ひと葉 ~弐の巻~   作:亜空@UZUHA

2 / 69

 不信な侵入者の出現から三日、砂の里は通常時の三倍に防御を強化した。
 結局、『警告』を携えた侵入者の正体は明かされなかったが、風影はその者を常に傍らにおいていた。
 風影を護る者。
 そういう認識が広まると同時に、その者に名がついた。
 『烈風』と。


烈風

「暁の侵入経路の予測はつくか?」

 

 砂の忍が『烈風』に尋ねた。

 白い袴に、キツネの面をつけた『烈風』は、風影の隣より進み出て、地図に細い指をはわす。

 

「考えられるのはココとココ」

 

 どちらも、里の入り口を主張するような場所だった。

 

「正面きって向かってくるとでも言うのか?」

 

 砂の忍の中に、どよめきが起こる。

 が、風影は何も言わない。

 

「暁は、それだけの力を持っている……ということです」

 

 『烈風』は冷めた口調でそう言った。

 辺りは急に静まった。

 異様な姿から発せられるその声は、風影の横で冷涼に響く

 

「とにかく、そこに暗部に2小隊と、正規部隊を4小隊配置しろ」

 

 風影がそう命じることで、軍事会議は終了した。

 

 

 

「オレはまだ他のことで会議がある。お前は先に休んでいろ」

 

 上役だけを残して他の忍が去る中、風影が『烈風』に言った。

 キツネの面が少し傾き、『烈風』はカンクロウと共に会議室を出た。

 

「ナナ、砂は暮らし難いだろ」

 

 早朝から日の沈む時刻まで、ナナは彼らと共に防壁警備の見回りに就いていた。

 途中、砂嵐に見舞われることもあった。

 ナナには経験のないことだろうと、彼は案じていた。

 だが、ナナは面をとって笑った。

 

「厳しい土地だとは思うけど、砂とうまく付き合えば『忍の里』としては最高だよね」

 

 『忍の里としては』……その言葉の響きが、何故か他人事のように響く。

 

  『私は今、木ノ葉の忍じゃないから』

 

 我愛羅に呼ばれ、初めて里を騒がす『侵入者』と面会したとき、面をとった彼女はこう言った。

 頑なに、木ノ葉の忍としての自分を否定するナナ……。

 その理由を、彼はまだ聞きかねている。

 気になるのは、彼自身も把握できずにいる感情のせいだった。

 

 中忍選抜試験の時……。

 弟に理解不能な術をかける、ボロボロのナナを目にしたあの時からの……。

 

 だから彼は、ナナを引き止めた。

 

「ナナ……」

 

 この三日間、迷った末に開いた口だった。

 が、それは、ナナによってあっさりと遮られた。

 

「カンクロウにお願いがあるんだけど……」

 

 『何だ?』とも聞けない彼に、ナナは少し笑って言った。

 

「木ノ葉には、私がここに居たことを知らせないでほしい」

 

 彼の胸に、不安に似た渦が巻いた。

 が、ナナはそれを見透かしたようにまた笑う。

 

「休業中……の木ノ葉の忍が、勝手に他里に干渉しちゃマズイでしょう?」

 

 少し、自嘲気味であることは隠しきれていなかった。

 

「やっぱ、報告はしてねーのかよ」

「うん」

 

 理由を聞くことは当然の流れのはずだった。

 だが、カンクロウはそうしなかった。

 すでに、我愛羅から“ナナの願い”を聞かされていたというのもある。

 その時の我愛羅の顔が、風影になることを宣言した時と同じくらい真剣だったのもある。

 

「わかってる……」

 

 だがしかし、自身の意思で答えた。

 

「お前が砂に“その姿で”居たこと……木ノ葉には明かさない……」

 

 ナナはその返答に、『ありがとう』とだけ言って、宛がわれた部屋へと消えて行った。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。