夢を絶たれた作曲家   作:TRcrant

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大変長らくお待たせしました。
第7話です。


第7話 接触とお願い

ついに訪れた翌日の放課後。

僕は、杏さんに言われた通り昇降口で暁山さんが来るのを待っていた。

 

(果たして、どんな人が来るのやら……)

 

期待とかわくわくとかよりも、ハラハラ感が強いけど、僕は相手が来るのを待ち続ける。

 

「キミがボクに会いたいって人?」

「ん?」

 

ふとかけられた声の方向にいたのは、ピンク色の髪を赤いリボンでサイドテールにまとめた人物だった。

服装は女子用の制服で、どこも可笑しな個所はない。

 

「えっと、君が暁山、さん?」

「うん、そうだよ。初めまして、かな。ボクは暁山瑞樹。よろしくね」

 

どうやら、目の前の人物が目的の人物で間違いはないようだ。

 

「僕は乾涼介。今日はわざわざ来てもらってすみません」

「ため口でいいよ。同い年なんだし。で、ボクにどんな用?」

 

中々にフレンドリーで、想像とは全く異なる人物なだけに、色々と混乱してはいるが、暁山さんが本題を切り出してきたので、僕は頭を切り替える。

 

「ここだと人目があるから、人目のない屋上に移動しない?」

「……別にいいよ。それじゃ、行こうか」

 

人目の話をした瞬間、どこか警戒したそぶりを見せた暁山さんは、僕の前を行く形で校舎に入っていく。

それに僕も続くのであった。

 

 

 

 

 

「誰もいないね」

「そうだね」

 

屋上にたどり着いた僕は暁山さんの言葉に、僕は緊張を隠すことができなかった。

自分で誘っておいてなんだが、これからする話は下手をすれば変人に思われても無理はない。

 

(さすがに、ここの変人ワンツーに名を連ねたくはない)

 

しかも、そう呼ばれている人物の一人と知り合いであるだけに。

ここでは一応品行方正な優等生、という感じで先生たちには通しているので、それを変えるようなことはできる限り避けたい。

 

「で、用件ってなに?」

 

相手も、あまり長話をするつもりはないようで、警戒した様子で本題を訪ねてくる。

 

「この学校で暁山さんに関する、愚にもつかない噂話が流れているのは知ってる?」

「………うん、知ってるよ」

 

(なんだ? 彼女の雰囲気が変わった)

 

噂についての話を始めた途端、暁山さんの魔塔雰囲気が一変した。

それまでは、どこか友好的なそれが、一気に真逆の物へと変貌したのだ。

 

「単刀直入に聞くけど、その噂に相違はない?」

「……ないって言ったら?」

「………」

 

こちらを射抜くような、冷たい目を前に、僕はただ見つめ返し続ける。

僕にとって重要なのは、この問いかけの答えなのだから。

 

「……杏の知り合いだからそう言うこと聞かないと思ってたんだけどなぁ」

「杏さんは関係ないでしょ。それに、言ったはずだよ。”愚にもつかない噂”って。僕が知りたいのはこれが違うのか否かだけ。それ以外には興味もないし聞くつもりもない」

 

杏さんの名前を出してくる暁山さんに、僕はそう反論する。

正直、あまり杏さんに迷惑を掛けたくないし、彼女のことを探るつもりはない。

 

『面白半分に人のことを探るのは、相手を傷つける行為だから、辞めることを推奨するよ』

 

類先輩の忠告が僕の脳裏をよぎる。

 

(本当、類先輩ってすごい人だ)

 

もしかしたら、この状況を先読みしていたのではないかと思う忠告の内容に、僕はどこか恐ろしさを感じずにはいられなかった。

でも、ここで引き下がるわけにはいかない。

 

「違うならそれでいいんだ。僕にとっては関係のないことだし」

「関係ない? それはどういう意味かな?」

「言葉の通りだよ。僕は君の噂について興味がない。それだけのこと」

 

僕の返答を聞いた暁山さんは、少しの間沈黙した後、口を開く。

 

「へぇー、面白いこと言うね。あんなことを聞いておいてボクに興味がないなんて。そんなこと言われたの初めてかも」

 

暁山さんは楽しそうに笑いながら、僕の目の前まで近づいてくる。

その表情からは、何を考えているかを伺うことができないが、目が笑っていなかった。

 

「だって、そう言う格好をしている理由なんて、聞くまでもないし」

「……へえ」

 

僕は口にして地雷を踏んでしまったのかと一瞬思ったけど、一度口から出てしまった言葉を戻すことはできない。

 

「何らかの事情でその格好をするようにさせられているか。もしくはその格好をしなければいけない事情があるかのどっちかなんだし」

「……っ!」

 

僕の言葉に、暁山さんは目を見開いて驚く。

 

「まあ、どっちだとしても僕にとっては問題はないんだけどね。さっきの質問はほんの小粋なトークとでも思ってほしい」

「小粋なトーク、ねぇ……。キミは一体何者なのかな?」

 

暁山さんの言いたいことはなんとなくわかる。

小粋なトークの話題として、あれは不適当だということくらいは。

 

「それで本題なんだけど。暁山さんのファッションセンスを見込んで、僕にコーデをしてほしいんだ」

「ボクに? 」

 

暁山さんは、不思議そうに首を傾げて尋ねてくる。

 

「僕の周りにいる人たちは、みんなファッションセンスがいいんだが、今回のテーマみたいなやつには向いてないんだ」

 

実際、杏さんにお願いするとストリートファッションになりそうだし、彰人に関しては頼んでも断られる可能性が高い。

……まあ、なんだかんだ言って引き受けてくれそうだけど。

 

「なるほど……ま、いっか。そのお願い、引き受けようじゃないか」

「ありがとう。助かるよ」

 

もしかしたら駄目なのではと思っていたが、案外すんなりと承諾してくれたことに僕は内心ホッとする。

これで断られたら、僕は最終手段に打って出るしかなくなっていたのだから。

 

「それで、いつにするの?」

「今週の日曜はどう?」

 

僕は暁山さんに尋ねると暁山さんは、顎に手を当てて考える仕草をしたあと、

 

「じゃあ、日曜日にショッピングモールで集合でいい?」

「うん、大丈夫」

 

ショッピングモールにはいろいろなお店があり、あそこならばお目当てのものは簡単に買いそろえることができるだろう。

 

「オッケー。じゃ、連絡先を交換しよっか」

「わかった」

 

僕達はスマホを取り出すと、お互いの連絡先を交換する。

 

「よしっと。それじゃ、また日曜」

「うん、それじゃあ」

 

お互いに別れの言葉を交わした後、屋上から立ち去る暁山さんを見送る。

こうして僕は、何とか目的を成し遂げることができたのであった。




長期間投稿できなくてすみませんでした。
今後、この作品も力を入れて書かせていただく予定ですので、次回も楽しみにしていただけると幸いです。

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