乳を求めて三千里   作:イチゴ侍

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恐ろしいほど評価、感想いただけて恐縮です。
第三話、よろしくお願いします!


第三話︎︎ デビューの壁を越えて、異次元へ!

前回のあらすじ!

おっぱいのためにトレーナーを目指しご都合主義の如くトレーナーとなったトレーナー君。

彼は、スズカとクソトレーナーの件を無事に解決し、晴れてスズカの新トレーナーとなった。しかし、出会ってまだ一週間も経ってない彼と彼女の間には堅苦しい雰囲気が流れていた。少しでも柔らかくしようと試行錯誤するトレーナー君は、これからレースを勝ち進んでいくために"どんなレースがしたいか"とスズカに問う。

独占欲の強いスズカは誰にも先頭を譲りたくないから大逃げさせろと、ずっと言い続けているが、元トレーナーにも周りにも無理無謀だと否定され続けていた。それを聞いたトレーナー君は「お前ならできる」とスズカを信じる。

 

自分を信じてくれるトレーナー、そして彼が持つ夢を聞いたスズカは、彼の夢に自分がなると誓ったのだった。

 

 

 

 

 

《第三話 デビューの壁を越えて、異次元へ!》

 

 

 

 

 

おひさまぱっぱか快晴!こんな気持ちのいい朝には気持ちのいい挨拶が付きものだ。

 

 

「おはよー!」

 

俺はなにしてるかって?校門前で朝の挨拶だよ。本当なら俺の仕事じゃなくて、緑のあくま──もとい、秘書さんのたづなさんが担当するんだが、今日は朝から手が離せないようで代わりにやってほしいと頼まれた。

でもこれ、絶対人選間違ってますよ。

 

 

「おはよー!!」

「……」

 

ははっ、シャイな娘だな!こっちも見ずに歩いていったぞ。恥ずかしがらなくてもいいのに……ちなみに82だった。うん、これからが楽しみだ。

ささ、めげずに頑張ろ。

 

 

「おはよ!」

「……っ!」

 

一瞬俺を女の敵!とでも言いたげに睨みつけて去っていった推定B74のウマ娘ちゃん。はい、ご覧のとおり、相変わらず一部から嫌われてます。しかしながら嫌われ度は若干マイルドになったようで、どうやらスズカの元トレーナーとの一件を見ていた娘が、俺の活躍を広めてくれたらしい。

 

それでもこびりついた噂というのはなかなか取れるものではない。取り付いた噂はこれから少しずつ俺の行動で払拭して行けばいい。

 

めげずに挨拶を続けていると、向こうから歩いてくる見知った緑色が見えた。

 

 

「トレーナーさん。おはようございます」

「おう、スズカ。おはようさん」

 

お互いに色々と話し合ったあの日から、スズカもずいぶんと柔らかく接してくれるようになった。最初の頃は『……おはようございます』と必要最小限の挨拶だけだったが、今では”トレーナーさん”とプラスアルファで挨拶してくれるようになった。確かな進歩だ。

 

 

「スズカのトレーナーさん、グッモーニングデース!」

「おう、おはよ。タイキ」

 

スズカのデビュー戦へ向けた特訓の最中で、何度か接しているうちにマイフレンド認定してくれたあの日の栗毛巨乳ウマ娘こと、タイキシャトル。

相変わらずご立派なものをお持ちだが、あの日以来チャンスが降ってくることもなく、マイフレンドにはなったが、パイフレンドにはなれていなかった。

 

 

「トレーナーさん、ハッピーデスか?」

「もちろんハッピーだ!」

 

朝からええもん見れたし。

 

 

「なら良かったデス!」

「トレーナーさん、また後で」

 

バイバイと手を振り、学園内に入っていった二人。

ちょっと前までウマ娘と言葉を交わすこと自体難しかったが、こうして二人とはいえ、話せる娘がいるっていうのは良いもんだな。

 

よし、元気出たしまだまだ声出してくぞ!

 

 

「おはよー!!」

「……チッ」

 

舌打ちされた。ぴえん。

 

 

 

 

朝のあいさつ運動を終えて、俺はトレーナー室で肩身を狭くしながらくつろいでいた。

こっちはこっちで俺があの男を罠に嵌めて解雇まで追いやったみたいな噂が流れている。どうやらあの男、外ヅラだけは良かったらしく、少し担当に厳しいが良い奴って設定だったらしい。つまりみんなの中では、そんな良い奴を嵌めて担当に暴力を振るわせるよう仕向け、さらにはスズカを洗脳して男を告発させたとんでもない外道トレーナーという事に俺はなっているらしい。

 

これもう完全にあいつが残した怨念じゃねぇか。

 

当然、こんな外道トレーナーと関わり合いになろうなんて奴がいるわけもなく、俺は今日も今日とて大好きな缶コーヒー片手にスズカのトレーニングメニューを考える。

 

 

「先輩!聞いてくださいよ!」

 

ごめん訂正、いたわ。

 

「……お前も物好きだよなぁ」

「ん?何の事っすか」

「いいや、こっちの話」

 

こいつは俺の後輩で今年から入ってきた新人トレーナーだ。後輩と言っても別のトレーナーのサブについてるから直属ではない。ただ、なぜか懐かれてしまった。

 

 

「んで?今日はどうした」

「遅刻してあねさんに叱られました」

「ゆとり新人社員かお前は……」

 

ちなみにこいつ、俺以外は絶対に”先輩”とは呼ばず、名前呼びする。こう、俺だけ名前で呼ばれなくて寂しいような、俺だけ先輩って呼ばれて嬉しいような……複雑な気分だ。

 

なんにせよ、こんな中で俺の話し相手になってくれる奴がいるっていうのは良いもんだな。

……なんか今のデジャブったぞ。

 

 

「お前昨日遅くまで起きてたな?」

「え? 僕は昨日12時前には寝てましたよ」

「はい、ダウト」

 

俺相手に嘘をつくとはいい度胸してんな。

 

 

「お前が嘘ついた時は分かりやすいもんで、右足のつま先を立たせるんだよ。その後踵をグリグリするまでがお前の癖な」

「……自分でも気づいてなかったっすよ。さすが先輩っすね。あ!それ絶対に教えないでくださいよ!?」

「どうすっかなぁー」

 

元から言う気は無かったが、面白いし少しからかっていると、昼飯を奢るからとお願いされたから即OKした。

 

 

 

「はぁーあ、先輩のサブにつきたかったっすよ」

「しょうがないだろ。なったもんはどうしようもない」

 

原則サブトレーナーは担当を持つ先輩トレーナーの下で学んでいくため、こいつが入ってきたときには俺は担当を持っていなかったし、なんなら俺もサブトレーナー期間だった。

 

 

「あともう一年ここに来るのが遅ければぁ……」

「まだ言うか」

 

そんなにお前の上司きつかっただろうか?そもそもごついおじさんが上司じゃなくてまだいいほうだろ、わがまま言うな!くそうらやましい。

 

 

「はぁ……なんであんな鬼ばば──」

「あ、まずいバカ!やめろ!」

 

「へぇ、誰が鬼婆だって?」

 

項垂れる後輩の後ろに仁王立ちしている般若、じゃなくてこいつの上司。俺にとっても先輩である。ザ・仕事人間って感じの女性で、怖いイメージもあるが、自分の担当が初めて重賞取った時には一緒になって号泣するくらい涙脆い人だったりする。

 

 

「ひぃ!」

「はぁ……言わんこっちゃない」

「またこいつが邪魔して悪いわね」

「いえいえ、どうぞ連れてってしこたま叱ってやってください」

 

俺は優しい目を後輩に向けながら缶コーヒーを啜った。

 

 

「先輩のバカぁー!」

「ほら、行くわよ。あんたが一人前になれるようにしっかり教育してあげるからね!」

「いーやぁぁぁぁー!」

 

「あ、そうそう。後輩」

「はい、」

「頑張れ!」

 

先輩はそう言い残すと、後輩を引きずりながら歩いていった。

 

 

「かっけぇな……」

 

先輩とあいつだけは俺の噂には目も耳も貸さず真っ直ぐ接してくれる。それがたまらなく嬉しくて暖かい。

散々嫌われている俺がここでやっていけてる理由の一つでもあった。

 

 

二人の先輩、見ててください。俺は絶対に担当を、サイレンススズカを歴史に名を刻むウマ娘にしてみせるから。

 

俺は缶コーヒーの最後の一滴を飲み干し、スズカのトレーニングメニュー作成へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何度言ったら分かる。大逃げなんて勝てるわけないんだ諦めろ』

 

何度も言われた。耳が痛くなるくらい大きい声だった。その声が嫌で嫌で、私は無我夢中で走り続けた。

 

『今日はこれで終わりだ』

 

そう言うとあの人はさっさと歩いていってしまう。私が"お疲れ様です"と声に出すよりも早く、あの人はトレーナー室に戻っていく。

でもそれでいい。私にとってここからが楽しい時間だから。

 

私はいつも夜な夜な外を走っていた。夜空はとっても綺麗で、今ここで走ってるのは私だけ。私だけが見れる私だけの景色。

夢中になるとついつい走りすぎちゃって、明日のトレーニングに支障が出てしまわないか心配になる。

 

そして次の日、思った通りあんまりコンディションは良くなかった。少し足が重たい。だけどあの人は私には目もくれず黙々とトレーニングメニューを話す。

 

せっかく走れても今日はなんだか走るのが楽しくなかった。

 

それから私にとって二度目の模擬レースがありました。あの人は脚を溜めて溜めて最後に差せと指示しました。

 

……結果は6着。レースの後、あの人は何も言わずその場を去り、私は一人取り残された。

 

 

次の日、私はあの人が来る前に全力で走った。うん、大丈夫、私は走るのが大好きなんだ……そう自分に無理矢理言い聞かせるように走り続けた。

 

もうすぐ最後の直線、あそこを走りきった時に見えたあの景色を思い出したい。ここを走り切れば……、

 

 

『サイレンススズカ』

 

あの人の声が聞こえた。走っている私には自分の心臓の音だけしか聞こえなかったのに、あの人の声は鮮明に嫌なほど聞こえてきた。

 

あの人の元へ行くと、やっぱりレースの話になった。話の内容はさっぱり思い出せない。ずっと耳が痛かった。でもあの人が私の走りを縛ろうとした時、私は拒絶した。それだけはハッキリと覚えてる。

 

あの人は見たことも無い表情をしながらその手を振り上げた。あぁ、これから私は痛い思いをするんだ。どこか他人事みたいに思いながら目をつぶった。

 

でもいつまで経っても痛みがなかった。私は不思議に思い、目を開いた。

 

 

知らない男の人の背中が私をあの人から隠してくれていた。とっても大きくて、とっても暖かい背中。ずっと耳が痛かったのに痛くなくなった。

 

 

それが私と今のトレーナーさんとの出会い。

 

 

『スズカなら可能だ。スズカならできる。やってダメならどうすれば上手く行くのか俺と一緒に考えよう』

 

 

『”歴史に名を遺すウマ娘を育てる”それが俺の夢だ。考えてもみろ、誰もが無理無謀と言い切る大逃げ戦法で一度も先頭を譲らずゴール。さらには重賞取りまくり!そんなウマ娘が歴史に残らないわけがないだろ?スズカのトレーナーになったからには、俺は絶対にサイレンススズカという名を歴史に残す!』

 

 

『大逃げするためには最初から最後まで常に全力全開の速さを出し続けなきゃダメだ。そのためにはもっともっと体力を付ける。そして他のウマ娘達に「あーもうダメだ」と思わせるほど遠くに逃げる!そのためには筋力も必要だ!……っ!デビュー戦で大差だ!大差で勝つぞ!』

 

 

トレーナーさんは私の大逃げしたいという気持ちを応援してくれた。何度も何度もやめろと言われてきたのに、トレーナーさんは一緒に頑張ろうとまで言ってくれた。

 

私が走ることでトレーナーさんの夢が叶う。私は私がしたい走りをする事でもっと先頭の景色を見続けられる。

 

 

走りを嫌いになりそうになった私を助けてくれたトレーナーさん。

 

そんなトレーナーさんへ私ができる精一杯の恩返し。

 

それは──、

 

 

 

 

『恐ろしい……恐ろしすぎる!!これはデビュー戦なのか!?大差です!大差で今、一番人気サイレンススズカが一着でゴール!!他のウマ娘を寄せ付けない異次元の速さを見せつけたぁー!』

 

 

トレーナーさん、見ててくれましたか?

 

トレーナーさんが信じてくれた私の走りを

 

トレーナーさん。私はまだまだ止まりません。だから、これからもよろしくお願いします。トレーナーさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ……こっわ。ほんとに大差やん……どないしよ」

 

推定B96くらいあるウマ娘見かけて興奮したノリで言っちゃったデビュー戦を大差で勝利。あの娘、本当にやっちまったよ。

 

 




ご覧の作品は、巨乳派、貧乳派を応援しております(挨拶)

今回はトレーナー君の周りと、スズカの独白をメインで書かせていただきました。

最終回みたいな雰囲気ですが、まだちゃんと続きますので!笑

あ、それとそれとたくさんのお気に入り登録ありがとうございます!
これからも頑張りますのでどうぞよろしくお願いします!
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