「よし、みんな集まったな。これより作戦概要を説明する」
そういって、ケノービ将軍は顎髭を撫で、司令塔に備え付けられた大型ホログラムを起動した。直後に一つの惑星が青一色で立ち上がる。
「今回の行先は、アウターリム中域に位置する惑星ブルーノだ」
「……お言葉ですが将軍、そのような記録は共和国データベースに記録されていないのですが」
「ああその通り。コーディーの言うように、この惑星は公の記録に載っていない。あまりにも危険すぎるからな」
「危険、とおっしゃいますと?」
「常に高熱の水蒸気が惑星全体を覆っていて視界不良、呼吸困難、生物はいないとして共和国の管理下からは外されている」
「常時視界が開けないんじゃ、調査も一筋縄とは行かないでしょう。だがそれが返って、分離主義者にとって格好の隠れ蓑になる、と」
「報告によると定期的に小型輸送船が出入りしていたそうだ。奴らは我々を警戒して、物資の動きを最小限にとどめていると見た。そして問題なのが、その動きが最近しばらく途絶えているらしい」
「では敵の新兵器は既に……」
「敵の動きが小さく発見は遅れたが、その線はないだろう。実戦配備するにしても、実際に航行させてみなければわからないことも多い。だが完成が間近なのは私も同意だ」
今更『危険』の文字に怯む俺達じゃないが、また骨が折れそうな任務が回ってきたとひとりごちる。惑星全体を覆うような豊富な水分に恵まれていそうだが、それでも故郷の景色とは似ても似つきそうもない。
ケノービ将軍は難しい顔を緩め、無邪気な子供のような笑みをコマンダーに送った。
「コーディー、言った通りの精鋭は準備できているのかな?」
「はい将軍、飛び切り上等なのをご用意しました」
「こうも視界不良じゃ大規模な連携は取れそうもない、よって少数による隠密作戦を仕掛ける」
「異論はありません」
ホログラムは移ろい、次に各々の持ち場が示された。
部隊は三つに分かれており、ケノービ将軍が指揮する第一班、コマンダーが指揮する第二班、そして俺が受け持つ第三班。全班で素早く施設の捜索を行ない、侵入経路や細かな割り当ては等は、全貌を確かめてからもう一度作戦を立てることに決まる。
「最重要目標は敵施設の破壊だ。開発データが外に漏れてしまえば、後々共和国全体が苦しむことになる。先遣隊の情報を頼りに造船所を見つけ出し、爆弾を設置、離脱後に爆破する。最悪の場合は新兵器を行動不能にすることに専念しよう。それと、これは評議会に言われたわけではないのだが……」
「なんでもおっしゃってくださいケノービ将軍。我々は最高のチームです」
「できればこの開発に協力しているクオレン達を捕まえたい」
「その程度でしたら朝飯前ですよ」
「ありがとう。まだ彼らはこちらに気が付いていないだろう。この戦争を早く終結させるためにも、できることなら逃したくない」
「聞いたなトルーパー、ドロイドと間違えて撃ったりするなよ」
「俺達がそんな間抜けに見えますかコマンダー」
「ドロイドは蹴散らす、クオレンはしょっ引く。なにも難しいことはない」
「ハッハッハ」
「よし、それじゃあ仕事を始めるとしよう」
みんなは笑いながらハンガーに向かうが、俺の心は晴れることはなかった。
ケノービ将軍がいった"戦争を早く終わらせたい"。それが世論の声を代表している。戦場にこそ俺たちの居場所があるのに、その居場所を今から俺達が刈り取りに行くのがそんなにおかしいのか?
「どうしたレース浮かない顔だな。なにか作戦に不満でもあったか?」
「いいえコマンダー! あいやその、少し悩み事がありまして……」
「なんだ、いってみろ」
「コマンダー。あなたはこの戦争が終わった後、どうするおつもりですか?」
「どうやらこの戦争を無事生き抜く自信があるようだな軍曹」
「いえそんな、滅相もない!! ただ、俺達クローンから戦うことを取り上げたらどうなるのか、気になってしまって……」
「俺たちはカミーノアンに作られ、ジャンゴ・フェットから遺伝子を分けたクローンだ。前線にすかさず送り込めるような成長性と教育がなされ、共和国の最高の兵士として今なお配備されている。それ以上でも、以下でもない。レース、終わった後のことなんて今は考えない方がいい。いつか来るその時になれば、いやでも考えることになるんだからな」
「はぁ……」
「悪いが今の俺にはこれしか言えない。すまないなレース、お前の力になってやれなくて」
「いえ、答えていただきありがとうございます。コマンダー」
眉を八の字に曲げ、心配そうに肩に手を置いたコマンダーに敬礼し、その後ろ姿を見送った。兵団クラスを指揮する司令官でも、どうやら答えは簡単に出せそうもない。
共和国はクローン軍団によって財政が悪化傾向にあることを知っている。
勝利のためと奮起することは間違ってはいない。だが、戦争が終わってしまえばここぞとばかりに手を返されないとも限らない。
腐敗が進みつつあるという元老院の良心を信じる。それしか一概の兵士に残された手段はないのか。
「クソッ」
こんなにモヤモヤするのはジオノーシス戦以来だ。だがここでクヨクヨ悩んでいても、戦争は待ってくれるわけもなく。俺達が生まれた義務を果たしにいかなければ。
隊のみんなに余計な心配をかけさせまいと、誰もいなくなったホログラムルームの扉を開けて、ハンガーへの道を急いだ。