戦争の犠牲者がいるように、平和の犠牲者もまた存在する……
悪夢再来!!
辺境惑星にて、分離主義者の新型クルーザー開発の情報を入手したジェダイ評議会は、オビ=ワン・ケノービに秘密造船施設の破壊を命じた。マレボランスによって手痛い代償を支払った共和国としては、同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。
一寸先も伺えない砂煙の中、ブラスターの閃光が瞬く。青赤、赤青、青青赤赤。
「ぐあー!! ……」
隣から兄弟の叫び声がした。
ひりつくような恐怖が足元を伝いながら、しかし誰もがその場から逃げ出そうとはしない。
なぜなら俺達が兵士だからだ。
平和を守護する、共和国の防人。
この誉れある役目の背後には、罪もない民間人が大勢いる。
俺たちが倒れれば、次は彼らの番。
だから俺たちクローンは、今ここで逃げ出すわけにはいかない。
止めどないブラスター音の間、ヘルメットの真横を赤いレーザーがすり抜けた。
数センチ銃口が違っていたら倒れ伏していた未来を想像するも、しかし臆することなく光った閃光のその先にいるであろう、見えない敵に向かってブラスターを連射した。
次の瞬間、あれだけ鳴り響いていたブラスター音が突如として鳴り止む。
勝敗が決したのか? 本部からの連絡は? ヘルメット越しからの景色は、未だやまない砂嵐の中で、俺だけが世界から取り残されたような不気味な静寂だけが漂うのだった。
「誰かー!? 誰かいないのかー!!」
虚しくも響き渡る声。
チリチリと装甲服に砂があたる感覚。
司令部が落とされ、共和国はこの地域での支配能力を喪失したのか? 残された俺たちは、一体どうなる? ここからどこに向かえば良い? 残存兵力の合流地点は? どれだけの見方が残っているんだ? ……もしかして、残っているのは俺だけなのか?
「どうした兄弟。大丈夫か?」
肩越しに伝わる硬いアーマーの感触。
よく聞き慣れた仲間の声。
それだけで、俺は見失っていたはずの自分を取り戻し、”あぁ、悪い”と頭を振るった。
「敵の攻撃が止んで位置が掴めなくなったんだ。この視界不良じゃろくにブリキ野郎の見分けが付かない」
「いや、ドロイドの攻撃が止まった今がチャンスだ。視認距離まで近付いて、ブラスターを食らわせてやれば良い。……野郎ども!! 今が切り込むチャンスだ!! 分離主義者どものドロイドを蹴散らしてやれ!!」
「おお!!」
「兄弟につづけー!!」
「共和国の為に!!」
「突っ込め!!」
「この戦い勝てるぞ!!」
「まだまだいけるぞ!!」
視界を一色に染めてもなお届く仲間たちの声。
俺たちは死をおも恐れぬ、共和国のクローン軍団。
民主主義を守る兵士たち。
たとえ俺が撃たれ倒れようとも、意思を継いだ兄弟たちが、必ずこの戦争を勝利に導いてくれる。
だから、俺は戦える。だから、俺達は戦えるんだ。
「うぉぉぉお──────!!」
ドロイド共は相変わらず見当たらない。
いや待て、だんだんと光が見えてきた。
どうやら砂嵐を抜けるようだ。
これでまともに戦うことができる。
光が大きくなる方向に駆け出していけば、そこには──────……。
編隊を組んだ共和国軍戦闘機が曲芸飛行をしていた。
都市には紙吹雪が舞い、所狭しと並んだコルサントの住民が歓声を上げている。
分離主義者の影も形もない、皆誰もがこの戦争の終結を祝っているかのようだった。
メイン通りを行進するクローンの行列が見える。
一死乱れぬ挙動で目の前を通り過ぎていく。
そうか……戦争は終わったのか。
俺たちの役目は、終わったんだな……よかった。
感慨深くなって、この光景を自らの目で見たいとヘルメットを取ると、周囲の異変に気が付いた。
割れんばかりの拍手喝采は、よく聞けば市民が武器を構える音であった。
彼らは一様に兄弟を睨み、慣れない手つきで銃を握り、戸惑うことなく引き金に手をかける。
「嘘だ! そんな! どうして!!」
コルサント中から真紅のレーザーが大通りに殺到する。
歴戦の猛者であるクローン兵達はまだ誰も気が付かないのか、誇らしい行進をやめようとはしない。
「やめてくれ! 俺達は敵じゃない!!」
一人、二人……やがて数え切れないほどの死体が積み上がっていく光景に、悲痛な叫び声だけが轟いた。
市民をタックルで取り押さえても、インカムで通信を呼びかけようとも、誰もこの非常事態に応えてくれる者はいなかった。
自分ではもうどうすることもできないとジェダイを、ケノービ将軍はどこだと視線を這わせていると、見覚えのある後ろ姿が市民に紛れていることにふと気がつく。
「おい貴様!! なぜここにいる!! ヌート・ガンレイ!!」
肩を荒々しく掴んで振り返らせ、シワの入った気色の悪い肌とゴキブリを埋め込んだような不快な瞳を確認し、持っていたブラスターを突きつける。
すると、分離主義者の幹部は、銃口を向けられ焦ることもなく、やれやれといった具合に首を振った。
「もう戦争は終わったんだぞクローン。これは重大な協定違反だ!」
「これは貴様が仕組んだことなのか!! それなら今すぐやめさせるんだ!!」
「貴様は何か勘違いしているようだなクローン、今の分離主義勢力に武力と呼べるようなものは残されていない。だがこれは分離主義に限った話だ!! 共和国はいまだに戦力を保有している。次の戦争を起こさない為にも、用済みになったクローン共には消えてもらわねばな」
「嘘だ、こんなの信じられるか!! 何かの陰謀に違いない!!」
「クローンの戯言なんぞどうでもいい。……だがお前達が守るべき市民は、どうやらそうは思っとらんようだがな?」
言われて周囲を見れば、多種族の視線を一身に受け止めていた。
そこには説得できるような理性的な表情をしている者は一人もおらず、誰もが黒い銃身を撫で憎しみの表情でこちらを見ていた。
平和の時代に不釣り合いな俺達クローンの存在を消したがっている。
「やめ、よせ!」
弁解を挟む余地もなく、市民が持ったブラスターは火を噴き出す。
殺到する攻撃にアーマは弾くを繰り返し、もはや抵抗する意志もないクローンに最後の一撃が加えられようと……──────。
──────
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「──────ス」
「──────レース」
「おいレース。どうした? 大丈夫か? 随分うなされてたみたいだぞ」
「いや……なんでもない」
「ケノービ将軍からの呼び出しだ、さっさと支度しろよ」
「あぁ、わかった、すぐ準備する」
最悪の目覚めだ。
ヴェネター級スター・デストロイヤーの兵舎で、グッショリと濡れて不快になった服を着替えながら、すぐ目の前に迫る戦闘に頭を切り替える。
戦場に余計なものを持ち込む奴は、まず真っ先に死ぬ。
そんな教官の言葉をいま一度頭に擦り込んで、他の兄弟達の足を引っ張らないようにと、感情が外に漏れ出さないようにヘルメットを早々に被った。
どこもおかしくないよなと一度自分を姿見に映し、愛用のDC-15Sブラスターを手に馴染ませてから、司令室へと進路を取る。
銀河共和国兵站部門じゃないのは気分です。
・・・・また死蔵しそう。