女帝が持つ賢者の杖《完結》   作:室賀小史郎

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デート回です!


女帝と杖のお出掛け

 

 ジャパンカップが終わって初めての休日。

 今日はエアグルーヴにとって、待ちに待った日だ。

 何故なら、

 

「おう、お待たせ。早いな。約束の時間より一時間も前だぞ?」

 

 幸福と恋人になって初デートなのである。

 

「た、楽しみで早くに目が覚めただけだ……あと、着いたのは数分前だ」

「そかそか。待たせるのもあれだと思って一時間早く出たんだが、次はもう少し早く出ることにするよ」

「しなくていい。それだと結果的に早朝に待ち合わせることになりかねんからな」

「……まあ、それも有り得そうだな」

 

 お互いに相手を待たせるのは性に合わない。故にデートを重ねて行く度に、待ち合わせ時間がより早くなっていくのも容易に想像出来たので、幸福は素直に頷いた。

 

 今は冬とは言え、快晴で日差しも暖かい。

 エアグルーヴは白のロング袖縦セーターにデニムのショートパンツ。そして黒の冬用タイツに、青のパンプスというコーデ。青と黄のギンガムチェックマフラーをリボン結びにしているし、尻尾の付け根には前に幸福からプレゼントされた赤いリボンを結んでいる。

 対して幸福は黒のスリムダウンジャケットに、紺色のカーゴパンツ。ジャケットの下には黄色の無地のトレーナーを着用。靴は歩きやすい灰色のスニーカーだ。

 

「その服装初めて見たな。可愛いぞ、エアグルーヴ」

「こ、幸福さんだって、その……素敵だ、ぞ……」

「おう、ありがと。んじゃ、折角一時間も早く揃ったし、近くの喫茶店でモーニング堪能してから繰り出そうぜ」

 

 そう言って幸福がエアグルーヴに左腕を差し出すと、彼女は「ああ」と小さく頷いて、しっかりと彼の腕に両手を絡める。

 服装を褒めてもらったのも、何も言わなくてもエスコートしてくれるのも、優しい笑顔を向けられるのも、幸福にされることが全て嬉しいエアグルーヴ。

 決して素直に言葉には出せないが、その代わりにエアグルーヴは幸福の二の腕に頭をピッタリとくっつけて尻尾も幸せそうに彼の太ももに当たっているのだった。

 

 ◇

 

「モーニングセット2つ。飲み物はアメリカンとストレートティーで」

 

 店員に注文をすると、店員は一礼して幸福たちのテーブルをあとにする。

 

「なあ、モーニングを2つも頼む理由はあったのか? 私は朝食を取って来たのだが?」

「ああ、俺が2つ食べるから気にしなくていいよぉ。実はデートってことで年甲斐もなく緊張しちまってな。朝飯食べれる状態じゃなかったんだ」

「そ、そうか……」

 

 それほどまでに自分とのデートを楽しみにしてくれていた感じ、エアグルーヴは胸の奥が温かくなった。

 自分ばかりが楽しみにしているのではないと分かり、嬉しいエアグルーヴ。

 

「んで、エアグルーヴの顔見たら安心して、腹減ったんだよなぁ」

「……たわけ」

 

 いつもの言葉を幸福に返すと、彼は柔らかく笑って返してくる。なのでエアグルーヴもそれにつられて、小さく微笑んだ。

 その後、店員が運んできた飲み物とセットのトーストと卵サラダ、コーンポタージュを幸福はぺろりと平らげる。因みに途中、何度か幸福がエアグルーヴにあーんをしてやったりもしたので、彼女の調子もすこぶる絶好調になった。

 

 ◇

 

 二人が初デートに選んだ場所。

 それは駅前にあるデパ地下だ。

 初デートなのにいいのか、と疑問に思われるかもしれないが、二人は遊園地や水族館といった如何にもデートスポットという場所は既に何度もお出掛けで行っている。

 なので今日は二人で行ったことのない場所に行こうということで、デパ地下になったのだ。

 

「今日は何かの物産展やってるかなぁ?」

「昨晩調べておいた。今日は北海道の物産展をやっているらしい」

「お、いいな。カニがあったら買おう!」

「散財はするなよ?」

「おう」

 

 表情が明らかに輝き出した幸福を見て、エアグルーヴも思わず笑顔になる。

 彼のこうした少年っぽさがエアグルーヴは愛おしくて堪らないのだ。

 

「そこのお似合いカップルさん! 生キャラメルの試食やってますよ! お1つ如何ですか?」

 

 物産展に入ったと同時に職員から声を掛けられる二人。

 幸福に至っては「お、美味そう」と平常運転だが、エアグルーヴは「お、お似合い……ふへへ」と女帝の仮面が早くも崩れ落ち、乙女グルーヴがこんにちはしている。

 

「頂きます……びゃあ、うまいっ! エアグルーヴも食べてみろよ。あーん」

「ふぇ?」

「口開けろよ、あーん」

「あ、あーん……」

 

 人前なのに、とエアグルーヴは一瞬躊躇いを見せたが、愛する人からのあーんという誘惑に負け、素直に口を開けた。

 幸福は『栗みたいな口してんな……可愛い』と思いながら、ひょいと彼女の口に生キャラメルを運んでやる。

 するとエアグルーヴは生キャラメルが美味しいのもあるが、人前だというのに愛する幸福からあーんをしてもらった背徳感で尻尾の付け根が思わずピリピリと甘い電流が走ったような感覚を覚えた。

 

「彼女も気に入ったぽいんで一袋ください」

「ありがとうございまーす♪」

 

 こうして幸先良く、幸福は生キャラメルを購入した。

 

 ◇

 

 二人が仲良く肩寄せ合って物産展を見て回っていると、

 

「あそこにスピカの子らがいるぞ」

「テイオーにスズカにスペシャルウィークか」

 

 お馴染みのウマ娘たちを見つけた。

 三人も私服姿で、何やらワチャワチャしている。

 

「何かトラブルでもあったのかな? 声かけた方がいいか?」

「ちょっと待て」

 

 向かおうとする幸福をエアグルーヴが止め、エアグルーヴは三人の方へ耳を傾けた。

 三人がワチャワチャしている理由は、

 

「え、スペちゃんはイクラを耳に入れて遊んでたの!?」

「こわっ! スペちゃんこわっ!」

「ち、小さい頃のお話ですよぉ!」

「そもそも、イクラを耳に入れてどう遊ぶの?」

「えっとですね……耳にイクラをこう、入れて……放置するんです!」

「カッピカピになるじゃん!」

「それをペリペリって剥がすのが楽しかったんですぅ!」

「もうしてないわよね?」

「しませんよ! 今は食べる専門です!」

『良かった。私(ボク)の知ってるスペちゃんだ……』

 

 何ともまあ頭が痛くなる会話だった。

 

「お、おい大丈夫かエアグルーヴ?」

「……ああ。とにかく、あの三人は問題ない。それより少し疲れた」

「んじゃ、時間も時間だしフードコート行くか。カニ食えるって」

「幸福さんは本当にカニが好きなんだな……ふふっ♪」

 

 こうして二人はトウカイテイオーたちから離れ、物産展の側にあるフードコートへ向かった。

 

 ◇

 

 フードコート内のメニューは北海道の特産品が目白押し。

 その中で幸福は振れずにカニ海鮮丼を頼み、エアグルーヴは北海道産のじゃがいもをふんだんに使用したポテトグラタンを頼んだ。

 

「カニ♪ カニ♪ カニ〜♪」

「子どもか」

「いやぁ、カニってガキの頃滅多に食えなくてさ。ガキの頃初めて食った感動が忘れられなくて、大好物なんだよ!」

「……そうか。食べることが出来て良かったな」

「おう」

 

 んじゃ、頂きまーす!と手を合わせて、カニを頬張る幸福。

 そんな彼を見て、エアグルーヴはこの上ない愛おしさが溢れ、思わず目を細めた。

 可愛い……幸せ……好き……と彼に対する愛が止めどなく溢れ、尻尾もふわりふわりと揺れて、耳も彼の方にしか向いてない。

 

「なぁ、エアグルーヴ……」

「ん、どうかしたか?」

「……そんなに見詰めないでくれよぉ。流石に恥ずい……」

「っ!?」

 

 私のトレーナーが、ずきゅんどきゅんカワイイ〜♪

 ばきゅんぶきゅん、カワイ過ぎる〜♪

 こんな〜、思いは〜、は〜じめて〜♪

 

 幸福の珍しい赤面に、エアグルーヴのやる気は天元突破。

 その証拠に尻尾はもう千切れんばかりに揺れ、耳もハチドリの羽の如く高速で揺れていた。

 

「す、すまん……」

「いや、別に……こういうの慣れてないから」

「私が初めて、なのか?」

「まあな……学生の頃に仲良くなった子と遊びに行ったりはしたけど、恋人自体初めてなもんで……」

 

 恥ずかしそうに頭を掻いて言う幸福。

 しかしエアグルーヴはこの上ない幸せを感じてそれどころではない。

 年齢が離れているため、流石に初めての相手ではないと思っていた。なのに、本人の口から「初めて」だと言ってもらえた。

 

「……今日が私の命日なのか?」

「は?」

「こんなに幸せを過剰摂取してるんだ。いずれ倒れるはずだ」

「おい、死因が幸せとか聞いたことねぇぞ」

「死ぬほど幸せというのはこういうことを言うんだな。我が生涯に一片の悔いなし、だ」

「どこぞの世紀末覇者かよ」

 

 完全に掛かってしまったエアグルーヴ。

 その後も暫くエアグルーヴは「幸せ過ぎる」とうわ言をつぶやき続け、ポテトグラタンも幸福に強引に口に運ばれ、またあーんをしてもらったことで「私は今日死ぬのか……」とつぶやき続けた。

 

 ◇

 

 食事のあと、食後のティータイムでエアグルーヴは冷静さを取り戻し、我に返って羞恥心に苛まれる。

 しかし幸福が気にすることはない、と笑ってくれたのでエアグルーヴは何とか立ち直ることが出来た。

 

 そしてそれからも物産展を隅々まで回り、帰る頃には幸福がそれなりの量を買い込んでしまっていた。買ったのは当然カニ。他にもホッケやモッツァレラチーズやら、北海道の美味しい物をたくさん手に入れた。

 

「運んでくれてありがとな、エアグルーヴ」

「気にするな。普段幸福さんには私の買い物で手伝ってもらってるから、そのお礼だ」

 

 幸福が住んでいるマンションへやって来たエアグルーヴ。

 当然今日は留守番をしていたカールも、エアグルーヴも一緒ということで大興奮で出迎えてくれた。

 今はそれも落ち着き、自身の寝床であるどら焼きクッションの上で、丸まって眠っている。

 

「外出届けは出して来てるんだよな?」

「当然だ。流石に外泊までは出来ないが」

「いやいや、外泊はダメだろ。主に俺の人生が詰む」

「……私が養うからいいのに」

 

 ボソッとエアグルーヴがつぶやくが、当然幸福の耳には入っていない。

 

「まあ何にしても、まだ時間には余裕があるな。晩飯食ってく? それとも寮まで送る際にどっかで食べてくか?」

「では後者で頼む。今は幸福さんと触れ合っていたいんだ」

「はいよ」

 

 幸福はエアグルーヴの願いを聞き入れると、ソファーに座って両手を広げた。

 するとエアグルーヴは花が満開になったかのような大輪の笑顔を浮かべ、幸福の胸に飛び込んだ。

 膝上に腰を下ろし、端ないと思いながらも、スンスンと肺を愛する人の匂いで一杯にする。それだけで表情は蕩け、ぽぅっと頬が紅潮した。

 

「可愛いなぁ、エアグルーヴは……」

「ん、はぅ……ほっぺをむにむにすゆなぁ……わらひはカールではないんだじょ?」

「カールみたいなもんだろ。カールもこうされるの好きだから、きっとエアグルーヴに似たんだな」

「ちゃわけ……んにぃ」

「あはは、めっちゃ可愛い♪」

「んゅ〜……」

 

 頬をこれでもかと揉みしだかれ、エアグルーヴは胸の奥がとくんとくんと甘い悲鳴をあげる。

 すると幸福との顔の距離が更に縮まった。

 これは……そういう合図だろう。そう感じ取ったエアグルーヴは、そっとまぶたを閉じる。

 すると幸福から「愛してる」と囁かれたあとで、唇を吸われた。

 

 初めてではないが、何度しても、心が満たされる彼とのキス。

 心はとても満たされるのに、卑しくもそれをもっともっとと欲してしまう部分もある。

 

「……はぁ。好きだぞ、エアグルーヴ」

「はぁはぁ、私も、しゅきぃ……なぁ、もっとぉ」

 

 なのでエアグルーヴは再度口づけを強請った。

 幸福はそれに優しく応じ、またエアグルーヴの唇に自身の唇を重ね合わせる。

 

 エアグルーヴは前に映画で見た時のように首を振って、互いの唇をちょっと深く絡みつかせてみた。

 互いの唇同士が複雑にくねり、溢れ出した唾液がピチャピチャと卑猥な音を鳴らす。

 

(こんなに気持ちいいキスは初めてだ……素敵)

 

 そう思いながら、エアグルーヴは幸福との幸せなキスに夢中になった。

 

「んっんっ……んんっ……んっ……」

「んっ、ちゅっ……」

 

 エアグルーヴが首を振れば、幸福もそれに応え、更に唇を深く絡みつけてくれる。

 

(こんなに気持ちいいことを知ってしまったら、もう知らなかった頃には戻れないな……幸福さんのせいだぞ)

 

 そんなことを感じつついると、

 

「んっちゅっ……んちゅっ……んんっ!!」

「エアグルーヴの唇……凄く柔らかいよな……」

 

 幸福がキスをしながら唇を動かして言った。

 

「んっっ!」

 

 キスしながらの甘い言葉。それも褒め言葉にエアグルーヴは背筋がゾワゾワする。 

 

「よ、余計なことを言うな……それよりもっとキスに集中しろ……たわけ」

「ごめんごめん……んっ」

「んむぅ♪」

 

 再度幸福に唇を吸われ、思わず吐息が弾むエアグルーヴ。

 幸福はそれを愛おしく思い、今度は離れないようにエアグルーヴの後頭部を右手で優しく押さえつけた。

 

「ちゅっ……んっちゅ……んっんっ……なぁ」

「ん?」

「舌……出してくれないか……?」

「舌?」

「早くぅ……んあ……れろっ……れろれろ♪」

 

 お強請りするように幸福の唇を舐め回すエアグルーヴ。

 こんなに大胆なエアグルーヴは初めてなので、幸福は戸惑いつつも、素直に舌を出した。

 

「んんっ!?」

 

 言われた通りに幸福は舌を出し、舌だけをヌルヌルと動かし始める。

 するとエアグルーヴは思わずビクンと腰が跳ねた。

 見様見真似のエアグルーヴだったが、幸福からされた艶かしい動きに、全身が蕩けそうになる。

 

「ああんっ、んっ……ああっんっ……んぱっ、ちゅぱ……んぉあ、れろぉ……こうふくさ……あん、こうふくさぁん……」

 

 初めてした大人のキスの喜びと、幸福の隠れたキステクの凄さに、エアグルーヴはつい腰がふにゃっと砕けてしまった。

 ビクンビクンと小刻みに腰が跳ね、熱い吐息が漏れるエアグルーヴ。

 そんな彼女を落ち着かせるように、幸福は彼女の背中を優しく擦ってやった。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

「よしよし」

 

 まるで超長距離を全力疾走したあとのような息遣い。こんなことはジャパンカップのあとでもなかった。

 それほどまでに幸福とのキスがエアグルーヴにとって凄かったということだろう。

 

「なぁ……」

「ん、どした?」

「本当に、幸福さんは、キス初めてなのか?」

「初めてだけど?」

「そうか……」

 

 それだけ言うと、エアグルーヴは力尽きたように彼の肩に顔を押し付けた。

 

(初めてなのにあんなに気持ち良かった。そもそも私もキスは初めてだから、上手い下手の基準は良く分からない。だが、あれは気持ち良かった。いや良過ぎた。こんなの毎日していたら、おかしくなるっ!)

 

 眼がグルグルと混乱するエアグルーヴ。

 彼女がそんなことを考えているとは露知らず、幸福は優しく彼女の後頭部をポンポンポンと撫でていた。

 やがてゆっくりとエアグルーヴが頭を上げると、耳はしおしおに垂れ、しかしその眼の奥にはハートマークがしっかりと浮かんでいるのが分かった。

 

「幸福さん……」

「んー?」

「ずるい」

「何が?」

「私をこんなにして、ずるい」

「んなこと言われても……」

「ずるいものはずるいんだ……だからこうしてやる!」

「痛っ!?」

 

 首筋をエアグルーヴが噛んだ。血は出てないが、そこにはくっきりと彼女の歯型が残り、これは暫く消えないだろう。

 

「いきなり何すんだよ……おーいて……」

「ふん。私をこんなにした幸福さんが悪い」

「ええ。舌出せって言ったのはエアグルーヴの方なのに」

「文句を言うな……たわけ」

「はぁ……分かったよ。それより」

「どうした?」

「俺が痛いって言ったから、カールが心配してこっち見てる」

「…………私は無実だ」

「いやそれ、カールに言ってくんね?」

 

 その後、エアグルーヴはカールに「違うぞ。喧嘩はしてないぞ」と取り繕い、門限の時間も迫っていたので簡単なおにぎりと即席味噌汁で夕飯をぱぱっと済ませ、エアグルーヴは幸福とカールに寮まで送ってもらうのだった。

 




 おまけ

「ねぇ、ブライアン。止めようよ、こんなこと……」
「なら先生は帰ったらいい。私だけで任務を遂行する」

 エアグルーヴが幸福とデートしている最中、その背後にはコードネームシャドーと先生の姿があった。
 本当ならばコードネームサイボーグとコードネームマッスルも同行予定であったが、彼女らは己のトレーナーとお出掛けをするとかで欠席したのだ。
 なのでこの重要任務をシャドーと先生が遂行。

 ただ先生はエアグルーヴの後輩なので、それが申し訳なくて堪らない様子。
 しかしシャドーに帰れと言われたら、それはそれでシャドーが何をするか心配なので、渋々付いて行くことにした。

 ◇

「素晴らしい……まさに相思相愛のカップルだ」
「先輩、カワイイ……!」

 ルンルン気分のエアグルーヴとそんな彼女をしっかりとエスコートする幸福。
 シャドーに至ってはまるで宇宙規模の地上げ屋みたいに手を叩いているが、先生も先生で掛かってしまっているため深刻なツッコミ不足に陥っている。

「しかし初デートがショッピングというのもいいものだな。テッパンの映画館や水族館とかもそれはそれでいいが、やはりこういう何気ないところでも、愛する者同士であれば特別なのだろう」
「確かに……あ、またあーんをしてもらってる!」
「今度はチーズか……むっ!? あれは美味そうだ! 私も買う!」
「待って! 今出て行ったらバレるでしょ!」
「HA☆NA☆SE! 売り切れたらどうしてくれる!?」
「そうなったらアタシがお取り寄せしてあげるから!」
「……そうか。では頼んだぞ」

 意図せず奢らされた気分になった先生だが、シャドーが冷静さを取り戻せたので良かったと思うことにした。

「なぁ、あそこでアグネスデジタルがぶっ倒れてるのは、何故だ? しかもみんな当然のようにスルーしてるんだが?」
「知らないよ……いつものことって感じなんじゃない? それより先輩よ。ほら見て、今度は先輩があーんしてるわ」
「あれは鮭とばじゃないか! 買わないと!」
「何なのさっきからその変な使命感は!? いいからジッとして!」
「HA☆NA――」
「――美味しい鮭とば取り寄せるから!」
「いいだろう」
「…………」

 その後もこの調子でシャドーと共にエアグルーヴの幸せなデートを見守った先生だったが、尾行が終わる頃には自身の財布が少し軽くなってしまった。
 この日、一番特をしたのはエアグルーヴの甘々も見れて、美味しい物も苦労せずゲットしたシャドーだろう。

―――――――――――――――

ということで読んで頂き本当にありがとうございました!

久々にガッツリと甘いの書けて室賀大満足。
スペちゃんが耳にイクラを詰める件は、スペちゃんの中の人が小さい頃にやってたことです。
ラジオでそう言ってたのがかなり印象に残ってたので、書きました!
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