シカクといのいちは、日向の男をつれてペインの“本体”を捜索していた。
里に近く、高い場所。
いのいちの分析では、そこにペインがいるはずだった。
途中、日向の男がナルトとナナを発見した。
「ナルト!」
巨木の枝の上、ナルトはナナを背負ったまま立ち止まり、振り返った。
ナルトはペイン“本体”の居場所を見つけたと言い切り、そこへはナナと二人で行くのだと言った。
「確かめたいことがある」……と。
いのいちはもちろん止めた。
これまでの戦闘で、ナルトのチャクラが消耗しきっていることはわかっていた。
それに、青白い顔で沈黙をまもるナナに、戦える様子は欠片もない。
が、シカクは許した。
ナルトひとりに「託す」と。
ナルトは礼を言い、ナナと共に走り去った。
ナナはうつろな目をしたまま、一度も彼らと目を合わせようとはしなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
“紙”できた巨木の中に、ペインは居た。もうひとり、小南という女とともに。
そこで、ナルトは「確かめた」。己の気持ちを。
師を……自来也を殺した仇を目の前にして、自分がどうなるのか……と。
だが、ナルトはペインの本体……長門を殺さなかった。師の言葉を思い出し、踏みとどまった。
長門は彼に、それは単なる理想だと吐き捨てた。自来也の思想は戯言だと言い切った。
「お前の話を聞いて……それから“答え”を出したい」
ナルトは彼にそう言った。
何故、同じ師を持ちながらも異なる道を歩くことになってしまったのか……。自分と彼の何が違ってしまったのか。
それを知って、“答え”を出すのだと。
「いいだろう……、オレたちの痛みを教えてやる」
小南は止めた。
が、長門もまたナルトの“答え”を知りたがった。
そして長門は、彼らの身に起こった忌まわしいできごとを語った。
それはまさに忍の世の“負の連鎖”を表すものだった。
長門の話を聞きながら、ナナはずっとナルトの背中だけをみつめていた。
終わらない憎しみの連鎖……。
それを聞かされて、ナルトが何を“答え”とするのか。
一番知りたいのはナナだった。
「エロ仙人は、オレのことを信じて託してくれたんだ……」
ナルトは、まっすぐに言った。
迷いはあった。確かに、彼らしくない弱さはかいま見えていた。
が、決してうつむきはしなかった。
「だからオレは……、エロ仙人の信じたことを信じてみる」
いつか来る「平和」。
ナルトはそれを信じると言い切った。
「それがオレの“答え”だ」
そしてナルトは、ポケットから自来也の本を出した。
長門のことが書かれ、その主人公の名が「ナルト」であるという本を。
その瞬間、長門の目の光が色を変えた。
ナルトは全てを背負った。
自来也の果たせなかった理想の平和……そして、長門と小南の絶望も。
「お前を信じてみよう……うずまきナルト」
長門はそう言い、小南が止めるのもかまわず印を結んだ。
そして、
「外道 輪廻転生の術……」
術を発動した。
「やめて! 長門!」
小南が悲鳴に近い声を上げた。
「な、なんだ?! 何の術だ?!」
ナルトも動揺する。
が、
「手伝え、いずみナナ」
長門は唐突に言った。
「え……?」
ナルトが驚いて振り返る。
視線を合わせた。優しさが、彼の碧い瞳の中を漂っている。
そこに少しだけ安堵して、ナナは彼の前を通り過ぎた。
「な、なんでナナに……?」
「長門、まさかっ……」
動揺するナルトと小南をよそに、ナナは静かに長門に近づいた。
「和泉一族のお前なら、全員を“呼び戻せる”だろう……」
長門は苦しそうにそう言った。
「輪廻の眼……」
彼を見上げて、ナナは思わず小さく呟いた。
その眼について詳しくは知らない。不吉なようで神聖なものにも感じる。
「そうだ……。この眼を得たという六道仙人も、もとは和泉の血をひいている……。和泉の直系のお前に、この術のサポートができないはずはない……」
長門は皮肉ともとれるようなことを言った。
その痩せた体には汗が流れ始めている。
ナナは振り返り、小南に言った。
「本当に……いいの……?」
そうしなければいけない気がしたからだ。
小南は長門を見て、ナルト見た。そして最後に、ナナに視線を返した。
諦めた目をしていた。
胸が痛んだ。
「早く……しろ……」
長門はチャクラを最大にまで練りこんだ。
ナナはもう一度だけ小南を見て……両手を長門の乗る台座についた。
そして目を閉じた。
もうその先は、現実世界ではなかった。