超次元な世界では勘違いも超次元なのか?   作:ウボァー

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番外編
Amon,Canon,come on!


 FFIが終わり、帝国学園へ戻った亜門達帝国生徒は今日も練習に励んでいた。

 時が流れれば季節は変わる。練習に適した気候はずっとは続かない。日が陰り、気温もだんだんと下がっていく。それをものともせずシュート練習とキャッチ練習をする二人がいた。

 

「――そこっ!」

 

「ふんっ!」

 

 ゴールの隅を狙った、繊細かつ勢いのあるシュート。それを最初から読んでいたと言わんばかりの反応速度で捉えるGK。揺れる白髪と、ワックスで固められた茶髪。シャチのフード、フェイスペイント。

 伊冬塚亜門と源田幸次郎だ。

 

「全く……変わらねぇな、あいつら」

 

 二人とも世界のレベルに到達したプレイヤー。練習もそれ相応に熱くなる……というか二人の世界が展開されている。繰り返されるシュートは段々とキレを増し、風を切る。一度の瞬きが命取りになるそれをさも当然の様に受け止め、弾き、殴る――手が痺れを感じる時間すら惜しいとでも言うかのように。

 そろそろ時間だし止めた方が、と声をかけるべきか悩んでいる後輩達。その視線に気が付いたのか、シュートを中断した亜門がこちらを向く。

 

「無理して付き合う必要ないから先に帰っていいぞ? 片付けは俺たちがしとくから、な」

 

「ああ」

 

 その言葉を聞き、いちぬーけた、と宣言してさっさと帰る準備を始める不動。不動は自分がせずとも良い面倒くさい事柄に進んで関わろうとしないので当然なのだが。

 

 ……FFIが終わった後、不動は帝国学園に入ることになった。真帝国学園でのいざこざは帝国学園サッカー部にも伝わっている。その被害者であり、当事者でもあった佐久間、源田、亜門の三名は不動を許した。

 イナズマジャパンの仲間として共にいた佐久間が不動はいい奴だから大丈夫と言い、源田はまあ俺から特に追加で言う必要はないと認め。なんなら初対面が多いし親しみを込めてアッキーなんてあだ名を広めてやろうかと画策した亜門がそれを知った不動にジャッジスルー2をされ。

 

 まあなんだかんだあったが、MFである鬼道の抜けた穴を埋める司令塔として今日も元気にやっている。

 

 先に帰っていい、と言われて本当にいいのかとなんて遠慮していた皆だったが「おら帰れ帰れー」と亜門に背を押され(物理的に)グラウンドから出ていった。……佐久間だけはどこか後ろ髪を引かれている様であったが。

 

 

「さ、これで余計な目は無くなったし――出てきて大丈夫だぞ」

 

 それは、誰かに向けての言葉。その視線の先にいるのは源田ではない。帝国学園の皆でもない。

 ――誰もいないはずの、建物の影。

 

「気が散っていたのはそれが原因か?」

 

「あ、やっぱりバレてたか。まあずっと見られてたらね?」

 

 ――だとしてもさー、正体のわからない不審者に声を積極的にかけるスタイルはシャチ的にちょっとどうかと思うんだけど。

 

『向けられていたのは敵意ではないから問題無いだろう』

 

 亜門の発言に応えるように亜門の脳に響く声。亜門の中にいる悪魔アモンと、亜門にくっ憑いているアイヌの海神レプンカムイことシャチが話に乗っかる。

 ちょっとの間待つ。……隠れている誰かは動かない。

 

「悪い人じゃないのは分かってるから安心していいぞー」

 

 再びそこに()()前提で声をかける。どこを安心したらいいのかよく分からないが、亜門としてはそこは気にするところではないらしい。

 

「出ないんだったらこっちから行くか?」

 

「心の準備あるだろうからそれは……ってハイビーストファングの構えは止めろ普通は必殺技当たったら大怪我するんだよ!!」

 

 話をしつつもじりじりと距離を詰める。近寄ってくる声はそのままタイムリミットを示している様で。

 しまった、逃げ場がない……そんな顔のまま油の切れたロボットみたいな動きで謎の少年が物陰から現れた。

 

 

 円堂守とは違い丸みの少ない顔。しかしオレンジのバンダナ、黒髪や目つき等は円堂にそっくりだ。未来アイテムだろうインカムを装着している。

 ――間違いない。彼は円堂カノン。円堂守のひ孫にして、オーガとの戦いの最中未来から助けに来る少年。

 

 魂の光も円堂に非常に似ている。どんな劣勢だろうと諦めるな、と声を出せば皆を奮い立たせることのできる太陽。うんうん、これもまた円堂。

 

『円堂守……に近いな、確かに』

 

 ――円堂教こわ……。円堂守本人じゃなくても円堂判定するのか……。

 

 自分から声をかけるはずだったのに、これじゃ不法侵入してきた不審人物として警備員に引き渡されかねない。どうしようどうしよう、と悩んでいるのが顔や目の動きで丸わかりだ。

 

「えーっと……カノン君、だよね」

 

「えっ?」

 

 ぱちぱちと目を瞬かせて、時間を少し置いて彼が何を言ったのかを理解する。今、自分の名前を言わなかったか? 他人の空似ではなく確信を持って。

 自分が気付かないうちに失言をし……いや、彼らと話すのはこれが初めてだ。というかまだ自分は言葉を発していない。

 まさかもう並行世界に助けを求めたとオーガに接触され知られて、なんて考える。頼みのキラード博士は顔も声も影山そっくりだから、帝国学園関係者の前で頼るわけにもいかない。

 

 何を言うべきか、頑張って思考をグルグル回転させる。困っている顔もこれまた円堂そっくりで……これ以上困らせるのもアレだし、と亜門なりに情報を小出しする。

 

「いやその、オーガは関係ないから大丈夫。何で知ってるのかは……ちょっとしたズル、かな」

 

 そこまで知っていてオーガと関係ない? 関係無いのにオーガを知っている? 彼の隣にいる源田はオーガと聞いて首を捻っている。それがカノンを余計に混乱させることになって――。

 

「というか……なんで俺? 助っ人は吹雪とかヒロトとかだったはずだよな……? もしかして道に迷った?」

 

 ようやく理解した。この人が知っているのは『自分のひいじいちゃんのいる世界』のことじゃない。『自分のひいじいちゃんのいる世界と違う、オーガが襲来する世界』のことを知っている。

 

 ――最初、確かにオーガへの対抗策としてカノンはイナズマジャパンの面々から助っ人を募るつもりだった。だが、『自分のひいじいちゃんがいる世界』は想定外の歪みが発生し時空が不安定になってしまった。

 FF決勝戦開催より未来――FFIが開催されている先の時間軸へカノンは行けなかったのだ。故に、助けを求めたのが並行世界。彼はそれを知らない。

 

 なんらかの要因で彼、伊冬塚亜門にはまた少し違う並行世界の知識がある。……なら、話は早い。

 彼の手を取り、源田幸次郎に話が聞こえないように離れた場所へ移動する。すう、と息を吸う。きりりと見据え、口を開く。

 

 

「――助けて欲しいんです。こことは違う世界のサッカーを、未来を」

 

 

 ……話を聞くに、このカノンは俺たちがいる世界の未来ではなく、別の世界の未来から来たらしい。

 

 そんなことできたの? と聞けばひいじいちゃんの書いたノートにあったとある石を解析して並行世界に行ける技術を手に入れた、と。へー。……その石パラレルストーンって名前だったりしません?

 カノンがいた世界ではこっちと違い一部の人間の性別が異なると聞いてうん? と首を捻ったり。円堂が自分で書いたノート――カノンはそのコピーを持っているとのこと――を残していたり。成程確かにこっちとは別の世界だと納得した。

 

 ちらっと見せてもらった問題の円堂守のノートにはパラレルストーンの情報だけでなく化身についても記されて……オイこの円堂、俺と同じ原作知識持ち転生者か憑依だろコレ。子孫のカノンがノートの現物じゃなくてコピーしか持ってないのも怪しい。劣化したから保存媒体を変えた、ってわけではない。成程。

 顔も知らない……いや顔は同じだろうから顔は知ってる円堂か。さてはなんかやらかしてるな?

 

 ――わぁ、亜門に言われたくない台詞ランキング上位。

 

 それはどういう意味なのシャチ? まあ、俺がいる世界にオーガが攻め込んできたのなら未来の弟子(ザナーク)とか、時空最強の小市民(ザナーク)とか、あと暴れるの大好きマン(ザナーク)が黙っていない。……思い浮かぶのが全部ザナークだ。でも時空が不安定になっていて、かつ世界を越えられる人間が限られている以上ザナークが首を突っ込むのは多分無いだろう。無いよね?

 

 これから亜門さんが世界を越えるための準備とか色々もろもろで時間が必要になる、勝手に連れて行くわけにもいかないのでこの世界から離れる旨を源田さんに上手いこと話してください、とカノンに頼まれて……あっそこは俺なの?

 自分が話すより亜門さんから話した方が理解してくれるだろうから、あと源田さんの視界に入ってこっちを意識しないように離れてますね? アッハイ。てぽてぽ歩いて源田の目の前、さあ口を開こうと……。

 

「並行世界で未来とサッカーの危機か。心配はいらん、行ってこい」

 

「理解が早すぎる……まだ俺何も言ってないんだけど……」

 

 この幼なじみの亜門に対するセンサーは未来予知に匹敵するレベルの超次元なもの。考えていることを読むくらいならお手の物だ。カノンに手を引かれた時に源田が何もしなかったのは恐らくその時からもうセンサーが働いていたからだろう。こわいなー。

 ……ここまで源田の亜門センサーが絶好調に働いていると反動の勘違いがいつ来るのかが怖い。変な時に勘違いが大爆発して大拡散しそうな予感が……。

 

「……えっ、あれ、もう終わったんですか?」

 

 遠くでカノン君びっくりしちゃってるよ。あまりにも理解が早すぎてキラード博士があれこれしてくれている世界移動の準備まだ終わってない? いや急かすようなことしちゃってすみませんキラード博士うちの幼なじみが……。

 

 亜門だけではなく他の並行世界からも助っ人を頼みに行く予定だったカノンは、不足の事態に備えて各世界で滞在可能な時間を見積もり、断られた場合のリカバリー等々タイムスケジュールをキッチリ作成。それに伴い並行世界への移動準備も調整していた……の、だが。二人の理解があまりにも早すぎたので非常に中途半端な時間が出来てしまった。

 

 時間は有限で勿体ないもの。時空を超えた危機が迫る今は特に。何もしないでただ待つのはなんだかなあ、と思い――ふと地面に目をやる。そういえば片付けは済んでいない。転がっていたサッカーボールを手に取り、妙案が浮かんだ。

 

「なあカノン! 未来を賭けたサッカーをするってのに、相手がどこまで出来るのかを分からないままやり直しが効かない一発勝負、って怖いと思わないか?」

 

「亜門さん? 何を――」

 

 突然の大声にカノンが戸惑う。それに答えることはなく、とん、とボールを足元に置く。ぐ、と足を振りかぶり――。

 

「お前の実力を見せてみろ――円堂カノン!」

 

 亜門渾身のシュートが射出された。

 

「っ!?」

 

 反射的に右足でトラップする。世界に通用する亜門の一撃を受けてもカノンの身体がふらつく様子はない。

 助っ人として選ばれたのはサッカーを愛する心があるから、それだけではない。彼がオーガと相対できる強者であるがため。

 挑発するような目付き。『怪物』からの腕試し――少しでも気圧されたならば呑まれかねない挑戦がそこにあった。

 

「助けを求めておいて、足手まといになる訳にはいきませんから――ねっ!」

 

 返答と共にボールは蹴り返され、それを亜門が受け止める。

 ――感じ取れる。ビリビリと、痺れるようなイナズマの一撃を。未来でも絶えることなきイナズマイレブンの息吹を。無意識のうちに笑みが浮かぶ。

 

 それを見ている源田はズルいな、と嫉妬を覚える。だが自分も混ざろうとすれば二人の間に入ってボールを止めることになる。楽しそうな亜門の邪魔をしたくはなかった。

 

「じゃあこれならっ――どうだ!」

 

 真っ直ぐに、でもカノンを狙ったものではない。ズレている。先程よりも強いシュートだが、力が入り過ぎてミスをした……?

 違う! これはパスだ。少しでも躊躇えば間に合わない、全力で受け止めようとする姿勢がなければ伸ばした足を通り抜けていく……そんな強さのパスを亜門は前振りもなしに出した。

 

「間に……合う!」

 

 伸ばした足はボールへ届いた。突然に無茶をさせられたら、それを相手へやり返したくなるのが人間というものだ。……ただ、同じことをしたら当然読まれる。

 

「ほい、っと」

 

 予想できていたからか特に苦労する様子もなく、亜門はカノンからの意地悪パスを受け止め……ずっとパスを往復させる訳にもいかない。回転をかけて力の方向をずらし、上に跳ね上げる。重力に従い落下してきたボールを両手でキャッチ。

 ……どこか疲れた顔のカノンがこちらへ歩いて寄ってきた。どうしてこんな事をしたのか――そう目で訴えかけている。

 

「準備が整うまでのちょっとした時間潰し。良かったろ?」

 

「ちょっと……? あれが?」

 

 亜門の言葉を源田が否定する。

 

「いや、サッカーしたかっただけだろう?」

 

「違いますーどのぐらいの力あるのか分かってた方が試合で連携が取りやすいからですぅー!」

 

「そういう事にしておくか」

 

『バレてるな』

 

 ――バレてるね。

 

 なんだよ皆して! くそう! カノン君もあっなんだーサッカーしたかったからかーって顔になってる!

 

 ――超次元な幼なじみの前で誤魔化せると思ってた?

 

 そこを言われるとぐうの音もでません。ぐう……。

 

『――カノン、カノン! 準備が整いましたよ』

 

 さらっとバラされるの恥ずかしい……嗚呼、キラード博士の声が天の助けに思える。あっ、本当に準備終わったんですか。

 

 カノンはまた別の世界へと旅立つらしい。助っ人を集め終われば一人、雷門とオーガの戦いへ向かう。そして助っ人達の世界移動準備が整うまで待つ――つまりそれは、オーガに打ちのめされる雷門メンバーをすぐには助けられず、見るだけしかできないということで。……辛い思いをさせることになる。カノンはそれも覚悟の上で行動している。

 助っ人は準備ができた者から投入するのではなく、カノンを起点にして集める。まあ、一人ずつ助っ人を試合に参加させていたらオーガの警戒を高め、更に集中して狙われる危険性があるから妥当な判断だ。

 

 カノンは一人先に並行世界へと旅立っていった。誰を助っ人にしようとしているのかは詳しく聞かせてくれなかったが、自分と関係ない並行世界を助けに行くぐらいサッカーが大好きなのは間違いない。だから心配する必要はない。

 ……なんかアモンが嫌な予感がするって言ってたけどまあそれも気にしなくてもいい筈だ。

 

 俺の準備が整うのはあとどれぐらいだろう。向こうへ行ってすぐしたら試合が始まるなら軽くアップを済ませておくか、といそいそ動いて……あっと思い出す。そもそも二人で残った理由は。

 

「……結局片付け押し付ける形になってすまん」

 

「このぐらいなら問題はない、が……まあ土産話でトントンにしておこう」

 

 その対価は軽いのか重いのかよく分からない。だが、オーガに勝たねば果たせない約束。暗に「勝ってこい」と発破をかけられて悪い気はしない。

 

 

 ――遠くから呼ばれる感覚。確かにカノンの声が聞こえた。

 

「じゃ――行ってくる!」

 

 まるでそこにいたのが嘘のように、瞬く間に亜門の姿は消えた。

 

 

 

 バラバラの世界、バラバラの時間。交わるはずのない彼らの運命が一人の人間により交差し、奏でられる――それはまさしく追復曲(カノン)

 

 イナズマを砕かんと未来より現れた刺客。サッカーやろうぜの言葉を悪魔の呪文と忌み嫌い、サッカーを捨てろと神をも喰らう鬼――王牙が叫ぶ。

 

 

 『怪物』伊冬塚亜門が時空を超えたフィールドへ立つまで、あと――。




主人公
サッカー楽しい。円堂教入信継続中。
自分と関係のない並行世界でもサッカーに危機が迫るなら助けに行く。

シャチ
亜門の超次元な幼なじみについては慣れてきた。
亜門が最近オルカアタックを使わないのでちょっと寂しいがザ・トリニティがあるのでOKです。

アモン
とても嫌な予感がする。これは…………悪魔の気配?
下手したら助っ人同士で悪魔大戦が始まりかねない。がんばれ亜門。がんばれシャチ。

知っている人は既に知っているかと思いますが、花蕾様作の『憑依円堂列伝〜TS娘と時々未来人〜』にて『超次元な世界では勘違いも超次元なのか?』がコラボいたします。
またコラボするのはウボァーの書いた当作品だけでなく他に2作品ありまして、

あーくわん様作『Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に』
低次元の領域様作『かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について』

……あの、この素晴らしい作品達と私の作品が肩を並べていいんですかね? いい? ヤッター!
コラボについては12月中の更新が予定されているそうなので皆さん首を長くして寒いのでマフラー巻いて待ちましょう!
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