勝利を盗む者。 作:レスに咽び泣くリボー推し
これは、ウマ娘プリティーダービーの二次創作です。
それを念頭において、本作に実際に登場する競走馬はウマ娘プリティーダービー準拠の名前、またはそれらに則った改名が成されます。
そして、本作では外国人騎手の短期騎手免許制度は1990年から施行されているという“ウマ娘プリティーダービーの世界観”に対する独自設定を持ちます。
また、以前少し描写したウマ娘編における天皇賞・春に関してですが、ご都合的ではありますが紆余曲折あって本馬は馬生中に挑戦します。勝敗に関しては本編で。
多分、言い忘れていたのはこれくらい。
上記に伴って、今回の話は補足回として急遽内容を変えたので、後ほどしっかり推敲する予定です。また、第二話の内容も少しだけ変更しました。
・仲村
日本での主人公の世話係。白恵の親戚で、競馬というよりも馬そのものが好きなのが転じて白恵が経営する牧場の牧場長になった。
日本に到着してから、早三週間が経った。
環境の変化に戸惑うなんてことも無く、自分の馬房にも完全に慣れた。体調も万全。
日本に来てからのことは、これと言って特筆することはない。
というのは冗談で。
実は特筆するべきことがかなりたくさんある。
まず一つ。
とてつもなく大きな事実が判明した。
───なんと自分、トウカイテイオーの同期だった。
あまりの喜びに狂喜乱舞したのも束の間、そもそも自分は外国産馬なので出られるレースが限られているということを思い出して意気消沈。
自分は、クラシック三冠路線は規定でまず狙えない。
そして、史実通りならばトウカイテイオーは東京優駿の後、約一年間はレースに出走しない。つまり、自分が出られるジャパンカップでも、有馬記念でも戦うことは出来ない。
大阪杯だ。この時代はGⅠではなくGⅡレースだったはずだが、恐らく最初に戦えるのはそこだ。
個人的には、出たい。
せっかく同期になれたのだから、一ファンである自分は当然一緒に走ってみたいという思いを抱いている。
ただ、ウマ娘アニメ二期を視聴してハマった自分としては、トウカイテイオーにはしっかり史実通りの成績を残して欲しいし、自分が勝つわけでもなく、物見遊山感覚で参加したせいでトウカイテイオーが沈んでしまったとしたら悔やむに悔やみ切れない。
そういうところは、少しだけ怖い。行くなら、勝つ気で行きたい。
それが、今を生きる馬への転生馬である自分なりの礼儀だと思うから。
とはいえ、そもそも出られるかどうかもまだまだ分からないが。
そこら辺は、これから先どれだけ頑張れるかにも掛かっている。
そして二つ目。
これも結構大きなことだ。突拍子も無い話である。
どうやら、この世界はウマ娘プリティーダービーに直接的に繋がる世界らしい。
というのも、毎日会いに来る白恵さんが自分によく愚痴やら何やら語りかけてくるのだが、その会話の中にシガーブレードという単語があったのだ。
ちなみに、自分が1988年生まれであることを知ったのもその時である。
閑話休題。
シガーブレード。
その名で、気が付くウマ娘ファンは気が付くだろう。
シャコーグレイドだ。
三冠馬ミスターシービー産駒の一頭で、たしか重賞勝利こそ無いものの、シンボリルドルフ産駒のトウカイテイオーとミスターシービー産駒のシャコーグレイドが同期とか夢があるなぁ、なんて思っていたので特に印象に残っている。
アニメでも一瞬ではあったが何回か出ていた。
そして、利権関係か何かは分からないが、アニメで登場した時の名前がシガーブレードだったのだ。
だから、自分はこの世界はウマ娘プリティーダービーにて言及されている別世界だと判断した。
まあ、だからなんだと言う話ではある。
結局のところ、ウマ娘世界は史実準拠な部分が多々ある。
もし仮にこの世界がその別世界とやらならば、基本的な部分は全て史実の通りに進むだろう。
それに、自分の父親はサガスという実在馬の名前そのままな馬なので、もしかしたらミスターシービー産駒のシガーブレードという名前の馬と自分の知るシャコーグレイドはどちらも存在していて、別世界だなんて言うのは考え過ぎなだけという場合も有り得る。
最後に三つ目。
これに関しては二つ目とも関係がある話だ。
自分の騎手は外国人、フランスで活躍する騎手らしい。
自分の前世知識によれば、確か外国人騎手の日本における短期騎手免許制度は1994年から施行されているはずなのだが、この世界では1990年、来年から施行されるらしいのだ。
だからこそ、そのエドモンとかいう騎手も自分に乗りにフランスからやってくるのだろう。まだ、その騎手には会ったことないが。
この点においても自分の知る史実とは少し違っている。
これも、自分がこの世界を別世界だと判断した理由の一つである。
とまあ、だいたいこれくらいか。
いろいろと考えさせられることはあったが、自分のやることは変わらない。
とにかく走って一端の名馬になり、凱旋門賞であの二人と走るだけである。
「クラスは大人しいと聞いてはいたが、まさかここまでとはね……新しい牧場に慣れてないだけと思ってたんだけど」
『まあ、中身人間だし』
「相槌まで打つなんて……」
ちなみに、寝藁を新しい物に取替えながら、なんか律儀に話し掛けてくれているのは、この牧場を任されている仲村さんだ。
彼は白恵さんの従兄弟らしい。物腰が柔らかいところと鼻の位置が高いところ以外はあまり似てない。
この牧場、新興の牧場らしく、今現在の馬は自分たった一頭のみ。
自分、新興牧場と縁でもあるのだろうか。
「明日から馴致に入るけど、こんなに大人しいんだし手はかからなそうだね」
『向こうで予行演習もしたしな』
馴致に関しては中身が人間であること、前に向こうで一回ハミを噛んだことがあるのもあって心配はしていない。
馴致と聞くと、そろそろ本格的に競走馬になるのだという風に思えてきて、自然と気が引き締まる。
そのうずうずとする気持ちを発散するように、自分は目の前に広がる草原へと駆け出した。
この前の追い運動の時に少しばかり本気で走ったせいか、はたまた馬の本能故か、自分はあれから走るのが好きになったらしく、こっちに来てからは暇さえあれば走っている気がする。
仲村さんにも止められないので、気が付けば朝から夕方くらいまでずっと走っていることもある。
産まれた当初は体感でスピードが出過ぎているように思えてしまい、それがトラウマ気味になっていた為に全力で走れなかったのだが、成長に伴ってそれも払拭されたらしい。
そう言えば、自分は根っからのクラシックディスタンス向きだと思っていたのだが、どうやら、自分には長めの長距離もいけるスタミナがある可能性が出てきた。
短い距離を何本もという走りだが、日が暮れるまで走ってもあまり疲れないのだ。
流石にステイヤーズステークスとかを走れる気はしないけども。
それはともかく。
自分にも何となく馬としての自信が付いてきたような気がするのである。
これまでは、自分はサガスのオッスの出涸らしだったらどうしようとか、母親の血統がボロボロだったらどうしようなんて悪い可能性ばかり考えて、自分が走れる馬であることを祈ってばかりであった。
しかし、こうして馬体が完成してきてある程度走れるようになったら現金なもので、少しずつ走れる実感が湧いてきたのである。
あとは、これが単なる自惚れでないことを祈ろう。
そこまで来て、また祈っていることには自分の心配性の程に苦笑せざるを得なかったが。
「おーい、戻ってこーい! 飯だぞー!」
こうして生まれ故郷を離れ、日本に帰ってきて。
また増えた縁の為にも、父の血に恥じないくらいには頑張れたら良いのだが。
などと分不相応過ぎることを考えながら、自分は芝を駆るスピードを上げた。
腹は減っていないので無視。そもそも、いくら自分が馬離れしているからって、遠くから昼飯に呼ぶ奴があるか。
「葡萄あるぞー!」
『っ!!!!』
甘味ッ!!
アドバイスとかあれば是非。
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よろしくお願いします。
アルセーヌ
1988産
父サガス
父の父リュティエ
父の母セネカ
父の母の父シャパラル
母クラスアリュー(架空馬)
母の父トロイ
母の母エクラ(架空馬)
母の母の父リボー
主な勝ち鞍