対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。 作:槍刀拳
7月初日の登校。
微妙に私に対する様子がおかしいふうま君と、ふうま君に冷えピタを首に貼って貰えて嬉しそうな蛇子ちゃんと別れ、私と鹿之助くんはいつもの教室にて
そんな朝のルーティーンが終わったあと。
私は周囲を見渡し、洋館事件によって入院していた前後のクラスに対する違和感に気が付く。
「?」
「どうしたんだ? 日葵。そんなに周囲をキョロキョロ見渡して」
「……鹿之助くん、この教室ってこんなに広かったでしたっけ?」
「え?」
既にクラスメイト達は朝のホームルーム後では自席を立ち友人と戯れるもの。次の授業の準備をするもの。私の周囲を見渡す行為に不安でも覚えたのか私の行動をじっと見つめるもの……。おおよそ、その3種類に分かれておのおの分散、展開していた。
そこへ私の言動に反応した鹿之助くんが、私の傍らまで近づいてきては同じように辺りをキョロキョロと見回す。
でも彼には私の疑問について理解に至らなかったようで、数度周囲を見渡したあとにキョトンと言った様子で首を傾げながら私の顔を見上げていた。
「別に、俺は教室が広がったような気はしないけど……」
「そうですか? でも……。……ひ、ふ、み……やっぱりおかしいです。机の数を数えても、私が五車学園に来た時と比べて3人も少ないように感じます」
「それは——……あ、お、おい! ひ、日葵?!」
指をさしながら机の数を数えてみるが、やはり数が合わない。
数が足りないような違和感の真相を探るためにも生徒の名前が一覧化された名簿表を見るため、教卓へと走り出す私へ鹿之助くんが引き止める声が聞こえてくる。
普段であればその魔性の声色に耳を傾けてしまい、立ち止まってしまうところだったが、今日という今日は登校中に鹿之ニュウム、アセトシカアノニン、シカアルロンSONを午前中分、十分に摂取していたことで彼の〈魅惑〉的な声に惑わされることなく目的の場所までたどり着くことができた。
私がいつもの様に、ただ荒ぶっているだけかと思ったか? すべて計算込みの行動よ。(震え声)
さて、私のまぐれによる過剰摂取できた
教卓には電子パネルが備え付けられていて、普段であれば4桁の数字を入力しなければ引き出しは開かないような構造になっている。
いくら国立の小中高一貫の学校……もとい学園であっても、備え付けられている設備は時折過剰だと言えるほどの厳重な金庫に似たものだった。
しかしこちらとて約2カ月間、ただ学園生活を送っていたわけではない。私は五車学園に入院期間を差し引いても1カ月も在学している。ゆえに、この4桁の暗証番号がどんな数列なのか、予め入手していた番号から割り出し〈鍵開け〉することぐらい、赤子の手をひねるよりも簡単な作業だった。
ピッピッピッピッ……ピピピッ
「ステンバーイ……」
ピッピッピッピッ……ピピピッ
「ステンバーイ……」
ピッピッピッピッ……カチャッ
「ンッ。ビューティフォー」
…………幸いにも3回の施行で開錠された。
こういう引き出しは、〈物理学〉なり工具を用いて〈機械修理〉による破壊を試みての抉じ開ける方が、私の技術として十八番なのだが……。手元に分解に適した工具が揃って、破壊工具3種の神器である大きな棍棒『エスカリバール』が無かったこと。後で痕跡を残さないように元に戻すことを考慮した結果〈鍵開け〉で丁寧に開けることにしたのだ。
引き出しの中には金属製のフレームで覆われ、濃い水色のプラスチックのような素材で本の縁が鋼鉄の金属で覆われた本が1冊入っていた。表紙には五車学園のスクールエンブレムが描かれており、それは7角形の盾のような形で中央に縦書きで五車の文字。その下のリボンには【
いつも授業にやってくる教師陣はこの本の表紙に手をかざして、まるでマジシャンが超能力で本を捲るかのように手を触れずに開いている。大方、掌の指紋認証か何かで開くように設定されているのだろう。ゆえに私が本に掌をかざしても、その指紋では開くことはないことは承知済みだ。
——ならば開ける方法は1つだった。
同じく教卓の引き出し内に入っている工具箱からドライバーを取り出して、私の行動を眺めているクラスメイトに私が何をしているのか即座には察知されないように教卓の裏に隠れながらこの機械的な本の蝶番部分を〈機械修理〉で破壊しようと試みる。
こちらは丁寧に開けずとも『あとでまた壊れた部分を〈機械修理〉をすればよい』と判断したためだった。それに規定時間内に直せなくても持ち去って、最初から “無かった” ことにもできる。
だが、私が完全に分解するよりも早く、私の手で完全に解体される前に本の方が根を上げたようだ。プシュッという眼科受診時に目に吹きかけられる風のような音が響かせたあと、表紙に『UNLOCKED』との文字列が表示されて本が自発的に開いてみせる。
「……よし」
一見すると、この重厚な出席者名簿表の水色のページは、プラスチック板のように固そうなのだが……。その手触りは私がかつて生きていた時代、2020s頃の小説の用紙と同じ材質にも似た柔軟さとシルクのような……選挙に用いられる投票用紙のような高級感溢れるツルツルとした手触りだった。
中には基本的にこのクラスメイトの個人情報が記載されている。しかし、今回の目当てはそれではない。一気に最後のページまで飛び、出席者一覧表を探す。
5月、6月分の出席者名簿表はすでに差し替えられて見つからなかったが、7月分の出席者名簿が見つかった。さっそくそのページを用いてクラスメイトの数を勘定し始める。
「えっ日葵!? あれ!? 教卓には鍵がついて……え!? えっ?!」
当然の反応かもしれないが、一歩遅れる形で私の元に走り寄ってきた鹿之助くんは目を丸くさせている。
彼の知り得る情報では、少なくともこの教卓には鍵が着けられていていて、誰でも教卓の中身をみることができないのは知っているからだろう。今の彼の心境を〈心理学〉で探らずとも『え、なんで日葵そんなことできるの?』と言いたそうな、目をまんまるにして口はマインクラフトに登場するクリーパーのようなあわあわとした口から溢れ出る感情が一目瞭然だった。
「鹿之助くん。パスコードの文字数は4桁ですよ? 先生達が普段私達に見せている手の動きに〈目星〉をつけて、そこからおおよその『該当する数字』と『異なる4桁の数字』を用いることは最低限割り出せます。あとはその4つの数字を確率の計算式【4×3×2×1=4!】に当てはめれば、おのずと答えがみえてくるじゃないですか。そんなに驚くようなことではないでしょう?」
「いや、そんな『簡単でしょ?』って感じで説明されても……。えぇ…………?」
「…………」
「な、なぁ。でも、そ、その人が減ったと思うのは気のせいじゃないか? 久々に学校に来たからそう思うだけであってさ、そんなことよりも先生の使う名簿表を勝手に開くのはまずいって。
「…………」
教卓に走り寄っては開錠し、問答無用で個人情報が掲載された名簿表を躊躇なく開く私へ鹿之助くんはその行動を注意してくる。
しかし私にはあの時に感じた違和感とこの一段上に存在する教卓から見える景色から、その私の感じたことが『久方ぶりに学校へ来たから』という12文字で済まされてしまうような簡単で単純な問題ではないように思えた。
だからこそ鹿之助くんの発言を無視する形にはなってしまうが、彼の〈魅惑〉を振り切り。出席者表に人差し指を当てての〈経理〉情報で不正な資金のやり取りがなかったか細かく確認するようにクラスメイト達の名前をつぶさに確認していく。
「だから、な? なっ? もうその名簿を閉じて1時間目の授業の準備をしようぜ! えっと、次の授業は——」
鹿之助くんも、私が普段の様子とは異なることに気が付いたのかもしれない。
一心不乱に出席者名簿に食らいつく私の対面でしゃがみ込んできた。彼は男……男の娘だが、対比の関係を位置どるかのように男の子らしく細かいことは気にしてない……いいや。あえて気づかない様子で振る舞っているようにみえる。
これは鹿之助くんの普段の素行の話にはなるのだが……。
普段のこのような状況。これがふうま君とつるむような状況であれば、こういう悪だくみにはどちらかと言えば積極的な様子を見せるのに……。
彼は明らかに話題を逸らしながら明るく振る舞い、正面から開いていた出席者名簿表に手を掛けて強制的に閉じさせてくるのだった。
だが——
~あとがき~
対魔忍の五車学園らしいお話を挟んでみました!
作者の想像にしか過ぎませんが、対魔忍RPGを遊んでいて確実に “今、おきていること” として五車学園あるあるなお話の内容だと思います。
初夏なのでね。
軽いジャブ程度の怖い話をしましょうか!(ガチホラーも予定)
・説明しよう!
釘貫 神葬における破壊工具の3種の神器とは!
大きな棍棒『エクスカリバール』
死体遺棄併用『1920性能 チェーンソー』
遠近両用解体武器『改造した釘打ち機』
おおよそこれらが該当するぞ!(全部の武器を満足に振り回せるとは言っていない)