第6話になります。
今回、あの人が登場します。
学校を後にした僕は、ある場所を訪問するために移動していた。
とはいえ、手ぶらで移動するのもはばかられたので、近くのコンビニに寄って手ごろな手土産を購入することにした。
(うーん、どれにしよう……)
コンビニで手土産品を買うなんて……そう思われそうだが、最近のコンビニはレベルが上がっており、手ごろな価格帯の物もあれば、そこそこ値の張る質の良いものまでと幅広い品があるのだ。
特に進物はその傾向が強い。
(あの人的にはこっちのカップ麺がよさそうではあるんだけど……)
前に、カップ麺6種類がセットになった物を追加で渡したところ、ものすごく喜んでいたのを思い出した僕は、カップ麺売り場に向かおうとするが、すぐに思いとどまる。
(うん。やっぱりカップ麺はないな)
「ん?」
そう思ってお目当てである進物が陳列されている場所に向かおうとした僕の目に、ある商品が留まる。
そこは、売れない商品などを売り切るために用意されたコーナーで、色々な商品が酒類問わずに陳列されていた。
主に置かれているのはお菓子や雑貨品などが多いが、その中でも興味を引かれたのは、何の変哲もなさげなトランプだった。
「へぇ、マジック用のトランプなんだ」
”これで君もマジシャンだ”
そんなキャッチフレーズが書かれた外箱のトランプは、マジック用の物らしく、相手の手に取ったカードを当てる手品などに使えるという説明文が書かれていた。
(これ、もともと2千円もしたの!?)
十年以上前にやったドラマとのコラボ商品らしいが、一体どのくらいの期間売れ残っているのか、値段はペットボトルの水を2本ほど買える値段にまで割引されていたのか、外箱の隅のほうに値札シールがぎっしりと貼り付けられていた。
(なんだかおもしろそうだし、彰人相手にやってみよ)
ちょうど最後の一個ということもあり、僕は彰人をからかう目的でそれを買うべく手に取ると、今度こそ進物商品を見るべく移動するのであった。
(着いた)
「時間も……うん、大丈夫」
コンビニを後にして移動すること数十分。
ようやく目的地である病院の前にたどり着いた僕は、時間に間に合っていることを確認してほっと胸をなでおろした。
(ここで待っていれば確実なんだけど)
「乾さん」
そう思っていた矢先にかけられた女性の声に、僕はその方向を見ると待ち合わせている相手の姿があった。
「あ……宵崎さん」
「ごめん、待った?」
待ち合わせの相手である、腰まで伸びた銀色の髪にジャージ姿の少女……宵崎さんは僕にどこか申し訳なさげに聞いてくる。
「いいえ、ついさっき着いたばかりですので」
やり取りだけ聞けば、待ち合わせのカップル同士そのものだが、残念ながら僕たちはそういう関係ではない。
「じゃあ、行こうか」
「ええ」
宵崎さんに頷いた僕は、彼女の後をついていくように病院へと足を踏み入れる。
勝手知ったるなんとやら……病院の廊下を歩いた僕たちは、ある病室の前で立ち止まると閉じられている病室のドアを開けると、静かに病室内に入った。
「お父さん、また乾さんが来てくれたよ」
ベッドに近づきながら話しかける宵崎さんだが、ベッドに横たわる男性……宵崎さんの父親は目を閉じたまま反応を見せない。
「……寝てる」
何度かお見舞いに来てはいるが、宵崎さんの父親が起きていたことは一度もない。
「着替え、ここに置いておくね」
どこか寂しげで、悲しい声色で宵崎さんはそう言うと、替えの服を置いていく。
「じゃあ、また来るね」
眠っている父親の邪魔にならないようにするためなのか、宵崎さんは着替えを置くと静かにそう言って踵を返す。
「また、来ます」
滞在時間わずか数分。
それがいつもの僕のお見舞いだった。
寝ているところを邪魔するのも申し訳ないのと、家族である宵崎さんを差し置くのは、なんだかマナー違反なような気がした。
いつの日にか、じっくりと話ができるようになればと思いつつ、僕もまた眠り続けている宵崎さんの父親に静かに言うと、軽くお辞儀をして病室を後にするのであった。
「はい、お土産……と言っていいかはわからないですけど。受け取ってください」
「うん。いつもありがとう」
病院を後にして、周りの迷惑にならない場所まで移動した僕は、持参していたお土産(結局カップラーメンセットとお菓子の詰め合わせ)を手渡すと、うれしそうな表情でお礼を言ってくれた。
「いや、こっちこそ。どこの誰かも知らない僕を助けてくれた時は本当に助かりましたので、お互い様ですよ」
僕と宵崎さんが知り合うきっかけは、少し前のことだった。
父さんを超える作曲家になるという夢を叶えるため、勉強を兼ねて色々な人の音楽を聴いていた僕が、聴いただけで引かれた作曲家が宵崎さんの父親だった。
その作曲家のことを調べたところ、その人が入院していることが判明し、交流サイトなどの情報で入院している病院を特定したためお見舞いに行ったのだが
『申し訳ありませんが、ご家族の方以外にはお教えできない決まりとなっております』
受付の人に宵崎さんの病室を聞いたところ、そのような答えが返ってきた。
病院側も、赤の他人である人物に病室を教えることは様々な観点からできないのは当たり前のことだった。
『そこをなんとか、宵崎さんの病室を教えていただけないでしょうか?』
でも、当時の僕は物分かりが悪かった。
故に、食い下がったのだ。
『君、いい加減にしないと――――』
『あの』
ついに受付の人が我慢の限界を迎えたのか、言葉を強めようとしたところで、横から声を掛けられた僕がその方向に顔を向けると、困惑した様子の少女の姿があった。
『父に用……ですか?』
それが、彼女……宵崎奏さんとの出会いであった。
「びっくりしたよ。お父さんを訪ねてくる人初めてだったから」
「あはは……あの時は本当にお騒がせしました」
実際、宵崎さんが来るのが遅かったらかなり僕はやばいことになっていたような気がするので、笑えなかったりするが。
それはともかく、宵崎さんの承諾を得たこともあって、一緒に病室に言って念願のお見舞いをすることができるようになった。
それ以降も、月に一度ではある者の宵崎さんと病院の前で待ち合わせをしてお見舞いに来ているのだ、
故に、宵崎さんには頭が上がらなかったりする。
「でも、早くよくなるといいですね」
「……そう、だね」
当時のことを振り返りながらも、未だに改善の見込みがない宵崎さんの父親の様子に、僕はぽつりと言葉を漏らすと宵崎さんは言葉を詰まらせた様子で相槌を打つ。
「……?」
「ごめん、ちょっとやることがあるから、今日は帰るね」
「あ、うん気を付けて」
いきなり変わった宵崎さんの様子に、僕は気にはなりつつも彼女を見送る。
どこか苦しそうで、今にもどこかに消えるのではないかと思うほどに儚い宵崎さんの様子に、僕はどこか違和感を感じつつも彼女の姿が消えるまでその場に留まるのであった。
やはり、作曲家という立ち位置ならば、彼女が出てくるのが自然かなということで、東條となりました。
そして、早いようですがアンケートを実施したいと思います。
読んでみたいユニットを選択してください。
*まだメンバーが登場していないユニットがありますが、この後しっかりと登場する予定です。
基本的にシリアス度は一番軽いのが『Leo/need』、一番重いのが『25時、ナイトコードで』になります。
期間は現時点で次の章が終わるまでとさせていただきます。
皆様のご意見、お聞かせください。
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Leo/need
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Vivid Bad SQUAD
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ワンダーランズ×ショウタイム
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25時、ナイトコードで