勝利を盗む者。   作:レスに咽び泣くリボー推し

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 感想たくさん貰えて咽び泣いているけど、返信が追い付いてなくてあまりの情けなさに咽び泣いているリボー推しの一般人が私です。
 感想、評価、そして何より誤字報告……いつもありがとうございます……。
 必死こいて未来の掲示板の話書いてみてるけど、掲示板書くの難し過ぎでは???

 追記
 アルカナクイーンが人語を理解している旨についての疑問を提されましたが、アルカナクイーンについては賢さゴールドシップということで。基本的にアルセーヌと話している馬は人語を理解する素養があります(二ツ星くんは別)アルカナクイーンが人語をある程度解する点は物語に全く影響ありませんし、アルセーヌがそれを知ることもないですので物語上の演出としてご理解ください。

 追記2
 これネタバレしたくなかったんですけど、いただいた感想とか見る限り勘違いしている方が多いようですが、アルセーヌの違和感は怪我でも故障の前触れでもありません。どこに違和感を感じるとも明言してなかったはず……。

 ・白恵
 美人馬主。基本的にアルセーヌと身内と、馬そのものへの熱意がある人間に駄々甘。

 ・篠田
 調教師。アルセーヌを三冠に出せない悔しさに眠れぬ日々。

 ・アルカナクイーン
 幼名はカルム。GⅠ一勝。

 ・アルカナクイーンの騎手
 一度アルカナクイーンに蹴られたことがある。


第十九話 熱意の話。

 次走は京都四歳特別なので、そこに向けて調整を受ける日々。

 今日はプールでのトレーニングであった。

 プールは前世の頃も好きだったので、童心に帰ったようなワクワク感がある。

 

 ちなみに違和感についてだが、しばらくしたら全然気にならなくなったので、取り敢えず無視する方向にした。

 強い痛みがあるわけでもないので問題ないだろう。白恵さんや、篠田さんに心配掛けたくないし。

 それに、この感じだと大丈夫だろうけど、もしも自分が結構重めな怪我をしてしまったらエドモンさんやレジェンドに申し訳が立たない。

 その点、出処は分からないけれど、脚ではないので故障の心配無し!

 

 無事是名馬。

 

「宝塚記念に出ないって本当ですか?」

 

「はい。なるべく多くの実戦を経て、勝利数を増やし、GⅠにも勝っていきたいのはこちらも承知していますし、そのようなローテーションを組んでいます」

 

「それなら、直近のGⅠである宝塚記念には尚のこと出るべきではないでしょうか?」

 

「私は正直な話、それを良いとは思いません」

 

 夕方、自らの馬房に訪れて自分を眺めていた白恵さんの下に篠田さんが現れたと思えば、次走以降のローテーションの話をし始めて数分。

 

 てっきり宝塚記念に出るものだとばかり思っていた自分としては、京都四歳特別に出た後、宝塚記念は目指さずに函館記念、毎日王冠、アルゼンチン共和国杯と出てジャパンカップを目指すというローテーションには少なくない驚きを覚えた。

 

「アルセーヌ号は、確かに強い馬です。そして朝日杯、弥生賞を勝利した今、四歳牡馬の中では最も人気ある馬と言えるでしょう。宝塚記念には確実に出られるし、勝てる可能性も十分以上」

 

「なら」

 

「しかし、外国産馬です」

 

 外国産馬であることの何が問題なのだろうか? 確かに、制限は多いけど。

 それでも、ダンツシアトルとかグラスワンダー、メイショウドトウなどなど日本で宝塚記念や有馬記念に出走して勝った外国産馬は結構いる。

 だとすれば、自分も宝塚記念に出るべきだと思うのだが。

 

「外国産馬は、外国産馬であるというだけで様々なやっかみを受ける。強い馬ならなおさらに。強ければ強いほど、スター性が無ければ更に肩身は狭くなる」

 

「そうですけど……」

 

「ただ強いだけの馬じゃ駄目なんですよ。ただ無闇矢鱈に勝ち続けるだけの馬を、日本人は好まない。しかも、それが外国産馬と来れば、あまり良くない感情を向けられるのは確実です」

 

 まあ、確かに。

 でも強い馬、速い馬は競馬ファンや競馬関係者問わず誰もが好きだと思うんだけど。だからこそ、どんどん競馬は高速化していくわけだし。

 そんなに外国産馬は肩身が狭いのか。

 ウマ娘には沼ったけど、競馬自体は知識でしか知らない為、あんまり実感の湧かない話だ。

 

「……外国産馬には国内競走への出走制限がありますよね? その上で、出られる数少ないGⅠである宝塚記念、私も最初は出すべきだと思っていました」

 

「でしたら、宝塚記念に出た後に少し休養を挟んで毎日王冠から始動しても良いのではないですか?」

 

 ふむ。自分も白恵さんの言う通りだと思う。それでも、問題ないはずだ。

 しかし、篠田さんの考えはやはり違うようである。

 

「私は、アルセーヌ号に皐月賞、東京優駿、そして菊花賞を走らせてやりたかった。来年には天皇賞を。そうしてオーナーの望んだ凱旋門賞へと繋げていく。ですが、それはアルセーヌ号が外国産馬である時点で叶わぬ夢です」

 

 言われてみれば分からなくもない。

 朝日杯をレコード勝ちして最優秀三歳牡馬にも選出された自分が、四歳牡馬戦のメインレースに一つも出られないというのは惜しいことなのかもしれない。

 GⅠを勝った今でも、実感という意味合いで自分がそこまで凄い馬だとはどうしても思えないけど、期待の大きさと、落胆の大きさは分かるつもりだ。

 

「日本で走る牡馬にとって最も栄誉あるレース、有馬記念などを除けば、日本が誇る名馬達が集うレースの代表格に、アルセーヌ号はどれひとつとして出られない。この馬が、日本競馬の名誉ある一冠を一つも得られないというのが、自分には悔しくて堪らない」

 

 ……やっぱりこの人は馬思いの誠実な人である、というのがひしひしと伝わってくる想いの吐露。

 自分以上に自分のことを熱く語ってくれる人がいるというのは、むず痒いけど、こう、込み上げてくるものがある。

 

「だからこそ、私はアルセーヌ号が日本競馬における当代の四歳牡馬の中でも最強であり続ける名馬だと証明したい」

 

 いやー! そんな凄い馬じゃないから、変に持て囃すのは止めてくださいー!

 変に肝の小さい自分は、ここまで一応の努力をしたのは自分であっても拾った力で無双してる感が否めないので、そんなことを言われると恥ずかしくて悶え死んでしまう。

 

「私はここで敢えて宝塚記念を無視し、四歳クラシック戦を終えて一皮剥けた当代最強と目される馬達と世界の優駿が集うジャパンカップ、そして一年の総決算である有馬記念を盗み去ってこそ、アルセーヌ号の強さを知らしめることが出来ると、そう思ったんです」

 

「篠田さん……」

 

「必要でしたら宝塚記念は来年でも出られます。出させるならば絶対に勝たせてみせます。だから、どうかお願いします……! アルセーヌ号が最強だと、証明させてください……!」

 

 頭を下げてまで、自分の行く末を希望する篠田さん。

 言葉だけ聞くとわがままで自分本意、馬の凄さばかりを褒め称えているだけに取れなくもないし、妄言ばかり垂れていると思われても仕方がないが、彼の言葉には抑えきれない熱意が溢れていた。

 自分が、アルセーヌという馬がどんな馬よりも強いのだと信じ、微塵も疑わない姿勢には、惚けただけの憧憬や、薄汚れた感情など欠片も感じられない。

 

「……分かりました。なので頭を上げてください、篠田さん」

 

「でしたら……!」

 

「はい。貴方の熱意、確と受け取りました。アルセーヌさんのこと、今後ともよろしくお願いします」

 

「ありがとうございます! 必ず、アルセーヌ号が世代最強であると証明してみせます!」

 

 そんな篠田さんの言葉だからこそ、白恵さんも折れたのだろう。

 と言うよりも、白恵さん自身は元々理由さえしっかりしていれば断るつもりは無かったのではと思うが。

 

「アルセーヌさん、行けますか」

 

『もちろん』

 

「ふふふ。やっぱり、アルセーヌさんは人間みたいに人の言葉が分かっていそうですね」

 

「……いえ、我々の言葉を理解している素振りは見せますよ。多分、ある程度の言葉はしっかりと理解しています」

 

 まあ、中身人間ですし。

 ただ……流石にちょっと人間臭すぎた気もしないでもないけど。だからと言って今更馬っぽくなるつもりもないが。

 

「アルセーヌ号も、自分の強さを証明したいと、きっとそう思っているに違いありません」

 

「そうですね」

 

 それは間違いです。

 程々に頑張って来年の凱旋門賞に出られたらそれで良いです。

 

 

 □

 

 

 歓声が響き渡る。

 女王の座を目指して、女の子達が集うレース。その前哨戦だ。

 熱量だって相当なもの。この前の大きなレースの時だって、これくらいの人気があった。

 

 でも、この程度じゃまだ足りない。

 

「『行けるな、クイーン』」

 

『……当然』

 

 ここに勝って、さらにその次も、その次の次も勝つ。

 勝てば勝つほど強い子達とぶつかる。その度に、段々と厳しい戦いを強いられる。それでも勝つ。

 それはつまり、クラスと、後ドゥスとの約束のレースに近付いて行っているということだ。だから勝ち続ける。

 

「『今日は機嫌が良さそうで何よりだ。暴れないでくれよ?』」

 

 マチアスや白恵の言っていることは時々かつ何となく理解できるけど、未だにこの人の話している言葉はほとんど分からない。

 でも馬鹿にされている気がしたので、飛び跳ねて揺すっておく。

 

「『いったっ!?』」

 

 ……後、一年しかない。

 一年で、ここからフランスに行けるくらいの実力と実績を手に入れる。その為にはこの地の女王の座が必要だ。

 

 だから、他の子達は邪魔。

 

 

【三歳牝馬最強の座へ向けたトライアル、アッシュランドS、今、スタートしました】

 

 

 勝って、勝って、勝ち続ける。

 誰よりもそこに相応しいと証明する為に。

 

 だって、

 

 

【アルカナクイーン、抜けた! やはり、今年の牝馬戦線を引っ張っていくのはこの馬なのか!?】

 

 

 ───クラスの隣に立つのは私しかいないもの。

 




 アドバイスとかあれば是非。
 感想はモチベーションに。評価はパワーに繋がります。
 よろしくお願いします。

 アルセーヌ
 1988産
 父サガス
 父の父リュティエ
 父の母セネカ
 父の母の父シャパラル
 母クラスアリュー(架空馬)
 母の父トロイ
 母の母エクラ(架空馬)
 母の母の父リボー

 主な勝ち鞍
 ・新馬戦 1990
 ・いちょうステークス 1990
 ・デイリー杯3歳ステークス 1990
 ・朝日杯3歳ステークス 1990
 ・朝日杯弥生賞 1991

トウカイテイオー鞍上を史実通りに戻すべきか。

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