惣流アスカの更迭&式波アスカの左遷 ~見つけたアタシの居場所~   作:朝陽晴空

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第二話 新しい家族との生活、そしてミサトとともにアスカの元へ

その後色々あって、人類補完計画は失敗に終わった。

役目を終えた特務機関ネルフは気象研究所となり、父さんを所長として再出発をするみたいだ。

 

「……シンジ、これからは私と家族として暮らさないか」

 

父さんにそう言われた時は、驚いたと同時に嬉しかった。

 

 

 

補完計画が失敗して母さんと会うことを諦めた父さんは、憑き物が落ちたように落ち着いて僕と綾波に今までの償いをしたいと言ってくれた。

今の綾波も少しずつ前の綾波のように僕に心を開いてきてくれているような気がする。

 

 

 

こうして僕と父さん、綾波の3人家族の生活が始まった。

 

「父さん、そろそろ用意をしないと会議に遅れるよ」

 

朝食をとりながら新聞に目を通す父さんはいつも時間を忘れてしまいがちだ。

こうして僕が声をかけてあげないとずっと新聞を読みふけっている。

 

「ああ、分かっている、シンジ。お前はユイに似てきたな」

「父さんのせいだよ、ねえ綾波?」

 

 

 

一足先に食べ終わって食器を洗っている綾波に僕は同意を求める。

エプロン姿の綾波は小さなお母さんみたいだ。

 

「ええ、冬月先生にまた怒られるわ」

「私は所長だから問題ない」

「バカな事言ってないでよ」

 

 朝食が終わったら、僕と綾波で洗濯物を干して学校に行く。

 

「行ってきます」

「ああ」

 

 

 

二人そろって通学路を歩くのにも、もう慣れた。

周囲からはいつも夫婦みたいだって冷やかされるけど、同じ家で暮らしているのだから仕方がない。

 

 

 

夕食は今日あったことを父さんと綾波と話しながら食べる。

こんな穏やかな日々が続き僕の居場所はここにあるのだと安心感を覚えていた。

でも満ち足りているはずなのに、僕は何か物足りなさを感じていた。

 

 

 

僕の心の中に空いたぽっかりとした穴の正体に気が付いたのは、しばらく経ってからの事だった。

父の日のプレゼントを買うために綾波とデパートに行った僕達は、服飾雑貨売り場を通りがかった。

普段から家事を一緒にしてくれるお礼を込めて、僕は白いリボンを綾波にプレゼントした。

綾波は照れくさそうな顔をしながらも、リボンを付けてくれた。

 

 

 

その日の夕食でネクタイをプレゼントすると、父さんは喜んでくれた。

綾波が付けている白いリボンに気が付いて、僕が綾波にプレゼントをした事を知ると自分のこと以上に喜んだ。

 

「これからもレイのことを頼んだぞ、シンジ」

「うん、父さん」

 

これからも父さんと綾波と一緒に暮らす、僕のその気持ちに嘘は無かった。

 

 

 

でもその日の夜、僕はしばらく前の出来事の夢を見た。

家に帰って来ないアスカと仲直りするために勇気を振り絞って赤いリボンを買ってアスカに渡し、受け取ったアスカが照れながらも喜んでくれる夢だった。

 

もちろん、アスカが喜んでいたなんて捏造した記憶に過ぎない。

次の日の朝、胸のモヤモヤが消えない僕は父さんに尋ねた。

 

 

 

「そうだ、アスカは今、どこで何をしているの?」

「ああ、元弐号機のパイロットの事か。彼女はドイツの実家に帰った後、家族と折り合いが付かなくて家出をしたと聞いている。その後は消息不明だ」

「消息不明だって?」

「もう彼女はネルフと無関係だ。気にするな」

 

 諜報員を抱えているネルフが、元パイロットのアスカを監視しないで放置しているのは不自然だ。

 実際にネルフを辞めて民間人になった青葉さんたちには監視が付いている。

 

 

 

「でも父さん……!」

「これ以上話す事はない」

 

厳しい目で見つめ返して来る父さんはアスカの情報を隠していると僕は確信した。

アスカの消息が気になって仕方がない僕は食い下がろうと口を開くと、

 

「碇君、アスカって誰?」

 

遮るように綾波が不安そうな顔をして僕に尋ねた。

今の綾波は三人目、やっぱり時間が経ってもアスカのことを思い出すことはできないみたいだ。

 

「昔の知り合いさ」

 

 

 

昔の知り合いで片付けられる関係ではないけど、僕は綾波を心配させまいと言葉を飲み込んだ。

でも、アスカのことを忘れようとするほど、アスカとの思い出は美化されて僕の心の中で何回も繰り返される。

 

二度と会えるはずがないのに、会いたいと思ってしまう。

僕は悩んだ末にアスカの消息を一番知って居そうな人物、ミサトさんを訪ねることにした。

 

 

 

ミサトさんの住所は以前と同じコンフォート17の一戸。

違うのは民間の人も住むようになったことだ。

僕はミサトさんの家のインターホンを押した。

 

「あらシンジ君、久しぶり。あたしが恋しくなったの?」

「そんなんじゃなくて、聞きたい事があって来たんですよ」

「相変わらず冗談の通じない子ね。まあ立ち話もなんだから、中に入った入った」

 

 

 

ダイニングキッチンだった場所をミサトさんは応接間として使っているようだ。

僕が居なくなったミサトさんの家はゴミ屋敷に逆戻りしているかと思ったら、意外ときれいに片付いていた。

 

「驚いた? 探偵事務所は清潔感も大事だからね」

 

自慢気に胸を張って話すミサトさんだけど、絶対に自分で掃除はしないタイプだ。

きっと何か裏がある。

この探偵事務所で家政婦さんを雇えるほど商売繫盛しているようにも思えない。

アポイントメントをとっていない僕が簡単にミサトさんに会えるくらいだから。

 

 

 

「葛城さん、資料整理終わりました」

「ありがと、日向君」

 

 

【挿絵表示】

 

 

奥の居間だった部屋の引き戸が開いて日向さんが顔を出した。

謎は全て解けた! 掃除は日向さんがやっているのか。

 

日向さんがミサトさんにベタ惚れなのは僕を含めてネルフでは周知の事実だ。

ミサトさんがネルフを退職すると同時に日向さんもついて行ったんだろうけど……。

 

 

 

「やあシンジ君、久しぶりだね」

 

ネルフに居た頃よりも日向さんは心なしかやつれているかのように見えた。

でも日向さんはミサトさんが好きで側に居るんだから僕が口を挟む問題じゃないのかな……。

 

 

 

「ミサトさん、奥の部屋を見てもいいですか?」

「別に構わないわよ」

 

前に僕が使っていた部屋は、父さんたちと暮らすことになった時に引っ越しの片付けをしたから何も残っていないことは分かっている。

気になっているのはアスカが使っていた部屋だ。

 

ドイツへとアスカが帰った後、使徒との戦いが激しくなって、僕たちはアスカの部屋を手付かずで放置していた。

久し振りにみたアスカの居た部屋は助手の日向さんの部屋に模様替えされていた。

アスカは荷物を少しだけスーツケースに詰めてドイツに帰ったらしいけど、その他の荷物は処分しちゃったのかな……。

 

 

 

「ふふーん、シンジ君がここに来たのはアスカの事ね」

「はい」

 

ニヤケ顔のミサトさんに言い当てられて、僕は素直に認めるしかなかった。

何としてでも確かめたい事があったからだ。

 

「あの、アスカが残していった荷物の中にラッピングされた小さな箱はありませんでしたか?」

「いいえ、そんな箱は部屋には無かったわ。アスカがドイツへと持っていったんじゃないかしら。それってシンジ君のアスカへのプレゼント?」

「はい、そうです……」

「中身はリボンとかシュシュとか、そんなところ?」

 

ミサトさんってば変な所で勘が鋭いな。

まあ中学生の僕のお小遣いで買えるものは限られていたけど……。

 

 

 

「アスカがプレゼントをドイツに持っていったみたいで良かったじゃない。でももしかして向こうで捨てられちゃっているかもしれないけどねー」

「意地悪を言わないで下さいよミサトさん!」

 

僕のあげたリボンを持っていてくれれば嬉しいけど、アスカが僕のことを忘れるために捨ててしまっているかもしれない。

確かめることができない僕の心の中にモヤモヤとした気持ちが芽生え始めた。

 

 

 

「アスカはドイツの諜報部員の家に引き取られて本当の家族のように幸せに暮らしているそうよ」

「そうですか……」

 

アスカはドイツに居る家族と上手くいっていないと、僕に話していたかたら心配していた。

今は彼女が幸せに暮らしていると知っても胸のつかえがとれた気がした気がしない。

 

 

 

「シンジ君は、その答えじゃ満足がいかないって顔をしているわね」

 

ミサトさんは僕の心の底まで見抜いてるようだった。

今のアスカの姿を一目で良いから見たい、それが望みだった。

 

 

 

「アスカがシンジ君のことを忘れようと努力しているのを台無しにしても会いたい?」

 

尋ねられて僕の心は揺らいだ。

僕がいまさらになって告白をしてもアスカにはいい迷惑だろう。

でもハッキリと気持ちを伝えなければ、一生後悔が付きまとう。

 

僕が会いに行けばアスカを傷つける事になるけど、どうしても、自分の気持ちを抑えれない!

 

「はい、僕はアスカに会いたいです!」

「よくぞ言った、偉いぞシンジ君!」

 

僕はミサトさんに思いっきり背中を叩かれて咳込んだ。

相変わらずの馬鹿力だなあ。

 

 

 

「僕がアスカに会いにドイツに行きたいなんて言って、父さんと綾波は許してくれるでしょうか」

「反対はしないでしょうけど、ショックは受けるでしょうね」

 

ミサトさんは腕組みをして考え込んだ。

日本とドイツは飛行機で日帰りで行ける距離じゃない。

 

 

 

「ここは難事件を解決して来たミサトお姉さんに任せなさい!」

「猫探しや浮気調査がほとんどですけど……痛っ!」

 

ミサトさんの投げたビールの空き缶が日向さんのおでこにヒットした。

 

僕達二人のドイツ行きの飛行機のチケットや宿泊先の手配をミサトさんは日向さんに指示した。

一息つくと、今度は直ぐにどこかへと電話をかけ始めた。

 

「あ、リツコ? シンジ君はこれから数日、あたしの張り込み仕事を手伝うことになったから、家には帰れないって碇所長に伝えておいて、オーバー?」

 

電話の向こうでリツコさんが怒鳴っている声が僕にまで聞こえた。

僕が父さんに呼ばれてネルフに来た時も、似たようなやり取りをしていたなあ。

 

「出発よシンジ君。時間は1秒たりとも無駄には出来ないわ」

 

 

 

鼻息を荒くしたミサトさんは僕の肩をつかんで外に出ようとする。

 

「えっ、着替えとか持って来て無いんですけど」

「家に帰って見つかったら計画がオジャンになるでしょう。日向君、あなたの服をシンジ君に貸してあげて」

「下着も!?」

「レイや碇所長が来たら上手くごまかしてね♪」

「そんなあ」

 

 

 

肩を落として大きなため息を吐き出す日向さん。

僕は日向さんに何度も何度も感謝のお辞儀をしてミサトさんと事務所を出た。

 

 

 

綾波、ごめん、君の側を離れることになってしまって。

 

アスカ、ごめん、君の前に姿を現すことになってしまって。

 

僕は二人とも傷つける身勝手な行動をするよ。

 

でも僕は、そうせずには、いられないんだ!

「式波アスカの更迭」書いてくれますか?(メッセージで連絡ください)

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