咲方Projet‐Sakihou Project‐ ~幻想郷が咲の世界入り~   作:みんせい

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今回の話は前回の「1年生 初夏 合宿(竹井悠)」の続きになります。

話の流れはそれぞれ早苗→久→照の順で視点が変わりますのでご注意ください。

また内容によってはオリキャラ(男子)との絡みがあります。恋愛とまでではありませんが似たような雰囲気になることもあるかも。


3年生 初夏 合宿 続き(東風谷早苗、竹井久、宮永照)

 合宿の夜、私と霊夢さんは旅館の中庭にある池の前に立っています。別に何かしら悪いことをして経っているわけではありませんよ。霖之助さんに呼ばれてここに立っているんです。霊夢さんは霖之助さんを覚えていないような素振りしていましたし、なんで呼ばれたんだと思って若干不服そうな態度をしていますね。それもそうかもしれませんけど大事なことなんで我慢できるかなぁ。

 

「ねぇ、早苗。ここに呼び出したやつも幻想郷の人なんでしょ?」

「はい。霊夢さんは結構お世話になっていたんですけど・・・覚えてないですか?」

「いや、覚えている部分があるのよ。確か辺鄙なところにお店構えて、私の巫女道具を用意してくれたりしていた気がするのよね」

「そうですよ。なんだ、案外霊夢さんも覚えていたんですね」

「さっき早苗の説明受けて思い出し事が多かったんだけどね」

 

 そんな話をしているとあちらから霖之助さんがやってきました。こちらの世界に飛んでもその姿や雰囲気は幻想郷と何も変わらないのはある意味あの人らしいというか、強いところですね。

 

「やぁ。悪いね、君達にこうやってでてきてもらって」

「いいわよ。あんたも私と同じ幻想郷の住人っていうなら協力してくれるだろうし。私もあんたのこと思い出してきたところだし」

「おや?霊夢はどうしたんだい?僕の知っている霊夢とはなんだか違うようだが」

「霊夢さんはこっちに来た際に幻想郷のことを忘れている部分が多いんです。何かをきっかけに思い出したりするんですが」

「ふむ・・・なるほどね。僕にとっては興味深いことだが、霊夢にとっては都合が悪いことになるだろうね。これはちょっと意外だったかな」

「期待に応えられなくて悪かったわね」

 

 霊夢さんがバツが悪そうに言って、霖之助さんが「そんな意味ではないよ」と言葉をかけている。霊夢さんが幻想郷の話をすると思い出せないことがなんだか嫌というか、申し訳なさそうなところを見る。これはやめていきたい。霊夢さんの精神的な部分もあるでしょうし。

 

「とりあえず本来の話をしようか。君達が麻雀部にいるってことは紫から出された本来の目的に向かって努力しているってことでいいのかい?」

「はい、私も霊夢さんもそのつもりで清澄にいますから」

「そうか。長野の女子なら風越か龍門渕かと思っていたけど君達らしいな。君達2人が揃っているなら心配はいらないかな。チームメイトも興味深いし」

「えーと、確か霖之助さんって呼んでいたはずよね。めんどいからそう呼ぶことにするけど、霖之助さんといえど私の友達傷つけるなら容赦しないわよ」

「これは・・・いや、僕が悪かったよ。いやしかし・・・面白いね」

 

 霊夢さんがその言葉で「何よ、いったい」とか言ってるけど、確かに霊夢さんがここまで人に深くかかわったような表現を使うことなんてほとんどない。だからびっくりするのも無理はないです。でも私に対しても柔らかくなったというか、そんな気がします。

 

「さて。僕も学校の先生という立場でその目標を達成しようと思っていてね。情報を集めることも仕事の1つだから行っているんだが・・・時に魔理沙のことを覚えているかい?」

「もちろんよ。さすがに魔理沙のことは忘れてないわ」

「この流れからいくと霖之助さんは魔理沙さんのことを知っているとか、そういうことですか」

「そうだね。こっちは駒ヶ根君と高遠君のおかげで長野は問題なく通過できるから他県を調べている時に偶然、見つけてしまってね」

「どこにいるのよ。あいつのことだから地味なところにいるとは思えないけど」

「彼女は今、愛知県の学校にいるよ。どうやら入学と同時に主力、おそらくその学校のエースとして活躍しているみたいだね。他のメンツもいるみたいだからおそらく愛知県のトップ校はそこだと思うよ。君達が中部大会まで進めれば自然と会えると思うよ」

「なるほど・・・長野だけでなく、全国に幻想郷の皆さんが散らばっているということにもなりますね。私が霊夢さんや霖之助さんとこうやって出会えたことは奇跡に近いかもしれませんね。アリスさんみたいに1人で頑張った人もいるわけですから」

「おや、あの人形遣いにも出会っているんだね。そしたら君達のほうが多く出会うかもしれない。そうやって集まっていけば幻想郷に帰れる日も遠くなさそうだ」

「ま、私の記憶が変に途切れたり忘れたりしてることも含めて解決したいから。任せておきなさい」

「早く幻想郷に帰れることを期待しておくよ。もちろん僕もやれることはやっていくけどね」

 

 そこまで言って霖之助さんはこの場から離れていった。また私と霊夢さんの2人だけになる。特に騒がしい音もなく、静かな時が流れる。この雰囲気はなんとなくだけど幻想郷の、守谷神社や博麗神社の一コマに似ているかなと思う。

 

「ねぇ、早苗。私達がこの異変の原因とやらを解決した時、私達って幻想郷に帰ることになるのよね」

「そうですね。それが自然な流れだと思います」

「その時、咲や悠はどうなるのかしら。私達のこと、忘れちゃうのかしら」

 

 それはこの世界に来てからなんとなくわかっていたこと。私も思わないようにしてきたことですが、異変解決した時に訪れる絶対な出来事になります。

 

「幻想郷にいた時の私なら何ら思わずにさよなら、でよかったわよ。けど今はそんなことは思えない。むしろ今はそれが来てほしくないって思う時もあるわ。何なのかしら。私、変わったのかもしれないわ。早苗はどうなの?照先輩や久先輩と別れることなんてできるの?」

 

 霊夢さんの言葉に私はすぐに答えられませんでした。その言葉はどちらにも出してはいけない者だってわかってしまうからです。もちろん幻想郷には帰りたい自分もいます。現人神として過ごす覚悟してからの幻想郷の日々は充実していて、神奈子様と諏訪子様の期待に応えたい自分がいます。けどここで久さんと照さんとの日々もかけがえのないものです。どっちを選ぶのかなんて今の私には応えられません。それを答えたら、私はどうかしてしまうでしょう。

 

「いずれ、考えないといけないんでしょうね。私はどうするのかしら・・・」

「霊夢さん、私は今その答えを出す必要はないと思います。まだその時でもありませんし、それが訪れる機会はまだまだ先のことです。今は今を大切にする必要があると思います。正直、今は選べない私の精一杯の回答だと思います。すいません、こんな未熟で」

「ううん、いいのよ。私も同じように答えるわ。だから早苗が同じような想いでいたことに安心したわ。改めてここで、清澄で皆と全国に行きましょ」

「はい!絶対にいきましょう!」

 

 霊夢さんに心配かけてしまった。私はここではあなたの従姉で年上なんです。私が支えてあげるぐらいじゃないと。私がもっともっと強く、たくましくないといけないです!これもまた修行で私が1つ成長するために必要なことだと思うんです。強くならねば。

 

 

 

 

 

 なんでロビーにいるのかしら。おかしいわね、私は悠と部屋で一緒にお茶でも飲んで話でもしようと思っていただけなのに、なんでそのお茶を買いに行ったところでヒロに見つかって、一緒になるのかしら。全く、同じ中学校で腐れ縁っていうのは厄介なものね。こんな時に強く言えないんですもの。

 

「なんだよ、なんかあったか」

「べっつにー。私は姉妹水入らずでいたかっただけなのにどっかのヒロがやってきたから、それができなくなっただけよ」

「そんなに邪険に言うなよ。俺もあの対局は思うところがあってよ。謝りてぇって気持ちでいるんだからよ」

「高遠先輩、それは別に大丈夫ですよ。あれは私の弱さもあったし、逆に新しい発見もあったんです。これで自分の運の悪さに嘆くことも無くなるかもしれません。感謝しています」

「それでも可愛い妹がいじめられたっていうのは許しがたい事よ。もっと違うやり方でもよかったじゃない」

「それはお前にしても悠にしても納得しねぇだろ。お前ら姉妹は理論先行になりがちでそういったところが大変なんだよ」

 

 まぁ、そこは認めざるを得ないわね。悠も私に似て頑固だからあーいった強硬策の方がすんなり入っていくだろうし。ヒロに世話になるのは癪だけど、悠が伸びるって要素は本当にでかいわ。これからの戦いは私達3年だけで戦えるほど甘くない世界だし。

 

「お、そうだ。悠に会いてぇっていうやつがいてな。もうすぐここにやってくるんだが」

「あら、そっちに悠の知り合いがいるのかしら。珍しいわね、心当たりあるの?」

「いえ、全く。男子で諏訪聖稜に行った知り合いなんて・・・あ」

 

 すごく何か思いだしたような顔してるわね。あらら、これは面白いにおいがするわね。悠に会いたいっていう男子なんてそうそうお見えにかかれないわ。そんなこと思っていたらヒロが「お、あいつだ」って言ってくれて、そこに見える男子は悪くない男子じゃない。

 

「上埜、久々だな!元気そうで何よりだ!」

「高久田・・・あなたでしたか。すっかり忘れていました」

「なんだよ、お前とは結構喋っていたと思っていたんだがなぁ」

「高久田、調子に乗り過ぎるな。文句言われるぞ」

「うっす、気を付けます。っと、そちらの上埜にそっくりさんはどちらさまで?」

「私は悠の姉、竹井久よ。あなたは高久田君っていうんだ。これからよろしくね」

「お姉さんでしたか、よろしくっす!って、竹井ってどういうことで?」

「私も名字が竹井になったんです。だから上埜って呼ぶのはやめてもらいたいです」

「あーっと、なるほど。了解した」

 

 あら、ここらへんを聞いてこないあたりできた子なのかもしれないわね。ま、ヒロが私と悠に合わせる手はず整えているあたり、そこらへんはしっかりしている子ってことなのかもしれないわね。

 

「高久田はそこまでの実力ではないが、光るものがあってな。俺は中学からの後輩ってこともあって面倒見てるんだよ」

「あら、あなたがそう言うってことは私にとっても後輩ってことにもなるのよね」

「そうなるな。そもそも悠の同級生なんだろ。そこは自然と繋がるだろうに」

「あまり中学のこと、思い出したくないのよね」

「姉さん、その話は」

「わかっているわ。ポツリとでちゃっただけよ」

 

 私の言葉にヒロは一息ついて特に何も言わず、悠はちょっと影を落とすような表情をしていて、高久田君は何が何だかって感じね。

 

「えーと、よくわかんねえっすけどこうやって同じ中学がお互い違う学校で高校生になって、部活の合宿で出会えるってことはすごいことっすよ。というか高遠先輩にこんな美人さんがいるなんて聞いてないっす。先輩、ほんといい彼女さんいるんすね」

 

 高久田君の謎の言葉に私の思考は固まった。ちょっと・・・いきなりなにを言い出すのかと思えば!

 

「高久田、本気で言ってます?」

「おう!結構お似合いだろ!竹井もそう思うだろ!高遠先輩って硬派つーか、硬いじゃん。それをこうやって大人の雰囲気つーの?それで包める人ってまじで貴重だぜ!」

「あー、言われるとそうですね。姉さんと高遠先輩ですか。なんだかんだ結構一緒にいますし、高久田が言うような雰囲気でいることもありますから・・・ありですね」

「だろう!お似合いだって!」

 

 ちょっと!悠も何納得してんのよ!あなたはこっち側でしょう!というかヒロも何か言いなさいよ!

 

「高遠先輩。実際姉さんのこと、どうですか?」

「あー・・・その、なんだ。それはここで答えることじゃねーな」

「なんすか!俺らの期待を裏切ってますよ!」

「俺と久の関係がどうであれ、ここで披露するほどのもんじゃねーだろ。それこそ俺と久の問題になるだろ。お前ら、特に高久田。調子に乗り過ぎだ」

 

 ヒロがちょっと怒気を強めた口調で言ったことで高久田君が委縮して言葉が出ることがなくなったわね。でもヒロももうちょっと言い方ってもんがあるでしょ。その言い方じゃ、なんか含みがあるし。私もなんか期待しちゃうじゃない。でもここはそういったことを求めているわけじゃないわ。

 

「ま、そうね。それは私とヒロだけのことだもん。でも高久田君もわざわざ悠に会いたいってことは何かあるんじゃないの?」

「俺っすか?俺は竹井に久々会えるって思ったんで高遠先輩にお願いしたんす。なんでとりあえずこうやって話せたんで満足っす」

「高久田ももうちょっと女心を研究したほうがいいです」

 

 あら、悠もなんだかんだ気がありそうな言い方するじゃない。姉さんとしてそこも気になるわね。自分のことは棚に上げるけど。こういったのも高校生の特権ってやつかもしれないわね。

 

「恋愛に関してはお互い自分のことだから、下手に聞いたらいけねぇよ。それよりも高久田は麻雀強くなってからだろ。お前、よそ見している余裕、ねーんだぞ」

「そうでした。すいません・・・」

 

 あら、いきなりシュンとなったわね。これだけデカい子が縮こまるのはちょっと可愛いわね。というかこういったのって悠のヒットゾーンだったりするのよね。ってここで言うとややこしくなるからやめておきましょ。

 

 

 

 

 

 今日使った麻雀の道具を片そうと思って、大広間に行ってみたら咲が一人で牌を磨いていた。なんだか邪魔するのもあれだけど、1人でやらせるのも気が引けるので声をかけた。

 

「あ、お姉ちゃん。どうしたの?」

「それはこっちのセリフだよ。咲がいなかったし、皆もそれぞれどっか行ったから」

「ごめんね、つい今日使ったのに片してなかったなって思って」

「そっか、私も一緒に手伝うよ」

 

 そう言って咲が片している卓の牌からいくつか布で拭き始める。咲もその後は特に何も言わずに牌を磨いている。お互いにそんなだんまりの中、牌を磨くことで静かな時間ができていた。2人でやると早いもので、もうこの卓にあった牌も残りわずかだ。

 

「お姉ちゃんは高校卒業したら、どうするの?」

 

 不意に咲が声をかけてきた。いきなりどうしたんだと言いたいところだけど、咲の表情がなんか困っている笑顔って感じで。何かあったに違いないと思った。

 

「どうしたの。突然すぎてちょっとびっくりなんだけど」

「あ、ごめんね。お姉ちゃんが来る前にここに哲也さんと京ちゃんがいたんだ。それで京ちゃんが哲也さんに今の私と同じ質問をしたの。そしたら哲也さんは東京に大学進学するか、プロかな~って言ってて。それを聞いたら長野からいなくなっちゃうんだって思ったの。そしたら急にお姉ちゃんの顔が浮かんでね。お姉ちゃんも出て行っちゃうのかなって。もちろんいずれはそれぞれの生活をしなきゃいけないんだろうけど。ごめんね、なんかあまりにも突然すぎて」

 

 なんか勝手に完結しているような話になってるけど、いきなりそんなことを言われても考えたことなかったな。私はどうしたいんだろう。

 

「そうだね。はっきりと答えをだすことはできないかな。私も咲やお父さんとお母さんと一緒に暮らしている生活を手放すイメージがつかないし。それに今までもあるがままに生きてきた感じがあるからね。今後のことってどうしていきたいんだろう」

「お姉ちゃん、それはそれで心配になるんだけど」

「うーん、哲みたいな選択肢もあるのかも。でも例えば藤田プロみたいに佐久のチームには入れれば長野にはいられるから有りといえば有りになるかな」

「お姉ちゃんが麻雀のプロ選手かぁ・・・うん、イメージ着かない」

「失礼な」

「だってお姉ちゃんはお姉ちゃんだもん。私にはたった一人のお姉ちゃんだもん」

 

 そういって咲がほほ笑んできた。なんだ、この可愛い生き物。いや、ほんとに私にはもったないぐらいの妹だなって思う。この前3人で妹選手権とかやったけど、久と早苗にこの状況と咲の微笑みを見せてあげたいよ。絶対に優勝できる。

 

「とりあえず大会が終わってから考えるよ。ちゃんと咲にも言う。というか一番に相談するよ」

「私で役に立つかな~・・・でも、お姉ちゃんが決めたことは応援するよ」

「そしたらまずは、皆と一緒に全国だね。これが私達の夢だから」

「うん!それはもちろんだよ!」

 

 それから程なくして全ての卓の片づけが終わった。そんな時に博麗が戻ってきたから咲はそっちに合流してお風呂に行くと言って出ていく。私もこの部屋にいる意味もないのでちょっとぶらっとしようかと思ったら、廊下で哲と出会った。適当に挨拶したら特に当てもなくぶらつくとかいうので、そこらへんで座って、さっきのことをしゃべった。

 

「そっか、なんかごめんねー。照にも迷惑かけちゃって」

「ううん、でも咲がそんな風に考えてくれたってことはなんか嬉しくて。でも哲は本当に東京かプロなの?農家さんでもいいんじゃない?」

「あー、いづれはそうかもしれないよ?爺ちゃんの遺産も受け継がないといけないし。ただ、それはまだ先の話だろうし。それまでの間にやれることとか可能性探ったら、やっぱ麻雀が一番かなって」

「ふーん、意外と将来設計できてるんだね」

「いやいや、別にできているわけじゃないよ。結局ここで過ごしていく運命になるんだろうし。ま、僕にとっては悪くないって思ってるけど。照はどうするのさ」

「私も別にここにいるでもいいよ。都会とか憧れているわけじゃないし」

「えー、もったいないよ。僕より可能性あるんだからさー。もっと選択肢増やしなよ」

「別にいいよ。咲には言わなかったけど麻雀だってどこまで続けるかわからないし、そもそもプロとか言ってるけど、それも難しいし。私もここ、好きだし」

「ふーん、照が残ってもいいって思える魅力があったんだな。それは僕にとっても嬉しいかも」

「それに、農業も別に悪くないっても思ってるし。哲のおばあちゃんと一緒にやった作業とか楽しかった時もあったし、作物出来て収穫したときとか嬉しかったし」

「そうだよねー。あれ、達成感が半端ないよね」

「哲がいつか農業に本格的に取り組むときは手伝ってもいいかなって思ってる時もあるんだよ」

「そうなの?その時はお願いしようかなー」

 

 哲の顔見ると能天気そうに語っている。いや、気づいてよ。そこまで能天気というか鈍感なわけじゃないでしょ。私の伝え方、悪かったかな。と思った時、私の頭の上に哲の手があって、なんでか頭なでなでされている。

 

「農業のこともそうだけど、将来のことはまだ先だからとりあえず置いといて。まずはお互いに麻雀でインターハイ、全国に行けるようにがんばろうよ。それからどうするか決めよ」

「・・・うん、そうだね」

 

 大体いつもこうやってはぐらかされる。けど、哲の言う通り。まずは目の前の皆で全国に行くことが先決だ。先の先はまだ語るだけで十分なのだ。こんな乙女チックになるのも私らしくないなって思った。合宿で男子と一緒になったからか、ちょっと浮かれていたのかも。

 

「お互い、最後のチャンスをつかもう。僕たちはまずそこでしょ?」

「うん。危うく見失いかけるところだった。ありがと、哲」

「いえいえ、照にはちっちゃい時から散々お世話になってるからね。こんな時にお礼言われるようなこと言えたなら、僕も満足ですよ」

 

 先のことを考えればキリはない。けどまずは目先のことが最優先だ。久と早苗と決めた約束。後輩の3人を連れていくことも含めて、私の役割はこなさないと。それが達成出来たら、自分のことももっと考えよう。まだ、時間はあるから。

 




それぞれのキャラからの目線ということで読みづらさがあったら申し訳ありませんでした。恋愛事情に関してはあまり考えていませんが、高校生近辺あたりのやりとりはあってもいいかなって思っている所存です。

★森近霖之助について
彼は作中にも出ました諏訪聖稜高校(架空)の男子校の教員です。
能力は「道具の名前と用途が判る程度の能力」を解釈して、他者の能力や特徴を把握できる程度ということにしてあります。

★高久田について
彼はオリジナルキャラではありません。原作だと1巻で「咲ちゃんはイイ嫁さんだなァ」の彼です。扱いはだいぶ変わった感がありますが、なんか本名がそうらしいですね。話書くときに調べたら初めて知ったので。

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