前回のあらすじ!
マックイーンとのあれこれを通して、トレーナー君は無事マックイーンのトレーナーとなり、スズカとマックイーンのトレーナー、略して双壁のトレーナーとなった!
しかしながら、だんだんおっぱいからかけ離れてないだろうか?トレーナー君はいつになったらおっぱいに近づくのだろう……。
《第七話 トレーナー君と双壁》
「はい、というわけで改めてよろしくな。マックイーン」
「よろしく、マックイーン」
「何がというわけかは分かりませんが、こちらこそよろしくお願いいたしますわ」
マックイーンとの契約するための面倒な手続きも済ませ、晴れて俺とマックイーンはトレーナーと担当ウマ娘の関係になることができた。そして今日はマックイーンの担当になって初めてのトレーニングの日。スズカとマックイーンにはオリエンテーションを行うってことでグラウンドに集まってもらった。
「さっそくトレーニング……と行きたいところだが、今日は伝えてる通りオリエンテーションってことでまずマックイーンには俺が指導するにあたっての二つのルールを覚えてもらう」
「ルール……ええ、分かりましたわ」
マックイーンの顔が真剣な表情に切り替わり、俺の眼をジッと見つめてきた。そんなに堅苦しい雰囲気を出されると話しづらいんだが……まぁ昔のスズカで慣れてるからいいけどさ。
「まず一つ、健康第一!」
「なるほど、健康第いち……へっ?」
「その二、休む時はちゃんと休む!」
「ちょ、ちょっと!?お待ちになってくださいまし!」
「なんだ?分からないところでもあったか」
なにやらあたふたしているマックイーン。そしてその横で何とも言えない表情でマックイーンを見守るスズカ。
それもそのはずで、このルールはスズカがきっかけでできたものなのだ。そういえば同じことをスズカに話したときは確か……、
『あ、あの……』
『ん?分からないところあったか』
『これがルールですか?』
『これがルールだが?』
『……』
『今後、俺も、そしてスズカも無茶して倒れたりすることのないように、これはルール作っておかなきゃなと思ってな。それで作ったんだ』
『……ごめんなさい』
『あああ!ごめん!俺がごめんなさい!悪気があったわけじゃないんだもんな!そうだもんな!お前はお前なりに頑張ろうって思ってそれで少し無理しちゃっただけだもんな!だからほんとにごめん!ごめんなさいスズカさん!』
思い出した……あれ以来俺はもうあの一件に関しては絶対直接触れないようにしてる。なぜなら本気でスズカが落ち込むから。ものすっごい耳垂れるし、表情めっちゃ暗くなるし、尻尾なんか地面に着くんじゃないかってくらい垂れてたし、逆にこっちが罪悪感を持ってしまうくらい落ち込んでしまうのだ。
それまで「オラッ!アタシを走らせろよ!ああん?」みたいだったスズカが「トレーナーさん。今日は走ってもいいですか?」ってトコトコ俺の傍まで来て聞いてくるようになったんだもんな。時には叱ることも大事だよ。うん。
……とまぁ、それはそれとして、マックイーンにはこれ以上倒れたりしてほしくないから、スズカが身を挺して作ってくれたこのルールはしっかりと覚えてもらおう。
「一つ目はわかるだろ?」
「え、ええ。それは実際にこの身で痛感いたしましたから……」
「ならその二、休む時はちゃんと休む!」
「つまり休日は身体を休めろ……ということですの?」
身体だけじゃなくて思考もだ、と俺は付け加える。
「要するにその日一日はトレーニングのこともレースのこともそれに関係することも考えず、ただ好きなように過ごす。そういう一日を作ってほしいってことだ」
「なるほど……しかし、考えるな、というのはなかなかに難しいですわね」
「まぁ、全くってのは難しいだろうな。それでもせめて身体だけは休ませてほしい」
俺はマックイーンの目を真っすぐ見つめる。これだけは譲れない、という確固たる意志を感じてもらえるように。そしてそれが通じてくれたのか、マックイーンは静かにそれでいてしっかりと頷いてくれた。
「トレーナーさんが言うお休みというのは週に何日用意してあるんですの?」
「今のところ二日だったんだが、二人を担当するってなるとまた考え直す必要があるかもしれない。とりあえずは二日と考えてもらって構わない」
スズカとマックイーンでデビューの時期もずれているため、二人を同じペースで育てるっていうのはなかなかに難しくなるだろう。となると、どこかで必ず“この時期は詰めていきたい”っていう場面がどちらかにやってくることを想定すれば、今の配分は見直すのが妥当だろうな。パンケーキは週一にするかぁ……。
「さて、ルールに関してはこれだけだ。何か質問!」
「では……」
「はい、マックイーン」
「私が言える立場ではありませんが、これはルールとするにはいささか当然と言いますか……生きている者なら当たり前なような……」
「マックイーン、それ以上は言っちゃいけない」
「へっ?」
ほら見てみろ。お前の隣を!
「あたりまえ……そうよね。当たり前のこと……なのよね」ってぼそぼそと、胸に手を当て……胸に手を当てて呪詛のようにささやいてる女の子がいるだろ!
世の中には一つのこと以外眼中になくて、自分が命の危機に陥るまでずっと没頭するウマ娘がいるんだ。そういう娘には例え“当たり前”だとしても当たり前をルールにしてやらなきゃいけないんだよ。
「当然のことって言ってもさ、それを当たり前にできる奴って少ないんだよ。俺もマックイーンもスズカだってそうだ」
みんながみんなそれぞれ思い当たる節を思い出しては、苦い顔をする。
「当たり前は絶対のルールじゃない。だからできない奴の方が多いんだ。けど、俺の担当ウマ娘になったからには、当たり前を絶対のルールにさせてもらう。文句はルールを完璧に守れるようになったら許してやる。それまでは絶対にルールは守ってもらうからな」
……なんかいいこと言った風な雰囲気だしちゃったからマックイーンもスズカもつられて力強く頷いてくれるのは嬉しいんだけど、元はと言えばスズカさんや、あんたを庇うために言ってるんやからな!「私も頑張らないと」じゃないんよ。
「よし、堅苦しい話はやめやめ!……もともとは軽い感じで済ませたかったんだが……まぁいい。ここからは今後について話していこう」
「今後について?」
「これからトレーニングをしていくにあたって、マックイーンは夢、もしくは目標があれば聞いておきたい」
今後っていうのはつまり、メイクデビューして何を目指して頑張るかだ。日本一になりたい、勝ちたい相手がいる、無敗のウマ娘、クラシック三冠を目指す……なんでもいい。どんな些細なことでもそれが原動力になる。
もちろんスズカにも同じ質問はしてある。が、その時返ってきたのは「とにかく走っていたい」だった。それは言うなれば目標ではなくて、ずっとこうしていたいっていう願望で、他のトレーナーなら返答に困ることこの上ないだろう。それもそのはずで、永遠に走っていられるウマ娘はいないのだから。ウマ娘にとって切っても切れない足の怪我。骨折ともなれば二度と走れなくなる娘だって少なくはない。他にも数多くの病が付きまとう。
その中でスズカの願望を叶えてやる!なんて言えるのは、俺だけなんだろうな。実際言っちゃったし。
さてさて、果たしてマックイーンはどんな目標を持っているのだろうか。
「私は、天皇賞春。その春の盾を勝ち取ること。メジロ家の悲願でもあるそれが私の目標ですわ」
「なるほど、分かりやすくて良い目標だ」
けどそれは家の目標だ。それをお前が担いでるだけで、まだお前だけの目標は見つかってないんだな。まぁ、それをここで伝える気はないし、それは今ある目標を達成した時に勝手に見えるだろうさ。
「それじゃ、マックイーンは春の天皇賞に向けて……の前にまずはデビュー戦に向けた基礎トレーニングだ」
「はいですわ!」
「そしてスズカは次のレースを勝って、次に予定している弥生賞に向けてのトレーニングな」
「はい」
「よーし!頑張るぞ~!おー!」
「「……」」
……え、誰も続いてくれない。ぴえん。
◇
それからというもの、スズカは目の前のレースを圧勝。マックイーンもデビューに備えてのトレーニングは良い具合に進んでいた。
どちらも真面目な性格ゆえに、手がかかるようなこともなく順調に“一部分を除いて”成長していってくれてる。
そして俺も担当が一人増えたことで、仕事の量も増えた。窓の外も気づけばすっかり暗くなっていて、それもそのはず、時刻は七時を回っている。
デスクの上に散らかった資料を片し、椅子の背にかけていたスーツのジャケットを羽織る。空の缶コーヒーはゴミ箱に投げ入れて、誰もいないことを確認したのち、トレーナー室の電気を消して鍵をかけて外に向かう。
もうそろそろウマ娘達も寮の門限で、いなくなっているだろうが、最後の仕事として念のためにと見回りをする。
これは俺が勝手にやってるだけで義務ではなく、ただ気分転換と夜の散歩のついでみたいなものだ。
外に出ると気持ちの良い夜風が前髪を撫でる。トレーナー室に籠っていた事で体に溜まっていた熱も少しずつ抜けていく。
見回りと言っても、ここの生徒たちは比較的真面目な生徒ばかりで、寮の門限はしっかり守っている。トレセン学園には二つの寮があって、栗東寮と美浦寮。スズカとマックイーンは同じ栗東寮のようだ。スズカの話によれば一部屋に二人制だが、スズカの隣はまだ空いているらしい。寂しいかと聞いたら「あまり気にしたことがない」って返ってきた。あまりにもスズカらしいというか。
女の子だけの寮なんてまさに花園だ。男なら一度は入ってみたいと思うだろう。しかしよーく考えてほしい。相手はウマ娘だ。彼女たちは時に稲妻を落としたり、薙刀を振り回したり、舌ペロしながらリボルバーを撃ちまくったり、ターフを拳で破壊したり、岩を砕いたり、レース終わりにドロップキックをかましたりしてくる。
そんな彼女たちの部屋に侵入or覗きなんてしてみろ。牢の中の前に三途の川の向こう行きだ。
「おーい、門限近いから早く帰れー」
「は、はいっ!」
練習場でまだ走り込んでいた二人組に声をかけ、俺は学園の中に戻っていく。
中に戻ると、食堂の明かりが点いているのが見えた。
ウマ娘の食欲は人間の数倍はあるため、それに備えての仕込みは前日の夜行われているらしい。なんでも数秒間でカツ丼を食い切るウマ娘がいるとかなんとか……。
一応、まだ残ってる生徒がいないか確認しに行くと、見慣れた耳が見えた。
「まだ残ってたのか、マックイーン」
「……あら、トレーナーさん」
難しそうな顔で教科書とにらめっこしていたのはマックイーンだった。
「勉強中だったか、邪魔しちゃったな」
「いえ、明日の小テストに向けて少し復習していただけですから」
「少しにしてはかなり手こずってる雰囲気だったが?」
「それが……」
どうやら難解なものがあったらしく、思った以上に時間がかかっていたらしい。しかし夜遅くまで粘るとは……流石はマックイーン、根気強いな。
マックイーンのことだ、この後寮に戻っても決着するまでやるのだろう。そうなると寝不足は免れないだろうな……。
「頑張るのは良いが、頑張りすぎも良くないからな?」
「ええ、分かっていますわ」
◇
そして翌日、俺とスズカはデートしていた。
「ハチミツパンケーキ一つと、ハチミツパンケーキのハチミツ多め生クリームマシマシお願いします」
「生クリームマシマシ……?」
こうなった経緯は文字通り、マックイーンが寝不足だったことが原因だ。本人はやる気満々だったが、明らかに寝不足なのが見てわかった。いくらトレーニングが出来ると本人が言おうが、不調が怪我に繋がる恐れもある。
ということでマックイーンには無理やり寝てもらった。
そして何故、スズカとデートしているかというと、
『さて、マックイーンは帰したし、トレーニング始めるか』
『トレーナーさん、わがまま言ってもいいですか?』
『ん……いいけど、どした?』
『今日はお休みにしませんか?』
『……!珍しいな、スズカが休みにしようなんて』
『ダメ……ですか?』
『まぁ、レースに勝てたご褒美もあげてないし、今日は休みにしよう!』
って感じのやり取りがあって、前回約束したスイーツを食べに行くっていう話に繋がって、俺の行きつけである喫茶店でデートになりました。
これもマックイーンが即落ち二コマみたいなことしてくれたおかげ……っていうと不謹慎な気もするが、寝不足は自業自得だし、マックイーンのおかげだな!
「いいお店ですね」
「だろ? 俺のお気に入りだ」
「私も好きになりました」
「早っ!」
流石は大逃げのスズカさん。でも凄いリラックスしてくれてるのが分かるし、ほんとに気に入ってくれてるみたいで良かった。
「でも、せっかくならマックイーンも一緒に来たかったですね」
「あいつに言ったらめちゃくちゃ羨ましがりそうだな……スイーツ狂だし」
「ふふっ、それじゃ私とトレーナーさんだけの秘密ですね」
「……っ」
不意打ちにも程があるし、狙ってやってんのか、そうじゃないのか分からんが、恐ろしい娘だよ……。
おっぱい以外にドキッとしたの初めてだ……。
「お待たせしましたー!ハチミツパンケーキと、ハチミツパンケーキのハチミツ多め生クリームマシマシでーす」
「わぁ!」
俺にとっていいタイミングでパンケーキ達がやってきてくれた。スズカは6段パンケーキの大きさに目を光らせていた。女の子といえばスイーツだろうし、それはスズカも例外じゃないようだ。
「トレーナーさんの凄いですね……」
「俺はこれくらいの方がちょうど良くてね」
「味は同じなんですか?」
「うーん、ハチミツも多いし普通のとは少し違うかもな」
「一口食べてみたいです」
「逸る気持ちは分かるが、まずは普通の食べてみてからな?」
それから食べさせ合いっこ……なんてことは無く、俺の一方的な食べさせがあったり無かったり。
とても満足してくれたようで、「また来たいです。トレーナーさんと……今度はマックイーンも一緒に」なんて言ってくれたし、連れてきた甲斐はあった。
スズカの見たことない表情が沢山見れた日になった。
その時、ふと閃いた!このアイディアは、メジロマックイーンとのトレーニングに活かせるかもしれない!
メジロマックイーンの成長につながった!
やる気が上がった
根性が20上がった
ご覧の作品では、巨乳派、貧乳派を応援しています(挨拶)
マックイーンを生贄に、スズカとのデートを執行!
……あれ、この作品っておっぱい求める話のはずなのにおっぱい出てないやん!どないすんねん!(いつもの)
たくさんの感想、評価等ありがとうございます!まだまだ頑張っていきますので、これからもどうぞよろしくお願いします!ではまた。