グラスワンダー、差して逃げる   作:こーたろ

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タマモクロス、良い位置につけています 

 

 東京都府中市。

 トレセン学園から徒歩8分ほどの場所に、俺の店はある。

 

 「ん~!良い陽気だねえ……」

 

 店の前のシャッターをガラガラと開ければ、外からの眩しい日差しと気持ちの良い空気。

 時刻は朝の7時前。

 

 小鳥のさえずりすら聞こえてきそうなそんな最高に気持ちの良い朝。

 

 

 俺はこの商店街で、小さなお好み焼き屋を経営している。

 大通りに面しているわけでもないこの場所は、正直に言えばそこまで売上が立つわけでもない。

 どちらかといえばマイナスになってしまうぐらいだが、幸い俺は昔稼いだ貯蓄があり、この店の売上で生計を立てようと思っていないのでそこはあまり問題ではなかった。

 

 この地域の憩いの場になってくれればいい。それが俺の願い。

 

 

 「んじゃ、仕込みでも始めますかね……」

 

 この朝の時間は、店を開けているわけではない。

 たまに出勤前や通学前の人間がテイクアウト用に買っていくことがあるので、そのための開店だ。

 ま、そんな物好きはほとんどいないのだが。

 

 ハッキリ言ってしまえば、この時間のテイクアウトはほぼ1人のためにやっている。

 

 

 うちはお好み焼き屋だが、テイクアウトでたこ焼きを売っていて。

 たまたま、たこ焼き器が店にあったから始めたのだが、思いのほかこれが好評なのだ。

 

 テイクアウトのみならず、夜に営業している時も酒のつまみとしてよく注文されるほどに。

 

 材料を冷蔵庫から引っ張り出して、生地を作る。

 まあ()()が来なかったら夜の方に回せばいい。

 

 大きなあくびを一つして、俺は作業に取り掛かった。

 

 

 「お~~~い!にーちゃん!!来たでえ~!!」

 

 「んあ?」

 

 どこからか声がする。

 こんな朝早くからうちの店に来て、更に俺のことを「にーちゃん」などと呼ぶような人間を、俺は一人しか知らない。

 

 だからどうせ、今日もあいつだろう。

 どうやら今日はウチの小さなお客さんが来店したようだ。

 

 

 「どこだ~見えないなあ……」

 

 「ドアホ!失礼なやっちゃなあ~どう見てもここにおるやろ!」

 

 視線を少し下げれば、赤と青の特徴的なイヤーカフを付けた少女が、両手を腰に当ててこちらを睨んでいた。

 

 

 「おお~タマおはよ!今日もまた、たこ焼き買いにきてくれたんか~?」

 

 「あいっかわらず絡みがうざいねんな……せや!はよいつものヤツ頼むで」

 

 「まあまあちょっと待てよ。お前さんは本当に良い子だなあタマ~助かるよ~」

 

 「ああああ!!!頭を撫でるんやない!!ウチはもう高校生や!!」

 

 「またまた御冗談を……」

 

 「冗談なわけあるか!……ああもう、ええからはよせいや!!」

 

 存分にタマを撫でまわした後、俺は厨房へと引っ込む。

 そう、このウマ娘であるタマは、学園での授業の前に朝ごはん代わりにこのたこ焼きを買っていくのだ。

 ウマ娘が朝ごはんにたこ焼きってどうなん?と思わなくもないが、相当好きらしいので、そう言われてしまってはこちらが心配するようなことでもない。

 

 あ、ちなみに「にーちゃん」などと呼ばれているが、間違っても血は繋がっていない。

 「たこ焼き屋のにーちゃん」と呼ばれていたのだが最近はもう省略して「にーちゃん」と呼ばれるようになった。

 

 

 さて、じゃあ作りますかね。タマが始業時間に遅刻するようなことがあれば問題だしな。

 

 

 

 するとタマはよっこいせ、と可愛い掛け声と共に、店内のカウンター席に腰掛ける。

 ウチの店にはスポーツ新聞等をまとめて置いてある棚があるため、彼女はそこから持ってきたトゥインクルシリーズに関する新聞を開いて読み始めた。

 最近なんかあそこの棚の新聞が減っていることがあるんだよなあ……。

 

 持ち出しはしてほしくないのだが。

 

 タマの様子を見れば、もうその姿はトレセン学園の生徒というより、出勤前のサラリーマン。

 俺がサービスで出してあげたオレンジジュースがもしコーヒーであれば、もうそれはよくいるサラリーマンのそれ。

 

 

 「やっぱメジロマックイーン、ハンパやないな……長距離でウチが戦ってみたい思うウマ娘は、ホンマに久しぶりや……」

 

 「タマ~明太とおろしどっちが良い~?」

 

 「今日は明太の気分や~!」

 

 「はいよ~」

 

 もはやタマのために開けているといっても過言ではなくなってきたこの朝たこ焼き。

 8個分の材料を用意してしまっていたので、2個サービスしてやろう。

 友達にあげるといい。にーちゃんの優しさだ。

 

 調理も最終段階に入って、そろそろテイクアウト用の器に盛りつけようかというその時、タマがこちらを見ているのに気付く。

 

 やはり目を惹くのは、彼女の太ももくらいまであろうその長い銀髪。

 走るときに邪魔じゃないのかな、といらぬ心配をしつつ。

 

 「ウチな、今度また出走するんやけど……良かったら、見にきてくれてもええんやで」

 

 「おろ、そうなのか、近いんなら是非見に行きたいんだけどね~」

 

 タマがレースに出ているところは確かに見ておきたい。

 ただ、ウマ娘というのは忙しいもので、必ずしも近場でレースをやるとは限らない。

 そしてここから一番近いレース場はかなり大きく、出走できるウマ娘はなかなか限られる。

 

 途中のレースはその限りではないが、その日の最後かその一つ前に開催されるメインレースは、それこそ頂点を競い合うようなウマ娘達が、出走するのだ。

 

 「え~っとな、すぐそこでやるねん。ホンマに」

 

 「え!でもそこってめちゃ大きなレース場でしょ?……ひょっとして、タマってめちゃ速かったり?」

 

 「ああ~っとな!たまたまな!たまたま……運が良くてやな……その~まあ、そんな感じや」

 

 珍しく歯切れの悪いタマを不審に思いながらも、テイクアウト用たこ焼きが入ったビニール袋を押し付ける。

 

 「そかそか、ま、タマの晴れ舞台なら是非見に行きたいし、日程決まったら教えてね。あ、8個入れといたから、お友達とわけな」

 

 「お、おおきにな……ま、まあひとまずミッション達成やな……ほな、またな!」

 

 「はいよ~いってらっしゃい」

 

 ビニール袋を受け取ったタマはひょい、と軽やかに椅子を降りると、店の外へと駆け出していく。

 そんな元気なタマを見送って、またもう一つ俺は大きく伸びをする。

 

 

 じゃ、昼の準備しますかね~。

 

 表のシャッターを半分まで閉めて、さて、昼の営業のための仕込みだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♦♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウチの名前はタマモクロス。

 泣く子も黙る、言わずと知れた『白い稲妻』ちゅうんはウチのことや!

 

 せやけど……今ウチには一つ悩みがあってやな……。

 

 今もまさにその話を、クラスメイトのスーパークリークとオグリキャップとしてる最中や。

 

 

 「あかんどないしよ……ウチがバリバリG1走っとるウマ娘やってバレたら、やっぱまずいかもしれへん……」

 

 「え~、そうかな~」

 

 「クリークにはわからへんねん!あいつとはな、こんな感じでこれからも接していきたいんや。遠慮なんてされたら目も当てられん」

 

 「けど、レースは見てもらいたいんですよね?」

 

 「うぐっ……」

 

 

 クリークの言葉に、ぐうの音も出えへん。その通りや。

 ウチのレースは見てもらいたい。けど……きっとあいつはウチがそんな有名なウマ娘やとは思ってへん。

 もしレースを見に来て、ウチがこんなに有名なウマ娘やと知ったら……態度が変わってまうかもしれへん。

 

 それだけは、避けなあかんからな……。

 

 という事情を、最近クリークに話してはおるんやけど。

 この場におるもう一人は、といえば……。

 

 「タマ、もう無いのか?たこ焼き……」

 

 「オグリは食い意地張りすぎや!半分もやったんやから我慢せい!」

 

 「そうか……すごくおいしいな、このたこ焼き。……お腹すいたな……」

 

 この食欲お化けめ……こんなんがウチと芦毛頂上対決とか言われとるんやから、ウマ娘っちゅうんはわからん。

 まあ確かにこのオグリのウマ娘としての実力は、ウチも認めるところなんやけどな。

 

 そんなことは置いといて、や!

 

 「もう何回あの店の棚に入ってるウチの記事が書かれた新聞を回収したかわからん。よう来るトゥインクルシリーズ好きのおっちゃん達には口酸っぱく忠告しといたし……その努力が、レースを見に来てくれたら無になってしまうかもしれへんねんで?」

 

 「そうねえ~……けどタマちゃんの話聞く限り、その人はきっとタマちゃんがすごいウマ娘だ、って知っても、今まで通り接してくれるんじゃないかしら~」

 

 「……タマちゃん言うな」

 

 窓の外の方に向く。

 今日は快晴やな。

 

 はあ~……。そんなアホみたいに良い天気とは裏腹に、ウチの胸中はぐちゃぐちゃや。

 

 たこ焼き屋のあいつと仲良うなってから半年。

 今でこそ遠慮なく接してくれとるが……。

 

 もしウチが名の知れたウマ娘やって知ったら、あいつは一体どんな顔をするんやろか。

 

 喜んでくれるやろか。

 今まで通りこうして、たこ焼き作ってくれるんやろか。

 

 

 「タマちゃん。でもそれでその一歩を踏み出さなかったら……ずっとレースを見てもらえませんよ?」

 

 「……せやな~そんなんはわかってんねん」

 

 ああ~!!もやもやするわ!

 頭をぐしゃぐしゃとかき乱して、机に突っ伏す。

 

 どないすればええんやウチは……。

 こんなん授業のどんなテストよりむずいやんけ……。

 

 「ああ~!ウチの速さがこんなところで裏目に出るとは~!!!」

 

 まだ何も決まったわけやない。

 

 優しすぎるあいつのことや。ウチのことを知ったとしても、そんな劇的に態度が変わるとは思えへん。

 

 

 けど、あいつと接するときだけは、今までと何も変わらない、一般ウマ娘のタマのままでいたいと思う自分もいる。

 高校生ということすらも冗談だと思われている今が居心地が良いなんて……初めてや。

 

 すると、変わらず机に突っ伏すウチの肩に、感触。

 

 振り返れば、きょとんとした表情でウチを見るオグリ。

 

 「……どないした」

 

 「タマ。大丈夫だよ」

 

 「……何がや」

 

 「タマと私が、同じレースに出れば、タマ目立たないから」

 

 「シバき倒したろか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ♢♦♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日も1日が終わり、夜の商店街は、学校や仕事帰りの人間でごった返す。

 

 一般サラリーマンの俺は、いつもの小さなお好み焼き屋で一日の疲れを癒すべく、歩を進めていた。

 珍しく今日は残業が無く、20時にここに着くことができた。

 素晴らしい。

 

 嫌なことばかりのサラリーマン人生。

 ささやかな1日の楽しみは、行きつけの居酒屋で酒を飲みながら、同士たちと楽しく話すこと。

 

 特にトゥインクルシリーズ好きのメンバーが集まるこの場所は、俺にとってお気に入りの場所だった。俺もトゥインクルシリーズ大好きだからな。

 

 大通りから一つ曲がって、更に路地を少し歩けば、見慣れた看板が顔を出す。 

 『営業中』の立て札がかかった引き戸タイプの扉を開ければ、いつもの良い香り。

 

 まだ若いであろう店主が、厨房から顔を覗かせた。

 

 「いらっしゃい!おお!まるさん!今日は早いね!」

 

 「残業なんかやってらんね~よ!生一つおねがい!」

 

 「あいよ~!」

 

 俺はジャケットを脱いで後ろのハンガーに引っ掛けると、ネクタイを緩める。

 どうやら今日は俺が一番乗りのようだ。

 どうせそのうち見知った連中が来るだろう。

 

 「あいよ~生一丁。とりあえずお通しの枝豆ね」

 

 「サンキュー」

 

 ジョッキに入ったビールを、一口呷る。

 かあ~っ!これが良いんだよなこれが!

 

 少し店長の彼と談笑をしていると、引き戸の開く音。

 見れば俺も見知った眼鏡をかけた人間が、片手を挙げて入ってきた。

 

 「先生!2日ぶりですね、いらっしゃい!」

 

 「いや~疲れたよ~、お、まる今日は早いね」

 

 「残業なんかやってらんないですよ!」

 

 やいのやいの。

 遅れてやってきた先生……と呼ばれている彼と、乾杯して酌み交わす。

 先生と呼ばれているが、別に学校の先生ではない。

 ただ俺たちがそう呼んでいるだけだ。

 俺が皆から呼ばれている「まる」というのも、俺の名前からは関係ないし。

 

 だいたいいつものメンバーが10人前後いて、約束をするわけでもなく集まる。

 俺はそんなこの場所が好きだった。

 

 「まる、来週レース場いくか?来週のG1熱いぞ~!」

 

 「あ~!それ俺も迷ってたんですよね……!ちなみに先生の本命ウマ娘は?」

 

 「いや~!それが俺も迷ってんだよね~!」

 

 そして必ず話題に上るのが、トゥインクルシリーズの話。最新のレース情報から、一着予想まで。

 集まったメンバーで予想し合うこの瞬間が、大好きだった。

 

 「店長も行こうよ東京レース場!楽しいよ~!」

 

 「何回か行ったことあるんですけどね~!こっち来てこの店始めてからは全然なんですよ~」

 

 たまに店長を交えながら。

 気が良い店長は、俺らのためにトゥインクルシリーズの新聞を用意してくれていたり、テレビでは過去のトゥインクルシリーズの映像を流してくれたりする。

 それを話のタネにしながら、俺らはこうして飲むのだ。

 

 そんなこんなで話が弾んできた頃、また引き戸の開く音がする。

 

 次は、どのメンバーがきたのか……はたまた新規のお客さんがきたのか……確認すべく入口の方へ目をやれば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お~い!!兄ちゃん!来たで~!」

 

 

 「「?!?!」」

 

 そこには、ウマ娘が立っていた。

 美しすぎる芦毛。派手で目に入ってきやすい、青と赤のイヤーカフ。

 

 特徴的な、小さな体躯。

 

 

 

 え?……お、え???

 

 

 

 

 「タマ!夜は来ちゃダメだって言ったろ~。夜はウチお酒出してるんだから!」

 

 「いやーすまんすまん。堪忍や。どーしてもウチの友達がにーちゃんのたこ焼き食いたいって聞かんくてな……テイクアウトで作ってくれんか……?」

 

 「それはいいけど……すみませんお二方!全然話してもらってていいんで!」

 

 ……。

 

 いやいやいやいやいや。

 

 なにその自然な対応。

 

 え、今店長『タマ』って呼んでませんでした?

 なにその親密な感じ。

 

 え?あの娘、『白い稲妻』の異名を持つタマモクロスだよね??

 脅威の天皇賞春秋連覇を成し遂げた、タマモクロスさんですよね???

 

 え?なんかあり得ないこと起っちゃってない?

 え、俺の目おかしくなっちゃった?

 

 慌てて隣の先生を見てみると、先生はおしぼりで必死に眼鏡を拭いている。

 ダメだ、混乱してやがる……!

 

 

 恐る恐る視線を元に戻す。

 

 

 厨房でたこ焼きを作る店長をるんるんの笑顔で見つめる彼女は、レース場で見せるあのオーラはどこにもない。

 一見、ただの可愛いウマ娘だ。

 

 が、トゥインクルシリーズ好きを自称する俺たちが見間違えるはずもない。

 あの娘は間違いなく歴史にその名を刻んだ名ウマ娘。

 

 ど、どういうことだってばよ……!

 

 

 「あ、あの……」

 

 「?!」

 

 先生!行くのか?!声かけちゃうのか?!

 この異常な状態に、声かけちゃうのか?!

 

 先生の声に反応したのか、タマモクロスがこちらを向く。

 正面から見て確信した。やはりタマモクロスだ。間違いない。

 

 「タマモクロスさん……ですよね?」

 

 「……ちゃう。ウチはただのウマ娘“タマ”や」

 

 いやいやいやいやいや!無理がありますよタマモクロスさん! 

 あなた関西弁なの知ってますし!!

 

 と、思っていると、タマモクロスは徐々に俺たちに近づいてくる。

 え、なに怖い。

 すごい怖い。

 

 これがレース中にタマモクロスにぴったりと着かれたウマ娘達の心境なのか……とどうでも良いことを思いつつ、俺と先生は思わず後ずさる。

 

 

 「ジブンら、常連か?」

 

 「あ、ああ。そうだな」

 

 「よし。……ええか?ウチはただの“タマ”や。絶対に、にーちゃんにウチのこと話すんやないで。この店で“タマモクロス”の話題は厳禁や。他のメンバーにも、そう伝えるんや」

 

 「「は、はい」」

 

 有無を言わせぬ威圧感。

 それに屈して俺と先生がうなずいたのを見て、彼女はニコリと笑顔を見せる。

 

 「ま、おおきにな。素直にウチのこと知ってくれてるんは嬉しいわ。これからも、応援よろしゅうな」

 

 「……!」

 

 ニッ、と歯を見せて笑うタマモクロスさん。

 間違いない。ウイニングライブで見せる笑顔と、なにも変わらない笑顔だ。

 

 分かってはいたものの、やっぱり本物だったと確信したうえで、俺は一つ疑問が残った。

 

 聞いて良いのか微妙なところだが……。

 こんな機会もう無いかもしれないし……!

 

 勇気だせ、俺!

 

 

 「あ、あの……なんで、店長に言わないんです?」

 

 タマモクロスほどのウマ娘なら、正体を知ればきっと店長も驚くだろう。

 そして彼女が正体を明かしてくれれば、きっと店長と一緒にレースを見に行って、俺たちがタマモクロスさんの魅力を1から100まで教えるのもやぶさかではない。

 

 なのに、何故。

 

 するとタマモクロスは、それはやな……とうつむきがちに手と手を合わせて言いにくそうにしながら。

 

 

 「にーちゃんと、このままの関係でいたいんや。……せやから……ウチはいちウマ娘でええ」

 

 「「……!」」

 

 

 

 

 「タマ!できたぞ!たくさん作っておいたからこれならお友達も満足してくれるだろ」

 

 「お~おおきにな!にーちゃん!」

 

 

 タマモクロスは店長からビニール袋を受け取ると、軽やかな足取りで出口へと向かう。

 くるりと振り返って店長に挨拶するタマモクロス。

 その表情はとても明るい。

 そして最後に外に出ようかというそのタイミングで、彼女は俺たちの方を見た。

 

 

 「……頼むで?」

 

 「「……!」」

 

 頷いた俺たちを見て満足そうに笑顔になると、今度こそ彼女は店を出ていった。

 

 嵐のような時間だった。

 なるほど、これが白い稲妻……。

 

 

 

 「すいませんね、お二方……あいつ、夜は来るなよって言っておいたのに……って、2人とも、どうしました?」

 

 

 今、俺と先生の気持ちは一つになった。

 

 俺と先生はビールの入ったジョッキを置き、店長に真正面から向き合う。

 

 

 「大事にするんだぞ」

 

 「え……?」

 

 「大事にしろよなあああああああ!!!!!ああああああ!!!!」

 

 

 「ええ?!どうしたんですか?!急にどういうことですか?!」

 

 

 

 混乱する店長をよそに、俺は涙を流す。

 

 

 俺と先生は心に決めた。

 

 全力でタマモクロスのことを応援しよう、と。

 

 この場所では、タマモクロスの話題は極力出さないようにしよう、と。

 

 

 

 そして、タマモクロスの出るレースは、全部応援しよう、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




たまもくろしゅとたこ焼き食べたい。
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