チャラ男が失恋中の女の子にどしたん?話聞こうか? と優しく声をかける話 作:松風呂
「宮本君、最近うちの妹の元気がないのだが、よもや手を出していないだろうな?」
「え? その手を出すってのはどのラインからですか?」
「どのライン!? なんだその含みのある質問は、やはり君が何かしたのか!? ヤったのか!?」
夏休みもそろそろ半分くらいに差しかかる頃、俺はどこの駅前にでもありそうな洒落たカフェで冬優奈部長とお茶会をしていた。
以前彼女の書く小説のことで、袂を分かった俺達だったが、真摯に謝ったらアッサリ許してくれた。小説の方も、最終的には穴あきゴムからの不可抗力膣内射精という形にすることでお互いが妥協した。
しかしこの姉妹、似てないと思ったら思考回路が同レベルだ。姉の元気が無くて心配してる時の雪子と同じこと言ってるもん。それとも俺の信頼がないだけ?
「ここだけの秘密ですが、おたくの妹さん彼ピにこっぴどく振られたらしいッピ」
「それは真実か? あの真面目そうで紳士的な達郎君が付き合って一カ月で妹を捨てるか? まぁ本性がバレた可能性は十二分にあるか……」
「確かに落ち込んでそうな雪子ですけど、彼女は今長い人生における恋愛の壁に正面衝突事故起こしてる状態なので、俺達はゆっくり見守りましょう」
「君はどの立場からモノを申してるんだ?」
「いやー俺やっぱ恋愛マスターみたいなとこありますし」
「ふむ、では恋愛マスターに是非一つ、猥談をお願いしたい。やはり生の体験談をインプットしないと作品のリアリティに影響があるからな。あくまで作品の為だぞ? そこは履き違えないでくれたまえ」
酒も入ってないシラフの状態なのに、ある種セクハラまがいな要求をしてくるうちの部長。実は部活動中でも度々この要求はまかり通してきた。エロ小説作りというお題目を掲げられては仕方ないのだ、俺は今回も語り部として立派に役目を果たそうと思う。ワクワクして目を輝かせてる部長がより良いインスピレーションを得られるように、俺はまるで彼氏に強要されて淫語を叫ばされる女の子みたく、恥ずかしがりながらも卑猥な言葉を紡いでいくしかないのだ。
「そーですねー、前回は同い年の子にしゃぶしゃぶして貰おうとしたら思いっきり噛まれたトラウマ体験を話したので、今回は初体験の話でもしましょうか」
「待ってました!」
「どんな熟練者であっても初めてというのは避けては通れない道です。おつかい然り、おるすばん然り、お医者さん然り、等と前置きはしますが、それでは語りましょうか――」
性の目覚めというのは個人差があると思うが、俺は小学校6年生の時であったと自覚している。ちょうどその時に思春期真っ盛りな兄がいたこともあって、当時彼の隠していたエロ本を初めて読んだまさにその瞬間に俺の中の悪魔は目覚めたのだ。
野球漫画を読んだ少年がプロ野球選手に憧れるのと同様に、エロ漫画を読んだ俺がそういうことに興味を持つのは避けられないことであった。兄の趣向が極めて真っ当な純愛物ばかりで本当に良かったと今でも思う。これがドギツイ性癖のオンパレードだったらそれに触発されて生まれおちた、業の深い俺の悪魔もより禍々しいものへと変貌していたであろう。
とはいえ、いくらなんでもクラスの女子に手を出す程の勇気もなかった俺は、日々悶々としつつも友人達と共に笑顔で校庭を駆けまわり、気付けば中学生となった。
中学生になって暫く経った頃、ある日教育実習生の先生が俺のクラスに来た。実習の仕組みや期間はよく分からないが、最終的に一カ月近くはいたと思う。
そんなわけで、初体験はその先生であった。歳の差は10歳程度。経緯としては、動物園より騒がしいクラスの惨状に絶望していた彼女に優しく寄り添って、愚痴を聞いてあげて、同級生のクソガキ達も説得してある程度抑えさせた功績が実を結んだ結果、なんか大学近くで一人暮らししていた彼女の家でそういう感じになった。
言っちゃなんだが元々中学校の教師を目指している様な人だったし、その年頃くらいの男の子に性的興奮を覚える女性だったのだろう。
彼女との蜜月の日々は実習が終わるまでの数週間は続いたが、やがて未成年に手を出してることに罪悪感を覚えたのか、それとも実習が終わったことでストレスのはけ口を必要としなくなったのか、彼女との関係はそこで終わった。
さて、困り果てたのは俺である。いかがわしい事を一度覚えてしまった中学生など、実質性犯罪者予備軍である。まるで班長に一杯のビールを差しいれされたことがきっかけで豪遊してしまう駄目人間のように、快楽に呑まれた俺の理性は、歯止めともいえる熱の放出先を失ってしまったのだ。
幸いなのか不幸なのか、俺は顔良し性格良し愛嬌良しの3ピースマンだったので、同級生の女子達と親しくなるのは簡単だったし関係を作るのも簡単だった。
こうして俺の中学校生活は爛れていくのであった……。
←To Be Continued
………
「とまぁそんな初体験の思い出でした」
「ほふぅ~……、とても興味深かった。君は振れば宝物が飛び出る打ち出の小づちみたいな奴だな。特に蜜月の日々の部分を詳細に語ってくれたところは素晴らしかった。その貴重な体験談は私の執筆意欲をおおいに奮い立たせてくれるよ。ありがとう、最低の女たらし君」
「なっ、恥ずかしいの我慢して正直に語ったのに酷いです部長!」
「いやいや褒めてるよ? ただ、人としてはクズだなぁとも思っているがね。次に会うのはおそらく夏休み明けだと思うが、その頃にはまたクズエピソードが追加されてると思うと今から楽しみだ!」
「えーと……、多分3つくらいは増えるかなぁ……」
「既に予定があるんかい」
などと久々の部長との逢瀬を楽しみつつ、俺は最近ほぼ毎日会っている夏樹ちゃんとのデートへと向かうのであった。
もうすぐエックスデーだからね。最大限親密にならないとね。
◇◇◇
俺は培った経験からある程度相手の行動は予測してしまう先読み型のチャラ男だと自負しているのだが、こと夏樹ちゃんに関しては読みやす過ぎて逆に困るという思考の迷路によく戸惑ってしまう。
上手くいき過ぎて困惑するというか、何しても喜んでくれるから逆に申し訳なくなるというか……。
例えばデートしにどこに行くか、これは全男子学生共通の悩み事だと思うし、俺も常々足りない頭を使って考えている。困ってる奴は無難に水族館にしとけ。
ちなみに俺は今、夏樹ちゃんとラウンドツーでボーリングをしてます。彼女が行きたいってせがむからね仕方ないね。
俺は女の子とデートするのにいくつか避けちゃう場所があり、その一つにボーリング場が入っている。何故かというとまじめにやるとスコアに差がついてしまって微妙な空気の状態で2~3ゲームやるハメになるし、かといって手を抜くのは中々難しい上に、こっちがヘタならヘタで微妙な空気になる確率が高い。メリットとしては女の子が投球フォームに入る時に後ろからパンツを覗けるくらいしかない遊び場だと思う。経験者は語る。
しかしそんな俺の常識は夏樹ちゃんには通じない。
「うらーっ! 見たか! ターキーとったぁ! これはデカイわよ! っしゃおらっ!」
見て下さいこのはしゃぎよう。負けたら廃部がかかってるスポーツ系漫画の主人公みたく、全力で俺にかかってきてますよ。可愛いですね。
ぴょんぴょん飛びながら全力で喜びをアピールしている彼女を見つつ、俺はボールラックにある11ポンドのボールをタオルで拭いた後、投球モーションに入った。おらっ……くらえっサイコキネシス!
パコンと小気味良い音を立てて、俺が放ったボールは10本のピンを全て弾き飛ばした。ちなみに4連続なのでフォース。何で2連はダブルで4連はフォースなのに3連はターキーって呼ぶんだろ?
「いやー今日調子が凄い良い。この分だと200の壁超えそうッスわー」
「かっ……怪物!」
「まぁ夏樹ちゃんも普通に上手いし凄いと思うよ。相手が悪かっただけで」
「……一つ言わせてもらいますけどね。私は午前中部活で疲れているの、あんたと違ってハンデがあるの、お分かり?」
負ける前から言い訳してる……。そんな可愛い事言われたら手を抜けないじゃないか……。コテンパンにしてやろ。
俺は遊ぶことに関しては全力だからね。嫌いなのは勉強とガチな運動だけなのよ。
その後、二人楽しくボーリング勝負をして、今日も楽しい夏休みなのでした。
……とまぁそんなわけで、夏樹ちゃんと一緒だとどこに行ってもお互い楽しくなっちゃうので、細かい策謀を図らなくても良くなってしまうのだ。
こんなの続けてたら俺はチャラ男じゃなくて只の紳士になってしまって、最早アイデンティティが崩壊してしまうので、そろそろ自分らしくありたいですね。
◇◇◇
そしてその日はやって来た。8月10日のエックスデー、夏祭りの日である。まぁ大仰にエックスデーと名付けてはいるがそこまで気を張る必要なんてない。ただ、今まで大切に育んできた彼女との愛を確かめ合う収穫祭みたいなもんだ。これねミキプルーンの苗木。
夏樹ちゃんと二人で電車で20分くらい移動し、駅から暫く歩いて目的地の河川敷に到着する。ちなみにお互い私服である。浴衣は着付けとか大変だからね、脱がすのも大変だし汚すと悪いからありがたい、少し風情がないけど。
「じゃ、行こうか……!」
「うんっ」
溢れる人混みの中を手を繋ぎながら突き進み、出店巡りをしながらエンジョイする一組の男女。タコ焼きを熱がる夏樹ちゃんと笑いあったり、射的勝負をして盛り上がったり、金魚掬いを敬遠したりと楽しんでいく。え? どっかで聞いた事ある? まぁ夏祭りなんてやること大体決まってるからね。
楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、空に浮かぶのは一面の花火。火薬の匂いと空気の振動が気持ち良い。首が痛くなる程度に長い時間見上げながら祭りの締めを堪能した。
大きめの花火大会だからしょうがないけど、帰りもまー人が多い。おかげで人気のないところを探すのが少し大変だった。今からだと帰りの電車混むから、とかそれっぽい理由を言えば、人を疑うことを知らない夏樹ちゃんも散歩に了承してくれた。ここからが本番です、解説兼実況は引き続きチャラ男でございます。
薄暗い寂れた神社の鳥居の下、俺は夏樹ちゃんに少し早目の誕生日プレゼントを渡す。彼女の誕生日は三日後なのだが、当日は毎年親子水入らずで過ごすようなので部活とかも考えるとこのタイミングがベストだと思ったのだ。ちなみに中身は可愛らしい写真立て、令和の時代、スマホの普及によって写真なんてデータ上のものしかないと思うなかれ、先日の遊園地の際だって写真を撮る機会はある。むしろデート先の思い出を形にして残そうねという意味では悪くないプレゼントだと思う。まぁ夏樹ちゃんなら何でも喜びそうだけど。
アクセサリーや指輪なども贈り物としては良いけど、彼女はバスケ部だから多分身に付け系はNGかなぁとやめといた。オルゴールやぬいぐるみは年齢層が下過ぎ、四つ葉のクローバーのしおりは流石に金がかかってなさ過ぎ。
喜んでる夏樹ちゃんを見ながら、俺が確かな手ごたえを感じている中、感極まった彼女から予想外の言葉が出る。
「宮園四季君……、私は、貴方が好きです。か、彼女にして下さい!」
それは告白の言葉。いつも素直じゃない夏樹ちゃんからそんな言葉が出ると思わなかった俺は、嬉しくなりすぎて動揺した。しかし、このままこの愛の告白を受けては完全に彼氏彼女の関係になってしまう。いやそれのなにが悪いのって? 思い出しましょう、私は軽薄イケ面のチャラ男なのです。
「夏樹ちゃん……ごめん……」
すこし溜めた後、申し訳なさそうな顔でそう返事をする。目に見えて絶望する夏樹ちゃんは、その返事が信じられないのか乾いた笑い声を出す。
なんか捨てられた子犬みたいな表情で足がガクガクになっている彼女に近づいて、ギュッと抱きしめる。ワンパターンと思うなかれ、それだけでは済まさん。頭がショートしている彼女の唇に自分のそれを合わせる。ちゅー。
絶賛混乱中の夏樹ちゃんに怒涛のキスラッシュをしかける。「ごめん、女の子から告白させて……」などと耳元で囁いて、紛らわしい事すんなよっと脳内でツッコミ入りそうなフォローをする。ようはDV男の発想と同じで、一度嫌な経験させた後に優しくして、逆らえないようにしてやろうというチャラ男テクニックである。
んちゅ、だとか、ちゅっちゅ、だとか、んんっ、とか艶めかしい声だか音だか分からないのが互いの耳に入ってくる。
キスっていうのは恋愛における最強の技である。これをすると相手は発情という状態異常に加え、催眠術も真っ青なくらい相手の言うことに聞いてしまうようになる。
いやいやファンタジーかよ、と考える奴はチャラ度が低い。キスっていうのは人間における最大の求愛行動である。羽を広げるクジャク然り、ミンミンうるさい蝉然り、生き物っていうのは求愛行動によっていかがわしい事がしたくなるように出来てるんです。(暴論)
そもそも人間ってのは赤ちゃんの頃からいっぱいキスされて、もう刷り込まれるようにキスは最強の愛情表現だって教えられてきてるんだよ。子供の頃にドラマを見て、布団の中にいる男女には照れずとも、キスしてる男女からは目を逸らしたりしたでしょ。
正直男側だって、胸とか尻とか触っても実際そんな興奮しないでしょう。しかしキスは凄い、一回でいやらしい気持ちになる。
「……夏樹ちゃん、二人っきりになれるとこ……いこっか……」
「ぇぅ……?」
「さ、少し歩こう」
反論を許さぬ言葉を耳元で囁く、熱っぽい顔で訳わかんなくなってる様子の彼女の肩を抱きながら、少し歩いて俺は見事大人の館へと連れ込んだ。興奮してきた。
部屋に入ると、先にシャワーを浴びるように促す。いきなり鍵を締めて、前後不覚状態の彼女に襲いかかったりは決してしない。何故なら俺は紳士だから。
夏場で汗もかいてるし、男と違って女の子は準備が必要だからね。色々と。
はい、という訳でここまで行きつくのに長い道のりでしたが、『自主規制』が始まります。
「ゴムっ……ゴムゴム……!」
「分かってるよ夏樹ちゃん、安心して……ちゅ」
「んっ……」
某少年漫画の主人公みたいなこと言ってるテンパり娘の身体をバスローブの上から優しく触っていく。
いくら普段が可愛くても、服を脱がした瞬間百年の恋が冷めたりすることは多々ある。生々しいことをいうと、色とか毛とかその他諸々。なのでここまで来ても油断は決して許されぬ。なんて心配は杞憂で、生まれたままの姿になった夏樹ちゃんはガチで今までの女の子の中で一番美しいんじゃないかと思うくらい綺麗だった。その姿を見て俺の余裕は消え去り、悪魔が舞い降りる。めっちゃ興奮してきたFoo!
褒めたり愛の言葉を囁きながら、彼女の『自主規制』を指で丹念に『自主規制』していくと、『自主規制』はあっという間に『自主規制』。
そろそろいいかな、という頃合いで、ぽろぽろと泣きだす夏樹ちゃん。「ごめん痛かった?」と謝ると首を横に振っている。あー……この涙の訳は、男としてはとても嬉しいんですけど、非常に申し訳なくなるやつだ。散々女の子とはこういうことしてきたから、中にはそういう子もいた。ごめんね本当に。
嫌でも嬉しいでもなく、辛いんだろう。そこまで想ってくれる事に感謝を込めて、いつも以上に優しくするからね。何言ってるか分からん奴は宿題。
「夏樹、好きだよ。世界で一番好き、だから――」
初めてを貰うね。
『自主規制』が始まり『自主規制』が終わる。彼女を愛おしいという気持ちが溢れ出る。夏樹ちゃんはがわ゛い゛い゛に゛ゃん゛!
駄目とか嫌とか恥ずかしいなんて言葉は、愛してるとか可愛いとかもっと顔見せてとかで完封した。
こうして一人の少女は本日、大人の階段をのぼったのであった。ちゅんちゅん。
一応心の中でだけ呟いておくと、夏樹ちゃん、俺達は彼氏彼女の関係になったわけではないからな? そこだけは注意してくれよな!
一緒の布団の中で手を繋ぎ合いながら、俺と夏樹ちゃんは顔を見合わせて笑い合った。まだ20日も夏休みは残ってるので、今から楽しみですな!