対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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~まえがき~
 サブタイトル『神葬こわれる』
 祝。100話目ですよ……!




Episode86 『男の娘でも頭皮は男の子』

「あぢー……。なーぁ? そんなことよりも、早く学校に行こうぜ? あんまりのんびりと話してると遅刻しちまうよ」

「それには蛇子も賛成かなー? こんなに暑いのに走りたくないよー……」

 

 考察を募らせているところで、項垂れた声を上げる鹿之助くんと蛇子ちゃんから声がかかり私は現実に引き戻される。

 そういえば、私達は鹿之助くんと蛇子ちゃんが私の首元から冷えピタシートをひっぺり剥がした時から、この炎天下の下その場で話し込んでしまっていた。

 こればかりは鹿之助くんと蛇子ちゃんの言う通りだ。そろそろ歩き出さないとまずいだろう。現時刻を確認するために、スマホを点けて——

 

「日葵ちゃん。今、何時だった?」

「…………8時、丁度ですね。ちょっと小走りが必要かもしれません……」

「「えぇ~っ!!!?」」

 

 共鳴する蛇子ちゃんと鹿之助くんの絶叫。

 そりゃそうだ。所詮30℃にも満たないザコ、ザーコ外気温だとしても、こんな真夏に小走りとはいえ走りたくはないだろう。しかし、8時ともなると小走りで登校しなければ間に合わないのは確実だ。

 でも。元はと言えば、私とふうま君が道端で熱中症について語り合い始めてしまったのが原因だ。ここは走る事態になってしまった責任を取って、首裏以外にも貼り付けている分の予備在庫の放出をして熱中症対策を2人に取らせたほうがいいだろう。

 

「すみません。私が熱中症の情報について熱中、紹・介してしまわなければこんなことには……」

「日葵。今うまいこと言ったつもりかもしれないが、その親父ギャグで寒くなるのは心だけだぞ」

 

 真面目な顔をしながら繰り出した私のボケに対する鹿之助くんのツッコミ。恐ろしく速いツッコミ。私でなきゃ見逃しちゃうね。でもおかげさまで私の心はヒートアップよ。悪くないわ。

 それに鹿之助くんには往なされるどころか反撃というオチであったが、蛇子ちゃんには効果がばつぐんだったようだ。

 私の冷凍ビームで、150㎝の身長が149㎝にまで縮んだような気がする。本人は150㎝だと言って149㎝であることを絶対に認めないが、蛇子ちゃんの本来の身長は149㎝しかないのだ。私とは頭3/4分、ふうま君とは頭1つ分の違いがある。

 

「ははは……駄目でしたか。そうだ。控え用でストックを5枚、持ってきているのですが……走る前に皆さんも当てますか? 当てておけば学校に着いたとき、汗びっしょりになりにくくなりますよ」

「本当か!? 申し訳なさそうな顔で親父ギャグを言い出した時には『本当は悪いとも思ってないな?』って疑ったけどよ! 用意周到なところは流石、日葵だよな!! よっ! できる女!」

「え?! 蛇子も貰っていいの!? ありがと~!」

 

 そういって鞄から未開封の冷えピタシートを3枚取り出す。

 私が取り出し配布するような言葉と同時に、鹿之助くんと蛇子ちゃんの目が輝く。

 鹿之助くんに至っては本当に調子がいいんだから。そんな部分も十分に推せる。お調子者の鹿之助くん。

 ……この2人は本当に……なんといえばよいのやら……。はたから見ていて本当に子供っぽくて安心できる。

 一方でふうま君はというと……。

 

「…………」

 

 私がかつて幼女に対して行っていたような、ある種の餌付けをする私と2人の様子を一歩引いた立場で見つめていた。彼は、そこのところがまったく子供っぽくない。

 それどころか——今もこうして2人に構う私の姿を眺めて、私が改めて何者なのか分析しているかのような……。今、私がこうして横目で彼のことを確認したことについても、疑っているような眼差しを————きっと私の考え過ぎだと思うが、そんな気がしてならないのだ。

 

「ほら、これはふうま君の分です。ちゃっちゃと貼ってチャッチャと行きますよ」

「……俺も、貰ってもいいのか……?」

「当たり前じゃないですか。これから小走りで学校に行くんですよ? 現在地から学校までの距離と私達の走る速度を計算したとき、到着時間はギリギリになることに違いありません。ふうま君は蛇子ちゃんと違って水筒なんか持って無さそうですから、きっと朝のホームルームが終わるまで水分補給はできませんよ? 体温調節できなくて熱中症で倒れたいんですか?」

「……すまん……」

「なーに謝ってるですか! さっさと首筋に貼る!」

 

 当然、そんな彼にも押し付けるように冷えピタシートを1枚渡す。

 彼は私の気分を害してしまったと思っている手前、最初こそ受け取りはおっかなびっくりな手付きだった。しかし今度こそ私が口を尖らせて、本当に不機嫌そうな態度を取るとやはり申し訳なさそうな様子で謝りつつ、自身の首筋に冷えピタシートを貼りつける。

 

「ひ、ひまり~~~っ! く、くびに! 髪が邪魔で首裏にうまく貼れないんだが!?」

ふうまちゃん! ちょっと手伝って! ふうまちゃんは蛇子の髪を持ち上げてて! その間にサクッと貼るから!」

 

 ふうま君の準備が整い「よし。走るぞ」となった時。背後から鹿之助くんと蛇子ちゃんの情けない声が聞こえて振り返った。

 現在、蛇子ちゃんは慎重な性格な部分も相まって冷えピタシートのシールを剥がしていなかったが、鹿之助くんの方は既にシールを剥がして難儀したためシートとシートが引っ付きあって、ぐちゃぐちゃになっている。

 2人は私と違って長い髪の毛を結うこともなく、そのままおろしている。

 蛇子ちゃんは、毛先の方で結ってはいるためその気になれば簡単に貼れるのだろうだが、あれはきっとふうま君に貼って貰いたいのだろう。普段は何事もテキパキと片付ける彼女が冷えピタシートごときで手間取るはずはないのだ。実際に彼女は自分で襟足付近の髪の毛を持ち上げて後ずさりで近づいてきている。ふうま君にうなじを見せつけるその素振りから、やりたいこと、やってほしいことの思惑が滲み出ていた。

 一方で鹿之助くんはシンプルに1人ではできないことが分かる。彼は既に髪の毛も張り付き、ぐちゃぐちゃになった冷えピタシートを手に涙目で私に近づいて——アッ!!!!!!!

 

「お、おう!」

(はいはい。(「ええい!!!)そんなに慌てなくても( 本当に鹿之助くんは)大丈夫ですよ。(しょうがないなぁ!!!)十分に間に合いますからね)( 世話が焼けますが、そこが癒しですね!」)

 

 私とふうま君は揃って、難儀している2人の首筋に冷えピタシートを貼り付ける。

 ふうま君側は、ふうま君が蛇子ちゃんの髪の毛を持ち上げている間に蛇子ちゃんは綺麗に首筋にシートを貼り付け。

 私は、焦る鹿之助くんに落ち付かせるような声掛けをしつつ、内心ではそんな彼の世話の焼けるちょっとダメな所に癒しポイント(鹿之ニュウム)を得ては彼に髪の毛を持ち上げて貰い、私がぐちゃぐちゃになったシートを綺麗に伸ばして鹿之助くんの首裏にシートを貼り付けた。

 必然的に、鹿之助くんの髪の匂いと、頭皮の臭いが私の鼻孔の中に——

 

「ア゚ッ————」

 

 ぶちっ☆

 

 あああああっ!!! 鹿之助くん! 鹿之助くん! 鹿之助くん! 鹿之助くぅぅうううわぁああああああああああん!!!

 あぁああああ……ああ……あっあっー! あぁああああああ!!!鹿之助くん、鹿之助くん、鹿之助くぅううんぁ!!!

 あぁクンカクンカ!スーハースーハー!クンカクンカ!スーハースーハー!いい匂いだなぁ……くんくんッ!!!!!

 

 急速に私の体内へ鹿之ニュウムが蓄積されて行く! アセトシカアノニンが放出される! シカアルロンSONで満たされてイく!!! これは合法だ! 私は抱き着かずとも、合法的に鼻孔を経由することで彼を抱きしめられることができている!!! ほっそりとした身体を後ろからギュッと抱きしめることはできてはいないが、鼻孔の中は彼の匂いでいっぱいだ。これは彼の髪に私の鼻孔を埋めていることも大いに関係がある!関係があるぅぅううううう!!!あぁ!最高だ!最高だぁ!!!ウヒャッハァ!!!彼の匂いは、女の子ちっくな市販の石鹸の匂いとちょっと汗っぽい酸っぱい臭いが混じっている!!! 最高だァッ!

 

 んにゃはぁっ!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ……きゅんきゅんきゅいッ! これは現実か? 現実だぁああああああ!!!いやっほぉぉぉぉぉおおおおおおう!!!にゃああああああああん!

 

 何よりもしんはっけん(・・・・・・)!!!すごいのは、鹿之助くんは改めて生物学的には“男”なのだと再認識できたことだぁっ!!!!今、彼の首筋、首裏の襟足から漂っている加齢臭……もとい男の娘臭は、確実に男の頭皮のにおい(・・・)だ!!!わかるか!?青空 日葵ィ!!!!これはおとこのにおいだ!!!ウィッヒヒヒヒーッ!!!これは決してどうせいのおんなの要素からは得られないきちょう(・・・・)えいようそ(・・・・・)だッッッ!!!!経鼻上栄養だ!わたし(釘貫 神葬)にはわかる!!!前世で男しか抱いたことはないが、わかる!わかるぞ!とうひ(・・・)がおとこのにおい!おとこのにおい!おとこのにおいぃぃいいいいぃいいいい!!!!

 ヒャハ、ヒャハッ!!! ヒャハハハハハハハァーッ!!!!!

 

「はぁ…………っ。はぁ…………っ。はぁ…………っ」

「あ、あれ? な、なぁ。日葵? さっきからなんだか、めっちゃ息が掛かってんだけど……」

「……おっと、冷えピタシートを貼る際に空気が入ってしまったので、空気抜きをしていたのですが、熱中してしまいました。ゴクッ……さぁ、遅刻するわけには行きません。走りますよ」

 

 うぁああああああああああ!!いやだぁぁぁぁぁああああああ!!!そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!鹿之助くんのうなじぃぃぃいいい!!もっとみてたいいいいいい!!!!なめまわしたぃぃいいいぃいいいい!!!!ウゲゲゲゲゲゲゲゲヒッ!!!ギヒッ!!!ギヒヒヒヒヒッ!!!グフフフフフ!!!

 

「今、生唾を飲まなかったか? それにさっき世話が焼けるけどそこが癒しって——」

「あー!あー!待ってそれは言ってない!言ってないはず!それは言ってないはずだと思うんですけど?!?!!なんで知ってるの?! そんなことよりも走りますよ! ほら早く!!!」

 

 心の中で思っていた言葉が、どういう原理か鹿之助くんに伝わっており僅かばかりの動揺が出てしまったが問題ない。忙しない動きで鹿之助くんに自分のスマホをみせて時間を確認させてから、走る様にプリプリのプリケツではなく……背中を押し出す。

 ううっうぅうう!!

 私の想いが鹿之助くんに届いた!!

 どういうわけか五車町の鹿之助くんに届いた!!!

 うー☆!うー☆!

 

 今日こそ何事も起こらない楽しい日常になりそうだ。

 

 




~あとがき~
 本小説は4000文字といつもより短めで、オリ主が暴走した描写が多いですがその部分も差し引いても3000文字は普通の文書なので、最低投降文字数稼ぎはしておりません。

 でも今回はゴリ押しします。

 そして実は貴重な出来事が発生しています。
 現実世界では2022/07/02、本小説の対魔忍世界でも2078/07/02頃……なんと時期の時間軸が一致しております。なんか対魔忍世界側の方がすっごい遅れて(現実世界1年と1ヶ月経過。対魔忍世界2ヶ月の経過)このままでは現実世界が対魔忍世界にいずれ追いついてしまうような気がしますが、貴重な時期の時間軸が一致している貴重なシーズンとなっております!
 100話目にして、この奇跡。存分に堪能してください。

 100話記念の企画小説は2022/07/05の18時18分を予定しています!
 蓮魔先生の報告書β(約3日おき投稿ペース)と同じ扱いになりますね。


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