ロドス・アイランドの『赤い霧』   作:名残縁

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絵や渋の短編小説のやる気が湧き上がらなかったのでまたまた息抜きです。流石にそろそろ毎日更新は(気分が燃え上がる感情しない事には)出来なさそうなのと、無論書き置きもないので...

それはさておき、またもうちょっとカーリーネキ付近の掘り下げを進めるための、こじんまりとしたお話を投稿させていただきます(まだ締め括りを考えてないとも言う)
 
追記-モっさんの行動や雰囲気をマイルドにしつつ、カーリーに対しての考えをもう少し明確にしました。




とある噂-青いサンクタは識っている

光がある所、また闇もある。

 

所々で高層ビルが立ち並び、眩しく繁栄を主張する中で、その輝きに肖れなかった者は退廃の一途を辿り、陰に潜むスラムに落ちていく。

 

陽が落ちれば、ギラギラと闇夜の中ですら煌めくネオンや、騒々しいまでに元気な広告の雑音達の主張が更に強くなるせいで、更にその格差は明白になる。

それが『龍門』という移動都市の本質だ。

 

度々此処へ帰ってきているものの、良くも悪くもその根源だけはいつになっても変わることはない。

 

相変わらず、宵闇が訪れかけていると言うのに、表舞台の騒々しさは尚真っ盛りである。

 

 

ロドスのトップ3の承認を得て、二日程度の有給休暇を利用してまでわざわざ私が足を踏み入れている所は、龍門の中でもブラックからグレーゾーンに当たる区域だ。

 

最近で言うなら、ペンギン急便と何処かのマフィアが『貧困街の鼠王』の怒りを買って一悶着あり、この付近への監視がさらに強くなったとか。

 

その事に対して、エクシア・テキサスコンビどころかクロワッサンにソラ、挙句には父まで関与してるというのだからどうしようもない。

 

 

「リンさんがまだ怒ってなきゃいいけどなぁ」

 

 

ペンギン急便がトラブルメーカーなのは知っているが、節度というものはないのだろうか。

 

自分が所属している場所といえども、なんとも肩身の狭いものである。

 

 

『貧困街の鼠王』と言えば、龍門で知らぬ者はいないとまで言われるほどの伝説のマフィアだ。

 

その正体は裏路地の飴屋のお爺さんである『(リン)さん』だと言うのだから世間は狭いもの。

 

父に連れられて顔見知りになってからは数えきれない程世話になっており、戦闘の知識や基礎修行、外の世界で生きていく為のイロハやしきたりの受講を行ってくれたりなど、挙げればキリがない。

そして、父と同じく、幼い頃の私に『戦う才能』がある事を見抜き、私が旅に出るために父を説き伏せてくれた存在でもある。

 

彼に出会っていなければ今ほどの戦術や技能を身につけることはなかっただろうし、立場が違うフェイゼと幼馴染になる事もなかっただろう。

 

一度リンさんにも顔を見せておきたいのはあるが、会いに行く連絡もしていないままなのもどうかと思い、先に目的地へと行くことにした。

 

 

──表よりも、龍門のスラム街の方が私にとって近しい。

 

陰鬱な雰囲気は漂っているものの、その空気は幼い私が時折吸っていたものだからだ。

無論、心地良さや安らぎという点で言うなら、龍門の表舞台の方が──更に言うならロドスの移動都市での生活──上ではあるが。

 

そんな龍門の闇が集まる世界と、表が隣接する場所が、私の目的地。

 

 

「今回は三年ぶりか」

 

 

旅立ちから何度か寄ってはトランスポーターの仕事を手伝う事はもちろん、メンバーとして所属手続きはしているものの、どこぞの青い堕天使と同じで不定期な存在なのは自覚している。

 

父はちゃんと居るだろうか、どんな話をしようか──そんな事を考えている間に、そこまで長くない道のりは踏破してしまった。

今更畏まる関係でないのは分かっているものの、どこか後ろめたい思いを抱いてしまうのは、私が弱いからだろうか。

 

あと一歩進んで扉を開けば自身の故郷とも言える場所──ペンギン急便だ。

 

そんな場所で立ち往生していても、むしろ不信感を抱かせるだけだろう。

意を決し、堂々と入場しようとしたその瞬間。

 

 

「おや...カーリーじゃないか、珍しいなぁ」

 

 

ペンギン急便と自身を隔てていた扉が自身とは関係の無い力で開き...その先には、噂をすればと言わんばかりに、頭に黒ずんだ天輪を揺蕩わせるサンクタ族──モスティマが姿を現した。

 

 

 

 

────

 

 

 

 

「いやぁ奇遇だねぇ...偶々コーテーに顔合わせした帰りに、他でも無い君に会えるだなんてね」

 

「私もまさかお前と会えるとは思ってなかったよ」

 

 

掴みどころの無い態度と、裏表が不明瞭な微笑みを張り付けるモスティマ。

はっきりと言ってしまえば、私はそんな彼女の『仮面』が好きでは無かった。

 

いや、この述べ方ではきっと語弊が生じるだろう。

正確には、モスティマ自身の事はそこまで嫌いでは無い。

 

むしろ、好意を持っている部類に当たる。

 

彼女にはエクシアやテキサスと出会う前から既にトランスポーターとしての生き方を教えてもらっていたし、ある意味での姉貴分のような形で良くしてもらう、或いはイジられてきたから。

 

これまでのモスティマと対話する時間は、今思い返しても悪くなかったと言い切れる。

 

そんなある程度の信用を置いているからこそ、私に対して向けられる『仮面』があまり好きになれなかったのだ。

 

彼女がほんの少しでもその姿を緩めるのは、私が知る限りでも二人しかいない。

 

 

「好きな物には結構執心するモスティマの事だから、てっきりエクシアやドクターの所にでも居ると思ったがな」

 

「...ふぅん?」

 

 

一瞬、瞬く間の瞑目を挟んで、ほんの僅かに微笑の喜色の彩度が落ちた。

 

仮面が剥がれるほどの感情表現の中でも、モスティマにしては、珍しく明確な反応である。

 

 

「エクシアはわかるけど、なんでロドスの彼の事を引き合いに出すのかな?確かに君は最近あっちにもよく居るみたいだけどさ」

 

 

...前言撤回、想像以上にわかりやすい。

表情や声などはそこまで引き攣らないものの、なんとなく感じる雰囲気で、姉貴分の彼女が僅かに揺らいでいるのが見てとれた。

 

 

「ドクターがお前の事を良く話していてな。モスティマと過ごす時間は楽しくて有意義だ、とさ」

 

 

「そうかい。まぁ私も彼と過ごすのは中々悪くないと感じてるしね」

 

 

サルカズか何かだと思えるような悪魔の尻尾が機嫌良さそうに揺れ始めた。

人の心の過敏に疎い私でも察せられるレベルである...随分と彼に入れ込んでいるらしい。

 

思いの外、彼は色んな女性に気に入られているようだ。

 

そのうち刺されなければいいが....そんな痴情のもつれの渦中に居る人物を守るだなんて、やるせなさが過ぎる。

 

まぁ、この話をエクシアやクロワッサン辺りに告げ口すればきっと面白いことになるだろう。

 

 

「...まぁそれはそれとして、カーリーもコーテーに会いに来たのかい?」

 

 

取り繕って一息、とばかりに切り返すモスティマに内心吹き出しかけるが、それを抑圧しながら彼女の話に答える。

 

 

「ああ、彼は居るか?」

 

「うん、居るよ。彼が随分とそわそわしていたのは君が帰ってくるからだったんだね」

 

 

あの変わり者の父がそわそわしている、というのも、なんとも変な感覚だ。

 

ペンギン急便の社長として切り盛りしてきた強い父の背、何かのコメディのようにやらかして悲壮なペンギンの鳴き声を上げるギャグじみた姿。

 

そんな二つの姿を知っているからこそ、今更私などでそこまで狼狽えるものだろうか、なんて疑問が浮かんだ。

 

 

「不思議そうだね?義理の娘である君の──『赤い霧』の噂を聞いていれば普通だと思うよ」

 

「あぁ...まぁ確かにそうか」

 

 

『赤い霧』。

 

私であって私でない、勧善懲悪の英雄。

一方では気に入らない者を無慈悲に屠殺し、血煙の一帯を作り上げた化け物。

 

義理とはいえど、父としてはそんな噂が娘に立っているのだから気が気でないのは理解できる。

 

最も、そんな夢物語の主人公と、あからさまに怪しい私が同一視される事は殆ど無いが。

 

 

「随分と色々やってきたみたいだねぇ、カーリー?レユニオンの一件から、君と思わしき噂は大きく広がった」

 

「今や龍門だけじゃなくて、他の移動都市でもよく聞くよ」

 

 

耳が痛い話だ。

 

今でこそ、ある程度『それはそれで、これはこれ』と割り切って様々な血でこの手を濡らしてきたものの、初めはそうではなかったから。

 

けれど、『摂理』を理解するのは非常に早かった...この世の仕組みは、とても惨たらしくて。

 

強引に苦痛の連鎖を断ち切ろうものなら、この世の全てが自分の敵になる程に、その根は深かった。

 

 

「...ただ、降りかかる火の粉を払っただけだ。割り切る所は割り切っている」

 

 

──とある場所で、感染者に暴行を加えている連中を追い払った事がある。

 

その時の私の行為は、きっと目の前の人がモノを落としたから、それを拾って手渡した程度の、人並みの善意からだったのだろう。

助けた彼から礼ではなく罵倒が返ってきた時は、なんの冗談だ、とすら思ったほどだ。

 

その後彼は、裏路地の深い場所で、取り立て屋に対して不義理を行なったとして見るも無惨に殺された。

それが本当の事だったのかは知る由はない...私にも報復を行なってきた者達は、ぐちゃぐちゃの情緒に呑まれた私が全て『彼と同じようにしてしまった』から。

 

傭兵業を始めてまだ間もない私は、リンさんに教えてもらったテラの歪さを実体験して、この世の不条理をそこでようやく理解したのだ。

 

同時に、誰かを助けると言う行動がこの世では異質なものになるということも。

 

 

「そうだね、君ならそこら辺の塵芥なんてそのレベルだろう」

 

「払って消えてくれるような火の粉...でも、カーリーや私達といった力を持つ人以外の場合は、それは体を焼き尽くす程の炎だと思うんだ」

 

「でも、彼等が消えていくのは仕方ない事なんだ。生きるってのは、そういう事だから」

 

 

そこまで述べて、彼女の顔に張り付けられた仮面が掻き消えた。

 

 

「割り切った、なんて言ってるけどもね...カーリー、君が戦う理由はいつもそうさ」

 

「どんな時だって、君が剣を取るのは誰かの為だ。幼かった頃からずっと...」

 

「君は本当に異質だ。この世界でそんな風に生きられるのは君だけだろう。私が言えたことじゃあないけど...逆恨みに気をつけるんだよ」

 

 

あまりに冷え切った無表情で、諭すように語りかけるモスティマの言葉は、ある種の忠告だったのだろうか。

 

 

じゃあ、またね。

 

いつの間にか普段通りの笑顔を顔に張り付けていたモスティマは、思いもしない彼女の言葉に揺らいでいる私を尻目に、その姿を龍門の暗闇へと溶かしていく。

 

終ぞ、私は彼女へと言葉を放ち返す事はできなかった。

 

 

しばらくして、静寂の中で彼女の言葉が、私の中に木霊する。

 

私は、結局どんな時も誰かの為に戦い、いつだって自分から手を出すようなことはなかった。

誰かを助けて恨まれた事があれば、悪い結果になった場合も多い。

それを咎められるのかと思えば、モスティマの言葉は、あくまでも私の身を案じるものだった。

 

自由奔放な姉貴分に忠告されるとは、なんとも複雑なものである。

 

 

 

 

 

 

────

 

 

 

 

表舞台の騒々しさからかけ離れた裏路地。

 

カーリーと言葉を交わした場所から数十分程歩いた先...その奥地で、不意にモスティマは足を止め、一寸先すら何も見えない暗黒に呼びかけた。

 

 

「いるんだろう?もう出てきたらどうだい?」

 

 

誰に聴こえるはずもない独り言が、ひたすら静寂の夜闇に消えていく。

 

本来ならば、それが自然なはずだ。

 

しかし、彼女が呼びかけた方向から、こつり、こつりと堅い地面を踏む音が、密かに響き出す。

 

やがて音の根源は、燃ゆる焔を彷彿とさせる髪を揺らしながらその姿を現した。

 

 

「...アレがかの有名な『赤い霧』?」

 

「そうだよ、『苦難陳情者』さん」

 

「その名前で呼ぶのを止めろと何度言ったらわかるのかしら!?...まぁ、それはいいとして...いや良くはないんだけども」

 

 

中々珍妙な名前で呼ばれた赤髪の女性は不機嫌さを隠そうともせず舌打ちを挟むが、すぐに自分の感情を切り替えて、怪訝そうな表情を作る。

 

 

「確かに聞いてた情報の特徴とは一致する所はあるけど....赤髪に高身長の女性なんて今時そこまで珍しくもないでしょう?」

 

「そんな彼女が都市伝説の大元だなんて...いくらあなたとは言えど、俄には信じ難いわ」

 

 

そう述べる『苦難陳情者』に対して、堕天使は愉快そうに、くすりという笑いを溢した。

 

 

「何?私の言った事がそんな変?」

 

「君の小洒落たコードネームくらいにはね」

 

「あ?喧嘩売ってるの?」

 

「別に。けれども、『知らない』人から見たら、あの子はそう見えるんだね」

 

 

小悪魔的な微笑みが、次第に崩れ、どこか遠いものを見るように視線を揺蕩わせた。

 

その表情を向けられた『苦難陳情者』も察したのか、冗談にイラついていた雰囲気から一転して、酷く真面目なものとなる。

 

 

「...何か知ってるのね」

 

「ああ、知ってるさ。カーリーはそんな言葉で片付けられるほど生易しい存在じゃないって事をね」

 

「彼女はとても強い。それでいて非常に異質だ。良くも悪くも...」

 

 

モスティマが口を開くまでの一瞬の空白。

『苦難陳情者』もまた、真剣な面持ちで彼女の次の句を待ち侘びる。

 

 

 

「──君は、レユニオンの残党達が語る『赤い鎧を纏った怪物』を知ってるかい?」

 

 

 

彼女には稀有である複雑な感情が入り混じった苦笑をわずかに浮かべて、モスティマは彼女に質問を投げかけた。

 

 




今回もお読みいただき、ありがとうございました。
どうか、あなたの本が見つかりますように。

個人的にはドクター×オペレーターモノが大好きでして、渋にもいくつかそう言う短編小説を投げたりしております。

ドクモスはいいぞ。

...なんか二日連続で毎日投稿してるとお話しするネタがなくなってしまいますね。
ちょっとだけ個人的な疑問を語りましょうか。

感情による状態が左右されるEGOですが、赤い霧は『光』を浴びる前からどうして自身のEGOを発現できたのでしょうか?
やはり、L社の特異点関連に触れているとその可能性が出てくるのでしょうか....(完全なEGOを図書館にて発現したシャオ部長の例を見つつ)

え?フィリップ君?彼はうん、その......いやキャラとしてはとても好きなんですけど....結局煽られて赤ちゃんになったし....

(追記 ほんのちょっぴりだけ第一素質に追記)





第一資料


『赤い霧』。
龍門だけに関わらず、様々な場所の暗部でその名前を知らない者はあまりいないだろう。
裏路地を牛耳るような連中が忘れ去るには、その名を持った存在の武勇伝が有名になりすぎた。
曰く、誰かを守るための依頼しか受けない。
曰く、その剣を身に受けてしまったものは真っ二つになるなら幸せな方で、あまりの衝撃に細かな肉片と血煙しか残らなくなってしまうこともあった。
曰く、自身の身体と気味の悪い大剣のみの単身でとあるマフィアの本部を壊滅させ、残ったのはスクラップと化した拠点と夥しい赤い液体のみだったとか。
その逸話は、もはや都市伝説のように尾鰭がついて語られている。

『赤い霧』について?勿論知ってるけど...リーダーも物好きだねえ、わざわざ私に聞くなんて。折角本人がいるんだから直接聞けばいいのにさ。え?誰か知らない?ふーん...じゃあカーリーに聞けばいいと思うよ。あ、カーリーには私が言ったことは内緒にしといてね!...後が怖いから。

──エクシア


スキル(lv7)


S1 突進 自動回復・自動発動
前方の一定範囲の敵最大3体に対し、次の通常攻撃時攻撃力+200%し、敵を攻撃方向に相当の力で吹き飛ばして1.5秒間スタンさせる。このスキルで敵を倒した場合SPを全回復する。


S2 大切断・縦 攻撃回復・手動発動
前方の敵1体に800%の物理ダメージを与え、8秒間攻撃力-50%、防御力-25%。


S3 (昇進2にて解放)



素質


第一素質 最強/技量(昇進2で強化)
攻撃速度+5毎に攻撃力+5%、物理攻撃ガード率5%。


第二素質 (昇進2にて解放)
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