学園お抱え装蹄師の日常    作:小松市古城

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ついに本編も50本目を迎えました。
よくここまで続いたなぁ。長けりゃいいってもんじゃないんですけどね笑

あ、今回の本編、通常の2話分くらいの文量になってしまいました。
お手数お時間頂戴してしまいまして恐縮です。
良い区切りポイントを作れませんでした。。。




50:女帝の閃き

 

 

 シンボリルドルフが顔を紅潮させ、校内を早足で歩いていた頃。

 

 エアグルーヴは自室でまんじりともせずに、早めに入ったベッドで寝返りを繰り返していた。

 

 男の工房で勉強会が開かれている時間帯、どうせ落ち着かないのであれば、ここのところの多忙による睡眠不足を補う意味でも眠ってしまえばいいとベッドにもぐりこんだまでは良かった。

 

 しかし結局眠りに落ちることはできず、益体もない考えが浮かんでは消すことに苦労する、そんなことの繰り返しであった。

 

 自分が呼ばれなかったことに関しては、おおよそ納得のいく説明は受けている。

 

 そもそも職員や関係者など、生徒ではない人々が主体の勉強会であるし、生徒のほうも生徒という立場というよりはアスリートであるウマ娘として、という側面が強い。

 そういう意味ではリギルから2人出すよりも、今回のメンバーである沖野トレーナー率いるスピカからもウマ娘を出すほうがバランスも良く視野も広がるであろう、ということだった。

 

 その理屈に納得はしていた。

 

 しかし最後に男と会ったのが彼に張り手をくれてしまった夜であること、その翌日の模擬店の誘いを多忙を理由に断られてしまったことが脳裏によぎり、遠ざけられているのではないか、という不安に苛まれる。

 

 結果、理屈ではわかっていても感情をどうにも消化できずに抱えたまま、ベッドの中で寝返りを打ち続けるほかなかった。

 

 

 

 私は彼に対する失点を取り返したいのだろうか。

 

 

 

 失点を取り返すために自らの出番を求めているのであれば考えが浅い、拙いと言わざるを得ないだろう。

 

 彼の考えや意思に賛同し、自分だからできる視点で協力をすることができてこそ、もっとも好ましい貢献ではないか。

 たとえ感情的な動機が不純であったとしても。

 

 ならば今自分にできることはなんであろうか。

 

 男の考える「怪我、故障の予防」を自分一人で考えることは難しい。それは勉強会に任せるとしても、他にもなにかできることがあるのではないだろうか。

 

 翻って、我らが生徒会長がいつも言っているのは、「すべてのウマ娘たちが幸福でいられる社会」だ。

 

 その主語は大きすぎるとしても、ウマ娘個人と社会の間には幾重にもさまざまな領域があるのではないか。

 

 その中のひとつとして、私たちが挑むレース、競走というものがある。

 広くエンターテイメントとして定着し、ウマ娘たちの特長を表現した競技として、彼女たちが社会に溶け込む一助となっている媒体。

 

 私的な勉強会というフォーマットで検討されているのは、あくまで競走するウマ娘自身をどうするか、という考え方だ。

 

 ならば会長の視座と装蹄師の男の視座の中間にある、レースというひとつの流れの中で考えれば、なにか見つけられるのではないか?

 

 エアグルーヴはそこまで考えたところで閉じていた瞳を開いた。

 

 自分にも提案できることが、きっとある。

 ヒントは既に、あの男からもらっているではないか。

 

 エアグルーヴは同室であるファインモーションを起こさぬようにそっと起き上がると、机に座り、ノートに何事かを書きだし始めた。

 

 

 

 

 

 

 同じメンバーで勉強会を数度行った後、とりあえず今のところの結論めいたものが見えてきた。

 

 まず、スズカに対してはこれまで以上に徹底した身体管理が必要との結論に至る。

 

 これは彼女の怪我を予防するという視点と今後どうなるにしろ、彼女の身体の経緯が重要なデータとなりうるという、両面での意味で必要とされた。

 

 そして現役のウマ娘たちから主に下半身の主要ポイントを設定し、骨に着目して骨密度データを新たに取り、その中でスズカの身体的特徴を分析していく取り組みを行う。

 

 人間のアスリートであっても、骨密度と足回りの怪我には相関が認められている。未だに謎の多いウマ娘たちであっても、同じような傾向がみられるであろうことまでは予測が立つ。

 

 絶対数が少ないがゆえにウマ娘に関して大規模な調査がなされたことがないようで、今回の取り組みを通して何かヒントが得られるかもしれないという。

 

 靭帯や腱に関しては議題には上がったが、今のところ有効な強化策はメンバーの知識領域の中からは見つけることができなかった。

 

 ここはアグネスタキオンの薬や栄養に対する知見を拡げていく方向性としてフロンティアとなるのではないか、という希望と期待を込めた研究方針を取ることになった。

 

 

 ハード面となる蹄鉄、シューズは現行のレギュレーションが許す範囲での軽量化とバランス取りで身体への負担減を目指すことになる。

 

 特に身体への負担減には衝撃減が有効だろうとされ、これを行うことにより長期的な蓄積ダメージを減らすことが期待された。

 

 つまり、勝負シューズ、勝負鉄だけではなく、普段のトレーニングシューズからの品質向上が必要であり、全体的な底上げが目標だ。

 

 そして装具全体の管理精度向上により、不慮のトラブルの可能性を減らすことも副次効果として狙っていくことになる。

 

 決定打こそ見いだせなかったが、とりあえずの取り組みとしては及第点であろう、というところだった。

 

 

 

 

 

「やはり、金槌一本で解決とはいきませんねぇ…」

 

 男は勉強会の後、シューズ課長と工房前で煙草を吸いながら呟く。

 

「それは最初から分かってたことだろ。最初からシューズと蹄鉄じゃあ難しいって予測はしてたはずだ」

 

 課長は何を分かり切ったことを今更言っているのだといった雰囲気だ。

 

「まぁそうなんですけどね。やっぱり悔しいじゃないですか。己の腕一本でなんとかしてやるとか、カッコいいと思ったんですけどね」

 

 男は本気とも冗談ともつかないトーンで話す。

 

「まぁそりゃあ職人としては理想だけどな。現実にはそんなうまくいくもんじゃねぇ」

 

 課長はうまそうに紫煙を吐き、煙草をもみ消す。

 

「それに、あの既製品を再現して耐久力あげつつ軽量化って、それだけでも相当だぞ。まずはきっちり、目の前の目標超えないとな。頼んだよ」

 

 課長は男の肩を軽く小突くと、背中越しに手を振りながら校舎の方へ帰っていった。

 

 そうなのだ。課長の指摘通り、スズカの蹄鉄の再現だけでもかなりの難題ではあるのだ。

 

 男は二本目の煙草に火をつけると、蹄鉄の加工法について思いを巡らせながら、工房の片づけをし、部屋に引き上げる準備をしていった。

 

 

 

 

 

 男が部屋へ戻る道を思案しながら歩む。

 

 歩み慣れ過ぎた道は、視覚情報がありながらもそれを意識的に認識することはなく、ほとんどロボットが自動で道を辿るようなもので、前を見ているようで脳は視界に入るものを知覚していない。

 

 その分の空いた脳のリソースを蹄鉄の焼き入れ法の検討に使用しながら部屋への階段を上る。

 

 部屋がある階に上がり、自室のドアが見える廊下に立った時、この帰宅路で初めて視覚情報に異常が生じた。

 

「…?」

 

 すぐにはなにがあるのか知覚できない。

 

 薄暗い廊下の先にある自室の部屋の前に、なにかドス黒いオーラを放つ塊がある。朝、部屋を出るときにはあんなものはなかった、と思う。 

 

 歩みを緩めてにじり寄ると、足音に反応し、ぴくりと物体の頂部が跳ね上がった。

  

「あ…ん…?」

 

 よく見れば、その塊はトレセン学園の制服を纏って体育座りをしているウマ娘であるようだった。

 

 さらに近づくと、そのウマ娘は抱えた膝に埋めていた頭をむくりと上げ、男を視認すると一言言い放った。

 

「…遅いではないか、たわけ」

 

 彼女の傍らにある食材が詰め込まれた袋ががさり、と音を立てた。

 

 

 

 

 

 男はとりあえず一も二もなく慌ててエアグルーヴを部屋の中に引き入れる。

 

 今は日中はそれなりに気温があるが、日が落ちれば冷え込んでくる季節だ。

 

 そんな時期に冷えたコンクリートの上でどのくらいの時間、制服の短いスカート姿で体育座りをしていたというのだろう。

 

 彼女の身体が冷えてしまったであろうことが男には一番気掛かりだった。

 

「風呂にでも入るか?すぐに沸かすぞ」

 

 男は慌てたままでエアグルーヴの顔もろくにみることなく、どたどたと風呂の準備を始める。

 

 男の言葉を聞いてエアグルーヴの冷え切っていた身体が一気に心拍数を増し、熱を帯びる。

 

「ま、まて!そういうのはまだ、心の準備が…!」

 

「あぁん?体冷えちまっただろうが。何だか知らんがこれで体調崩さしたら俺がおハナさんに殺される」

 

 エアグルーヴの顔は紅潮から一気に白く冷める。  

 

 いつだってこの男はこうであったのに、どうして私はこの男のことになると掛かってしまうのだろうか。

 

 このたわけが!…と吼えたい気持ちを必死に収め、エアグルーヴは深呼吸して心拍を整えた。そうそう早とちりばかりしていたら彼女の心は持たないのだ。

 

「身体の冷えならば養生しているから問題ない…それより、また食事を疎かにしているのだろう?私が食事を作ってやるから、食べて落ち着いたら私の話を聞いてほしいのだが」

 

 エアグルーヴは冷静な声音を装い風呂場で格闘する男に告げると、自身はキッチンへ向かい食材を取り出しはじめた。

 

 

 

 

 男はとりあえず勢いのままに風呂の掃除を終えて沸かす段取りを整えリビングへ戻ると、すでに食欲をそそる香りがそこを占拠していた。

 

「すぐに支度ができる。すこし休んでいてくれ」

 

 エプロン姿のエアグルーヴは男に一瞥もくれずに狭いキッチンの中で忙しく立ち働いている。

 

 料理をほぼしない男には手伝えることもなさそうで、男と目線もあわせようとしないエアグルーヴの雰囲気に圧されて身の置き場もなく、男は黙ってリビングのソファに座り、煙草に火をつけた。

 

 しかし、アレである。

 

 部屋の前でエアグルーヴを見つけた驚きで、帰宅路であれやこれや悩んでいたことが吹き飛んでしまった。

 

 しかも当然のように部屋にあげてしまっているが、この間のシンボリルドルフだけではなく、今はエアグルーヴがエプロンを着けてキッチンにいるのである。自分の部屋で。

 

 それを平然と受け入れてしまっている自分もどうかと思うし、改めて考えてみればなかなかに奇妙な光景である。

 

 このまえ沖野がつぶやいた「貴重な体験」とやらが徒党を組んで押し寄せるかのように短期間で頻発しているのは、一体なんの偶然であろうか。

 

 このことに思考を寄せれば、いつしかおハナさんや沖野が言っていた刺されるだの刺されないだのという話をつながりそうな気がしてきてしまう。

 

 まぁ、まさかな。

 いやでもしかし。

 

 様々な仮定が男の頭の中を去来する。

 

 しかしこのような思考がめぐるとき、男はいつも決まった思考に収斂する。

 

 刺されるなら、それはそれでいいか。

 

 これまでの人生においても流されるままにここにたどり着いたのだ。

 そのうえどこまでも自身に頓着がない。

 結局、いざというときもまた、流される覚悟だけはできているのであった。

 

 

 

 

 

 エアグルーヴが拵えた夕餉はサバの味噌煮に肉じゃが、味噌汁、卵焼き、白米と、純和風に仕上げられていた。二人用のダイニングにきちんとマットを引いて整えられていた。

 

「…寮であらかじめ仕込んでおいたものを温めただけだから簡素ですまないな。あ…味の方は、悪くないはずだ…」

 

 そう告げるエアグルーヴの表情は硬く、頬が赤い。

 

 やはり風邪をひかせてしまったのではないか、と男はハラハラしていた。

 

「…いただきます」

 

 二人で手を合わせ、食事に取り掛かる。

 

 サバの味噌煮はよく味がしみ込んでおり味噌の甘みと鯖の脂がうまみを引き立て、青魚特有の臭みもきちんと抜けていて白米ととても合う。

 肉じゃがもほんのりとした優しい甘みが感じられ、どちらも絶品といえた。

 

「…うまいな!」

 

 男は思わず感想を漏らす。

 

 そのままがっついたように勢いよく食べる姿を見て、エアグルーヴは小さくホッと息を吐き、緊張を緩めた。

 

 

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまだったな」

 

 二人ほぼ同時に食べ終わると、男は立ち上がって皿を片付け始める。

 

「あ、片付けは私が…」

 

 エアグルーヴは焦って立ち上がり、男に告げる。

 

「飯作ってもらって片付けまでさせちゃあさすがに家主としてどうかと思うわ。俺がやるからエアグルーヴは一休みしておいてくれ」

 

 そう言われてしまえばエアグルーヴも無理になにかをすることはできず、ストンとダイニングに腰を下ろすしかなかった。

 

 カウンター越しに男が洗い物をする姿が見える。

 

 エアグルーヴは何をするでもなく、それを眺める。

 なるほど。これが生活というモノなのか。

 寮住まいのエアグルーヴの生活とはまた違う、男の生活の風景を覗き見ているような気分になる。

 

 これはこれで、イイものだな…。

 

 男は手元に集中し、エアグルーヴの視線に気づかない。

 

 エアグルーヴはいつしかうっとりと、男の姿を眺めていた。

 

 

 

 

 

 男は手早く洗い物を片付けてしまうと、ウマ娘用のニンジンジュースと自らのお茶を手に、リビングに戻った。

 

「で、聞いてほしい話ってのはなんだ?」

 

 男は窓をあけて煙草に火をつけながら、エアグルーヴに問いかける。

 

「…あれから、私なりに考えてみたんだ」

 

 そういうと、一冊のノートを、男に手渡す。

 

 男は渡されたノートを1ページ、めくる。

 

 エアグルーヴ直筆の、性格をそのまま文字にしたような几帳面な筆致だ。

 

「私なりに、怪我や故障に対して何かできることはないかと考える中でひとつ、レース中の事故の対処できないか、と思い至った。これはその私案だ」

 

 ウマ娘たちの怪我はトレーニング中にも起こるが、レース中にも多く発生する。

 

 トレーニング中であればすぐに対処することもできるが、レース中だとなかなかに厄介だ。

 

 レースはウマ娘たちが限界以上の能力を発揮してくるし、真剣勝負の真っ最中。

 周りも殺気と勢いに満ちていて、簡単に止まることもままならない。  

 

 結果、トップスピードで一人で転倒するだけでも生死にかかわることもあるというのに、後続を巻き込んでの大惨事という事例もあるのだ。

 

「レースそのもののフォーマットはどうすることはできない。けれど、まさか重量のあるプロテクターを着けて走らせるわけにもいかない。だが過去のレース中の故障シーンを見るに、改善できるところがあると思ったんだ」

 

「そして対応策が、この私案というわけか」

 

 エアグルーヴはこくりと頷いた。

 

 ノートの1ページ目には、端正な文字でこう記されていた

 

 

【レースにおけるオフィシャルウマ娘の追走案】

 

 

 内容は要約してしまえば次のようになる。

 

 レーススタートから数秒後に、怪我の応急手当に関する知識を持たせたウマ娘たち数人をオフィシャルウマ娘としてスタートさせる。

 

 競技参加者最後尾から10バ身程度離れて追走させ、競走中にウマ娘たちにトラブルがあればこれに対処し、救急車等支援が到着するまでこれを継続する。

 

 メリットは故障発生から対処までの時間を極小化できることがある。

 

 さらに、可能であればオフィシャル役をデビュー前後のウマ娘とすることができれば、例えばであるが間近でレースを見て疑似的に体験することができる。

 それはモチベーションアップと経験値アップが望めるだろう。

 

 デメリットはあまりないが、強いてあげるならば故障発生時の対処が上手くいかなかった場合にオフィシャルウマ娘たちにトラウマを残す可能性があることが記されている。

 

 男はエアグルーヴの提案を読み込みながら、昔を思い出す。

 

 夏合宿のときに彼女たちに話した、間接的に男が引き起こしてしまった部活の競技中の事故。

 

 あの時も、オフィシャルの現地到着に時間がかかり、じりじりとした思いで待つしかなかった。

 

 火災こそ起きなかったためまだマシであったが、ドライブしていた後輩を救出するまで随分と時間がかかり、それが後輩に後遺症を残す一因ともなった。

 

 

 翻って、ウマ娘たちのレースでも同じことは幾度となくあった。

 

 全周が見渡せるコースで行われる競技であるため、トラブルが起きれば救急車が出されるが、現場到着まではそれでも数分を要する。

 

 トラブルがあっても基本的に競技は続行されるため、競技長判断により安全が確認されてからの出動となるし、発生地点によっては救援が必要とされる場所まで1キロ近い距離があるためだ。

 

 それが、身体能力的にもほぼ同等といえる救護技術をもったウマ娘たちが、ごく近くを追走し有事に対応するとなれば、救援までの時間は数十秒にまで短縮されるであろう。

 

 そして医師などが到着するまでの長くて5分ほどの時間を、最良の応急処置で対応することができれば。

 

 レース中に故障発生があったとしても、大幅に予後が良くなるはずであった。

 

 

「…すごいじゃないか、このアイデア…」

 

 男はノートから顔を上げ、一息つくと、そう呟いた。

 

 エアグルーヴは緊張が一気に抜け、ほっと胸を撫でおろした。     

 

「こんなことができれば、より安心して競技に集中できるし、応急手当ができるウマ娘が増えれば普段の練習だって安全度が増す。これは革命だぞ…」

 

 男の言葉に、エアグルーヴは耳をぺたんとさせ、俯いてしまう。

 

「…先生が…話してくれたから、だ」

 

 エアグルーヴはぽつりと言った。

 

 男はなんのことだかピンと来ず、ただエアグルーヴの艶めく髪を見ている。

 

「…夏合宿の夜、話してくれただろう?先生が、安全に心を砕くようになった理由。あれがヒントだった」

 

 ふるふると小刻みに震えるエアグルーヴは、両手を白くなるほどに強く握りしめている。

 

「私にとって、スズカは大事な友人だ。そして彼女の挑戦も、同じ競技者として止める気になれない…そして私は、会長のように広い視野まで持つことができる器ではない。なら、せめて私にできることは…」

 

 震えながら強く握りしめる手に、透明の液体が一滴、二滴と滴る。

 

「…お前、優しいヤツだな」

 

 エアグルーヴは、いろんな思いを抱え込んで、このアイデアに昇華したに違いない。

 

 それは決して、器の大小や立場の違いなどではなく、仲間を想う気持ちがこのアイデアを引き寄せた。

 

 それこそ、彼女の優しさの成せた偉業だろう。

 

 男はエアグルーヴの頭をそっと撫でてやる。

 彼女はいよいよ声を上げて泣き始めた。

 

「明日、理事長に会いに行こう。あの人なら、きっとお前の想いを形にするために、力を貸してくれる」

 

 男は泣き崩れるエアグルーヴの背中をさすってやる。

 

 思いのほか小さく、頼りないその背中に男は驚く。

 

 だからこそ、この小さな背中に秘めたる想いの強さを感じざるを得なかった。

 

 男は改めて、自らが背負う課題の重大さを認識し、背筋が伸びる思いだった。  

 

 

 










 今回を書くにあたり(普段もめっちゃ読み返してますが)皆様からいただきました過去のコメントを総ざらいしたりして参考にさせていただいております。

 これまでたくさんいただいたコメントは本当に私にとって宝物で、このSSを書いていく燃料でもあり、いろんなことに気づかされる知恵の木のようであり、本当ににありがたいです。

 もうひとりで書いてるっていうより皆さんと書いてるって感じなんですよ本当に。

 いつも皆様ありがとうございます。



 そんなわけで、今後ともよろしくお願いいたします。
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