あとこの話は全部妄想です。許して、許し亭
「各選手体勢整いました」
16人のヒト息子がクラウチングスタートの姿勢を維持しながら今か今かとスタートの音を待ちわびる。
距離は200、ウマ娘達のレースに比べれば距離は圧倒的に短く、また速度も出ない。
コーナーすら無くただ直線を駆け抜けるレースはなるほど人の限界に挑戦するという意味では熱く燃え上がれるのだろう。
だが悲しきかな、ウマ娘達のレースは容姿の整った可愛らしく、美しい少女達が人には出すことの不可能な速度でかけ抜ける。
それに比べれば人のレースなど興醒めを良いところだろう。
故に人は考えた、考えてしまった。
どうすれば集客できるのかと、どうすれば人のレースに活気をもたらせるのかと。
あるときはウマ娘たちと同じようにレース後に選手たちのライブを行った。人気が下がった。
ヒトピョイではだめだった。
代わりにヒト娘のアイドルをよんでライブを行った。
ウマ娘という最高峰のアイドルがライブに木端のヒト娘など勝てるわけがなかった。
最高峰のアイドルであれば話は変わったかもしれないが、そんな金はなかった。
ヒトダッチでも駄目だった。
露出を増やした、選手からは魅せるために余分な筋肉をつけろと?俺たちは見世物かもしれないが、レースで魅せたいんだ、体で魅せたいじゃない!!と猛反発が起きた。
伝説は作れなかった。
人は更に考えた、考えてしまった。
そうして煮詰まった会議の中で誰かが言った。
「もうルール自体変えてしまおう」
そういう事になった。
そして月日が流れ、大きく3つのルールが変わった
最初に闘いの舞台は陸上から氷上へと移し、選手たちはスポーツシューズからスケートシューズに履き替え、怪我をしないように全身を厚く着込んだ。
次に手を加えられたのは勝者を決めるルールだ。
最初にゴールした者が勝者…ではない。2着でゴールした者が勝者だ。
そんなルールでは誰もゴールしない?そのとおりだ。
当然そこ以外にも変更点は存在する。
それが3つの目の大きな変更点。
レースコース上におかれた各種障害物と妨害の認可だ。
彼等の走るコース内にはプチプチやスポンジで何重にも巻かれた安全処理を施された物干し竿やパイプ椅子、長机まで乱雑に置かれている。
選手たちはこれを自由に使って良い。これで相手を倒し、引きずりゴールさせ自分は2着でゴールする。
だがそこにも駆け引きが存在する。
誰かに1着を放り投げた直後に誰かに2着を取られたら?
そうして彼らはひどく単純な結論へとたどり着く、全員を伸してから悠々と2着でゴールすればいい。
かくして
パァンと乾いた空砲が響けば雄々しい雄たけびを上げ16人のヒト息子が一斉にスタートを切り、己が獲物を手に取る。
あるものは物干しざおをあるものは長机をあるものはパイプ椅子をまたある者は軍手を(素手での相手への攻撃は禁止されている)、あるものは着ぐるみを着て壮絶は戦いへと身を投じる。
さて、そんな彼らの戦い方であれば、一言でいえば静と動の激しい入れ替わり、だろう。
ただ激しい動だけではウマ娘たちのレースには及ばない。山脈のごとき静ではわかるものにしかわからず興行にはならない、ゆえに彼らは凪のような静と嵐のような動を瞬時に使い分け、戦いに興じる。
レースしろよと突っ込んではいけない、ただのレースではウマ娘たちにかなうわけがない。文句はウマ娘ひいてはこの世界に対して、どうぞ。
そもそもただの動では、ウマ娘たちがこのレースを真似した場合下位互換になってしまう。
ゆえにウマ娘といえども、いやウマ娘だからこそ出来ぬだろう、静の境地を取り入れる必要があった。
目まぐるしく入れかわる静と動、四面楚歌でありながらもその心は明鏡止水
誰しもが敵であり、敵の敵は味方。誰も即席的に連携し、次の瞬間には裏切り己が獲物をぶつけ合う。
ここではみな誰しもの
「ウオオオオオオオオ!!!!」
野太い雄たけびが幾重にも重なり会場を揺らす。
この雄たけびを聞いているものは4桁もいない。テレビ中継もない。不人気スポーツなどそんなものである。
されども益荒男たちはその瞬きの間の刹那を繰り返す。いつかレースという競技をウマ娘から奪い返すために
たぶんスケートしてたウマ娘やレース服でスケートの靴履いてるウマ娘が参戦したら一瞬で廃れる。