勝利を盗む者。 作:レスに咽び泣くリボー推し
時間を見つけて二倍くらいまで加筆しますので、気が向いたらご確認ください。
追記(2021/06/19)
信じられないくらいボケをかましていたので、時系列とか色々と修正しました。寝惚けていたのでしょう。
・白恵
クラスの馬主。
苗字は丹羽。フランスの小説や劇が大好き。
・仲村
牧場長。
ネーミングセンスが日本人。
・穣
天才。レジェンド。
春も過ぎ去り、夏に入って、ジメジメとした暑さが段々と本格化してきた頃。
こっちに来てからも追い運動をしては放牧されてを繰り返していた自分は、この牧場で少し早めに馬装の慣らしを終えた。
中身が人間そのものなので、実際のところは慣らしといってもそんなに時間はかからず、一週間の間に何回かハミや鞍を付け外ししただけであるのだが。
明らかに前世とは身体の作りが根本から違うのに、たったそれだけの回数で案外慣れるものであったことには驚きである。
馴致の工程としては後、人を上に乗せて走ったりとか、そういうのがあるはずだが、それはここではやらないみたいだ。恐らく、ここには乗れる人が居ないんだろう。追い運動の時も毎回違う人が来ているし。
そして今何をしているのかと言えば、馴致の為に育成牧場に送られるのを前にして、とても大事な馬名シンキングタイムである。
「決めました。スタンダールにしましょう」
「分かるよ? 白恵さんの趣味は分かるけど、ちょっと待とうよ。ここは、苗字を取ってタンバガイセンオー辺りが妥当だと思う」
「駄目ですね。インパクトが皆無です」
只今自分の馬房で絶賛ネーミング会議中の白恵さんと仲村さんの二人を見ながら、自分は飛び交う名前の中から必死に良いものを探していた。
せっかく自分の目の前で決めてくれているのだし、良いのがあったら何かしらリアクションして推していこうと思ったのだ。
ただ、今のところめぼしい案は出ていない。
進展と言えば仲村さんのネーミングが微妙であることがわかったくらいだ。
「ここは、ベルジュラックなんてどうでしょうか?」
それに対して白恵さんのネーミングはキレッキレである。
どうやらフランス系の小説家や劇作家、小説、オペラのキャラクターから案を出しているらしい。
なんというか、名前の響き的に一歩間違えたら黒歴史モノだが、美人の提案する物は全て様になっているような気がするのでズルい。
が、今のところ、こちらもピンと来るものは無い。
「ううん……名付けとは難しいものですね」
「僕はタンバガイセンオーとか、タンバムテキなんて強そうで良いと思うんだけどなぁ」
「それは無いですね」
二人してうんうんと思案に耽っている。
個人的には白恵さんの案に期待しているのだが……。
「……エドモン、はエドモンさんと被るから駄目ですし……ピカレスクロマンも暗い」
「ねえ、白恵さん」
「? タンバなんとかには聞く耳持ちませんよ?」
「いや、違うんだって」
本当か? 訝しげな目を向ける。
タンバが付いてなくても変な名前だったら自分は断固拒否する。
「そんなにフランス人関係が良いんだったら、リュパン、又は
「っ! ……良いですね、それは」
『おおっ』
……きっと今、自分と白恵さんの驚愕はシンクロしたことだろう。
まさか、仲村さんからそんな良い案が出てくるとは思わなかった。
インパクトもあって、尚且つ、この時代的には某男の浪漫な怪盗三世もアニメが放映されてかなり人気になっているだろうから覚えも良いに違いない。後、響きが格好良くて個人的に好きだ。
何より、ここまで自分にピッタリな名前も無いと思うのだ。
自分は名馬から、この世界の競馬の歴史から
この名前は、そんな自分におあつらえ向きだろう。
名前負けしないような活躍をしないと、あまりにもダサくて死に切れないが。
ここは、変な名前にされる前にアルセーヌを推すしかあるまい。
『それでお願いします……! タンバガイセンオーはやめてください……!』
自分の名を背負ったウマ娘がガイセンオーって呼ばれるのは、偏見そのものだけどなんかイロモノ枠な感じがして嫌だ。
ヤエノムテキちゃんは可愛いから、大本命は勿論アルセーヌで、せめてタンバムテキにしてください……。
「……なら、アルセーヌにしましょうか。クラスさんもそれが良いって言ってますし」
『良し……ッ! イロモノ枠は免れた』
「なんか、僕の出した案を馬鹿にされた気がするけど」
「気の所為ですよ」
内心ガッツポーズしながら、白恵さんの采配と仲村さんの奇跡的な提案に感謝する。
こうして、晴れて自分はクラスからアルセーヌとなった。
□
その後はこれといった問題もなく。
真夏に入る手前頃には自分は青森(白恵さんの牧場は青森所在らしい)から、宮城の育成牧場に送られた。輸送も慣れたものである。
自分以外の馬はこれまで計五頭しか見た事がなかったので、他の馬、それもたくさんの馬を見れることにわくわくしていたのだが、着いたそこは思いの外閑散としていた。
いや、他にも何頭か居るには居るのだが、どれも自分より大きいのだ。早熟型だろう。
自分はいろいろと早過ぎたらしい。
まあ、今はまだほとんど馬が居ないが、これから自分の同期が沢山入ってくるのだろう。期待。
ちなみに、此処に来て早々に初めて人を乗せたのだが、自分は全然大丈夫であった。僥倖という他ない。
元人間という部分ではなんか変な感じはしないでもないが、馬的にはこれがどうにもしっくりくるのだ。
不思議である。
ゲートも初めて潜ったのだが、それも問題無かった。
狭く、その上、開く時のガチャンといういきなりの音は暫く慣れそうにないけど、ゲートの中でスタートを待つあの感じは癖になりそうで気に入っている。
……問題があったとすれば、ダートを走った時か。
ダート自体は少しだけ適性があったらしい。あの感じだと多分重賞程は走れないだろうけど、それはともかく。
同期と併走したのだが、前を行かれた時に顔に砂がかかり、びっくりして一瞬止まりそうになった。
それを、顔に砂が掛かるのを嫌がったと思われたのか、それ以来、ダートを走る時はメンコを付けられるようになったのである。
白メンコ、なんかパンツ被った変態みたいになるから嫌なんだよなぁ。
走るのは圧倒的に芝の頻度が多いとはいえ、嫌なものは嫌なのだ。
ちょっとだけ、我が馬生にケチが付いたような気持ちである。
□
「彼は?」
「ああ、アルセーヌ号ですか。フランス産で、あのサガスの産駒ですね」
「見た感じ走りそうだけど、どうなの?」
「凄いですよ。馬体の完成も比較的早いし、よく走る。身体は健康そのもの」
「でも、それは彼だけじゃないと思うけど」
「いえいえ、それもそうですがね。なによりも、彼は頭が良い。全く手が掛からない上、飲み込みも早いので、この調子なら騎乗馴致までさっさと終わってしまうんじゃないかって感じですね」
「へえ。そんなに……」
「丸外じゃなけりゃ、自分はこの育成牧場でクラシック三冠を出せるって大喜びしてましたよ」
「ちょっと興味あるな」
「なら、
「……スーパークリークの秋天の後で、予定が空いてたら是非頼むよ」
「分かりました。馬主さんの方にもそう伝えておきます」
「うん、よろしく」
アドバイスとかあれば是非。
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よろしくお願いします。
アルセーヌ
1988産
父サガス
父の父リュティエ
父の母セネカ
父の母の父シャパラル
母クラスアリュー(架空馬)
母の父トロイ
母の母エクラ(架空馬)
母の母の父リボー
主な勝ち鞍