勝利を盗む者。   作:レスに咽び泣くリボー推し

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 レース結果以外の大きな改変は、物語を面白くするためにどうしても入れようとしてしまうけど、それをする度に書いているモノの都合上、精神的に多大な負荷を負っています。面倒な作者を許してください……。ということで、やっぱり主人公以外に関するレース結果を除いた史実改変は辞めておきます。作者のメンタルが持たないので……。アンケートの経過を無視する形となりますが、次の更新停止のタイミングまでに修正する予定です。ご了承ください。
 
 ・穣
 天才。未来のレジェンド。


第十八話 報知杯弥生賞の話。

【本日の弥生賞、前走から久々の競馬となります、三歳王者アルセーヌが一番人気に推されました。本日の騎手は嵩穣騎手】

 

【朝日杯は何よりもこの馬の実力を証明する機会となりましたね。それだけに、クラシック三冠に挑戦できないのは惜しい】

 

 いや、トウカイテイオー最推しの自分としてはクラシック挑戦はちょっと……。

 最近になって唐突に生まれたトウカイテイオーと競ってみたいという思いや、前々からあった白恵さんやエドモンさん、篠田さんにクラシック三冠の一つでもあげたいという気持ちはあるけど、それはそれとしてトウカイテイオーの軌跡を邪魔したいわけではないのでとてつもなく複雑な心境である。

 

【ですが、二番人気リンドレイザー、三番人気ブレスオウンダンス、どちらも前年までのレコードを破った若き勇士達です。ターフの怪盗を相手にどれだけ戦えるか、はたまた怪盗に勝利を盗ませず走りきることができるのか。期待がかかります】

 

 ここも自分が一番人気であるということを除けば自分の知っている知識通りだ。

 

「アルセーヌ、今日のところは差しで行こう」

 

『分かった』

 

 個人的には差しが一番性に合っている。

 その上、新馬戦以来の2000メートルだ。2000メートル、クラシックディスタンスで逃げを試すのは少し怖い。

 やっぱり、まだ逃げへの拒否感は克服できそうになかった。

 

 朝日杯の時は、エドモンさんをGⅠジョッキーにしようと無我夢中で走っていたから後ろのことが気になるなんてことも無く走り切れた。

 しかし、いざ走り終わって、どっと押し寄せた精神と肉体への疲労感は恐ろしかった。特に、自分が出しているとは思えないようなあのスピードは出来ることならあんまり経験したくない。元人間だから、というのもあるかも知れない。

 それもあって、苦手意識から来る拒否感に加えて、軽い恐怖から来る拒否感、忌避感も芽生えてしまった感じがする。

 どうにかして克服したいのだが、今はまだ無理そうだ。

 

【十番、サンオブゴッデス、ゲートイン完了。各馬、体勢整いました】

 

 ……今はレースに集中しよう。

 せっかく、四戦四勝の無敗連勝街道だ。

 

【報知杯弥生賞、今、ゲートが開きました】

 

 いつものようにスタートダッシュを決め、自分は何か違和感(・・・)を覚えながら走り出した。

 

 

 □

 

 

【いつもながらに見事な走り出しを決めたアルセーヌを先頭にレースが形成されていきます。外の方から十番サンオブゴッデス、アルセーヌの後ろに付きました。その後五番リンドレイザー、九番グレートファイト、四番ブレスオウンダンスと続きます】

 

【先頭集団は予想通りですね。個人的にはアルセーヌは後方からの競馬になると思いましたが、っと、アルセーヌ、後ろに下がっていきます。折り合いが付かなかった、というわけではないのでしょうね。これはどのような展開となるか、もう既に読めません】

 

 最初の坂を登る時にも妙な違和感を覚えながら、指示された通りに先頭を走る。

 逃げ、というよりも逃げが居ない時の先行の感覚で走れば多少は拒否感も和らぐ。

 

 残念ながら前世では1991年の弥生賞のレース動画は見れていなかったので、これが本来のレース展開なのかは分からない。

 しかし、レジェンドの指示で一旦前に出てレースを主導してから、後ろに下がって隠れるというのは、自分でやっておきながら結構な高等テクニックだと思う。

 

 ……だが、この程度で勝てるほど弥生賞は簡単ではないだろう。

 その証拠に、先頭を走るサンオブゴッデス以下先頭集団はどの馬も掛かっている様子は見えない。

 

「アルセーヌ、もう一回だけやるよ」

 

『……分かった』

 

 口頭でボソリと呟かれた作戦も、我が耳なら一字一句漏らさず聞き取れる。

 無論、レジェンドは自分が声だけで作戦を理解できるほど奇妙な馬であるとは知らないので、その後の指示に従ってから動き出す。

 というか、走っている馬に話し掛けるの気が散るからやめるべきだと思う。まあ、多分、自分だからこそ意思疎通の為に話し掛けているのだろうし、自分はその程度で気が散る馬ではないので別に良いのだけれども。

 

【おっと、アルセーヌ、第二コーナーを曲がって向こう正面中程でもう一度先頭まで上がって参りました。半馬身の距離感で競り合うリンドレイザーとサンオブゴッデスを抜かして先頭へ参ります】

 

【このまま上がっていくつもりでしょうか。向こう正面から第三コーナーに来て、レース序盤から未だに各馬の位置に大きな変動はありません。おっと、グレートファイト、上がってくる。これはアルセーヌの逃げを警戒しての動きか。リンドレイザーと並んで三番手争い。他馬の動きにも若干の乱れがあります】

 

 だいたい、仕込みは終わっただろうか。九番が早くも動き出したのを見てから、指示を受けてもう一度馬群の中に紛れ込む。

 これで、自分達がいつ仕掛けようとするか、その警戒を引き上げざるを得なくなったはずだ。

 前走で大逃げした分、他の陣営からは自分を警戒しつつも、自分のペースを作ってから冷静に見極めようという魂胆が透けて見えていた。

 

 多分、それをレジェンドも理解していたからこその判断だろう。

 

 ここまで来れば、後は盗むだけだ。

 

【第三コーナーカーブから、第四コーナー差し掛かり、残り400メートル! 先頭はグレートファイト、いえ、サンオブゴッデスが上がってきて、さらにリンドレイザーが先頭に立つ! ブレスオウンダンス、内からブレスオウンダンス! アルセーヌも来た!】

 

【アルセーヌ先頭! 本日三度目の先頭! このまま行くか! リンドレイザー、ブレスオウンダンスも頑張る! しかし、届かない!】

 

 次第に大きくなる違和感を極力無視しながら、溜めていた足を全て解き放つ。

 最後の直線、レジェンドの鞭に応えるように加速していく。坂など関係ない。

 

 後ろを振り返ることなどなく、真っ直ぐに自分はゴール板を駆け抜ける。

 

【アルセーヌ、そのままゴールイン! 前から後ろまで、余すことなく全てを支配した四馬身の実力差! これが、三歳王者の力です!】

 

【怪盗は、皐月賞の代わりにそのトライアルを盗み、我々にその姿を深々と刻みつけていきました!】

 

 歓声。

 いつの間にか、こんなにも自分を称える声が増えていた。

 

 自分のことでないようで、しかし、自分の努力も少しは起因しているのだと思うと、どこか誇らしい。

 次のレースも勝ちたいものだ。

 

 

 違和感は、強くなっていた。

 




 アドバイスとかあれば是非。
 感想はモチベーションに。評価はパワーに繋がります。
 よろしくお願いします。

 アルセーヌ
 1988産
 父サガス
 父の父リュティエ
 父の母セネカ
 父の母の父シャパラル
 母クラスアリュー(架空馬)
 母の父トロイ
 母の母エクラ(架空馬)
 母の母の父リボー

 主な勝ち鞍
 ・新馬戦 1990
 ・いちょうステークス 1990
 ・デイリー杯3歳ステークス 1990
 ・朝日杯3歳ステークス 1990
 ・朝日杯弥生賞 1991

トウカイテイオー鞍上を史実通りに戻すべきか。

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