(なお出来上がったセイウンスカイは強くはなかった。)
トレーナーさーん、いるー?
お、いたいた。
やっほー、あなたの愛馬、セイちゃんですよーっと。
……え? 今日のトレーニングにはまだ時間あるぞ、って?
やだなー。セイちゃんが事前に集合する、なんて事する様なウマ娘に見えますか?
……うーん。そこまで納得した顔されると、それはそれで不満かなぁ。
まあそれはそれとして、今日はちょっとばかりトレーナーさんに協力してもらいたいことがあってきたのです。
釣りの準備? ううん、違います。
お昼寝の準備? それも違います。
じゃあレース相手の情報収集? それは昨日のうちに終わらせました。
ん? いつ終わらせたの、って?
昨日、トレーナーさんが私のお願いを叶えるために、トレセン学園を東奔西走している間に終わらせたのです。
いやあ、その節はどうもどうも。まさか学園の購買で釣具が買えるようになるとは思わなかったよー。
さて、そんな訳で昨日散々駆けずり回ってくれたトレーナーさんに、今日もちょっとしたお願いがあります。
……ちょっとー、そんな身構えないでくださいよぉ。
私だって昨日の件についてはちょっとだけ反省してるんだから、昨日ほどの無茶は言いませんってば。
今日のお願いは……こちら! ててーん!
これ、なにか分かります?
はい、そう! 耳掻き棒です!
……ん? それがどうしたの、って……え、もしかして今日のお願い、分からない?
あ、そう。うーん、最近トレーナーさんとは阿吽の呼吸が板について来てたから、これだけでわかってくれると思っていたのですが。
え、いやいや。耳かきしてくれとかそういうのじゃないですって。
だいたいウマ娘と人間の耳じゃ形が違うんだから、人間用の耳かき棒でウマ娘の耳掃除が出来るわけないでしょ?
じゃあ何、って……本当にご理解頂けない? あ、そう。
じゃあもう言っちゃいますけど。
このウマ娘界のトリックスターことセイちゃんが、愛しのトレーナーさんの為に。
そして昨日のお礼代わりに、トレーナーさんの耳かきをやってあげます。
……ぷっ、あっははは! 何その顔! 今のトレーナーさん、キングが豆鉄砲くらったみたいな顔してるよ!
あはははは……っ! あーもう、その顔思い出すだけで1週間は笑いっぱなしでいられそう!
やばっ、お腹つりそう……!
はぁー、落ち着いた。
あ、トレーナーさんも落ち着いた?
そうそう、耳かきです。
この竹製耳かき棒で、トレーナーさんのか弱いお耳をこしょこしょーっとするアレです。
いやあ、実はお昼休みに購買に釣具見に行った時にさ、この耳かき棒がセール品のカゴにあったんだよねぇ。
ちょうどトレーナーさんへのお礼を考えていたセイちゃんは、これ幸いと100円の耳かき棒をこうして持参したのでした。
耳かきの経験? やだなぁ、あるわけないじゃないですかー。私、ウマ娘ですよ? ほらほら、見てこの可愛らしいお耳。ぴこぴこー。
……いや、そんな真面目な顔で可愛いなんて言わないで下さいよ。あーもー、調子狂っちゃうなぁ。
ほらほら、良いからそこのソファーに座った座った。
耳かきの経験こそないけど、ちゃんと取扱説明書は読んだからもうバッチリだよ。
……この耳かき棒には付いてなかったけど。
え? いやいや何でもないですよー。はいほら座る。あ、もうちょっと端の方に……そう、よし。
では右隣に失礼して。
よいしょ、っと。さてトレーナーさん、どうぞ。
うん? いや、膝枕ですよ。ほらどうぞ。
……おや? もしかして膝枕をご存知でない?
違う? そうじゃなくて恥ずかしい?
またまたー、何をいまさらー。私たち、一緒に温泉に行った仲じゃあないですか!
言い方に語弊がある? 一緒には入ってない? 細かいことはいいんですってば。
それよりほらほら、お膝へどーぞ。自慢じゃないけど、セイちゃんのお膝は猫ちゃんにも大人気なんですよ?
……はい、いい子いい子。
そ、れ、じゃ、あ……うん、右耳の縁からやっていくよ?
さっきはああ言いましたけど、なんだかんだで私も耳かき初体験なので。
力加減を見る意味でも、まずは縁の方からゆっくりゆっくりやっていきますよー、っと。
あ、痛かったら言ってね? トレーナーさん。
そぉっと、そーっと。……カーリ、カーリ。
こんな感じ? 痛くない? ……うん、了解。じゃあもうちょっと強めにやってくね。
カリ、カリ……スリスリ……ふっふっふっ、なんだかコツを掴んだような気がする。
トレーナーさん、ちょっと失礼しますねー。
ふーっ。
おわっ、どうしたのトレーナーさん?
え、くすぐったかった? あーごめんごめん、耳垢飛ばそうと思ったんだけど前もって言えばよかったね。
次からは言います、はい。
それじゃあ改めて。次はちょっと奥の方をやっていくね。
動かないでくださいよー、っと。
ゴソ、ゴソ……カリ、カリ……うん? いい感じ? じゃあこのまま続けていくね。
……お、ちょっと大きめの耳垢発見。このセイちゃんが見事釣り上げてみせましょう。
ん……よい、しょっと……よし、取れた! いやあ、やっぱり大物を仕留めると気分がいいねえ。
それじゃあ右耳の方はこのくらいに……とはいきません。
何故なら……そう! まだこのふわふわがあるのです!
これでトレーナーさんのお耳をこしょこしょーっとして、最後にふーっとしたら右耳は終わりです。
じゃ、行きますよー。
こしょ、こしょ……こしょこしょー。こしょこしょこしょー。
おー、いいねえこのふわふわ。耳かきじゃなくてこっちならウマ娘にも使えそう。
ん、よし。最後にお耳に息をふーっとするよ? 準備はいーい? トレーナーさん。
それじゃあ失礼して……ふーっ。……んふふ。……ふーっ、ふーっ。
はい、右耳は終わりです!
え? なんで3回もしたのか、って……そんなの、トレーナーさんの反応が面白かったからに決まってるじゃないですか!
って、ちょっとちょっとトレーナーさん、何体を起こそうとしてるのさ。
さっき言いましたよね? 右耳“は”終わり、って。
そう、その通りです。次は左耳をこしょこしょします!
そんなわけでほら、くるっと回って左耳をこっちに向けてくださいな。
……ん、ふふっ。ちょっともう、くすぐったいよトレーナーさん。
まるでお昼寝ポジションを探す猫ちゃんみたいになってますよ?
ポジションはもう定まった? はい、それじゃあ左耳を……ん、何です?。
…………ちょっとトレーナーさん。そのままでいいのでお説教です。
ちょっと制服のスカートがはだけてる、はまだしも、お腹が近いけど恥ずかしくないのか、は流石にデリカシーないと思うよ。
いや、そりゃ私だって思ったより顔が近くてちょっとばかりドキッとしてたり、太ももに乗ってる重さに猫ちゃんとはまた違った……って!
今のなし! 聞かなかったことにして!
あーもう、いいからさっさと耳かきしますよ! ほらじっとして!
……ふぅ、もう。じゃあさっきと同じように外側からやるよー。
……ん。右耳とはちょっと形が違うんだね……ふぅん。溝の深さもちょっと違うような……。
カリカリ、カリカリーっと……あ、埃ついてる。さてはトレーナーさん、さっき机の下とかお掃除してましたね? ふっふっふっ、名探偵セイちゃんにかかれば即解決、なのだよ。
……すぅ。
あら、バレちゃいました? いやあ、こっそり息を吹きかけるつもりが失敗しちゃったか。
はいはい、じゃあいきますよーっと。
ふーっ。……ふーっ。
うん、いい感じかな。じゃ、続けて深めにところをお掃除していきますねー。
……おお、いい感じ? さすがセイちゃん、初めての耳かきにしてもうコツを掴んだか。
ゴソ、ゴソ……ゴソゴソー。もいっちょゴソッと。
いいねえこの感じ。釣りとはまたちょっと違うけど、綺麗に釣り上げてくのは気持ちがいいっていうか。
……そろそろいいかな。じゃ、いつもの……。
ふぅー。ふふふーっ。……ふっ。
んっふっふ。ビクビクしてますなー。そんなに気持ちいい?
そっかそっか。じゃあリクエストに応えてもう一度。
ふーっ。……ふーっ。ふっ、ふっ、ふーっ。
はい、それじゃあ本当に、今度こそ耳かきは終わりです! おつかれさまー。
トレーナーさん。セイちゃんの耳かきはどうでした?
……ふむふむ。それは良かった。昨日のお礼とは言ったけど、そこまで満足してもらえるとやったかいがあるってものですよ。
100円とちょっとのお世話で昨日のお礼になるなら、ね?
また? あー、まあ気が向いたら、やるかもしれないこともないかもしれないこともない、かな?
ん、じゃあ私は今日のところはこの辺で。
じゃあトレーナーさん、また明日!
……しまった! トレーニングから逃げられてしまった!
スピードが5上がった。
賢さが5上がった。
「耳かきのコツ」のヒントLvが1上がった。