夢を絶たれた作曲家   作:TRcrant

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大変お待たせしました、第3話です。
今回より第1章が始まります。

この章は、シリアスは少なめです。
……たぶん


第1章『夢見る作曲家』
第3話 悩み事


いきなりだが、僕はとてつもなく悩んでいる。

 

「はぁ……」

 

思わずため息をついてしまうほどに。

 

(どうしよう……)

 

考えても考えても答えなんて出てくることはない。

それでも、考えずにはいられないのだ。

 

「おい。人の横でため息つくなよ。こっちまで気分が落ち込むだろ」

「だって……」

 

そんな僕に冷ややかな目を向けながら注意してくる彰人に、僕は恨めしい視線を送る。

 

「いや、そんな目で見られてもな……涼介、今朝からもう30回以上もため息ついてるぞ」

「そんなには……ついてるかも」

 

今は放課後、学校に来てから考えてはため息を漏らしていたとすれば、軽くそのくらいはいくかもしれない。

 

「で、どうしたんだよ。悩みとは無縁なお前らしくねえぞ」

「別に無縁って訳じゃないけど……実は―――」

 

僕だって悩み事の一つや二つはあると思いながらも、僕は現在進行形で悩んでいることを彰人に話すことにした。

 

「取材?」

「うん。そうなんだよ」

 

話を聞き終えた彰人の言葉に、僕は頷きながら答える。

 

「何でも、作曲家としてのことをいろいろと聞きたいんだって」

「へぇ。別に悪くない話だとは思うが……何が問題なんだ?」

 

そう、ちょっとだけ聞いたところで問題はなさそうにも見える。

僕も、喜んで取材を受けていたと思う。

 

「対面……何だよね」

「あー、なるほどな」

 

すべてを察した様子で彰人が相槌を打つ。

そう、この取材は、対面取材。

つまり、実際に記者に会ってインタビューを受けるのだが、僕は名前や素顔を公表していないのだ。

理由は芸名と同様、恥ずかしいからというものだが。

 

「だから、この取材を辞退するべきか、変装して受けるかどうか悩んでるんだよ」

「電話とかの取材にはできねえのかよ?」

「うん。無理だって」

 

あのメールを見た僕は、すぐに事務所に連絡して対面以外の取材にしてほしいとお願いしたが、何でも先方が対面での取材を求めているようで、聞き入れてはもらえなかった。

 

「色々大変だな、そっちも。でもよ、別に普通に行ってもいいんじゃねえか? 別にそういうので売っているわけでもねえんだし」

「うーん……」

 

彰人の提案も、言われてみればそうだ。

僕は謎に包まれた作曲家というアピールポイントを持っているわけではない。

素顔をさらしたところで、何ら問題はないというのもわかる。

この取材も、僕の知名度をさらに高め、僕の夢の成就につながる一歩であるのは間違いないので、辞退は避けたい。

 

(でも……)

 

ふとよぎったのは、SNSに書き込まれていたコメントの数々だった。

あれが、現実でも言われるのではないかと思うと、かなり怖い。

 

「はぁ……まあ、涼介が受けたいんだったら、変装でもして受けてみればいいんじゃないか?」

「そうだね。やっぱりそうするよ」

 

結局、彰人の言った通りの結論になってしまうのだ。

 

「んじゃ、俺は帰るけど、涼介はどうするんだ?」

「あー、ちょっと職員室に行かないといけないから先に帰ってて」

 

せっかく一緒に帰れるというのに、そういう日に限って先生から頼まれごとをされるというのも、かなり間が悪い。

 

「わかった。そんじゃまたな」

「うん。また」

 

そんなわけで彰人と教室で別れた僕は、職員室に向かうのであった。

 

 

 

 

 

「失礼しました。……ふぅ」

 

頼まれごとを終わらせて職員室を後にした僕は、思わずため息を漏らす。

 

(成績のためにしてるわけじゃないけど、なんだかなぁ)

 

好きなことを堂々とするためには、いい成績を取っておかなければならない。

”良い成績”の基準がわからないので、勝手に学年成績上位10番以内にして日頃勉強をしており、今まで運よくかはわからないが、この基準をクリアできている。

とはいえ、優等生扱いされるのはいろいろな意味で少しだけ辛い今日この頃。

 

(さてと、この後暇だしWEEKEND GARDENにでも行こうかな)

 

家に帰るというのは、僕の中にはなくWEEKEND GARDENで杏さん達と話をするのもいいかもしれないと思っていた時だった。

 

「まじかよ?」

「ああ、マジだって」

 

階段付近に差し掛かったところで聞えてきたのは、取り留めのない話だった。

こっちに向かって階段を下りてくる二人組の男子たちは、ネクタイの色から、おそらくは先輩だろうと思う。

そんな男子たちの話の内容に興味もないので、僕はそのままその場を離れようとした。

 

「男子なのか女子なのかわからねえ格好してるんだぜ。それにめっちゃ可愛い」

 

(ん?)

 

だが、続いて聞えてきた男子生徒の言葉に、僕は引っ掛かるものを感じてその足を止める。

 

(男子か女子かわからない格好? もしかして、変装とかか?)

 

”男子か女子なのかわからない”という部分のニュアンスがどうにもあれだが、もし変装しているのであるとするならば、僕のこの問題を解決に導いてくれる可能性もあるのではないだろうか?

 

「あの、すみません」

 

僕は結論を出すと、すぐさま踵を返して二人組の男子生徒に話しかける。

 

「あ?」

「なんだ?」

「さっき話していたこと、教えていただいてもいいですか?」

 

話しかけられた男子生徒は、突然のことに若干警戒した様子でこちらを見ていたが、僕はそれを気にせずに単刀直入に用件を切り出す。

 

「別に構わないけど……」

 

若干警戒した様子ではある物の、男子生徒はその噂話をし始めるのを、僕は静かに耳を傾けるのであった。

 

 

 

 

 

「ありがとうございました」

 

話を聞き終え、そそくさと去って行く男子生徒達にお辞儀をしてお礼を言いながら見送った僕は、二人の背中が見えなくなったのを見計らって頭を上げる。

 

「それにしても……どっちか分からない格好をしている生徒……か」

 

先ほど聞いた噂の内容を思い出しながら僕は静かにつぶやく。

 

――曰く、その生徒は服装がどっちなのかがよくわからない感じ。

――曰く、その人物は1年生である。

 

それが先ほど聞いた噂話の内容だった。

 

(もしかしたら、これ行けそうだな)

 

その噂を聞いた僕は、今の自分の悩みごとを解決させてくれる可能性があるのではないかということを考え始めていた。

 

「となれば、情報収集……と行きますか」

 

取材まで残り13日、僕は取材を乗り越えるための一大作戦を決行するために行動を開始するのであった。




いかがでしたでしょうか?
今回は今までに比べると短めになりましたが、大体このくらいの長さを基準に書いていく予定です。

彰人のキャラが若干、崩壊気味ではありますが(汗)
うっすらと存在だけ出てきたあの人物ですが、主に性別的な理由で、このような感じの噂の内容になりました。
原作でちゃんとした噂の内容が出ていた場合は教えていただけると幸いです。


それでは、また次回お会いしましょう。
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