乳を求めて三千里   作:イチゴ侍

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お久しぶりです。
第十三話、よろしくお願いします。


第十三話 両手の花より団子

時系列

10月前半、エアグルーヴ秋華賞にて惨敗。

2月前半、マックイーンデビュー戦にて1着。

3月前半、スズカ弥生賞にて1着。その後足を怪我して皐月賞の出走を諦める。

5月後半、スズカ日本ダービーにて9着。

7月前半、夏合宿。

 

 

前回のあらすじ!

夏合宿二日目、本格的に始まったスズカとマックイーンのトレーニング。厳しい暑さの中で砂浜の上を懸命に走るスク水姿のウマ娘達。揺れ⋯⋯ないおっぱい達。

そんな中やってきたエアグルーヴの女帝おっぱいに感極まるトレーナー君。前年の秋華賞にて悔いを残す結果となってしまったエアグルーヴは、ダービーでのスズカの走りを見て自分のように悔いを残してほしくないと心配していた。しかし、その心配も杞憂に終わると、闘志に燃えたスズカにエアグルーヴは「次の天皇賞秋で戦おう」と宣戦布告をし、二人は誓いを立てるのだった。

 

「ドキドキ!男たちの全裸トークin露天風呂」の話は⋯⋯まぁ、それはいいか。

 

 

 

 

 

《第十三話 両手の花より団子》

 

 

 

 

 

夏合宿も残り半分を過ぎた。

その間でこれといって何か事件が起きたわけでもなく、むしろ充実したトレーニング日和を送れていた。トレーニング初日はあれだけひいひい言っていた砂浜ダッシュだが、今では二人とも難なくこなすようになり、往復の数も徐々に増えている。

 

あとはホテルのバイキングにより懸念されていたマックイーンの体型に関してだが、スズカと一緒にヨガをやらせることでカバーできていた。

「やれば瘦せるぞ」の一言がかなり刺さったようで、今ではスズカや俺以上に張り切ってやっている。メジロ饅頭って煽ったのまだ気にしてんのかな⋯⋯。

 

 

ヨガを行う場所には小さなホールを用意してもらっていて、時にはエアグルーヴやタイキがやってきて一緒にやってたりする。専門的なことは分からないミーハーなのに、いつしかみんなから先生と呼ばれるようになっていた。

思えば昔、俺の眼を頼ってやってきていたウマ娘達にそう呼ばれていたっけなと思い出に浸りながら、今日も今日とてヨガの先生として二人と時間を過ごしていた。

 

 

「⋯⋯瞑想」

 

俺の掛け声に合わせて二人は目を閉じる。

俺が前で二人と向かい合うようにマットの上に座っている。こうしていると学校の先生が生徒の前に立って授業をするときの景色ってこんな感じなんだなぁ、なんて考えが浮かんでくる。

俺がまだ学生だった時、英語の先生は授業中に俺が寝てたの注意してなかったけど、おそらくバレてたんだろうな⋯⋯。

 

瞑想しながら呼吸も当然忘れてはいけない。ただそれは普段の呼吸をするのではなく、深い呼吸というのが大切だ。

ヨガでの深い呼吸というのは、少しずつお腹に空気を溜め込むイメージで鼻から息を吸い、溜めこんだ空気を全部出し切るように鼻から息を吐く。出し切った後は、お腹に入ってる力を緩めて、そしてまた少しずつ鼻から息を吸う。この繰り返しである。

 

これによって、身体の隅々まで血液が送られ、酸素も十分運び込まれるようになる。身体へ良い影響を及ぼすだけでなく、精神面へのリラックス効果もある。

 

 

「よし、やめ。体勢崩していいぞー」

「はぁ⋯⋯やはり落ち着きますわね」

「ええ、トレーニングの疲れが消えていくみたい」

「身体を動かすだけがヨガじゃないからな。こうしてただ呼吸を繰り返すだけでも効果は絶大なんだ」

 

普段のトレーニングに加えて、ヨガポーズによる身体の柔軟、そして最後に瞑想。これの繰り返しこそが、俺が合宿で行ってきたルーティンだ。

 

 

「さて、今日のトレーニングはここまでだ。二人ともお疲れ様」

「トレーナーさん、明日はお休みですわよね?」

「ん?ああ、そうだが?」

 

合宿においてもお休みは必須だ。毎日毎日トレーニング続けたって疲労を蓄積するばかりでいい事なんか無いからな。ただ、学園にいる時とたいして変わらない毎日だから飽きられてないか心配だけど。

 

休みに関して聞いてきたマックイーンは何か言いたい事でもあるのか、妙にもじもじしていた。

 

 

「明日は近くでお祭りがあると小耳に挟んだので、よろしければ一緒にと思いまして⋯⋯もちろんスズカさんも一緒に」

「私も?」

「はっはーん。さては屋台の食べ物目当てなのが恥ずかしかったんだな? それで言いづらそうにもじもじと──」

「もうっ!ですから言いたくなかったんですわ!」

 

図星だったみたいね。お顔が真っ赤でぷくっと頬を膨らませるマックイーンちゃんがあまりにも微笑ましくて、思わずニヤニヤ。

ゴルシがからかいたくなるのも頷けるわ。

 

 

「でも良いかもな、夏祭り。何時から始まるんだ?」

「確か16時半だったはずですわ」

「それまで暇になるか⋯⋯せっかく一日休みにするわけだし、なんか有意義に使いたいもんだが⋯⋯」

 

さっそく夏祭りについて検索をかけてみると、開始時間はマックイーンが言った通りだった。雨天中止とは書いているが、明日の天気はゴリゴリに晴れで雲一つ無しとまさに絶好のお祭り日和と来たもんだ。

関連で出てくる例年の屋台や花火の写真を眺めていると、意外と浴衣姿のウマ娘がかなりの頻度で写っていた。

そういえば俺もここの祭りではないが、先輩とあの娘と俺の三人で祭り行ったっけな。あの時も確か夏合宿中で「浴衣で回りたかったー」ってあいつ愚痴ってたっけ。懐かしいなぁ⋯⋯。

 

 

「ってそうだよ浴衣!二人は持って来てたりして⋯⋯」

「残念ながら」

「持ってないです」

「だよねー」

 

まぁ、持って来てたらそれはそれで引いてたかもしれない。内心二人の浴衣姿もいいなぁーなんて思ってたけど、しょうがない。ここは普通に私服にして⋯⋯あれ?

 

そういえばさっきの写真にウマ娘映ってたよな?しかも服装は⋯⋯、

 

 

「浴衣じゃん!?」

 

しかも写真が撮られたの去年だし、写るウマ娘ほとんど浴衣だし。

声に釣られて二人も俺の携帯の画面を覗く。

 

 

「これお祭りの写真ですの?」

「ああ、しかもこれみんな浴衣なんだよ」

「みんな持って来てたのかな」

「流石にそれは⋯⋯」

「だいたい合宿に持っていくにはかさばるだろうし、もしかしたらレンタルかなんかが近くにあるんだろう」

 

とは言っても浴衣のレンタルって良い値段したりするんだろうか。流石に晴れ着よりは安いとは思うけど、実はウマ娘用は特注で意外と高かったりして⋯⋯。

 

 

「あら、意外とお安いですわね」

「あ、そうなの?」

 

知らん間にマックイーンが調べてくれていたようだ。ちゃんと着付けもしてもらえるみたいだし、せっかくだから二人に着てもらおう。そうしよう。

 

 

「もちろんトレーナーさんも着るんですわよね?」

「は、俺が?」

 

いやいやご冗談を⋯⋯もう着るような年頃じゃないですって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてお祭り当日。やはり考えることは皆同じなのか、ホテルから次々と浴衣のウマ娘達が外に出ている。それをロビーのソファーに腰かけ観察している浴衣姿の俺。そう、俺は浴衣姿なんです。

 

こうなった経緯はというと、昨日話していた通り二人の浴衣をレンタルしに行ったところ「男性用もあるわよー」などとお節介な男のお姉さんに捕まったが最後だった。お姉さんは瞬く間にスズカとマックイーンを篭絡し、俺にも着てほしいと二人におねだりさせてきた。

その結果、抵抗虚しく俺もレンタルする羽目になったわけで⋯⋯。

 

 

『先輩、気合入ってますねぇ!』

『へー似合ってるじゃない。ただ、はしゃぐのもいいけど大人なんだってこと忘れないようにね』

『お二人とお祭りデートですか。良いですね』

 

などと先輩、後輩、同僚に茶化される始末。担当に付き添ってやってくるトレーナーがほとんどだが、浴衣着てる奴は俺だけだった。

周りと同じじゃないと不安になる日本人特有の感情に抗いながら二人を待っているが、周りの視線が痛い……。

 

女の子の着付けは時間が掛かるようで、俺一人先に来てしまったが、こんなことなら一緒に来ればよかったと思うが後の祭りだよな。

 

 

早く来てくれと願い続け、数分。やっと二人の姿が見えた。

 

 

「トレーナーさん、お待たせしましたわ」

「遅れてごめんなさい」

「あぁ……やっと来てくれた」

「なんだかものすごくげっそりしていますが、どうしましたの?」

「いやー、童心に帰るって難しいんだなって……」

「?」

 

二人とも「何言ってんだこいつ?」みたいな顔しないでくれ……大人になればきっと分かるから。

 

それはともかくとして、二人とも浴衣似合ってんなぁ……。

勝負服をイメージして選んだんだろう。スズカは緑を基調としていて、白の花模様が点々と咲き誇っていた。普段ストレートの髪を後ろでお団子状にしているせいか、いつもより顔の輪郭がくっきりと見えてまるで別人みたいで、美人さんへと仕上がっていた。

一方マックイーンは、黒の生地にピンクの花びらが舞い散っている模様の浴衣だった。髪型は変えていなかったが、浴衣効果でより一層可愛い女の子って感じが出ている。

 

 

 

二人が来るや否や、周りがざわつき始めていた。

これだけ仕上がっているとそうなるのも仕方ないよな。

 

 

「なんだかとても視線を感じますわ……」

「それだけお前らが目立ってるってことだ。もちろんいい意味でな」

「あの、トレーナーさん……」

 

スズカはそっと俺の傍まで近寄ってくると、俺の袖をくいっと引き寄せてきた。釣られて俺の視線もスズカの方へと向けられる。

どこか不安そうな表情を浮かべるスズカ。人に囲まれてるこの状況に耐えられないのだろうか、何だかソワソワしている。

 

 

「スズカ?」

「あ、あの……浴衣変じゃないですか?」

「へっ?」

 

あ、そっちですか。

 

 

「私、こういうの着る事って無くて……」

「スズカさんここに来るまでずっと気にしてましたのよ?」

 

ここに来るのが遅くなったのは単に着付けに時間がかかっていただけじゃなくて、スズカが全然お店を出なかったことも原因だったらしい。

マックイーンが何度も大丈夫だと言ってもダメだったようで、最終的に「俺を待たせているんだから早く行くぞ」とマックイーンが首根っこ掴んで引き連れてきたみたいだ。

 

 

「レースではあんなにかっこいいスズカさんにこんな一面があるとは思っていませんでしたわ……」

「それはご苦労様だったな」

「ええ、ですからトレーナーさん。ここはトレーナーとしてビシッと一声かけてあげてくださいまし」

「だな」

 

俺が言って解決するかはともかくとして、おめかししてきた女の子を褒めるのが男の務めだもんな。つっても気の利いたオシャレな言い回しはできないし、俺がかけてやれるのはこれだけだよな。

 

 

「スズカ、浴衣すっごい似合ってるぞ」

「……ほんとですか?」

「嘘言ってどうするよ。安心しろ、ここにいるどのウマ娘よりも似合ってる」

「あら、では私は?」

「お前はめんどくさい彼女かって……ちゃんと似合ってるって。それより帯ちゃんと巻けて良かったな」

「……」

 

やべっ、一言余計だった。

 

 

「トレーナーさん、今のは……」

 

ス、スズカ……見るな、そんな目で俺を見るなぁ……ごみを見るような目で俺を見ないでくれ。

 

 

「マ、マックイーンさん?あの……」

「……今日は全てトレーナーさんの奢りという事で」

「あっ、はい」

 

どうやらそれで許して頂けるご様子で……。

俺の返事を聞くや否やニコニコと会場内に入っていくマックイーン。

 

ああぁ、また俺の財布が軽くなっていく。そして比例するようにマックイーンがどんどん重く……。

 

 

「トレーナーさん、何か?」

「いえっ!なんでもありませんであります!」

「? さぁさぁ!行きますわよぉ!」

 

お手柔らかにお願いします……と心の中で祈りながら、先を行くマックイーンに続くため足を踏み出す。

 

 

「……っと、あぶね。その前に、スズカ」

 

横に並ぶスズカへ俺は左手を差し出す。スズカは俺の顔と差し出された手を交互に見ながら戸惑いの表情を浮かべていた。

 

 

「トレーナーさん?」

「はぐれたら大変だからな。手繋いでおこうと思ったんだが……余計なお世話だったか?」

「いいえ」

 

即答だった。差し出した左手に細い指先が伸びていき、程よい力加減で俺の手をぎゅっと握ってきた。俺が握り返すと、スズカの肩がピクっと跳ねる。その反応がついついおかしくて口元がにやけてしまった。

 

 

「マックイーンも⋯⋯と行きたいが、あいつはしっかりしてるし大丈夫か。⋯⋯って、別にスズカがしっかりしてないって言ってるんじゃないぞ!?」

「ふふっ、はい。トレーナーさん、ありがとうございます」

「⋯⋯っ」

 

人混み苦手なのを気遣ってるのバレたよなぁ⋯⋯。こういうの悟られずにやってのける男にはほんと憧れるよ。

 

 

「お二人ともー!早くー!」

「わかったって! マックイーンも待ちきれないみたいだし、行こか。スズカ」

「はいっ」

 

 

 

 

お祭りといえば、小さいころ母親がくれたお小遣いを握りしめて屋台を回ったもんだ。もちろん全部なんて買って回れるわけもなく、これにするかあれにするかと頭を抱えて結局当たるわけもないくじ引きに費やしてしまったりしたもんだ。

 

 

「トレーナーさん!次はチョコバナナですわ!あちらにあるのはたい焼き!」

「⋯⋯」

「わたあめ甘くて美味しいですね。トレーナーさん」

「あ、うん。良かったなスズカ」

 

横にピッタリ並ぶスズカは「お嬢ちゃん可愛いからサービスだよ」と特大サイズにしてもらったピンク色のわたあめをハムハムしている。

 

 

「マックイーン、はしゃぎすぎて迷子になるなよー」

「なっ!なりませんわよ!子ども扱いはやめてください!メジロ家のウマ娘たるもの──」

 

などと証言しているが、りんご飴、たこ焼き、焼きそば、わたあめを手に抱え、頭にお面を付けてウキウキと前を進むメジロ家のお嬢様を見て、子ども扱いするな⋯⋯というのは些か無理があるのではないだろうか。

 

そして忘れてはいけない。あれが全て俺のポケットマネーから支払われていることを⋯⋯。奢るだとかなんだとかは別に本気ではなかったようで内心ホッとしてたが、お嬢様が黒い幻のレアカードで会計を済ませようとした瞬間に俺はすべてを悟って今日は奢ると口走っていたのだ。

しかしマックイーンだけ⋯⋯というのは不公平だなってことで遠慮しまくってたスズカのも奢ることにした。

 

あの日の俺よ。大人になれば何を買うかで悩むどころか、人にご馳走できるようになるぞ。

 

 

「いらっしゃいいらっしゃい!お祭り名物"ゴルシちゃん焼き"今なら一個サービスするぜぇ!」

 

「あの声とあのネーミングセンス。ゴルシか」

「見て聞いたまんまですわ⋯⋯」

「凄い人だかり⋯⋯」

 

お店から離れていく人たちが持っているのを見た感じ、ゴルシちゃん焼きとは一口サイズの焼き物シリーズだ。全国各地に必ず一つはある○○焼きシリーズ。たい焼き、どら焼きはもちろん人形焼きとか、地方によって名前の違うアレとか、とにかく中にクリームだのあんこだのを詰めてるやつだった。

 

ああいうのって味はだいたい同じだから、触感と見た目と「何この味?」みたいな意外性で戦うしかないんだよな。

 

てかたい焼きとジャンル被ってるし、それでいてあっちの方が繁盛してるから屋台のおじちゃん涙目じゃねぇか。うわぁ、それ見てゴルシの奴くそニヤついてやがる⋯⋯たちわりぃな。

 

 

──うっわ、これウマっ!

 

──やば、何個でも行けるわ

 

──んん!こういうのって牛乳欲しくなるけど、まさか牛乳セットなるものがあるとは⋯⋯うめぇぇー!

 

 

まさに賞賛の嵐だった。通り過ぎていく客たちは「美味い」と口を揃えていた。そんな言葉を耳に入れてしまえば、我らがお嬢様が黙っているわけがない。

 

 

「トレーナーさん」

「あぁ、みなまで言うな」

「流石ですわね」

「二人とも、どういうこと⋯⋯?」

 

お互いスイーツには目がない同士、スズカを置いてけぼりにマックイーンと意思疎通を図る。

 

 

「おっ、マックイーン!へへっ、やっぱり来ると思ったぜ」

 

最後の並ぶ客を捌き終わったところで、俺たちに気づいたゴルシ。

 

「ええ、それにしても凄い人気ですわね」

「だろだろ?流石アタシだな!」

「いやいや、奥で今もなお作り続けてるトレーナーを褒めてやるべきでは?」

「いえ、僕はただゴルシが渡してきたレシピ通りにやってるだけですから」

 

そう言いながらゴルシ焼きを流れるように袋に小分けし、またすぐ作り始める。あまりにも慣れた手つきに俺は呆気に取られていた。

バカ売れする品を突然ひらめくゴルシと、それに余裕綽々と付いて行ける彼のコンビは紛れもなくベストマッチだろう。

 

 

「はい、丁度出来上がったばかりですし皆さんどうぞ!」

 

ゴルシ焼きが詰められた6個入りの袋を3人分手渡される。

 

 

「代金はオマケしておきますから!」

「良いのか?」

「相談に乗ってもらったお礼だと思ってください。あとは初日にマックイーンさんをお借りした分です」

 

ここまで言われて断る訳には行かない。俺はありがたく3人分を受け取り二人に手渡す。せめてものお返しにと宣伝がてら店前で一つ食うか。

 

 

「いただきます」

 

ちびキャラチックなゴルシが一着のポーズをしている形だ。目の前に本物がいる中で齧るのは気が引けるが、問答無用で頭の辺りを齧る。

 

「……うっめぇ」

 

焼きたて効果もあるのだろうが、それ抜きにしても味がとにかく良かった。俺が食ったのはクリームだったが、食べたあとの口に残るクリームの感触は無く、スっと喉を通って行った。

皮の厚さも程よく、食感も良い。

 

スズカとマックイーンも同じように感じているのか「美味いっ!」って顔していた。

 

 

「美味しい」

「……ええ、悔しいですが本当に美味しいですわ」

「だろだろ!ちなみにそのどれかひとつにはゴルシちゃんスペシャル焼きが入ってんだぜ!」

「嫌な予感しかしませんわよ……」

 

18個のうちどれかひとつに明らかにヤバいのが入ってると。3人分きっちり焼けたのはそれが入ってるからか……。

 

 

「ちなみにそれ公にしてるのか?」

「するわけねぇだろ」

「うっわ……」

「ゴルシちゃんスペシャル焼きを食った第一号がクレーム来たっけな。ま、オマケに3個スペシャル焼き食わせてやったら泣いて帰ってったぜ」

「ド畜生じゃねぇか」

 

泣かされるレベルの何かだってことは分かった。貰った手前めちゃくちゃ怖ぇよ……ほら、二人とも手止めちゃったじゃねぇか。

 

 

「さ、さてそろそろ次行こうか二人とも!」

「ええ!その方がいいですわ!」

「……っ!(ブンブン)」

 

スズカも首を見た事もないくらい縦に振ってる。三人の気持ちが一致したということで、この場をクールに去るz……、

 

 

「お前らどこ行く気だ?おお?」

「……っ!?」

 

ゴルシは瞬く間に俺たちの前に立ち塞がった。

 

 

「ゴ、ゴールドシップ……私たちはまだまだ回る所が……」

「だったらゴルシちゃんスペシャル焼きを出してからにしな!」

「やはりそうなるか……!」

「うそでしょ……」

 

こいつぅ……意地でも俺たちの誰かが泣き喚くのを見る気だな。

すり抜けようにも全く隙がねぇし、覚悟を決めるしかないのか。

 

一応トレーナーにも助けを求めたが、ニッコリ笑顔を返された。スマイルくれとは言ってないんだよォ!

 

 

「ほれ、ほれぇ」

「……二人とも、覚悟はいいか?」

「……! 本気ですの?」

「やるしかない」

「トレーナーさん……」

 

誰が引いても恨みっこ無し。しかも袋を渡されたその瞬間に結果が決まってる出来レースと来たもんだ。

 

 

「分かりました。私も腹を括りましょう……」

「マックイーンも!?」

「サンキューな」

「ウソでしょ……」

 

こうして俺たちは2個、3個とゴルシ焼きを食べ続けた。美味しさと後にやってくる未知の恐怖に怯え、もはや感情はぐちゃぐちゃだった。

 

そして4個目──

 

 

「──ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!」

 

俺は意識を失った。

 

とても綺麗な打ち上げ花火と共に、俺の魂もはるか遠くまで打ち上がるのだった。




おまけけ

スズカ「トレーナーさん!? 大丈夫ですか!」
マックイーン「……ゴールドシップ、あなた何入れましたの……」
ゴルシ「あ? 唐辛子だろ、豆板醤にデスソースと……」
マックイーン「そんなもの販売してましたの!?」
ゴルシ「なわけねぇだろ。何言ってんだお前」
マックイーン「なんなんですの……」
ゴルシ「マックイーンのトレーナーへのサービスに決まってるだろ」
マックイーン「……とんだ迷惑なサービス精神ですわ」

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ご覧の作品では、巨乳派、貧乳派を応援しています(挨拶)

更新がだいぶ遅れたこと、楽しみにしてくださってる方々には大変申しわけない気持ちでした。
これからも読んでくださると嬉しいです!

ではまた。
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