの」

「で、咲はわかっていってるよね。一種の嫌がらせになってる」

「私にはてんでわからないわ。早苗は知ってるの、その学校」

「はい。昔から長野の男子でトップに立ち続けている名門校です。過去にはインターハイ優勝もしている実績たっぷりの学校です。私達は創部からちょくちょくお世話になっているんですよ」

「へぇ~、全国大会優勝とかすごいじゃない。で、今はしてないの?」

「ここ数年は残念ながら・・・でも今の3年生に全国トップクラスの選手が2名いるんですよ。この2人はプロチーム注目の選手なんです。といっても咲さんと悠さんはご存知だと思うんですけど」

 

 東風谷先輩が何か含みのある言い方をしますね。しかも姉さんと宮永先輩を見てはニヤニヤしてますし。んー、姉さんがこんな反応する男性ですか・・・あ、もしかして。該当する人が頭の中でヒットしたのでそれを挙げようとしたら、扉がノックされて仲居さんが来ました。どうやらあちら側が到着して入ってもいいかの確認だったようで。先生が二つ折りで返答して仲居さんが出て行ったと同時に男性がお2人入ってきました。丸坊主というよりスキンヘッドのおじいさんが前に出てきました。なに、この人。圧が半端ないですよ。

 

「おー、悪いな。道が混んでたもんで遅れちまったな」

「いえいえ、こちらが準備できる時間はあったので助かりましたよ。あなた」

「ちょ、待って!え、あなたって。この人・・・先生の旦那さん!?」

「そうですよ霊夢さん。この人が諏訪聖稜高校の顧問で私の夫の大日向勇二さんです」

「おー、これはまた威勢がいいやつだな。お前さんが東風谷の従妹の博麗か、よろしくな。そんでそこにいるのが宮永と竹井の妹か。いや、姉妹の仲がいいことはいいな!」

 

 なんでしょう・・・勢いがすごいというか、圧倒されます。咲さんもピー!って叫びそうな感じがして泣きそうですし。

 

「先生、困ってますよ。それに生徒も待っていますから」

「あぁ、申し訳ねぇ。そうだ、お前も挨拶しておいた方がいいだろ」

「そうですね、諏訪聖稜高校の麻雀部副顧問の森近霖之助です。よろしくお願いします」

「あー、霖之助さん!」

「ってあれ。もしかして巫女さん達かい?」

 

 相手の副顧問さん、なかなかのイケメンですね。って思ったら東風谷先輩が驚きの声を挙げてます。知り合いかなにかですかね。霊夢はさてなぁ?みたいな顔してますが。

 

「あら早苗さん、霊夢さんとお知り合いですか。それはよかったですねぇ」

「えぇ、ちょっと縁がありましてね」

「そ、そうですね。こんなところで出会うとは」

「そうねー・・・」

 

 なんでしょうね、この不可解な空気は。知り合いっていうわりにはなんか微妙そうですけど。そういえばこの前の風越でもアリスさんでしたっけ。彼女と出会った時も霊夢は妙な感じでしたね。

 

「知り合いが多ければやりやすいってもんよ。森近先生は面白い勘をもっているんだよ。お前さんたちの悩みも解決できるかもしれねーからよ」

「よろしくお願いしますねぇ。そういえばそちらの選手はどちらへ?」

「あぁ、今荷物整理させてる。もうすぐ来るはずだが」

 

 先生方の会話をされている時に何名かの男子がこの部屋に入ってきました。その先頭の人を見たらやっぱりとしか言いようがなかったです。そして姉さんがげぇ・・・みたいな顔をしているあたり、やっぱりねって感じです。

 

「先生、準備できました。皆、集めますか?」

「あぁ、頼む。と、もう顔見知りだがしっかり挨拶しておけよ」

「了解です。ということだ久、よろしくな」

「なにがよろしくよ。というかあなたは前からわかってたでしょ」

「もちろんだろ。というかお前、わかってなかったのか」

「わかるわけないでしょ~!私はヒロみたいにそこまで考えるほど頭がいいわけじゃないんだから!」

「どの口が言うんだか。っと、悠。元気そうだな」

「はい、お久しぶりです」

「悠。なによ、あんた相手の人知ってんの?」

「はい、この人は私の中学校の時の先輩、高遠博樹さんです」

「ということでよろしくな」

 

 まさか高遠先輩がやってくるとは。これは確かにやりごたえがある感じがします。というより高遠先輩がいるってことは諏訪聖稜高校のエースさんもいるってことですよね。そう思うと同時に高遠先輩の後ろからひょこっと顔を出してきました。

 

「博樹、そこに立たれると後ろが困るよ」

「お、悪いな。お前も挨拶しておけよ。これが今年の清澄1年トリオだそうだ」

「なんか清澄は縁があるよね~。僕は博樹と同じ学年の駒ケ根哲也です。よろしくね~」

 

 でました、今年の全国注目株。昨年の国民麻雀大会で長野県代表として怒涛の快進撃を生み出した張本人の1人。しかしなんか気が緩んだ人ですね、ネクタイもダルダルだし。そんなこと思ったら宮永先輩が前に出てきました。

 

「哲、言ってるよね。だらしないのはよくないって。ネクタイもしっかりしめて」

「だって苦しいし。僕はしなくてもいいと思ってるんだけど」

「ダメ。将来苦労するのは哲なんだから。今のうちに慣れておくべき」

 

 あれ・・・?なんでしょうか。この熟年夫婦のような光景は。姉さんも高遠先輩もあまりツッコミ入れないし。咲も何も言わない・・・ってなんかまたかー、みたいな顔してます。

 

「この流れだと、咲。あんたもこの人知ってるってことよね」

「うん。私とお姉ちゃんの幼馴染の哲也さん。去年お姉ちゃんと同じ長野県代表で勝ち進んだ2人だよ」

「はー・・・なに、あんたらはほんとに強者を引き寄せるなにかでもあるのかしら。早苗はこれ、知ってたんでしょ」

「このお2人とお知り合いなのは知ってましたよ?だけどこうやって一堂に会するのは久々ですね」

 

 東風谷先輩がこの態度だといつもこんな感じなんでしょう。高遠先輩もそうですが、なんだか身内感がすごく深い気がします。けどこれなら確かにいい練習や試合ができそうですね。

 

 

 

 あの後、大広間でお互いの高校で対戦することになりました。あちらもどうやら主要メンバー連れての合宿だそうです。といっても私達より人数が多いことは当たり前ですけど。対戦はくじ引きである程度ばらけるようになっているみたいです。私の最初の対戦は・・・咲とですね。

 

「あ、悠ちゃんと一緒だ。それに相手の人」

「知っているんですか?」

「うん、さっきお姉ちゃんと私と哲也さんが幼馴染っていうのは説明したんだけど、実はもう1人幼馴染、いるんだ」

「なるほど・・・咲もすみに置けませんね」

「そういうのじゃないよ。私と京ちゃんは幼馴染なだけだよ。お姉ちゃんと哲也さんみたいにはいかないんだ」

 

 なんか言い方からすると咲もその幼馴染さんに片思いでもしてそうな言いぶりです。別に恋するのも想うのも自由だと思うんですが。

 

「そういえば、咲。その人の名前は何というんですか?」

「あ、そうだね。須賀京太郎っていうんだ。ちょうど来てくれた。目立つんだよね、京ちゃんは」

 

 咲があれ、って声をだして指をさしてくれました。その方向へ向くと金髪さんがいるではないですか。完全に見た目はチャラ男か不良ですよ。え、本当に咲の幼馴染なんですか。あれが?

 

「お、咲じゃん。久しぶりだな」

「うん、京ちゃんも元気そうだね。でも京ちゃんが麻雀部っていうのはびっくりしたな」

「おう。怪我のせいでスポーツはできないって踏ん切りつけたからな。今はむしろ感謝してんだぜ、こうやって火花散るような戦いができるっていうのがな」

「ふーん・・・でも今日ばっかりは京ちゃんでも勝たせる気、ないよ」

「咲のくせによくいうぜ!ま、お手柔らかにな」

 

 咲との話を聞くとそこまで厳つそうな感じはしませんね。うーん、人は見た目だけで判断してはいけないと言われますが、その通りかもしれません。私の悪い癖ですね。直さないといけないです。

 

 そして最初の局が始まりました。うーん、手牌はあまりよくありませんね。咲の様子は結構ワクワクしているし、そして須賀さんはどのような打ち手なんでしょう。ここはよくわからない以上、普通に打っていくのが無難ですね。

 それから12巡あたりして、須賀さんがリーチかけてきました。さて、一発で振り込みはしたくないですから・・・って引いた牌があまりよくないです。ここは現物でいいでしょう。

 

「よし・・・一発、ツモ!!ってこないよな」

「京ちゃん、それカン」

「な、カンだと。やべえ!」

 

 咲のカンはもう慣れました。この後は高確率で嶺上開花です。でもさすが幼馴染です、この反応するってことはわかっているってことですね。

 

「うん、ごめんね。ツモ、嶺上開花」

「だぁ~~!!またこのパターンだよ!」

 

 まぁ、ここはいいでしょう。ですが須賀さんは結構騒ぎますね。感情表現がまじまじとでるタイプですか。ならやりようはいくらでもあります。

 

 あれから勝負はどんどん進んで南場も二局に突入。主に咲と私が上がって、その合間を縫うように残りの2人が上がっているって感じです。咲との点差は5800点。ここは親ですし、とりあえず30符2翻を直撃か3翻以上でツモれば逆転。他家からだったら40符3翻か満貫以上。残りもまだありますし、ここは一回でもあがりたいところです。ってなんか後ろから見られているような。配牌ですし、その合間をぬってちらっと目配りすると、どうやらあちらの若い先生がこの試合を見ています。それだけ注目されているってことでしょうか。

 

「あ、気になってしまったかな。僕に気にしないでほしいな」

 

 と言われても気になりますよね。といっても言えるわけでもありませんし、ここは試合に集中しましょうか。さて、どうしましょうか。手牌はあまりよくありません。ここで引くことはしたくないですからまずはあがることを念頭に置きましょう。それから数巡して須賀さんが動きました。

 

「よっしゃ、リーチだ!」

 

 これはつらい。なんとかしのぎたいんですが・・・ってなんでここで危険牌を引きますか。こういったことばっかりです。ここは現物ですね。

 

「私もリーチ」

 

 咲もですか。これはいよいよまずい。なんとか流れをもってこないと・・・って今度は咲の危険牌を引いてしまいました。ホントに私はなんでこうなんでしょうか。いつもいつも・・・

 結局、この局はノーテンでお流れになってしまい、そのまま勝負はなにも盛り上がることなく進み、咲が1位、私が2位でした。もう少し何かできればと思ったんですが。

 

「京ちゃん、麻雀上手くなってるね。前に比べて戦う手数が増えてるって思った」

「咲も強くなってんじゃねーか。なんだよ、哲也さんや部長のしごきに耐えてきたからやれるって思ったのによ~」

「あはは。まだ京ちゃんに追い込まれるわけにはいかないよ」

「咲のくせに生意気だぞ。っと、そういやそっちの人もかなり強いよな」

「うん、悠ちゃんは去年の長野県選抜選手だし、私も勝ったり負けたりって接戦なんだ」

「最近は負け気味ですけどね。どうしても勝負しきりれない時が来るんですよね」

「そうなのか。冷静に対応しているように見えるぜ」

「そうでもないですよ。心の中では焦っています」

 

 須賀さんが「ふーん」って言いながらコーラ飲んでます。男の子って結構ここら辺はフランクなんでしょうか。あまり行儀いいとは思えませんが。

 

「勝負しきれないか。なるほどね」

 

 そんな時、勝負を見ていたあちらの先生が声をかけてきました。

 

「森近先生。なんかあったんすか?」

「いや、清澄の2人は面白い特徴をもってるなって。姉妹揃って本当に珍しい」

「え、特徴っていうのは・・・」

「あー、そうだね。僕はその人の癖や特徴が読み取りやすいというか、わかるのさ。だからといって対応策や実際はどうなのかっていうのまではわからないけど」

「はぁ・・・なんかよくわかりませんが」

「あれだよ。勘がいい人だと思ってくれればいいよ」

 

 なんかよくわかりません。癖とか私、何かあるんでしょうか。それに咲も宮永先輩も姉さんも持っているって。そんなものわかるのでしょうか。

 

「そうだね、まず宮永妹さんはカン材が集まりやすいんじゃないかな。あとはそれであがりやすかったりするのかな?」

「そうです!すぐにばれるなんて」

「それが特技だからね。それと竹井妹さんはおそらく他家の危険牌を引き寄せやすいかな?」

 

 相手の先生に言われて思わず目線を外してしまいました。なんでそれがわかったの。姉さんと高遠先輩以外ばれたことないのに。もしかして2人から聞いてカマかけられているとかですか!?

 

「その反応、どうやらドンピシャみたいだね」

「悠ちゃん、そうなの!?」

 

 まさかこんな形で咲にばれるなんて。ほんとに嫌な気持ちです。

 

「悪気はないんだ。君に嫌な思いさせたなら謝るよ」

「いえ・・・どうせいつかはわかることだと思っていましたし。ですけどいきなり見破られて言われるのは、なんか堪えますね」

「でもいいじゃないか。僕は悪くない特徴だと思うよ」

「どこがですか!自分の手牌に他人のアタリ牌がやってきて、それを出すわけにもいかないから抱えたままなんて!誰が好き好んで爆弾を引き込んで抱えます!?」

「ゆ、悠ちゃん!」

「それは君の考え方だろう?でもそれだけじゃないと思うけどね」

「あなたが何をわかるんですか!?私がどれだけ、どれだけ!!」

「僕にはわからない。ただ指摘しただけだからね」

 

 言わせておけば・・・私の苦労も悩みも知らないでえぐるように!

 

「ちょっと、悠!どうしたの!?」

「姉さん、止めないでください!」

「悠、落ち着けって。それと先生、煽らないでください」

「僕はそんなつもりはないんだけどね。でも君らもこの子が1つ壁を乗り越えてもらいたいんだろう。そしたらこれぐらいがちょうどいいんじゃないかな」

「って言われてもですね。先生のやり方は過激ですよ」

「いや、それでいいんじゃないかしらねぇ」

「大日向先生まで」

「久さん、過保護ばかりではいけませんよ。悠さんも高校生です。これを乗り越えないならそこまでってことです」

「いいですよ・・・乗り越えて見せようじゃありませんか!」

「だから悠、落ち着きなさいって!」

「いいだろう。そしたら次の対戦は僕が入ろう。それと高遠と竹井も入ってくれるかな。こういったことは身近な人が多い方がいい」

「よし、決まりだな。森近先生はしっかりまとめろよ。他は次の対戦に入るんだ」

 

 絶対に、〆る。

 

 

 

 姉さんと高遠先輩とムカつく先生と卓を囲んで、勝負が始まる。感情的になりたいけど、勝負は勝負。ここは一度冷静にならないと。

 

「へぇ、勝負になると冷静になろうとする。精神的にいい切り返し方だね」

 

 イライラする。とりあえず姉さんと高遠先輩と戦うんです。実力差も出てくるはず。一回の過ちで一気に切り込まれたら盛り返しもできません。

 そのまま試合が流れている。うん、手牌としては悪くないからこのままいきたい。

 

「リーチだ」

 

 高遠先輩がリーチ。ということは、やっぱり。自摸牌は高遠先輩に対する危険牌。ほんと、嫌になる。

 

「さて、君は今危険牌を握ったね。そのまま何もしなかったら何も変わらないよ」

「だから何だっていうんです。もうこれ以上先に行くことなんてできやしないじゃないですか」

「それは違うだろ。お前、それは視野が狭いぞ」

「高遠先輩まで・・・そんなに私をいじめたんですか?」

「違うっての。お前のそれ、やり方によってはすげーってことだよ」

 

 何がすごいのか、わからない。これを出すわけにもいかず、そのまま抱えて流局。なんでしょう、高遠先輩を止めたってことでがすごいってことですか。

 

「高遠君をとめたことはいいけど、それがすごいことじゃないよ」

 

 全く意味が分かりません。何がいいたいんでしょうか。次の局も変わり映えのしないものに。

 

「リーチだわ」

 

 姉さんのリーチですか。これも警戒しないといけませんね。そしたら姉さんがいきなり手牌の2つを広げ始めた。

 

「ちなみにオープンよ」

 

 え、なんでオープンなんですか?しかも一索の単騎待ちって。捨牌にはもう2つでてるんですよ。なんでそんな分の悪いことを。

 

「またか・・・お前も好きだな、そういうの」

「ええ。私、なんでかわからないけど待ちが悪い方がよくアガれたりするのよね」

 

 そういえばそうでした。姉さんの性格も相まってか何故か起こりやすいんですよね。

 

「うん、これも暴いたのは僕だったね。よくモノにしたね」

「森近先生には感謝してます。まさか私のくだらない特徴をものにできるようにしてくれたんですから」

 

 あれ、姉さんもこの先生に同じようなこと言われたんですか。でも姉さんのこれもいいもんじゃないし、姉さん自身が何か変えたってことですかね。

 

「あら、来たわ。ツモよ」

 

 ほんとにきてしまった。これは偶然とはいいがたい。ある意味、咲の嶺上開花祭りがあるから見慣れたけどこれも特殊なんですよね。でも姉さんのこれもどう考えたっていいもんじゃないです。いつしか姉さんも私のやつを知って「お互い不幸な姉妹よね」なんて言ってましたけど。でも姉さんはそれを克服して・・・いや、待ってください。姉さんは克服してない。むしろ利用してるじゃないですか。

 

「おや、何か気づいたかな?」

「ごめんなさい、ちょっと待ってもらえますか」

「おう、お前が納得するまでな」

 

 姉さんはさっき待ちが悪い方があがりやすいって言いました。高遠先輩はまたか、と言いました。そのきっかけはこの先生の言葉だって。次に高遠先輩の視野が狭い発言。確かに言われると私は危険牌がやってくる=これ以上手が伸びない、むしろ私は何もできないっていう考えになってました。いや、違います。もっと視野を広げれば・・・

 

「へぇ。何か気づいたかな?すごく清々しい表情しているね」

「お、ようやく答えがでたようだな」

「はい、まだ確証は持てないです。けどもしかしたら」

「いいわよ、やっちゃいなさい!」

 

 次の局。最初はいつも通りで問題ありません。ここは私にとってあまり変わる必要がない部分。

 

「おや、リーチかな」

 

 先生のリーチ。ここからです、私が視野を広げる、変わるべきところは。早速私の自摸牌は危険牌。けどよくよく思い返せば、これは来る確率が高い牌。これが私の特徴。一巡してまた来ました、同じ牌が。さらに一巡。また来ました。こんなことがあるなんて。あとは・・・。

 

「うーん、なかなかあがれないな」

「それ、ポンです!」

 

 これで聴牌です。こんな形で迎えるのは初めてで。今、私が今までダメだと思っていたのが自分で変えているんだって思えます。

 

「どうしようかな・・・これなんてどうだい?」

「それです、ロン。東、対々和で40符3翻5200です」

 

 相手がリーチしてから私があがれたの、初めてです。あれ、これ・・・あがってますよね。

 

「悠ちゃん、すごいよ!」

「悠、あんたやるじゃない!」

 

 私が考えようとする前に咲と霊夢がすぐそばで喜んでいます。いつの間にか傍にいて。どうしていいかわからないけど2人が喜んでいるってことは私、やったってことですよね。

 

「おめでとう。君は今、自分と向き合って乗り越えたね」

「やるじゃねーか。悠、お前も自分と向き合った結果ってことだよ」

 

 先生も高遠先輩も認めてくれた。そう思ったら姉さんが私に抱き着いていた。私はそんな状況が想像できなくて。でも姉さんの暖かさがわかるんです。

 

「悠、よくやったわ。私達は確かに不幸かもしれないけど、それを覆すことができる力があるって証明してくれたわ。それでこそ、私の妹よ」

「姉さん・・・私は姉さんの役に立てますか?」

「何言ってるの。あなたがいるだけで私は十分満足だわ。今はそれ以上にあなたがこうやって一歩前に進んでくれたことが嬉しすぎて、どう表現したらいいかわからないわ」

 

 今、私は私がよくわかりません。けど、姉さんにこうやって褒めてくれて、周りの皆も認めてくれて。だから私は自分が変われたって思えます。それだけは言えます。だから、それでいいんです。

 




★竹井悠について
〇彼女の能力は「誰かが聴牌すると危険牌を引いてしまう」というものです。久と似て非なる能力ってことを考えた結果です。やりようによっては強力になってしまうかもしれませんが、とりあえずはこんな能力です。

★諏訪聖稜高校について
〇この物語の男子の扱いですが、女子と同等程度の実力と思ってください。その設定としては原作も麻雀人口数にしては男子が弱いと設定されていることやプロがいるのだから同じぐらいでもいいだろう、という考えです。
〇駒ケ根哲也と高遠博樹はその最たる例として作ったオリジナルキャラです。といってもメインは女子ですので、あくまでサブとして扱ってください。
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