真の勘違いは周囲が勘違いしている原因を脳内補完で存在しない記憶してさも複雑な内情を知ってるからな……!と当人にバレないよう隠すから気付けない。
異世界ってどこから異世界判定が入るのだろう。ファンタジーは異世界、SFもまあ異世界? ポストアポカリプスは異世界……? 実は異世界じゃなくて俺たちが住んでいた世界の未来の姿だったんだよ! は異世界として無理がありゃしませんか。そこまで無理でもない? そうですか失礼しました。
まあ何が言いたいのかと言うとさも「異世界に行ってもらいます」的な存在出して「このチートを差し上げます」とかまでやって争いも不穏も何一つない現代日本に行かせるんじゃないよ、と。捻れたリズムで踊りそうだった俺の覚悟を返せ。
――テンプレート転生してウン年。すっげ〜長い明晰夢だと思いたいんだがどこからどう見ても現代です本当にありがとうございました先生の次回作にご期待下さい!
……アッ正確には現代じゃなかった! ここ平成だわ!
「良いシュートだったぞ」
「わぁい」
あ^〜褒められると承認欲求が満たされるんじゃ^〜
キング・オブ・ゴールキーパー、略してKOGという微妙にダサい気がする二つ名を持つ帝国の守護神にして俺の幼なじみの源田。いいところのお家出身。その手にはさっき俺が蹴ったサッカーボールがある。
真正面からのシュートを真正面から受け止める――単純にキーパーとしての力が試されるそれを何度か繰り返して満足したのか、俺とは違う人にボールを投げて返す。
「っし、次来い!」
ボールを受け取ったのは同じサッカー部の部員である寺門。ボールを持って空中に――アッコレは。
「百烈ショット!」
「ウーン(気絶)」
「バッ…………寺門お前あいつの目の前で必殺技を使うのやめろって言ったよなぁ!」
必殺技には必殺技を。普通のキャッチでは止められないだろうそれをパワーシールドでしっかりと止めた後に言葉を飛ばし、ぶっ倒れた友人の介抱へ向かう源田。
帝国学園一のビビりとして知られる俺は今日も元気です。……よく気絶するけど元気です! 俺が元気って言ったら元気なんだよオラッ。
確かに異世界っちゃ異世界なんだけど異世界と言ったらオリジナルなファンタジー世界が基本だと思ってたんですが的思いは口にせず異世界転生してしまった俺のチート。
それは『他作品要素』――なんていかにもチートですってモノじゃない。めちゃくちゃいらないタイプのチート。まあチートってそもそもズルですし? 面倒ごとに巻き込まれるぐらいならチートを消して欲しいんですが? 世界からの垢BANか下方修正マダー?
問題のチート名、『ナンダコレカウンター』。元いた世界の常識的にあり得ない行動を異世界で認識すると俺にそのぶんだけパワーが溜まっていく……らしい。何この……何? そんな名前のテレビ番組聞いたことあるぞ神様。パクるのダメだぞ神様。
最初はなんのこっちゃかわからなかったが今はなんとなくで効果を理解した。このチート、カウンターが貯まるたびに何かしら俺にパッシブが増える。問題点としてはプラスの効果だけじゃなくてマイナスの効果も持ってるっぽいところ。だって前世はそんな気絶しやすい子じゃなかったもん!
このチートの要らない要素としては、イナズマイレブン特有の超次元を俺が認識すると即気絶するパッシブがあるというのが一番デカい。
サッカー? 勿論慣れるわけなかった。
必殺技を見ると気絶。年齢と体格が釣り合ってない中学生を見るだけで気絶。校舎にバスが突っ込む音と衝撃で気絶。……と誇り高き帝国学園サッカー部に泥を塗るためだけにいるような存在なので永遠に2軍でいいです。もっとランク下げて3軍にするべきそうすべき。マネージャーでもいいと思う。
そもそもそんな存在がどうしてサッカー部にいるのかと言えば源田がほぼ強制的にサッカー一緒にやろうぜと入部させたからなんですよねハハハ。やっぱ一番の敵は友ってワケよ。
そんな源田が俺の強さとかウンタラカンタラ言ってて毎日鬼道を口説こうとしてるけど知らね〜〜〜〜!! 総帥が1軍への昇格にOKを出さないと信じて――☆
…………アレッなんで2軍がナチュラルに1軍とおんなじ練習してるんだろ? 1軍の人たちも俺がいて当然な態度でいるんだろ? まあいっか〜!(現実逃避)
「大丈夫か?」
「クッションが無ければ即死だった……」
「冗談が言えるならまだ大丈夫か」
ふらついていないか、体を捻ったりしていないかなどなど確認して安心した様子の源田。
ん? 源田がキャラ崩壊してないか、だって? ……お前小さい頃からの友人が知り合ってからずっと超次元認識気絶地面に頭ごっつんする子ならこうもなるだろうよ。
頭への衝撃緩和のためクッション性の高いもこもこが詰まったフードのみパーカー的なものを着用するようになったのはサッカー部に入ってからだ。なんかくれた。もっと早くに欲しかったんだけどなーチラッチラッ。
……あと前から気になってるんだがこれ見た目がカッコいいだけの防災頭巾じゃね? じゃね?
あんなこといいなできたらいいな、出来れば体に負担のかからない方法で。具体的には超次元ではない方面で!
帝国学園サッカー部の誇る必殺技の中で一番威力があるのは皇帝ペンギン2号。ペンギンさんはかわいいから超次元だとしても気絶しないのだ! ごめん嘘これは気合いで耐えてる。気絶とかわいいに挟まれてサッカーするとかもうワケわかんねぇなこれ。サッカーってそこまで危険のあるスポーツでしたっけ? ……まず捻挫とか骨折よりも気絶が一番最初に来る危機として俺の中でカウントされてるのもやばいな?
地面からぽこぽことペンギンさん。ペンギンさん。ひとつとばさないでペンギ――なんだあれ、とざわつきと視線が俺に……俺の後ろに?
……………………。
ウワーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!!(気絶)
何が起きたのかまだ理解できていない皇帝ペンギン2号組を差し置いて走り出すGK。流石
――曰く、底が見えない。
――曰く、何を考えているのか分からない。
――曰く、『怪物』。
本人は帝国学園内でしか語られていないその二つ名を知っているのかいないのか。フードで顔はよく見えないがいつもちょっとズレた言動をしている。
帝国学園のサッカー部はまるで軍隊のようだ、と揶揄されることもある。それに擬えれば、彼はさながら深く関わりを持たない傭兵のように振る舞う。掴みどころのない態度は源田曰く昔から、とのこと。
「さっきのは」
「ああ。必殺技、だろうな……」
初めて見たソレは、あまりにも強大な力があった。
空を舞うペンギン達を追いかけ一口で丸呑みに。帝国が誇る皇帝を全て平らげたシャチは何事もなかったかのように空間に溶けて消えた。
必殺技とはエネルギーの塊だ。それを腹の中に収めて何も無い、なんてはずがない。だが……ペンギンの天敵の一つにはシャチが挙げられる。
もし、一つの必殺技のみを潰すことに特化した必殺技なんてものがあれば――それはきっと、あのシャチのようなものになるだろう。
「対皇帝ペンギンに特化した必殺技、か……ますます公式戦に出せなくなってきたな」
「元々出す気は無いのによく言う」
帝国学園サッカー部に入ってそう時間が経たない内にキャプテンとなった鬼道の目から見ても彼の才能は際立って異常だった。……そして、体質も。
練習中に倒れる、というのは当人の体力が追いついてないからだ。それが普通だ。でも彼は違った。……世界のどこにサッカーを見て気絶するサッカープレイヤーがいる?
入部して行われた力量を測るだけの軽いそれで気絶した回数は両手では足りない。1軍入りが確定した源田の言葉が無ければ追い出していたところだった。
サッカーに関することをできる限り認識しないよう、視覚を遮断する目隠しを使わないとまともにプレーできないという異常体質。そこまでしてようやく見ることのできたシュートのキレ、動き、何もかもが1軍に相応しいものだった。だが、
『あいつは試合に出すな。絶対にだ』
源田のその言葉は帝国学園のサッカー部を任された一人として、非常にらしくないものだった。勝利のために使えるものは使う、それが帝国のサッカーだろう。……だが、あの源田がそこまで言い切るというのなら何か理由がある。
目隠しをして試合に出す、という少年漫画の特訓か? とも思えるそれを疑うことなく二つ返事で受け入れた彼を入れ、2軍同士で試合をさせた。
ボールを受け取った後即座に攻め込み1点を取った後は防御に専念し、ディフェンスラインを守り切った。……そう言えば普通に思えるかもしれない。
――彼は一人
その動きは敵チームだけでなく、同じチームとなったメンバーですら追いつけるものではなかった。複数人による徹底したマークも彼を止めるには至らなかった。
他者の助けを必要としないプレーを、彼はしてしまった。
複数人でボールをゴールまで繋ぎシュートする、サッカーとはそういうスポーツの筈だ。彼は一度の試合でそれを全て否定した。
……放置したら間違いなく、サッカーを破壊する。体質のせいでまともな試合をした回数が少ないからか、その可能性に彼は気付いていない。自身が怪物であるという自覚のない怪物など、外に出してはならない筆頭だ。
『昔から、あいつ、ああなんだ……強豪である帝国学園ならもしかしたら試合になるかも、って思ってたんだがな』
練習程度ならそこまで気絶はしないが、試合に強く結びつく必殺技はアウト。……何故サッカーを見ると気絶するのか、ここまで情報が出そろえば予想は容易い。
幼い頃に受けた傷ほど、心に残るものはない。余りにも大きな心の傷は、彼が何故サッカーをしてはならないのかの理由すら忘れさせてしまった。
『試合はさせなくていい。せめて、練習には付き合わせてやってくれないか。鬼道』
必殺技を介さない練習なら、という条件のもと組み込んだのは彼に伝えていない。下手に刺激しては取り返しがつかなくなる可能性がある。時期は慎重に見極めなければならない。
いつか傷が癒えた時、彼は大きな戦力になる。それがいつになるのか見当もつかないが――あの暴力に等しいソレを思う存分グラウンドで解き放ち手綱を取る。それは天才ゲームメイカーである鬼道のいつかの楽しみとして、密かに心の中にしまってある。
帝国という殻の中で、真実を知らぬまま生きる怪物。今もより大きく強く育ち続けるソレが幸福なのかは、誰にもわからない。
「へくちっ」
「……え、今の先輩のくしゃみか?」
「似合わねー」
転生やらチートについて説明するわけにもいかずなあなあで誤魔化したため、知らないうちにとんでもない勘違いをされてしまった結果どうなるのか。それも誰にもわからない。
主人公
早く世界からナーフされたい。
シャチ
対皇帝ペンギン特攻。流石シャチは格が違った。皇帝ペンギンかわいいなーいいなーと思っていたら勝手に来た押しかけ妻ならぬ押しかけシャチ。
アイヌの神様になるか守備力の半分のダメージを与えてバトルフェイズを行えなくなるクロスオーバーなシャチになるかは周囲の環境による。
〜嘘予告〜
原作に関わらないで生きようとしていた主人公は優勝おめでとうさあ帝国に帰ろうねと鬼道を迎えに雷門に向かっていたがFF優勝直後にエイリア編が始まることをうっかり忘れていた!
乗せられたイナズマキャラバン! 拡散する勘違い! 雪の上で気絶する主人公!
次回、勘違いイレブン『声が似ている怪物』
イナイレって意外なキャラが声優さん同じでびっくりする。