2023/10/9
一部セリフを変更したり、省略したりしました。実弥さんが怯えて逃げ出す受験生達に発破をかける場面と、最後の最後で一部受験生達を諭す場面です。
濁った緑色の巨躯から鈍い光を放ち、巨大な鉄塊がビルを薙ぎ倒しながら突き進む。
巨大なキャタピラを駆動させ、その巨体から想像される以上のスピードで迫る。
拳がビルを豆腐のように打ち砕き、土煙と風圧を巻き起こす。
まさに、自然災害である地震を体現した化身のような存在。それこそが0P。3階建てや5階建てのビルをその腕で上から押し潰せる程の巨体を持った戦車の存在は、雄英に挑んできた受験生達を恐怖で震え上がらせるのに十分だった。
実弥が現場に辿り着き、10階建てのビルの頂上から辺りを見回してみると――
「な、何だよ、あれ……!デカすぎるだろ!?」
「に、逃げろ!あんなのに勝てる訳ない!」
「どうせギミックなんだから、相手にする意味はないだろ……!ただでさえ仮想
「
「いてっ!?ぶつかっておきながら謝らないとか何事だよ!?」
「煩え、こっちだって逃げる為に必死なんだ!」
受験生達が我先にと脱兎の如く、0Pの向かい来る方向とは真反対に散り散りと逃走を図る光景が目に入った。
中には腰を抜かした者もいるし、周りを考えずに逃げることだけ考える受験生達のせいで転倒する者の姿もある。だが、誰一人として彼らを気にかけない。
「チッ、所詮はその程度かァ」
実弥は、ヒーローを目指す者達の現状に呆れ果てた。舌打ちをしつつ、下方にいる彼らに冷めた目を向けていた。
これが勝利する為の逃走――例えば、救援を求めるだとか、一時撤退して体制を立て直す、戦力差を考えて時間を稼ぐ、市民を一旦安全な場所に連れていくといったもの――ならば、別に何も言わない。だが、今回の場合は違う。全て私欲の為の逃走だ。
そういう輩に限って先程の説明の時に緑髪の少年をクスクスと笑って見下し、自身のことを
一先ず、逃げることしか考えられない未熟な者達の未来の為にも0Pの足止めが必要になる。そう考えて、その殲滅に動き出そうとした瞬間だった。
「な、何だよあれ!?」
逃走を図っていた受験生の1人が顔を青ざめさせながら叫ぶ。実弥もその声に振り向く。すると……視線の先から、大量の仮想
「おかしいだろ、何であんな数が一気に押し寄せてきてるんだ!?」
「後ろからはデカイ化け物、前からは大量の仮想
多くの受験生達が諦めて項垂れ、膝を突く。前と後ろから押し寄せる脅威に体を震わせる。まさしく前門の虎、後門の狼。二匹の獣に挟まれて項垂れる彼らは、無力で生きることを諦めた小動物のようだった。
(もう駄目だな、こいつら)
自身の試験会場には、ヒーローたるに相応しい覚悟を持つ者が少な過ぎるようだ。蛙っぽい顔立ちの少女の足にみっともなくしがみついていた葡萄頭の少年でさえ、泣き喚きながらも脅威に立ち向かったというのに。逃走を図った者達はまだ戦えるはずなのに。勝手に諦めて、それより以前に腰を抜かして恐怖に打ち負け、動けない者達をなんとか逃がそうとする素振りさえ見せない。
(……夢見がちなガキはガキのままだ。まあ、当然か。これが普通なんだから)
彼らは本当の脅威というものを知らない。故にヒーローを甘く見る。凶悪な犯罪者や理不尽な災害に立ち向かわなければならないという覚悟もろくにすることなく、彼らの苦労を理解もしないままそれを志す。
幼い頃に現実を知り、人々の未来の為に
そういう意味では、自分達は少し異端だったのかもしれない。
そんなことを考えつつ木刀を構え、実弥は思う。
(きっとこいつらも……これで思い直すだろうよ。自分の考えが甘かったんだって。良いんだよ、それで。怖ェんなら怖ェで良い。テメェらの分まで俺が戦ってやるからよ――)
「大人しく守られてろ、俺の後ろで。テメェらにこんな思いは二度とさせねェから」
方針を変え、腰を抜かした受験生達の元に迫る仮想
「うぉぉぉおおお!!!!!」
聞いている方にまで熱い何かを込み上げさせるような叫びが轟いた。見れば、無造作な銀髪をしたワイルドな見た目の少年が、その肉体を日光に照らされてギラギラと輝く銀色の金属へと変化させながら、仮想
実弥は、咄嗟に動きを止める。彼の目はその少年に釘付けになった。
「無謀だ!」とか「戻ってこい!もう無理だ!」という制止の声にも耳を傾けず、金属の体を持つ少年は向かいくる仮想
「俺は……!俺は恥ずかしい!俺の後ろにゃ、0Pが怖くて、腰を抜かして……!全く動けないって奴がいるのに!勝手に諦めて、そいつらを見捨てるお前らの雰囲気に飲まれそうになった!怖がってる人に対して何も出来なくて、何がヒーローだ!!!」
仮想
(まだ……信じても良いのかもな)
そうこなくちゃ面白くないとばかりに実弥は笑う。その瞬間、奮闘する金属少年の手を逃れ、3Pが無数のミサイルを放った。
「し、しまった!」
ミサイルに狙われた受験生を守る為に少年は走る。間に合え、と心の中で強く願いながら。
そのミサイルの狙いは、腰を抜かした受験生達。神の天罰が下ったのか、彼らの顔触れはいずれも試験開始前に実弥に対して嫌味を言った者達だった。
「ひいっ!?嫌だ!嫌だぁっ!救けてくれぇっ!誰か、誰かぁっ!お願いだ、何でもするからっ!!!」
その中の1人が涙ながらに救けを求める。だが……その場にいる者は、誰一人として手を差し伸べようともしない。まるで、他人を見た目だけで
「そ、そんな……。見捨てないでくれよっ……!」
もう駄目だ、とばかりにミサイルの標的となった受験生達が猫のように身を丸めて縮こまる。
「ちくしょぉぉぉ!間に合えぇぇぇ!!!」
届かない手を必死に伸ばす。どうして、自分はもっと速く走れないんだ、と自分を罵りながら走る。
「うぉりゃあああ!!!」
気合の一声と共に地面を蹴って、ゴールを守るキーパーのように必死で飛び込まんとする。だが……届かない。
(くそっ!くそっ、くそっ!届かねえ!すまねえ……!すまねえ……!)
金属少年は、自分の無力を嘆いた。もう終わりだと誰もが思った。
――しかし、絶望する最中に全てを塵と化す旋風が吹き荒れる。発射されたミサイルが風で斬り裂かれ、全て爆ぜた。
「……!お、お前……っ、な、何で……!?」
ミサイルの標的となっていた受験生達が爆発音に慌てて顔を上げ、信じられないものを見たかのような顔をする。
それもそのはず。彼らを庇う形で立っていたのは……自分達が嫌味を言った相手である実弥だったからだ。
鳩が豆鉄砲を食ったような顔の彼らに対し、視線も向けることなく、実弥は当然のように吐き捨てる。
「困ってる奴がどれだけ嫌いな奴でもよォ、手を差し伸べねェなんて選択肢はねェんだよ。手を差し伸べる相手を自分の中で選んでいるんじゃあ、テメェらの言うヒーローにはなれねェと思うぜェ」
実弥に対して嫌味を言った者達を見捨てた自分達にも向けられた言葉なんだと多くの受験生が察して俯く。そんな彼らも気に留めず、実弥は続けた。
「……目の前にいる救けを求める奴が、どんな
そして、金属に肉体を変化した少年の頭をポンと撫でる。無機質な金属の冷たい感触。だが、そこに彼の熱い心が宿って不思議と熱を持っている気がした。
「あの
「おう、任せろ!」
続けて、肩に手を添えながらこの場を任せると、金属少年は握り拳を作ってガッツポーズで答える。実弥が満足そうに笑って0Pの方へ踵を返すと同時に、猪の如く仮想
ロボットの群れに立ち向かい、金属の拳で次々とそれらを破壊していく少年を未だに呆然と見る受験生達。彼らを見ていられず、実弥は青筋を浮かべて叫んだ。
「何を怖気付いてやがるゥ!テメェらよりも先に腰抜かしてまともに動けねェ奴を、この戦場に置き去りにして見捨てる気かァ!?ふざけんのも大概にしやがれェ!!!」
目の前にいる受験生達が一斉に肩を跳ねさせる。もはや泣きそうな顔になっている者もいるが、関係ない。
「テメェらよォ、
自分の思っていたこと全てを吐き出した実弥は、最後に0Pを見て腰を抜かした者や我先にと逃走した者達の影響で転倒してしまった者達に優しく声をかけた。
前者は頭を撫でてやり、後者は怪我がないかを確認して、怪我があれば応急処置を施してやった。その上で、もう怖い思いはさせないから、と。気をしっかり持て、と。最後まで一緒に頑張ろう、と伝えた。
そして、彼らの顔に安堵の色が満ちたのを見ると、安心したように微笑んで、風を巻き起こしながら消えるように0Pの方へと疾駆した。
その場には、実弥の言葉の意味を彼らなりに噛み締める受験生達と向かいくる仮想
★
「あのまま言われっぱなしでいいのか!?」
「頑張ろう、俺達なりに出来ることをやるんだ!」
「なら、私……この人達を避難させるわ!」
「僕も手伝います!」
(そうだ、それでいい。ヒーローになれなくたって、他人を安心させる為に出来ることやってりゃ、十分にヒーローだ)
自分の行いを恥じるようにしながらもやる気に満ちた声を耳にしつつ、やれば出来るじゃねェかと言わんばかりに実弥は微笑む。
ならば、彼らが安心してやるべきことをやれるように……自分が脅威を滅ぼそう。
地面を揺らしながら進撃する巨大な戦車を見上げつつ、実弥はそう考えた。
そんな中、随分と気の抜ける表情の金髪に黒いメッシュを入れた少年と、横抱きにした彼に対して必死で声をかけながら走る橙色のサイドテールと凛とした青緑色の瞳が特徴的な少女の姿が目に入った。
「気をしっかり持って!救けてくれた分の恩は返すから!」
「ウェ、ウェ〜イ……」
「何言ってんのか全然分かんない……!どうしてこうなった……?」
怪我をして転んだ受験生を見かけた少女は、姉御肌なその性格故に怪我をした受験生に手を差し伸べて、彼を逃がした。だが、そうしている間にも0Pの巨躯は彼女に迫っていて、もう数10cmで自分の場所に辿り着いてしまうという地点にまで突き進んでいた。
このままでは潰されると考えた彼女は、自分の命が尽きるのを覚悟しつつも後退を選んだが……そんな時に割り込んだのが、この金髪の少年だった。
「下がってろ!」
と、ヒーローに相応しい言葉を発し、彼はその体からありったけの電気を解き放った。
その結果、0Pの動きが一時的に止まって逃げる時間が出来たものの、肝心の自身を救けてくれた少年に礼を言おうとしたタイミングで、彼が女子に見られればプライドがズタズタになるであろうくらいにとんでもないアホ面を晒して動くことすらままならない状態になっていることに気が付いた。
そして、彼を少し恥ずかしい目に遭わせてでも逃げることを決めて今に至る。
(あーあ……ありゃ恥ずかしい奴だな)
そんな彼らを見て気の抜けたことを思いつつも、実弥は脚で地面を強く踏み込んで一気に0Pとの距離を詰める。
0Pは、その巨体故に進む速度が速い。踏み出す一歩が小さい子供とそれが大きい大人とでは後者の方がより速く歩けるのと同じだ。それは、既に金髪の少年を横抱きにしたサイドテールの少女を自身の間合いに入れて巨大な拳を振るいつつあった。
「っ、やばっ!?二度目のピンチ!」
少女も地面に出来た影によって、その拳に気が付いたようであった。だが、些か遅い。もう自分ではどうしようもないくらいの距離に0Pの拳が迫っていた。
それでも、希望を諦めずに走る。その時――
砂塵を巻き上げて空を暗くし、山中に靄をかける風が激しく吹き上げた。
「きゃっ!?」
突如吹き抜けた一陣の風の凄まじさに思わず目を閉じて、動きを止める。そして、目を開けてみると……木刀を振り上げた無造作な白髪と傷だらけの顔が印象的な少年の姿があった。
元から見た目のインパクトが強い上に、試験の概要説明の時に目立っていたのだ。見覚えのない訳がない。目の前の彼が、概要説明の時の少年だとサイドテールの少女が察するのはすぐのことだった。
ずるりと、先程まで自分に振り下ろされていたはずの0Pの拳が元々あるべき場所からずり落ちて、地面に落下する。
「……え?」
(木刀で金属を叩き斬った……!?あの風って、まさか斬撃の余波……なの!?)
目の前の事実が信じられず、唖然とする。そうしている間にもう一度風が吹き荒れ、それを斬り落としたはずの少年の姿が消えた。
「ッ!?どこに――」
咄嗟に辺りを見回す。その時、地面に小さな影が出来た。
「まさか!?」
全てを察して見上げると、太陽の光に照らされた傷だらけの少年の、実弥の姿がある。
あの一瞬で、0Pの頭上を取れる高さまで跳躍したと言うのだろうか。そんな芸当、大方オールマイトにしか出来ないはず。
もしや彼は、とんでもない人物なのではないか。そんなことを思いながら、少女は実弥を見上げていた。
「吹き飛ばされるぞォ!!!俺らから離れとけェ!!!」
「!?わ、分かった!!!」
突如、実弥が叫ぶ。それと同時にハッとし、少女は0Pから距離を置くように走った。
これから何をしようと言うのだろうか。0Pを破壊する気なのか?いくつもの疑問を頭に抱えながらも走る。
その少女が十分に離れたと見るや否や、実弥は烈風の如く激しく身を翻して呟く。
――上空で台風が巻き起こった。
凄まじい勢いで巻き起こる、激しく渦巻く風。自然災害として名を馳せ、人々に脅威を
その中でも、進行方向を変えることなく韋駄天のように速い速度で進行するとされるものを彷彿とさせる無数の斬撃が0Pを襲う。
「っ……!?なんて風……!」
もう実弥から数百mほど離れているというのに、余波で押し寄せてくる風圧がサイドテールの少女の足元をふらつかせる。ここまで横抱きにしていた少年を地面に下ろして低い姿勢を保ちつつ、息を呑むしかなかった。
そして、その台風のような斬撃は……0Pの頭部と胴体を真っ二つに別れさせた。
その頭が虚しくも地面に落下していくのと同時に巨体がグラつき、ボディーを爆発させながら後ろへと倒れていく。
体の芯まで響き渡るような重々しく深い地鳴りと共に実弥が地面へと着地する。
その瞬間、バキッと乾いた音が聞こえた。
「……流石に折れちまうかァ。気に入ってたんだけどなァ」
その音に視線を下ろせば、木刀が綺麗に真っ二つに割れてしまっていた。いくら実弥が剣技に秀でていようとも、たかが木刀だ。金属をいくつも叩き斬っていれば折れて当然。
「お疲れさん」
『試験……終了!』
ここまで歩んできた修羅の道に付き合ってくれた得物に感謝を告げると同時に、スピーカー越しの試験終了のアナウンスが鳴り響く。
雲一つなく晴れ渡った空を見上げ、実弥はようやく肩の力を抜いたのであった。
★
「終わっちまった……のか」
肩で息をしながら、肉体を金属に変化させる"個性"を持った心熱き少年、鉄哲徹鐡が呟く。
結論として、実弥が掛けてくれた自身への激励や彼の一喝で奮起した周りの受験生達の救けもあって、誰一人怪我もなく仮想
何せ、ここに来るまでに仮想
今なら分かる。自分を激励してくれたあの男が、
(……アイツがそれだけ凄くて、強かったんだ。俺らより何歩も先を行ってたんだ)
だが、恨む道理などあるはずもない。この場は互いを蹴落とし合って当然なのだから。あの男は、そういう場でありながらも自分を助太刀し、わざわざ他人に発破をかけて火をつけさせた。
……感謝しかないに決まっている。彼を恨むのは、それこそお門違いだし、ヒーロー失格だ。
「他人の見た目で性格を決めつけて、勘違いしてた自分が情けねえぜ……!」
過去に戻れるのなら、初めてあの男を見かけた自分をぶん殴りたい。あんな奴に自分が負ける訳ないと意気込んでいた自分を全力でぶん殴りたい。
鉄哲は、心の底からそう思った。
だが、覆水盆に返らず。一度零した水を器に戻すことは出来ないのと同じように、過去の失敗を取り消すことは出来ない。
(これからの行動で取り返すしかねえ)
そう決断し、1人拳を握りしめた。――その時。
「群れた仮想
実弥の苛烈かつ冷たい言葉が耳に入った。鉄哲は、咄嗟に顔を上げて「そんな酷えこと言わなくても良いじゃねえか!」と言いかけ――何も言えなくなった。
何故なら、その一言に反して実弥の顔付きは酷く穏やかだったからだ。そして、その目は思いやりに溢れて、とても優しいものだった。
(なんか……違え)
馬鹿故に何が違うのかまでは分からない。だが、不思議とそう思った。
絶望して顔を上げる受験生達。静まり返った空間。そんな場所に、未だにアホ面の金髪少年を抱えたサイドテールの少女と、蛙っぽい顔付きの少女に、葡萄頭の小柄な少年もやってきた。
実弥の顔を見知った者として、彼に声をかけようとするも……その雰囲気故に出来なかった。
実弥は続ける。
「本物の
実弥は
あちこちをさすらっていただけあって、結構な凶悪犯の
……そんな人を増やしてはならない。そうさせる輩を増やしてはならない。だから、実弥は厳しい言葉を葉に衣着せぬままに投げかけるのだ。
「俺は、
目を閉じ、拳を握りしめながら、更に続ける。その脳裏に自分がやったのと同じ様に兄である自分を助けたかったと言いながら散った前世の弟、玄弥を思い浮かべて。
目の前にいる者達は、彼らと同い年くらいなのだ。脅威に対する恐怖がどうしても拭えないなら、その恐怖に押し負けて苦しむことすらしてほしくない、と実弥は思う。
彼らにだってやる気がある。やる気を出しさえすれば、やれるのは分かった。だが、一人前のヒーローとして社会に出たら、それを出せるようにわざわざ促してくれる者などいる訳がない。今回は、たまたま自分がいた。ただそれだけの偶然だ。だから、そのやる気は認めるもののそれとは話は別だ。
「生半可な覚悟で厳しい業界に足踏み入れて、死ぬなんてことは俺が許さねェ。家族を、ダチを、テメェらが世話になった相手を泣かせんな。テメェらが幸せに暮らしてるところには、
そして、閉じた目を開きながら付け加えた。
「……全部を賭して夢を追いかけるのも良いが……忘れんなよォ。ごく普通の暮らしが出来るってのは、テメェらが思う以上に幸せだってこと」
その呟きと共に浮かべた表情は哀しげな微笑みのようだった。周りは何も言えない。ただ、俯いてグッと拳を握りしめるしかなかった。
そんな俯く受験生達の頭を、優しく吹き抜けるそよ風のように実弥はポンと撫でていく。そして、そのまま彼は軽く手を上げ、1人会場から去っていった。
「あんなに優しいのに、不器用……か。そんな奴、会ったことないや……」
(誤解した自分が恥ずかしいな……)
1人、静かに去っていく実弥の背中を見送りながら、サイドテールの少女は呟き、考えたのであった。
「……優しくて熱い奴なんだな……。敵わねえや、何もかも」
鉄哲も完敗だと言わんばかりに笑っていた。
因みに、仮想
次回に結果発表をやって、行けたら雄英入学(個性把握テストの直前)まで行こうかなと思います。
2021/8/14(PM 23:12時点)
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