この最新話の投稿と同時に、第二十四話「いざ救助訓練へ」を投稿しています。(バスの中での会話を省いてほしくなかったとの意見がありました)
内容は、第二十五話「敵、襲来」の前半部分であった、バスに乗って移動開始するまでのお話です。そこを二十四話に回した分、二十五話にはバスの中での会話を追加しています。
話の流れ自体に大きな変化はありませんので、こちらの最新話から読み進めていただいても構いません。会話が見たいという方は、二十五話を改めてご覧ください。
いざ救助訓練を始めようとした所に、突如として襲来した
どうやら、人間の脳は信じ難い事実を簡単に受け入れられないように作られているらしい。事態を察しても尚、脳が事実を受け入れてくれなかった。
そんな生徒達を代表するように、上鳴が声を上げる。
「
「13号先生、侵入者を感知するセンサーは……!?」
「勿論あります。ですが……作動していないのでしょう。恐らくは」
多くの生徒達が上鳴の言葉に同意する
その時だった。上鳴の言葉と、センサーがあるが起動していないという事実を踏まえ、彼の言葉を轟と実弥が否定した。
「……確かにアイツらは馬鹿だが、アホじゃねえ。これは、用意周到に画策された奇襲だ。目的は見当もつかねえが」
「だろうなァ。考えてもみろ、天下の雄英のセンサーが機能してねェんだぜ?電波を妨害する類の''個性''持ちが向こうにいるってこったァ。加えて、校舎から隔離された空間に
一同は息を呑んだ。敵は明らかに何らかの目的があって、しかも、自分達を確実に殺すつもりである。誰かに明言されずとも、察せてしまう。
動揺している場合じゃない。腹を括る他なかった。
持論を述べた実弥の視線が飯田を捉える。彼の肩に手を添えながら、実弥は言い放った。
「飯田ァ、
しかし、実弥の言葉に愕然とし、飯田は食い下がる。
「待ってくれ、不死川君!いくら君の頼みだろうと、クラスのみんなを見捨てて1人だけ逃げるなんて…俺には出来ない!」
将来ヒーローになる者として、クラスメイト1人見捨てているようでは、ヒーローの風上にも置けない。飯田はそう考えているのだろう、と実弥は思った。
やはり、真面目すぎるが故に価値観が凝り固まってしまっている。実弥はとうの昔に理解している。時には逃げることだって必要だと。そうして生き残り、次に繋ぐことが出来れば逃げたことは恥になることはないのだと。
実弥は、まるで父親、若しくは兄であるかのように飯田を諭す。
「逃げたっていいんだよ。こいつは戦略的撤退だァ。考えろォ、お前1人分の戦力を加算するのと、何人もの雄英のプロヒーローの戦力を加算する。どっちが命を救けられる確率が上がると思う?」
「……後者だ」
「そうだ。俺はもしもの時に備えて殿を務めなきゃならねェ。八百万は八百万でバイクを創造出来るだろうが時間がかかる。このメンツの中で、1番効率的に最大速度を引き出せるのはお前しかいねェんだよ」
「今こそ、お前の''
そんな様子を見兼ねてか、砂藤が声を上げる。
「何を迷ってんだ、飯田!不死川の言う通り、この役目をこなせるのはお前しかいねえんだ!」
彼に続き、生徒達が続々と飯田の背中を押す一言を投げかけていく。
「そうだぜ!お前の足で
「それに、そう心配される程やわじゃねえぞ、俺ら!もう腹括ってんだ!」
「飯田が救けを呼んでくれるまでの時間くらい、軽い軽い!持ち堪えてみせるよ!」
「お願い、飯田君!私達の命、預けるからね!」
上から、瀬呂、切島、芦戸、麗日。彼らの言葉を聞き、飯田は自分の胸の内が暖かくなっていくのを感じていた。信頼されることが無性に嬉しかった。
彼らに続き、実弥も笑顔で言う。
「心配すんなァ、こっちはイレイザーヘッドに13号もいる。んでもって、A組全員の命は、学級委員長として俺が引き受ける。手出しはさせねェよ。安心して行ってこい」
「…………ああ!皆、先生方を連れて必ず戻る!無事でいてくれ!」
実弥の言葉に力強く頷くと、飯田は力強く地面を踏みしめ、迷いなく飛び出していく。ふくらはぎのマフラーから凄絶な爆煙を発しながら突き進んでいく彼の背中を、一同は願いを込めて見送った。
飯田がUSJを脱出したのを横目に、相澤はよくやったとばかりに薄く口角を上げる。そして、捕縛布を手に臨戦態勢を取り、声を発した。
「13号、避難開始だ。上鳴、お前は''個性''を使って連絡を試せ」
頷く13号と、「っス!」と返事をしてイヤホン型の通信機器に手を掛ける上鳴。
刹那、今にも飛び出しそうな相澤を目にした緑谷が声を上げた。
「待ってください、先生!もしかして、1人で戦うつもりなんですか……?イレイザーヘッドの戦法は、''個性''を封じて、奇襲を仕掛けてからの捕縛……。正面戦闘なんて無謀過ぎます!」
ヒーローオタクとして、相澤の戦法をよく知るからこその言葉だった。確かに、相澤が普段見せている戦闘スタイルではそう思うのも仕方のないことだ。
だが、相澤は臨戦態勢を解くことはなく、ただ一言。
「心配するな、緑谷。ヒーローは一芸だけじゃ務まらん」
そう言いつつ、実弥に目線だけで伝える。――もしもの時は頼んだぞ、と。
実弥が無言で頷いたのを確認すると、勇猛果敢に単身で
13号の指示で避難を開始するも、不安が拭い切れずに思わず振り返る。それと同時に、心配事は全て杞憂だったと分かった。
飛び出した彼の前に真っ先に立ち塞がったのは、遠距離攻撃に優れる''個性''を持った、射撃隊の
困惑して動きを止める彼らを、相澤が次々と薙ぎ倒す。捕縛布を自在に操り、
「そうか……!多対一こそ、先生の得意分野だったんだ!」
「言ってる場合かァ!とっとと行くぞォ!」
そんな相澤の本領発揮を目にした緑谷が目を輝かせながら、呑気なことにも分析をしている。呑気な彼の手を引き、実弥は生徒達の集団の最後尾を走った。
「どうだァ、上鳴」
手のかかる奴だとばかりに緑谷の手を引きながら、実弥が尋ねる。尋ねられた上鳴は、むしゃくしゃするように髪を掻き乱してから答えた。
「あー、もう!駄目だ!さっきからジャミング凄え!全く通信が通じねえ!やっぱ、飯田が援軍連れてきてくれるのを待つしかねえよ!」
「……だろうなァ」
これではっきりした。完全に電波を妨害されている。救援を呼ばせることなく、確実にターゲット諸共A組の生徒達を殺す気なのだろう。
至極狡猾で、面倒なことだ。
実弥は舌打ちしつつ、何者かの気配を感じ取った。
(来やがるなァ、あの靄)
気配の正体が、大量の
「逃がし――」
「ぐおおっ!?」
タイミングはぴったりだった。靄が形を形成しながら姿を現して「逃がしませんよ」と宣言を終えるよりも前に、実弥の超音速の一撃がそれを急襲する。USJの入口の地面を抉る程の凄絶な旋風が巻き起こり、現れた靄をまるまる呑み込んでしまった。
やった、と誰もが確信する。しかし、現実はそう上手くいかない。
「……チィッ、手応えゼロだァ!相手は基本的に物理が効かねェ!油断すんなァ!!!」
実弥が叫ぶ。
息を呑みながら、靄のいた位置を覆い尽くしている土煙をじっと見つめる。すると、黒い歪みが生じて、姿を形成した。
「……
殺意に満ちた眼光を宿した鋭い黄色の瞳を持つ、バーテンダー姿の靄人間となった男――黒霧が、危機一髪だったとばかりに目を細めながら言う。
そして、紳士的な言葉遣いで大胆不敵にも自己紹介を始めた。
「初めまして、雄英高校ヒーロー科A組の皆様。我々は
目的を聞いた一同は戦慄した。目の前の男は、確かに不動のNo.1ヒーローを、知る限り敗北を喫した経験のない男を殺したいと述べた。男の目は本気だ。ハッタリでも何でもなく、やると言ったことはやる目。
オールマイトすら殺せる算段が相手側にあることになる。しかも、今この場に。普通に考えて、学生がNo.1を殺せる相手に勝てる訳がない。たった1人を除いて、全員が怯むのは無理もなかった。
「……オールマイトに息絶えていただきたい、ねェ。大層な自信をお持ちだなァ、靄人間さんよォ」
全く怯みを見せないたった1人、実弥が不敵に笑いながら言い放つ。
会話で時間を稼ぎ、13号に不意打ちさせる準備をしているのだ。物理無効だと分かった以上、真正面から戦闘するのは効率が悪い。13号の''ブラックホール''の吸引力を利用して、早いうちに動きを封じるべきだ。
何より、この男、黒霧は
「そちらこそ……大した度胸ですね。
「そいつァどうも。にしても、随分と大きく出たもんだァ。それだけ言ってのけるなら、当然算段があるんだろォ?」
「ええ、勿論です。詳しくお話しすることは出来ませんが」
互いが互いの腹の内を探り合うように会話を交わす。皆が息を呑んで見守る中、黒霧が再び鋭い目を細め、疑問の声を上げた。
「ところで……肝心のオールマイトがいらっしゃらないようですが、カリキュラムに変更があったのでしょうか?」
対して、実弥は至極冷静に吐き捨てた。
「仮にそうだとして、馬鹿正直に言うと思うかァ?」
「……そうでしょうね。敵の前なのですから、言うはずもない。まあ、些細なことです。私は私の役目を果たすだけ」
次の瞬間、実弥の対応に納得の様子を見せた黒霧の体が徐々に揺らぎ、広がり始めた。その行動を察した実弥が後退し、黒霧が訝しげに彼を観察する。最前線に立った13号が"ブラックホール"を放つ準備を整え終わり、いざ発動しようとした刹那……それは起こってしまった。
「お、おい、
「そうだ!うちの学級委員長の指示で、とびっきり足の速い奴が援軍を呼びに行っちまったからな!」
「お前らなんか、先生方が倒してくれるぜ!」
飯田が既に援軍を呼びに行ったことで、後は耐え抜くだけという安心があるからか、気が緩んでしまったのだろう。峰田、切島、上鳴が援軍が呼ばれつつあることを馬鹿正直に話してしまったのだ。
自分が有利な状況にあり、相手が不利な状況にあることをわざわざ伝えるお人好しがどこにいるだろうか?いや、いる訳がない。彼らのあまりにも浅はか過ぎる行動に、その場の全員が度肝を抜かされた。
「何を馬鹿正直に話してやがんだァ!相手は本物の
実弥が迫真の表情で叫ぶ。彼の叫びを聞いた瞬間、3人が揃って青ざめた顔をした。
――だが、全てが遅かった。
「自分が敗北寸前に追い込まれていることを知りやがったら、何をするか――」
「……ほう」
「何をするか分からねェだろうが」と言い切るよりも先に、怒気の滲んだ黒霧の声が実弥の言葉を遮った。
明確な殺気を感じ取った実弥が舌打ちすると同時に、黒霧は殺意でその黄色い瞳を輝かせ、その内に膨らむ怒りと比例するように、靄であるその肉体をみるみる巨大化させていく。
「成る程……先程までの会話も、時間稼ぎだったということですか。私が貴方方の前に立ち塞がるよりもずっと前に、生徒をここから脱出させていたと。お見事と言う他ありません」
(まずい……!)
「皆さん、下がってください!」
生徒達を守るように立ち、手を構える13号だが、彼女の抵抗もお構いなしと言わんばかりに、怒りに震える黒霧が漆黒の靄による巨大な円蓋状の空間を作り出した。そして、一同を丸ごと呑み込んで、視界を底知れぬ漆黒の闇で染め上げてしまう。
「確かに我々のゲームオーバーは決まってしまいましたが、ここで捕まる訳にはいかないのですよ。必ずや逃げ延びてみせます。ですが、その前に……最低限の役目を果たし、置き土産をさせていただきましょうか!」
「私の役目は単純!貴方達を散らして、嬲り殺すこと!!!」
(くそッ、また間に合わなかった!)
黒霧の怒号が轟き渡る中、クラスメイト達がどこかへ次々と消えていく。実弥が技を繰り出すよりも早く、黒霧が巨大な円蓋状の空間に変化してしまった。
本当に自暴自棄になった生物は末恐ろしい。どんなことをしてでも目的を果たそうとする。きっと、黒霧も同じように半ば自棄になっているのだろう。
当然だ、練りに練った計画が最初から崩れ去っているも同然の状況に陥っているのだから。動揺もするし、理不尽さに思考を放棄してしまいたくもなるに決まっている。
黒霧の殺気を感じ取った時点で、余計なことは何も考えずにもっと速く動けていれば、防げた事態のはずだった。そのはずなのに、またしくじった。未然に防げなかった。
(自分の未熟さに腹が立つぜ……!テメェもきっとこういう気持ちだったんだろうなァ、冨岡!)
常に「俺はお前達とは違う」と、他の"柱"を見下しているのではなく、自分自身をその言葉で卑下し続けていた同僚の顔が思い浮かぶ。彼の気持ちがまたほんの少しだけ理解出来たと同時に、考えるのをやめて体を動かした。
(――せめてもの抵抗だ。逃がせる奴だけでも逃がす!)
半ば衝動的に烈風が如く地面を蹴った実弥は――
「っ!?」
「わわっ!?何が起こっとるん!?」
13号と麗日を抱え、荒っぽくではあるが、空間の範囲から逃れられるようにと投げ飛ばす。投げ飛ばされた2人は、空間の天井を突き破って、あっという間に範囲外に逃れることが出来た。
「うおっ!?13号と麗日が!?」
「あんな所から落ちたらひとたまりもない!受け止めるぞ!」
「おう!」
自分の肉体が少しずつ靄に呑み込まれていく中、実弥の耳が13号と麗日を受け止めようと動き出す砂藤、障子、瀬呂の声を捉えた。
どうやら、数人は散らされずに済んだようだ。そのことに安心しつつ、実弥は全員の無事を願う。
(全員、こんな夢半ばで死ぬんじゃねェぞ……!)
こうして、実弥の肉体もまた、完全に靄の中に呑み込まれてしまったのだった……。
★
自分の視界を覆い尽くす靄が晴れた瞬間、目の前の光景は先程までのものからガラリと変化していた。
ひび割れ、一部が欠けた壁や床。本来あるはずのガラスが見受けられない窓。もはやろくに機能していないドア。
実弥の目の前に広がっていたのは、倒壊ゾーンの景色だった。
「チッ、俺ら全員をそれぞれ別の場所に飛ばしやがったかァ」
大して動揺することもなく、状況を即座に把握する。流石に誰がどこに飛ばされたのかまでは掴むことが出来ない。要注意な対象は察しがついているものの、
クラスメイト達の安否を思うと、一刻も早く合流したいところだ。
(取り敢えず今は――)
「ケッ!んでテメェと一緒なんだよ、傷顔」
「し、不死川!無事だったのか!お前が一緒なのは心強いぜ!」
(こいつらと行動する他ねェな)
倒壊ゾーンに飛ばされたのは、実弥だけではない。現に、彼の隣には悪態を
状況が落ち着いてきたところで、切島は実弥に対して思い切って頭を下げた。
「不死川、済まん……!折角お前が作ろうとしてくれてたチャンスを水の泡にしちまった……」
「もう終わったことだ、やっちまったもんは仕方ねェ。後から取り返せェ」
「こっち側が有利だったってのに、それをわざわざバラす奴があるかよ。クソ髪」
「ク、クソ髪!?切島だよ、覚えろ!」
彼の謝罪を受け入れ、実弥は真剣な表情のまま、気にしていないとばかりに切島の頭を一撫でし、爆豪はつまらねえことしてくれるなとばかりに鼻を鳴らす。
爆豪にあだ名で呼ばれて悪態を吐かれた切島がショックを受けつつも、この後の行動で失敗を取り返そうと意気込んだ時だった。
「……それよりも、話すのは後にするぞォ。ワラワラとやってきやがるぜェ」
「ヘッ、ンなこととっくに知ってらァ」
実弥が臨戦態勢を取りながら鉄刀を構え、爆豪が口の端を吊り上げて不敵に笑った。切島が、何が起こるんだと身構えると……彼らがいる部屋の中に、何十人もの
「へっへっへ……!来やがったぞ、ガキ共が!」
「こいつら殺せば、報酬がたんまり貰えるんだろ?ラッキーだぜ!」
「いい鴨だ。
彼らは、揃いも揃って下卑た笑みを浮かべ、実弥、爆豪、切島を見渡す。彼らが思い描くのは、雄英高校の生徒を惨殺したことで自分達の名が世間に知れ渡り、人々に恐怖を刻みつける未来。
ここに集まるのは、所詮チンピラ。自分こそが社会に恐怖を刻みつけるのだと踏ん反り返る者ばかり。
だから、解るはずもない。この場に、A組屈指の実力者とA組どころか雄英高校ヒーロー科1年の中で最も強い男がいることが。
「よぉし、早速ガキ共を――」
「ボコボコにしてやる」と、先頭に立つ
(き、金髪のガキと傷だらけのガキがいねえ!?)
ふと気づく。いつの間にか、爆豪と実弥の姿が視界から消えていることに。先程まで彼らがいたであろう場所を見つめる切島の姿しか、そこにはない。
(ど、どこに行った!?)
折角の大出世のチャンス。逃す訳にはいかない、と忙しなく周りを見渡す。
「だァれが……」
「いい鴨だってェ!?」
「なっ――ごふぉっ!?」
刹那、探していたターゲットの声が彼の耳に届いた。それと同時に、爆豪の放つ爆破と実弥の風圧を伴う鉄刀の殴打が、彼の鳩尾を穿つ。
内部に浸透する衝撃。それによって
その拍子に頭を強打し、彼は気絶してしまった。
「っしゃ!早速1人片付いた!やっぱ心強いぜ、お二人さん!」
ガッツポーズを取りつつ、拳を硬化させた切島も実弥と爆豪の隣に並び立つ。
その事実は、彼らの中に焦りや不安を募らせるのに十分過ぎる。彼らの額から、どっと冷や汗が流れた。
「俺らが相手でラッキーだったって?アンラッキーの間違いじゃねェのか!?」
獣の如く獰猛な前傾姿勢を取りながら、爆豪が掌から火花を散らす。
「心をへし折ってやる、とか言ってやがったなァ。そうなるのはテメェらの方だぜ。安心しろォ、殺しはしねェ。刑務所送りになるだけだァ」
実弥が目を血走らせ、青筋を浮かべながら鉄刀を構える。その口から、風に吹かれる木の葉や砂塵の騒めきを響かせ、相手を鋭く見据えた。
2人が発する迫力は、
「か、囲め囲め!1人で無理なら、数で潰すんだ!」
じりじりと近づいてくる彼らを前に、実弥、爆豪、切島はさも当然であるかのように背中を合わせる。
「ケッ、この程度の奴らが集まった所で勝てると思ってやがる。雑魚共が」
近づく
「こいつらが雑魚って事に関しちゃ同感だぜ、爆発頭ァ」
続けて、実弥が地面を踏みしめながら、不敵な笑みを浮かべて同じように吐き捨てた。
「誰が爆発頭だ。ブッ殺すぞ」
「やってみろやァ、単細胞」
「ンだとォ!?」
「ちょいちょいちょい、ストップストップ!
そして、わざとあだ名を呼んで煽ってくる実弥を睨みつける爆豪と即座に煽り返す彼を、切島が必死に仲裁する。
何せ、自分達を本当に嬲り殺しに出来るかもしれない相手が目の前にいるのだ。切島とて、実弥と爆豪が高校生活が始まった当初から犬猿の仲であることは重々承知している。だが、敵がいる前でも喧嘩されてはたまったものじゃない。
「口挟んでくんな、クソ髪!」
「あだ名で呼ばれようが、テメェがさっさと流してりゃ済む話だろォ。いちいちキレるからこうなるんだァ。名前覚えられずにあだ名で呼ばれてばかりのクラスメイトの気持ちが分かったろ?これに懲りたら自分の言動直すこった」
「ぐぎぎぎ……!テメェ……!!!」
(こんな時だからこそ力を合わせなきゃならねえのに!)
冷や汗を流しつつ、逸る気持ちをグッと堪えて2人の仲裁を試み続ける。何より、切島は、自分のミスでクラスメイト達をバラバラにしてしまった責任を取りたいが為に目の前の障害を手っ取り早く片付けて、皆を救けに行きたかった。
そんな日常と変わらぬやり取りを繰り返す少年達を前にした
「「「「「俺達を無視するんじゃねえええええ!!!」」」」」」
3人を取り囲んでいた
――爆発音が耳に届き、火花が激しく弾ける。鋭い鎌鼬が彼らを一斉に薙ぎ払う。そして、襲いかかって来た
「……へ?」
あまりにも突然のことに切島が唖然とする中、爆豪が言った。
「……フン。俺の邪魔はすんなよ、傷顔」
横槍が入った影響か、爆豪の頭は返って冷静になり、冴えている。彼の怒りも完全に鎮まりきった。鼻を鳴らしながら言う彼の姿には、これまでのキレ散らかしてばかりの子供染みた印象は影も形もない。
実弥も、不敵に笑いながら返す。
「そいつァ……俺のセリフだなァ。精々足引っ張るなよォ」
刹那、爆豪の顔に獰猛な笑みが浮かんだ。
「上等だ……!テメェの出番ごとブッ殺してやらァ!!!」
「ハッ、ブッ殺せるもんならブッ殺してみやがれェ!!!」
2人の戦闘意欲に満ちた叫びが、倒壊ゾーンのビルの中に響き渡る。
――突如として襲来した脅威を退ける命懸けの戦い。その第一関門を突破する為の戦いが今、幕を開けた。