IF.皇帝の幻の遠征計画と半人半バのお嬢様   作:なすび。

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大変お待たせしました。
前半ルドルフ視点、後半トレーナー君視点です。


【幕間】カレー日和と大博打

――20××年+1 3月後半某日 午後19時半頃――

――トレーナー寮 405号室――

 

 

 今朝トレーナー君と出会ってあいさつした際に、髪や衣服からあのカレーの匂いが微かにした――。きっとグルメな彼女の事だから前日に仕込んでいたのだろう。

 

 久しぶりにトレーナー君の作るカレーが食べたくなった私は、打合せしたいこともあった事だしそれもひっくるめて打診すべく彼女に声をかけた。

 すると『生徒会の仕事をして、さらに打合せの後に遅くに帰って寝るじゃ大変だから泊っていきますか?』というトレーナー君の提案に乗ることになった。私は外泊届けを出し簡易お泊りセットが入ったトートバッグを片手に、彼女の寮に転がり込んだという訳だ――。

 

 先に風呂も頂き、モスグリーンのシルクパジャマに着替えてから髪の毛を乾かし、ランドリーバックに仕舞って脱衣所の隅っこに置いた――。

 

 脱衣所出るとカレーを温め始めているのか廊下にもいい匂いが漂っている。そしてリビングに繋がるドアを開くと、その香りはよりはっきりと感じ取れそして私の鼻先をくすぐっていった。

 そして『お腹が空いた』と言わんばかりに私の腹の虫が小さく主張する――。

 4~5歩ほど歩いて軽く首を右に向けて見やると、その視線の先のキッチンには、シンプルなまとめ髪にジャケットだけ脱いだトレーナー君が、おたま片手に鍋をゆっくりかき回していた。

 

「先にお風呂頂いたよ。ありがとう」

 

 そう声をかけると彼女は集中していたのか鍋から視線を外し、気配に気づいてゆっくりとこちらを向いてほほ笑んだ。

 

「いえいえー。今お夕飯を温めてる所だから少しかかります。15分から25分くらい掛かりそうだから、ルドルフはソファーでゆっくりしててください。今日も1日お疲れ様です」

「トレーナー君こそお疲れ様、気遣いありがとう。そうさせてもらうよ」

 

 そう返した後私はダイニングキッチンを通り過ぎ、リビングの中央に配置された優しい色合いのコーナーソファーラグに、ゆっくりと腰を下ろし背をもたれた――軽く体重をかけると低反発素材の柔らかな感触が疲れた私の背中をそっと支えてくれる。

 

"――食事前にメールボックスなどを整理しておくか――"

 

 そう思った私はナイトウェアのポケットからスマートフォンを取り出すが、それとほぼ同時にキッチンにいるトレーナー君から声がかかった。

 

「そういえばルドルフ、私気になることがあるんですよ」

「なんだい?」

「どうして私がカレーを作ってるって昼間気付いたの? 」

 

 トレーナー君はダイニングキッチン越しに小首をかしげつつ私にそう尋ねてきた。

 

「気付いた理由は君からとても美味しそうなカレーの匂いが香っていたからだ。仕込んだ翌日の朝に火入れしていたのが付いていたんじゃないか? 君が作るカレーは一般的なカレーとは若干異なる香りがするからすぐわかるんだよ」

 

 私がそう返すと『なるほどぉ』と感心したようにトレーナー君はエメラルド様の瞳を丸くした――。

 

「ほえー……ウマ娘の嗅覚って細かいですねぇ。――ルドルフは香りで違いが分かる位よっぽど私のカレーが好きなんだね。やっぱり教えた通りの感じになりませんでしたか?」

 

 トレーナー君お手製のバターチキンカレーとの出会いは、年末年始に泊まりに来た際に出されたことが始まりだった。そのレシピはインドから進学してきたウマ娘直伝のものを、日本風にアレンジしたのだという。

 

 作り方はバターで琥珀色になるまで玉葱を炒め、野菜と合わせて軽く火を通し、市販のルーに各種スパイスを微調整で追加。そしてトマト缶とマンゴーチャツネ、前日からヨーグルトに漬けて寝かせたチキンと水を入れてコトコトと煮込んで作る。

 乳製品のコクとまろやかさ、唐辛子のパンチ力が絶妙なバランスで成立したそれはとても美味しかった。

 

 カレーというものは余程の事が無い限り不味くは作れない。

 

 しかし、それ故に飛びぬけた美味しさにもなり辛い。気に入った私はトレーナー君からレシピを教えてもらって練習したがあの味には結局近づけなかった。

 

「10回ほどチャレンジして似たようなものはできたのだけれど、どうもしっくりこなかった。どうしても食べたくなって昼にカレーを食べたのだが何かが違うし、作るにも忙しくて疲れてるしで相談ついでに君にお相伴に与るほうが楽だなといったところだ」

「まあトレーニングとか生徒会とか予定詰まり過ぎていましたしね。私も疲れてるときは外食行っちゃうし、そんな気分ならしょうがないなぁー」

 

"――しょうがない、しょうが……ふむ?――"

 

 これはいいダジャレが思いつくかもしれない! そう思った私は頭の中のボキャブラリーの引き出しをひっくり返して即席のギャグを作りあげた。

 

「ああ、生姜の効いたいい匂いのするカレーの前ではしょうがないね」

「どうしようもないシャレはやめなしゃれー」

 

 乾いた笑いがトレーナー君のいる方向から響いてきた――私のダジャレの出来がイマイチだった場合、トレーナー君は先ほどの様な反応を返してくる。

 

「定番過ぎて不発だったか?」

 

 あまりウケなかったのが残念だが、私もひねりが甘いとおもったのでまあこんな所だろう。

 

「その生姜ネタは流石にしょうもない――って私のも微妙ですね。ダジャレ考えるのって案外難しい。あ、あとできるまで数分くらいかも? 食べ終わり次第相談を受けるから、先にメール確認とかしちゃってください」

「承知した――なんとなく音が無いのもあれだからテレビをつけてもいいかい?」

「どうぞどうぞー」

 

 トレーナー君は私の方を向いて笑みを浮かべた後、また手元の鍋をかき回すため彼女は下を向いた。

 

 テレビをつけると画面にはニュースが映し出され、私たちの存在を示す音以外に新たな音が空間に加わる――。

 そして食事の前にスマートフォンで生徒会目安箱や、メールボックスの内容を確認し自らのポケットに仕舞うと――。

 

「そうだそうだ! 大事な事忘れてた!! ルドルフ、イギリス行きの話なんですが、皐月賞後に飛行機のチケット押さえていいですか?」

 

 

 食器を取り出す音をキッチンから響かせながら、トレーナー君が遠征について話題を振ってきた――。

 

 

"――もうそんな時期か――"

 

 薄型テレビの右横に掛かるカレンダーを見ると今日は3月末日――。

 

 来月4月半ばに『皐月賞』、5月末に『日本ダービー』、そして7月末に女王陛下の庭(アスコット)で行われる『King George VI & Queen Elizabeth Stakes(キングジョージ6世&クイーンエリザベスS)』。

 

 今年は遠征があるので現地調整の都合上、夏合宿は出来るだけ準備をし生徒会は副会長の2人に任せるつもりだ。そして2週間以上前からニューマーケットに入り、ウォーレンヒルで最終調整を行ってから、シニア級だらけのヨーロッパ中距離王ウマ娘決定戦である7月末のレースに挑むことになる。 

 

「ああ、それで頼む。――そういえば、向こうにいる間の拠点は決まりそうかい?」

「知り合いがニューマーケットに持ってる家をウィークリーで借りたいけど、だだ……」

「ただ?」

 

 トレーナー君の言葉の歯切れが悪くなったので、キッチンの方を向くと彼女は八の字に眉を寄せ困り顔を浮かべていた。

 

「家具も揃ってて着替えと食料を持ち込むだけのいい条件で、静かな立地で文句なしなんです。でも、害はないけどリビングで遊ぶ子供の幽霊が出るそうでして……ここ以外となるとホテルで外食三昧か、不便な物件しか無く……」

 

"――はは! イギリスといえば幽霊が出る物件の方が人気と聞くが、まさかの幽霊か!!――"

 

 意外な事で思わず私は鼻で笑ってしまう。無邪気に遊んでいるだけの子供の幽霊くらいじゃ全く怖くない。寧ろ話のネタに見てみたいくらいだった。それに外食三昧よりは土地の食品を使って料理をしたりしたほうが気分転換にもなるだろう。

 そう思った私はトレーナー君に微笑み返し――。

 

「ただ遊んでいるだけの愛らしい子供の幽霊なら問題ないんじゃないか? イギリスの物件にはそういった憑き物が付き物というし、外食ばかりというのも飽きてしまいそうだからそこで構わないよ」

 

 コンロの火を止めた音がキッチン側から響きそれが私の両耳に届いた。そろそろ出来上がりだろうかと思って配膳の手伝いを申し出ようとする前に――。

 

「おや? 今のダジャレは絶好調ですね。なら滞在先は決定ということで、先方に伝えて押さえておきます。あ、サラダとか運ぶの手伝ってください。そろそろお夕食ができますよ」

 

 申し出る前にトレーナー君から頼まれてしまった。

 私は『承知した』と返し台所に向かうべく腰を上げると、キッチンの方から炊飯器を開ける音が響き、炊きたての香りがこちらまで漂ってくる。

 

 そんな美味しそうな夕食の気配に包まれる空間の中、私の気分は高揚していった――。

 

  ◆  ◇  ◇

 

「ご馳走様。とても美味しかったよ」

「はーい。――そういえば私に話があるって言ってたけど、どんな内容ですか?」

 

 2人で食器を片付けている途中、キッチンに向かうルートの前を歩くトレーナー君は、少し離れた後ろを歩く私を振り向かず私に尋ねてきた。

 

「女王の庭についての相談だ。特にKeith・Castrum(キース・カストルム)が担当しているFunctio(ファシオ)というウマ娘がキングジョージに参戦した場合を君は想定する?あまりに規格外過ぎて一人で考えるには手に余った――意見が聞きたい」

 

 シンクの中に置いてある水の張られた洗い桶に浸けようと、私から食器を受け取ったトレーナー君の動きが止まった――。

 

 そして食後のリラックスした彼女の表情は、仕事に真剣に取り組んでいるときの雰囲気に一変した。

 

「なるほど――その件についてはきちんと話をしなければいけないと思っていました。食後のお茶を淹れてくるから少し待ってください。お茶は何が良いですか?」

「そうだな。ほうじ茶があれば。食器を洗って食洗器に入れておくから、君はお茶を」

「ありがとう! 助かります」

 

 馳走になって何もしないのは良くない。そう思った私はトレーナー君がキッチンの端でお茶の準備をしている傍ら、シンクに浸けられている食器を予洗いして食洗器にセットするため、軽く腕まくりしてからスポンジと洗剤に手を伸ばした――。

 

 

 ――15分後。

 

 先に洗い終えた私から遅れてトレーナー君がジャガイモ柄のマグカップに入った、ほうじ茶を両手に2人分携えて戻ってきた――。

 

 テーブルの上にそのマグカップがふたつ置かれる。マグカップの口からは香ばしい匂いと、白いモヤがたなびき立つ。

 トレーナー君は『説明道具取ってくる』といって書斎に向かい、タブレットをもって戻って来て彼女は私の右隣に座った。

 

「お待たせしました。まず、アスコットで走るうえでの最重要注意点は簡潔に述べると――良バ場以上の堅良で相手が逃げた場合無理に追うのは、選手生命的な意味で自殺行為だという事。それを頭に入れておかねばなりません」

 

 いきなり物騒な注意が飛び出したので私は目を丸くしトレーナー君を覗き込んだ。

 

「――というと?」

「そうですね……ルドルフはイギリスの有名な観光名所White Cliffs of Dover(ドーバーの白い崖)が何で出来てるかご存じですか? これですね」

 

 トレーナー君が『Goggles』で検索して見せたのは、青い海から突然白亜の城壁の様に立ちはだかる断崖の映る風景写真だった。

 そこは有名な観光名所で地理学のテストにも出る。そのため私も知っておりすぐ答える事が出来た。

 

「確か石灰岩と硬い石英の類とか教科書で見たな――説明を続けてくれ」

 

 White Cliffs of Dover(ドーバーのホワイト・クリフ)――。

 イギリスの南側に広がる高さは約100m以上の垂直な未固結の石灰岩の断崖であり、イギリスの別名であるラテン語で白を意味するAlbion(アルビオン)の由来はここから来ている。イギリスを侵略者から守る世界有数の天然の要害だ。

 

「アスコットの路盤は石灰質な土壌も含む。良バ場以上の硬さは日本のと比べればコンクリートの上を走らされているようなもの。自分の限界をきちんと考えないと脚が一発で故障なんてこともあるんですよ。それでも戦えるように良バ場以上用の靴は既に履きならして貰っていますが、ツールに対する過信は禁物かと」

 

 アスコットやロンシャンに使われている洋芝は水仙の葉程ではないが、細めのニラのように幅広の葉で滑りやすい。そして茎と根が糸くずを丸めたようにめぐっており深くてフカフカしている。

 だが一見クッションが効いてそうで美しい緑の下は整地のされていない荒野――Heath(ヒース)だ。

 トレーナー君の説明や経験上から叩きつけられる脚に、カチカチに固まった地面の上を走るような感触が伝わるのが想像できる。

 

 日本のレースが競技としての完成形を目指しているものであるならば、英国のそれはウマ娘の原点――生きるために原野を走り抜くための力を試される。それが私が挑もうとしているレースだ。

 

「よそ者である我々の英国レース攻略を阻むのはイギリスを守る石灰岩というわけか。しかし年間を通して曇りがちで、英国などでは良以上になれば水を撒くと聞く――そんなに硬いバ場になるだろうか?」

 

 日本と降水量はほとんど変わらないが、曇りがちなロンドン郊外。あちらでは良バ場以上になれば必ず水が撒かれるはず。そう思った私はトレーナー君に疑問を投げかけた。

 

「今まで私たちはその異例続きです。例えレース日の朝に水をまいたとしても石灰質の土壌は乾くのも早い。科学的根拠というより、2度ある事は3度目があるような気がします」

「つまり『水先案内人』(トレーナー)としての勘か。確かに不良バ場のメイクデビューといい、春先の低温といい確かに3度目のまさかを警戒する必要はあるか――他に意見は?」

 

 トレーナー君はほうじ茶を少し飲んでから目を細めてうーん……と唸って――。

 

「そうですね。ルドルフは『ラビット』については御存じですか?」

「無論。『ラビット』は同僚の為にペースメーカー役を担う出走者だろう? 日本の黄道十二宮の杯を巡るレース(チャンピオンズミーティング)などチーム戦の作戦上でも見られるものだったか」

 

 チーム戦では作戦の範囲でラビットはOKとされているが、個人戦となるトゥインクルシリーズでは『勝つ気のないウマ娘』が出ていたら失格となってしまう――。

 しかし凱旋門をはじめとする海外のビッグレースでは、個人戦にもラビットを担った者が出てくる。同じ学園、同じ国同士、もしくは同じチーム同士の中から選ばれているのでラビットがいるかどうかは出走プログラムを見ればすぐにわかる。

 

「ええそうです。では問題ないようですので続けます。ラビットは逃げてペースを作ることが殆どなんですが、ストライドが大きく末脚の強力な出走者がいると逃げないことがあります。こういった場合無理に先頭を取ってはいけません、ラビットらしき出走者が逃げない場合は相手は差すつもりなので脚を残すようにするのがいいですね。うちをマークしてれば他陣営にそういった動きもあるかもしれません」

「あちらはペースをハイ寄りに作る分差しが有利だから、差し脚に自信が無ければ前を泳がせて削ってくるという訳か……なるほど。」

 

「そうです。そして最終直線で伸びるために気を付けなくてはいけないのはバ場状態。そしてアスコットの場合はまずスタート地点から最初のカーブのところまでの坂下と、ゴール手前の最終直線などの坂の上の方のバ場は状態が違う事が多いです」

「スタート地点が坂下になるので水が溜まって重くなるという事だね? ではそれを踏まえ位置取りをするならば、スタートからの下りから迎える最初のコーナー部分ががまあまあ水平だったかい? 足元は重いがここで状況を見ながら出来るだけ良い位置をとるのが良さそうかな?」

 

 私はほうじ茶の入ったマグカップを手に取りひと口含み、少し乾燥気味だった喉を潤わせながらトレーナー君の反応をうかった。

 

「そうですね、それが良いと思います。そして最終コーナーまでの坂の途中で位置を上げるならば、下より乾いている坂の真ん中以上からでしょう。これだけタフだと最終直線を向いたころにはほぼ全員の選手の脚が上がってしまうから、本命と思われる子にスイスイ前を行かれ過ぎて、差をつけられすぎていると勝てなくなります」

「なるほど、そして英国ダービーの前年度覇者、Functio(ファシオ)。彼女のクラシック以降の複勝率は100%。そしてその戦法はかなり前目の先行策。最近連対を外しているとはいえ、もし同じレースに出ていたらマークはこの選手で問題ないかい?」

 

 トレーナー君は真剣な眼差しのまま深く二度ほど頷いた。

 

「ええ、出てるなら絶対にFunctio(ファシオ)をマークです。今までのデータ見る限り、相手の作戦はスタートダッシュした後先陣を切るラビットを前に行かせ、その後ろ2番目くらいに道中はつける。最終コーナー回ってから、彼女のずば抜けたスタミナとパワーに任せて一気に抜けてくるんじゃないんでしょうか? それを読んで勝ちに行くならば、コーナー曲がる前にピタっと3番手くらいに居て、良い所を走ってぶち抜いていくとかですかねぇ……」

「となると肝は圧倒的なパワーとスタミナが鍵となるか。坂かつ500m程と長い最終直線で追い抜くため、並々ならぬ体力とパワーが必須と?」

 

 トレーナー君は『うんうん』と言いって頷き、手に持ったままのマグカップにゆっくりと3秒ほど口付け中身を飲んだ後、彼女の表情は少しリラックスした雰囲気へと移り変わった。

 

「外ばかり見てしまうのは気が早いですが、結局東京とか中山を足し算したコースにタフさを追加したような感じですし、海外向けのトレーニングで国内向けも対策しちゃっていいと思います。明日から対西洋G1に向けた新メニューをやれるので、それで対策打とうかなと言ったところです」

「私の実家でやっていたメニューを参考に作ったトレーニングかい? 並走相手の確保は難儀だったんじゃないのか? というより、よく引き受けてくれる者を見つけたね」

 

 そう尋ねるとトレーナー君はニヤっと笑ってと得意顔を浮かべた。

 

「難儀しましたよ。でも、色々あっていい並走相手見つける事が出来たから楽しみにしててください」

 

"――昨日までトレーナー君が食欲を失っていたのはそういう事か――"

 

 昨日までお粥やうどんなど消化にいい食べ物ばかり食べていたのが気になっていたが、そういう事かとふと納得した。あまり食べないなら少量でも栄養になるものを食べさせるために差し入れをしようかとも考えたが、今の表情と先ほどはしっかり食べていた様子から大丈夫そうだと私は胸をなでおろす。 

 

「随分と自信ありといった様子だね。ふふ、君が連れて来てくれる相手が誰だかは敢えて聞かず、楽しみにしておくよ。――おっと、こんな時間だ」

「そろそろ私もお風呂とか入ろうかなー質問は今ので十分ですか?」

 

 薄型テレビの上の木製縁の丸い壁掛け時計を見ると時刻はかなり遅くなっていた。

 右隣に座るトレーナー君はまだメイクも落としていないし着替えもしていない。特に今する必要のない内容しかない上に、これ以上引き留めたら彼女の就寝時間がどんどんひっ迫してしまう。

 

「ああ。十分だよ。遅くまでありがとう、カップは片付けておくから君は入浴へ行っておいで」

「ありがとう。いってくるね!」

 

 そういってトレーナー君はカップの中身を飲み干すとテーブルの上に置き、軽い小走りでお風呂場に向かっていった――。

 

 私はそれを見送った後スマートフォンをテーブルの上に置いて、自分の分のほうじ茶を飲み干して、空になった2人分のマグカップを手にキッチンへと向かった。

 

 

――20××年+1 3月後半某日の翌日 午後13時半頃――

――旧第3グラウンド 外周 アップダウンヒルコース――

 

 草木の芽吹く土の香りに季節柄を感じる――今年は冷え込みのためまだ桜の開花は遠い。

 

"――去年の同じ時期にルドルフと2人で走ったんだっけ? 月日が経つのは早い――"

 

 外周の外ラチ側に私は立って、計測ポイントから送信されてきたデータをタブレットに記録されていくのを眺めている。

 

 そして外周の右奥から地面を叩く音がだんだん近づいてきて、私の目の前をルドルフとタイキシャトルが通過していった!2人が洋芝が敷き詰められたターフの急坂を全速力で切っていった風により、私の前髪が時間差でふわりと揺れる――!

 

 そしてそのしばらくしない内に、右奥のコースからゆっくりと駆けてくる存在をちらりと確認すると、ジャージ姿のマルゼンスキーが息を軽く切らせながらこちらに向かってきていた。

 

「ひー……逃げるの大変だったわ! あの子、ルドルフは一体どこまで成長するのかしらね?」

 

 ルドルフと前半並走していたマルゼンスキーが傍に来て、私の右側の足元に置いてあったクーラーボックスからドリンクを取り出そうとしゃがみこんだ。

 

「3女神のみぞ知るといったところでしょうか? お疲れ様です」

 

 私は笑みを浮かべ、かなりヘトヘトになったマルゼンスキーを迎えた。

 タイキシャトルとマルゼンスキー、この2人が私と一緒にいる理由は3日前に遡る。

 

 ひとりでトレーニングさせるよりは、誰かと並走してペースを作ってもらうほうがよりいっそう実戦に向くだろう。そしてただ並走するのではなく、ルドルフが実家で行っていたトレーニングのアイデアを拝借しようと私は考えた。

 

 ヨーロッパのレースはラビットが出る関係で淀みないペースで展開される。日本の展開とは違うその状況で、好位を維持して追走するにはなれる必要がある。

 それを意識したルドルフの両親は砂利の道、坂道、そして並走相手を前半走る子と途中から入って後半走る子の2人にしてずっと落ちないペースで並走させるトレーニングをさせていた。

 

 ペースが変わらない展開にも慣れそうだし、タフなトレーニングで良さそうだと思ったわたしは、ルドルフからそれら聞いて、じゃあ旧第3グラウンドに作った上級トレーニングコースでその並走をしたらいいんじゃないの? という事を思いついた。

 

 まずいきなり上級コースはきついから普通の野芝のグラウンドで並走トレーニングを行い、徐々に難易度を上げようと思って実行に移すもまさかのトラブルが発生。

 なんとルドルフと並走をした相手のウマ娘の心が折れてしまいかけるという事件が多発した。

 

 ルドルフ本人曰く昔からよくあったそうなのだが、まさかのトレセンの生徒相手ですら委縮させてしまうとはと流石に頭を抱えた。

 ならば実力が上のウマ娘に! となるのだが……そもそもルドルフの実力に拮抗できる可能性があるのは上の学年の子達しかいない。その上に学園に来て間もない私にそんな都合の良いコネはまだない。

 

 どうしたものかとカフェテリアでプリンアラモードをスプーンで突きながら考えていたら、思わぬ手助けが入った――。

 

 様子を見かねた東条先輩が声をかけてくれたのだ!

 素直に悩んでいる事を相談すると、東条先輩は担当している子と合同トレーニングすればいいと快く協力を申し出てくれた。

 しかも合同トレーニングに来るのはスポーツカーの異名を持つマルゼンスキーと、デビュー前だがその恐ろしさは身をもって体験したことがあるタイキシャトルだ。

 

 そんな心強い援軍を得たのだが、東条先輩は他に担当している子の突発的な用事で今日は出れなくなってしまった。そのため本日の合同トレーニングは私に一任となり今に至る。

 

「あ、これ美味しいわね! ねえ、何のドリンク?」

「うちが出してる新作ドリンクです。東条先輩了承の下今回お試しで出してみました」

 

 マルゼンスキーが美味しそうに飲んでいるのは、桃フレーバーのスポーツドリンクで、さっぱりとした飲み口が春先に合うだろうとコーディネートさせた商品だった。

 

「へー。これ、気に入ったわ! もし他のフレーバーもあれば試したいんだけど、試供品とかカタログはある?」

「4日ほどお時間いただければご用意できますよ。準備が出来たら届けますね」

「ありがと! 楽しみにしてるわね!」

 

 ルドルフとタイキシャトルがゴール地点に到達したためタブレットの通知音が鳴った――。

 

 私のすぐ傍でドリンクを味わっているマルゼンスキーというウマ娘は、ルドルフよりも先にデビューしていた。彼女はメイクデビューを大差で勝利し、中山の1200mをその年のスプリンターズステークスのタイムより早く駆け抜け、朝日杯をレコード勝利。

 

 そしてジュニア期もクラシック期の春も常勝無敗――マルゼンスキーは圧倒的に強かった。

 

 しかし――そんな怪物マルゼンスキーはダービーに出られなかった。

 

 その理由は国内の選手の保護という名目で、今も続いている事だが、両親の内または本人海外出身のウマ娘はダービーをはじめ国内の一部重賞レースに出られないというルールが原因であった。

 

 そして3日前に初めて知ったのだが……私が学園に来た当初から付かず離れずの距離で、東条先輩やマルゼンスキーは色々援護してくれていたらしい。それは私にシンボリルドルフのサポートに徹せるためであり、折角変わりそうな風向きを変えない為であったという。

 

 カフェテリアでその話を聞いた私は、知らない間に重たい状況打開を追加で背負わされかけているという衝撃的な事実に対し、内心驚きながら目を丸くしてしまった。

 まあそれはともかく、ルドルフって皆からいろんなものを背負ってるなぁと、そんなことを考えながら片手で後頭部をかきタブレット操作に戻ろうとした時――。

 

「――!」

 

 タブレットに転送されてきたデータを見ようとしたと同時に、誰かの声と背中辺りに衝撃が走った。

 体重が乗っている所為でめちゃくちゃ重い! ――そして明らかに自分より図体がデカい! 大体正体の予想がついているその存在は、思いっきり私を背後から抱きしめている!

 

 冗談抜きに潰れそうだった!

 

「タイキ潰れちゃうよ! あとトレーニング中! こらダメ!」

「No!!!! 最近スキンシップに飢えてるんデス! ワタシは頑張ったんデスからもう少し!」

 

 タイキシャトルはまるでお気に入りのテディベアを抱きしめるかのように、私を持ち上げて頬を摺り寄せている。

 アメリカにいた頃のタイキは私より小さかったが、日本で再会した時には見上げるほど大きくなっていた。だけど当時のままの気分でこうしてスキンシップをはかろうとするので堪ったものではない。

 退路を探すも完全に背中側から抱きしめられていて、これは寂しがり屋のタイキが満足するまで剥がれないかもしれないと諦めかけていたその時だった。

 

「ふふ、元々友人同士と聞いていたが懐かれているね? タイキ、トレーナー君プロデュースの新作ドリンクだそうだよ? 一緒にどうだい?」

Wow, that's really awesome!((おー、それはいいですネ!))

 

 ルドルフがタイキ用にドリンクとタオルを両手に持ち声をかけてうまくタイキの気をそらしてくれたお陰で、タイキの興味は新作ドリンクに向かい私はそっと解放された。そしてタイキによる激しめのスキンシップで乱れた髪――今日は手抜きで低い位置でひとつ結びにしているヘアゴムを髪から抜き取り、タブレットを小脇に挟みながら髪を簡単に結い直した。

 

「一旦軽い休憩を挟んで、また並走しましょう」

 

 そう私が告げると『承知した』『イエース!』『ほいほーい』という三者三様な返事が返ってきた。

 ルドルフはタイキシャトルにドリンクボトルを渡し終わった後、自分のドリンクと芝の上に置いていたタオル片手に私の方に歩み寄ってきた。

 

「承知した。トレーナー君、先程の並走データーを見せてくれるかい?」

「この画面が先ほどのトレーニング内容です。どうぞ。練習後に全員のLEADへもデータを送ります」

 

 ルドルフは私の右側からタブレットを受け取りデータを確認し始める。マルゼンスキーもルドルフの右肩越しに画面を覗き込んで『今どきは便利ねー』といい、ルドルフとデータについてあれこれ話し合い始めていた。

 

 そしてドリンクが余程美味しかったのか、満足げな表情を浮かべていたタイキシャトルはがルドルフとマルゼンスキーの傍に近づいて、ルドルフが持つタブレット画面に表示されたデータを、ふたりよりも高い目線からチラリと軽く覗き込んだ。

 

 けどれどもすぐに飽きたのか、タイキは私の空いている左隣に寄ってきて、またちょっかいを出そうとしているのが表情や仕草から伺える。寂しがり屋のタイキを構ってあげないのは可哀想だけど、今は休憩しているとはいえトレーニング中。心を鬼にしてちょっとその場を離れようとするとすっとタイキが横に来る。構えないという態度を示すため、私がスマートフォンをいじってメール確認をしているフリをすると、タイキ自身の頬を膨らませながら私の左頬を人差し指で餅でも突くかのよう2回ほど突いた。

 

「××××××ー、アナタは今日走らないんですカー?」

 

 タイキの言う××××××というのは私の名前をもじったあだ名――タイキやディーネなどアメリカで出会って親しくなった者が呼んでいる。このあだ名はギリシャ語だと『聡明な者』という意味を持つそうだ。

 

「流石にそれは無茶だよタイキ。お互いアメリカにいた時ならまだしも、もう私では役不足でしょう?」

「でも、ディーネとは一緒に走ってましたよネ?」

 

 ちらりと左側を見ると、私の頬を突くのをやめて腕を組んでジト目をしているタイキがそこ居た――『ワタシとは走ってくれないの? 期待してたのに!』といった心の声が今にも聞こえてきそうなくらいかなり不満げだった。

 

「? ねえ、貴女がディーネを担当してた時ってまだ10代前半そこらよね?」

「それは私も気になった――いくら君が半人半バ(セントウル)でも幼過ぎる。どういう事なんだい? しかも相手はダービーウマ娘だろう?」

 

 振り返るとマルゼンスキーとルドルフが今のタイキシャトルの発言をきいて、耳もこちらに向いた状態で『それは気になるので話せ』という圧力をかけている2人の様子が見て取れた。

 

「どこから説明すればいいのやら――うーん、ルドルフはディーネの経歴で特徴的なとこって覚えていますか?」

「確か……日本でいう所の4冠、スーパーフェクタとあとは……」

 

 タオルを自身の首にかけたルドルフはドリンクボトルを片手に腕を組み、考え込むように首をかしげて上を向いたり下を向いたりして思案した後、ウマ耳を大きく一度パタリと動かしたあと両耳を前に向けた。

 

「ダービーまで上手くコーナーを曲がれなかった――これで正解かな?」

「正解です」「え、それってどうやって走ってるのよ!?」

 

 それを聞いたマルゼンスキーは耳と尻尾の毛が驚きで逆立たせて目を丸くし、ルドルフは軽く目を見開いた。

 

「そりゃコーナーを直線の組み合わせでカクカク曲がる感じになっていましたよ。なんなら最初は直線すらまっすぐ走れずにジグザグ走行でしたから」

 

 そう返すとマルゼンスキーは訳が分からないといった表情で目を丸くして絶句していた。まあ無理もない、状況次第では斜行でアウトだし、その所為で最後方からのレースを組み立てなきゃいけなかったのだから――。

 

「話を戻すとディーネはダービー前日まで呪われたかのように曲がれなかったんです」

 

 私が以前担当していたウマ娘は『曲がれない呪いに掛かっている』と言われていた。

 並外れた心肺能力に恵まれたウマ娘ディーネ――彼女はそれを武器に意気揚々と名門のルイビル校へと進学してきた。

 

 ところが折角本格化の兆しが見えた途端、ディーネはコーナーを上手く曲がることが出来なくなってしまった。それを治そうと腕のいいトレーナーや教官が指導に入ったものの全く改善される様子が無く、折角入学できたのに担当してくれるトレーナーすら捕まらず学園を去る他なくなってしまった。

 

 諦めたくなかったディーネは入ったばかりの私をトレーナーにする事を思いついた。そして晴れてトレーナーとなった私はその状況を打開するために、ありとあらゆる手を使ったが――。

 

「ダービー前日まで当人と徹夜で曲がる方法、もしくは別の方法を考えたんですが、結局私たちは寝落ちし――起きたときにはタイムリミットが24時間を切っていて流石に焦りました。そしてこれだけはやりたくなかったんですが、最終手段として自分の命を賭けるような手法を行う事を覚悟をしました」

 

 命を賭けた――その言葉から、ルドルフは何かを察したのか目をさらに大きく見開いた――。

 

「……内ラチ側にディーネを走らせ、ハンデを工夫してコーナー突入時、君がその外を走るようになるようにして矯正したとか?」

 

"――ルドルフ鋭い!――"

 

 前々から賢いとは思っていたけど、ここまで察しが良いとは思わなかった私は面食らった。

 

「そうです――そして、誰かが真似すると危険なので『本当の詳細』を公表したことはありません」

 

 万一曲がれなければディーネは怪我をするかもしれない。そして当時ディーネより小さかった私は確実に重症を負うことになるだろう。

 だからこそ矯正手段として思いついていても、他のやり方を試し尽くしてからでないと出来ない事であった。

 

「――自分が担当するウマ娘を信じたからこそ君は賭けたのか?」

「それはどうでしょう? 正直なところやっぱりやるのは色々と怖かった。この判断の所為でディーネが怪我するリスクはあるし、私もただでは済まなくなる。そして誰かにこんな事やらせるわけにもいかないし、じゃあ何もしないでぶっつけで挑んで負け戦になる位なら腹を括ろうって滅茶苦茶な理屈でした。でも、あの子と私は賭けに勝った――」

 

 ディーネが私と並走した瞬間ものすごく怖かったのを覚えている。

 

 恐怖で一瞬だけぎゅっと目をつぶった後、いけないと思って見開いて彼女の姿を確認した。その後ろ姿のディーネはコーナーを膨らまずに、はじめて曲がれていたのだった――。

 

 危険な事をしたので当時生徒会長だったウマ娘や理事長から私とディーネはこってり絞られたが、ディーネは自分の限界に打ち勝った――そして翌日のダービーに勝ち名声を手に入れた。

 

「タイキがディーネの時は並走してたって思いこんでしまったのは、真似して事故が起こることを防ぐため、当時の理事と生徒会の緘口令によりメディア向けについた嘘が由来でしょう。ディーネとトレーニング目的で並走をやったのはあの1回なんですよ。あとは私の運動不足は良くないって事で、流すときに一緒に走ってたくらいだけなんですよ」

「オウ! そういうコトだったのでしたカ! 確かにそれを聞いて真似する子がいたらそれはベリーデンジャラス! それはやむを得ないですネ!」

 

 タイキは両手で頭を抱えて驚いた表情を浮かべていた。この話は親しい友人であるタイキにもしていない――。

 

懸崖撒手(けんがいさっしゅ)か。前人未到を成すには時にはそういう決断も必要ではあるが、あんまり無茶をしないでくれよ?」

 

 ルドルフのほうを向くと、彼女はかなり心配そうな表情を私に向けて眉をひそめていた。

 

「わかったと言いたいところですが、取れる手段は全部取るので何とも言えないです。だけどそんな風に困ったらルドルフにきちんと相談するので安心してください。――さあ、そろそろまたトレーニング開始しましょうかねー」

 

 出来ない約束はしない――。

 

 私がやるべきことは担当した子の目標を叶えることだから、その為なら出来ることは何でもするし時には博打に出る必要もある。

 そんな風に私の事を大切に思ってくれるルドルフの気持ちは嬉しいけど、心配性し過ぎてしまう彼女のスイッチが入る前にわざと話を切り上げた――。




次回は皐月賞になります。
レース回で時間がかかることが予想されますが、なるべく早めに仕上げられたらなと。

【いつもの解説もどき】――読み飛ばし可
◆実際の日本の競馬の規約――競争する気が無いのにレースに出て良いの?

 結論――ダメです。
 参考元は『日本中央競馬会競馬施行規約』
 第6節 出走馬――出走について
 第41条 『競走に勝利を得る意志がないのに馬を出走させてはならない』

 トゥインクルシリーズは日本の一般的な競馬から来てると思うんで、この辺りのルールは踏襲されてる気がしたので演出用に採用。ウマ娘公式では特に何も言われてないのでオリジナル設定です。

 ウマ娘にももしあるとしたら……。
 第6節 出走者――出走について
 第41条 『競走に勝利を得る意志がないのに選手を出走させてはならない』

 こんな感じですかね。

◆ラビットとは?
 差し馬を有利にさせたいときに出したりする。
 あと他にいい効果があるとしたら、縦長の展開に持ち込むことで団子状態にならないようにし、本命が馬群から抜けやする。

 ラビットのNG行為
 他の出走馬の進路を塞いで邪魔をしてはいけません。
 あとペースを作るまでは許可されてますが味方に進路を譲ってもダメ。
 などなど、状況によりペナルティが存在します。
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