勝利を盗む者。 作:レスに咽び泣くリボー推し
それと、ドゥスの馬名をデ・エトワールからグランシャリオに変更しました。理由は安直過ぎて面白くなかったからです(
追記
感想のGoodとBadは、作者が勝手に既読的な意味でGoodを押しているだけ(追い付いていませんが)なので、基本的に他の方の感想にBadは押さないでいただけると助かります。Goodは沢山押してください。それでもBadが沢山付くようなら欄を削除します。
・グランシャリオ
二ツ星くん。アホの子。黒髪の短髪に金色の眼、キャラデザがキタサンブラックとサトノダイヤモンドのニコイチ疑惑が浮上している。
・アルカナクイーン
名も無き隣人ちゃん。馬だった時は天然電波系牝馬を極めていたが、ウマ娘となり人型を得た今は天然電波系無表情一途娘にジョブチェンジした。
早朝、夏だが薄ら肌寒い外の空気を感じながらタクシーを降りる。
青いシャツに黒のスラックス、赤ネクタイで締めた私服姿で空港に訪れると、エントランスの受け付けのお姉さんから笑顔でお辞儀された。
完全に顔見知りになっているなぁ、と思いながら懐中時計を一瞥。まだ時間があることを確認して受け付けカウンターの方へ向かう。
「こんにちは、アルセーヌさん。今日も妹さんのお迎えですか?」
「はい……まあ、妹のようなもので、妹ではないんですけどね。ただの幼馴染ですよ」
「ふふ。幼馴染、と言うにしては随分と親しげですけど」
「お姉さん、自分をからかわないでください」
何とも言えなくなって、右耳に付けた黒のシルクハットを模した髪飾りに触れる。
実際、自分と彼女はそれなりに親しい仲ではあるが、どちらかと言うと彼女の方がグイグイと来るのだ。
その理由というか、それ自体は前世でも経験済みであったので別段驚きもしなかったが。
「そろそろいつもの時間の便も来ますので、迎えに行ってあげてください」
彼女は、自分が十分間に合う時間かつ一番早く日本に着く便に乗ってくる為、ほとんど同じ時間に到着するということまで受付のお姉さんに把握されている。
「まあ、毎年のように迎えに来てれば当然か」
お姉さんに別れを告げた後、そう独り言ちて歩き出す。
到着ロビーは時間帯もあってか人は疎ら。
だが、飛行機が一機着陸すると、暫くしてわらわらと外国人や日本人が降り口から現れる。
その中に、お目当ての人物は居た。
「『クラス……会いたかった』」
少しだけ眠気で回らない頭で道行く人々をぼんやり眺めていると、左耳にティアラの髪留めを付けたふんわりした茶髪のウマ娘が駆け寄ってきた。
尻尾をぶんぶんと振り回しながら飛び付いてきたそのウマ娘をやんわり抱き留めると、元男?雄?としては誠に遺憾ながらにそこそこたわわに実ってしまった胸に顔を埋める彼女の頭を撫でてやる。
非常に感情の起伏が読み取りにくいその紫色の眼ではあるが、然しもの彼女もウマ娘であることからは逃れられず、尻尾の動きや耳の動きから前世よりも正確に感情を把握することができるようになった。
馬の時よりもウマ娘になってからの方が機微が判断し易いってどういうことなんだと思わなくもない。が、彼女なので考えるだけ無駄だ。
彼女の名前はアルカナクイーン。幼名は
前世の記憶こそ保持していないが、概ね性格などは前世の頃とは変わりないように思える。
人型になって、パスポートさえあれば学生身分の一人旅も可能となった今、彼女は頻繁に自分に会いに来る。
こうして休みに入る度に会いに来れるのは、まだ自分も彼女もメイクデビューすらしていない身の上だからである。
ウマ娘になって思ったのだが、見た目が人間になった分、カルム……アルカナクイーンからの執着が目に見えて形を変え、自分のメンタルを削りに来ているように感じる。
前世、馬であり、人間でもあった自分を一瞬とはいえ馬のみに変え、以降、自分の種牡馬生活を不本意ながら良好で円満なモノにしてくれやがった困ったちゃんである。彼女に対して複雑な心境なのは、多分一生変わらないと思う。
「『毎年来てるけど、お金とか大丈夫なのか』」
「『パパが、沢山くれる』」
……その言い方は辞めようね。おじさんが気の毒だから。
まあ、なんにせよ彼女の家の心配をする必要も無いだろう。
彼女がデビューしたら、それこそ物凄い勢いで金を稼いでくれる。前世の記憶から、自分はそのことを知っている。
「『それで? 今年は何がしたい? 来年からは難しいだろうし、今年は出来る限り叶えるよ』」
「『……トレセン学園の案内して』」
「『え? そんなので良いの?』」
「『……クラスに悪い虫が付いてないか確かめる』」
……ええ……。
一応ウマ娘プリティーダービーは百合スポ根だけど、同性に惚れたりする感じの物語じゃないから心配無いと思うんだけどなぁ。
スペスズ、グラスペ、ウンスとニシノちゃんはまたちょっと違う気がするけど。特に最後のはアレ、もはや夫婦ではなかろうか。
「『うーん、まあ良いよ。分かった』」
「『ありがとう。……後、しばらく泊まる』」
「『いや、それはちょっと……。というか、夏合宿もあるし』」
「『……大丈夫。トレセン学園は、私が説得する。夏合宿前には帰るから。……だめ?』」
困ったな。こうなると、自分の力だけではどうにもならないのだが……。
何とかなるか。うん。大丈夫だろう。
決して、上目遣いに屈したわけではない。決して。
「『……分かった、分かった。駄目って言われたら、ちゃんとホテルに泊まるんだぞ?』」
「『うん』」
「『じゃあ、行こうか』」
手を差し出すと、彼女は薄ら微笑んで握り返してくる。
受け付けのお姉さんに、『お熱いですね』というアイコンタクトをもらって死ぬほど後悔した。
……ちなみにこの後、自分がカルムと一緒のホテルに泊まることになるのを、この時の自分はまだ知らない。
■
「『クラスー!!』」
「『久しぶりだね、ドゥス』」
「『うん! 久しぶりだな!』」
お正月。
休みとなった自分は、ドゥスを空港まで迎えに来ていた。
迷いなく胸元に飛び込んでくる辺り、カルムもドゥスも変わりない。
ちなみに、いつもの受け付けのお姉さんからは『罪の多い女ですね』、と微笑み混じりのアイコンタクトを受けた。自分は悲しくなった。
確かにドゥスもカルムもウマ娘になった影響で見た目は麗しいが、前世の記憶や今世の関わりもあって、二人とも妹くらいにしか見えていないし、何なら馬のイメージが先行するのだ。本当に。
常にちぎれんばかりに黒鹿毛の尻尾を振り回している彼女は、ウマ娘になってからもしっかりと馬の頃の特徴を受け継いで、黒い髪の前髪部分には二ツ星のような白いメッシュがある。
なんか、キタサンブラックが大きくなったようなキャラデザの気もしないでもないが、血統的にはほぼ関係無いので他人の空似だ。それに、目は金色だし。ん? キタサンブラックとサトノダイヤモンドのキャラデザニコイチか? 言われてみればそうかもしれない……。
ま、まあ、性格は全然違うしな。うん。気にしないようにしよう。全然関係無いのにそうにしか見えなくなってくる。
ちなみに、ウオッカとは全然違う。話し方とかどことなく似てるけど。不思議だ。ウマ娘化したらウオッカみたいな感じになりそうだなぁ、なんて思っていたのだが。
「『それで、今年も初詣に行くのかい?』」
「『当然! 日本の初詣は凄いからな!』」
カルムが滞在期間中は自分にべったりなのに対して、ドゥスはドゥスで好き放題旅行を楽しんでいる。
このあと、お昼を食べたら一人で浅草の方まで行くつもりらしい。言い方はあれだが、ちょっとアホの子が入っているのに意外である。
ちなみに、カルムは今年は来ないらしい。
去年は来ていたので、あのカルムがどういう心境の変化かと思えば、『未来は自分で掴み取る』かららしい。願掛けのことを指しているのだろう。そう言えば、去年も一昨年も願掛けだけはしていなかった。
こればかりは、まあ、分からなくもない。
彼女はあれでリアリストの気があるし、お願いごとをするのは嫌なんだろう。
自分は願掛けくらい良いと思うのだが、そう言われると神に委ねているみたいで自分も躊躇してしまう。ドゥスはがっつり願掛けするみたいだけど。
「『ドゥスも来年デビューだろう?』」
「『おう! メイクデビューなんてサクッと勝つぞ! 俺はクラスとカルムと一緒に凱旋門賞を走るからな! 後、勝つ!』」
「『願掛けは?』」
「『勿論するぞ! 使える物は何でも使う! 運も神様も、全部俺の為に絞り尽くしてやる!』」
な、なんともまあ不謹慎な……。
いや、ドゥスはこういう奴だってことは前から知っているが。
ただ、ちょっと、日本の願掛けとは考え方が違うんだけども……言っても分かんないよな。ドゥスだし。
遠い目をしながら歩いていると、ドゥスが目の前で振り返る。
「『クラス!』」
「『ん?』」
「『俺は、お前に勝つからな!』」
「『……勿論、受けて立つよ』」
「『おう!』」
こういうところはやっぱり前世の頃と全然変わらない。それが、とても嬉しい。
来年から始まるトゥインクルシリーズ。
前世のあの感動がもう一度自分を待っていると思うと、堪らない気持ちになる。
それに、この世界ならクラシック三冠にも望めるしな。
今から、楽しみな事ばかりだ。
「『おーい! 勧めたお店、お昼は並ぶんだぞー! 早く早くー!』」
いつの間にか先に行っていたドゥスに急かされながら、自分は来る未来に想いを馳せた。
アドバイスとかあれば是非。
感想はモチベーションに。評価はパワーに繋がります。
よろしくお願いします。
アルセーヌ
1988産
父サガス
父の父リュティエ
父の母セネカ
父の母の父シャパラル
母クラスアリュー(架空馬)
母の父トロイ
母の母エクラ(架空馬)
母の母の父リボー
主な勝ち鞍
・新馬戦 1990