最後の投稿が去年というのが、非常に申し訳なく思います。
時間はかかっていますが、これからも投稿していきたいなと思います。
それでは、本編をどうぞ
彰人達と向かったのは『WEEKEND GARAGE』
僕もそうだが、彰人達も十分ここの常連だ。
なので、
「いらっしゃい、いつも来てくれてありがとね!」
中に入った僕たちを出迎える杏さんの応対も、親しい感じになる。
……まあ、杏さんの場合は誰にでもそうなりそうだけど。
店内は、いつも通りだった。
若干杏さんのテンションが高いような気がするけど。
数人のお客さんに、そして制服を着た少女に……。
(ん?)
ふと、見落としそうになったが、見かけない少女がいつも通りという表現を思いっきり打ち消していた。
「それじゃ、注文はいつもの……あれ、君は見かけない顔だね」
それは、彰人も同じだったらしく、少女の方を見ながら声を掛ける。
茶色の瞳を持ちクリーム色の長めの髪を2つ結びにしている少女は、彰人の声に怯えたような反応を見せる。
(彰人の本性に気づいて……というよりは、元々か)
初対面の人や目上の人には人当たり良く接する一方、僕のような友人に対してはやや気が強そうな口調で接したりする。
そういったのを見抜いているのかと思ったが、どうも彼女の性格による物のような気がした。
「オレは東雲彰人。よろしくね。こいつは相棒の青柳冬弥。で、そっちが友人の犬飼涼介」
「は、初めまして……小豆沢こはね、です」
彰人の紹介に、小豆沢さんと名乗った少女はビクビクとした様子で名前を名乗る。
その姿は不謹慎だが小動物を彷彿とさせるもので、人によりけりだが人受けは良いような気がする。
「……敬語は使わなくて良い」
「は、はい……」
対する冬弥は、素っ気ないように聞こえるが、これがデフォルトだ。
どこか萎縮する小豆沢さんを見て、変な誤解をされてそうだなと、どこか他人事のように考えていた。
「この三人は私と同じ神高の1年で、父さんのファンなんだ。それで、この二人で『BAD DOGS』て言うグループを結成してこの辺のハコで謳ってるんだ。で、その前や後によくうちによっていくんだよ」
小豆沢さんに彰人達のことを説明する。
あえて僕のことを言わないでおいたのは、彼女なりの気遣いなのかもしれない。
「白石さんとこの店とは中学の頃からの付き合いだね」
「中学!? じゃあ、中学の頃からイベントに!? ……すごい」
彰人の言葉に、小豆沢さんが驚いた表情を浮かべる。
確かに、普通の人からすればその頃からイベントに出ているのは凄いことなのかもしれない。
でも……
「あはは、誰でも出られるから、別にそんなに凄くはないよ」
彰人からすればそういう感じになるのは当然なのかもしれない。
「ところで、白石さんは一緒に組む相手は決めた? そろそろ決めた方が良いんじゃないかな。……本気で『RAD WEEKEND』超えを目指すんなら、さ」
挑発するような、どこか試しているような口調で、彰人が杏さんに問いかける。
「ふっふっふ。良いタイミングで聞いてくれるじゃん! 実は見つかったんだ。今さっき」
(それでどこかテンション高めだったのか)
ようやくいつもより少しだけテンションが高かった理由が分かった気がした。
だが、それよりも一番の関心事は彼女の相棒だ。
タイミングと、この状況から察すると……
「そう! こはねが私の相棒なの! こはねと一緒に歌って分かったんだ」
「杏さんがそこまで言うとは……えっと、小豆沢さんだよね。どこかのイベントに出たりしたことある?」
これまで数多くのグループからの勧誘を断り続けてきた彼女が、自ら相棒だと宣言する人物。
かなりの実力者であるのは間違いない。
それを見定めるために、僕は小豆沢さんに疑問を投げかけた。
「い、今までイベントに出たこともなくて……音楽の授業でしか歌ったことがなくて……」
『……え?』
小豆沢さんの返答に、僕と彰人の声が重なった。
(と言うことは完全初心者……よく言えば期待値無限大。でも、悪く言えば……)
それ以上考えるのは止めた。
考えるだけでもどんどんと悪い方向に行ってしまいそうだったからだ。
ただ、一つ言えるのは
「……へぇ」
そういうタイプは彰人が一番嫌っているということくらいだろう。
現に、隣から小さく聞こえてきた声は冷たく棘があった。
「え?! イベント経験無くてあれだけ歌えるなんて凄いよ、こはね!」
そんな彰人の様子に気づくことなく、杏さんは目を輝かせていた。
「人前で歌うのだってきっと慣れるって! そしたら彰人達にも負けないよっ」
「………じゃあさ、一つ提案なんだけど」
そして、それまで沈黙を保っていた彰人が声を上げる。
「次のイベントに出ない? オレたちと」
「え!? イベントに?!」
提案を受けた小豆沢さんが驚きの声を上げる。
「せっかく組んだわけだし、同じ夢を持つ者同士、一緒のイベントに出ようよ。実は、オレ達が来月出るイベント、出演するグループが一組出れなくなって一枠空きがあるんだ。場所はREDだけど、どうする?」
「「……」」
何も知らない人が聞けば、彰人の提案はチームを組んだ二人へのプレゼントとも捉えられる。
だが、僕はそうでは無いことを知っていた。
そして、多分杏さんもそれを知らない。
「REDか……確かにあそこならそこまで大きくはないし、初めてのイベントだったら最適だと思うし、出てみない? こはね」
「で、でも……来月なんて」
彰人から伝えられたライブハウスの名前に、杏さんが賛成の意を示す。が、そんな杏さんの言葉に小豆沢さんが少し戸惑ったような表情を浮かべる。
「大丈夫! 一月も時間があるし、それに出る時は私も一緒だしね!」
杏さんの“私も一緒”という言葉に、それまで不安そうだった小豆沢さんの表情に心なしか笑顔が戻ったように見えた。
「……うん。それなら、できるかも」
「よし、決まりだね!」
そんな小豆沢さんの同意を得て、杏さんが嬉しそうにガッツポーズをする。
「じゃあ、向こうにはオレ達で話を通しておくよ」
「誘ってくれてありがと、彰人」
話がまとまったのを見計らって口を開いた彰人に、杏さんが感謝の言葉を述べる。
「どういたしまして。一緒のイベントに出るの初めてだから、楽しみだな」
「……」
ああ、彰人の顔がものすごく悪人っぽくなっている。
これは相当癪に障ったようだ。
その後、二人は注文していた物が出てきたので、それに手を付けると、足早に外に行ってしまった。
僕はそんな二人を、同じく出てきた珈琲に口を付けながら見送る。
「さて、早速イベントに出ることも決まったわけだし、歌う曲を決めよっか!」
「うん! そうだね」
(……さて、これからどうするんだろうか)
まるで奇跡のように舞い込んできた初イベントに沸き立つ二人の様子を見ながら、僕は今後の展開を想像すると、自然と頭を抱えてしまっていた。
(彰人は小豆沢さんのことをよく思っていないみたいだし)
そして、恐らくこの中で唯一彰人の本性を知っているであろう冬弥も、気づいて問い詰めているだろう。
小豆沢さんの口にしたあの言葉は、覚悟がなく遊び半分であると捉えられても仕方が無い。
『RAD WEEKEND』を超えることに掛ける彰人の思いは、僕もよく知っているつもりだ。
そして、半端な覚悟であの夜を超えるという事を非常に嫌うことも。
そんな彰人が、小豆沢さんのあの言葉に、よからぬ事を考えないわけがない。
(大方、初イベントで格の違いを見せつけるつもりだろうけど……)
幼なじみである僕には、彰人の狙いもおおよそ見当がついていた。
ならば、僕はどう動くべきか。
様子見を決めて、あえてオブサーバーに徹するか、それとも……
(いや、悩むまでもないか)
きっと彰人と一悶着あるだろうけど、それでも僕にはオブサーバーに徹するという選択肢はなかった。
「その前に、まず小豆沢さんに確認したいことがあるんだけど、良いかな?」
「え? う、うん。いい……よ」
僕が小豆沢さんに投げかけた言葉に、彼女はどこか困惑した様子を見せつつも応じてくれる。
そして、僕は小豆沢さんに、あることを告げるのであった。
どのユニットの話を読みたいですか?
-
Leo/need
-
MORE MORE JUMP!
-
Vivid Bad SQUAD
-
ワンダーランズ×ショウタイム
-
25時、ナイトコードで