対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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~まえがき~
 最近、滅茶苦茶びっくりしたこと。カオスアリーナの主:スネークレディ(えっちなお店で働いている蛇子ちゃん)って玉無いの!?
 でも回想での苦悶の表情があったので、身体構造上かつプロットには影響が及びませんでした。ありがとう対魔忍RPGX、ありがとう信頼度MAXの回想。

 まさか対魔忍側からプロットを破壊しに来るとは思わなんだ。




Episode93+Tips 『逆襲劇』+『□血液検査の結果』

「そのメスブタの言う通り、お前は用済みだ! 帰れ帰れ!!このセンズリ坊主!お前が居ても単純に邪魔なだけだ!」

「桐生先生もああ言っていることですし、ここに残った方がきっと酷いことを言われ続けると思います。だから鹿之助くんと一緒に美味しいものでも食べてパァーッとストレス発散しましょ♪ あとから私も “絶対に” 行きますので……」

「……だ、だが——」

「ね?」

「じ、じゃぁ……俺はこれで……」

 

 桐生先生の後押しもあってか、ふうま君はすごすごと部屋を後にする。部屋から出るための上り階段までの間に、何度も振り返っては私を心配そうな顔で見ていた。

 だから大丈夫だって。鹿之助くんが待ってくれている以上、変なことはしませんよー。君も知っている通り。私、鹿之助くんが居れば悪さをしないことに定評のある女なので。

 

「ええい!くどいぞ!チンカス小童!貴様には俺様直々の引導を渡してやろうか!」

 

 桐生先生の怒声にふうま君は逃げるように階段を昇って行った。それを私は優しい笑顔で手を振りながら見送る。

 さて——邪魔者は消えた——。ここからは私の時間だ。

 

「それで、桐生先生。私に会いたい・用があるという事でしたが、私は何をすればよろしいのでしょうか?」

 

 ふうま君に向けていた笑顔のまま、ゆっくりと今度は桐生先生側に振り返る。少しばかり口が開いて白い歯が見えるかわいい笑顔でだ。

 

「……ハァッ。ああ、青空くん。実は君の身体に興味があってね。詳しい検査をしてみたいと思ったんだ。詳しい検査と言ってもちょっとした血液検査だ。さあその椅子に座りなさい」

 

 先ほどまでの荒々しく礼儀知らずで無礼講な態度は何処へやら、彼は雑多な道具が並べられている機材をガチャガチャガサガサと音を立てながら何かを探し、私には一瞥もせずに診察台を指さして私に座る様に指示をしてくる。

 診察台は歯医者で用いられるような腕掛けリクライニング機能付きの椅子のような外見をしていた。歯医者で用いられる診察台と異なる点をあげるならば、その足元の部分が分娩台のようになっていることと、この診察台で様々な “実験” でもしたのか血がこびりついたままだった。

 

「んー。……いい趣味の椅子」

「軽口を叩いている暇があるならば、サッサと座れ!この豚足メスブタ!俺様は貴様のように暇人じゃないんだ!!!」

「はい。はい、はい、はい、はいはいはい」

 

 短気な奴に怒鳴り散らされながらも、流すように私もすました顔で軽口を叩きながら指定された椅子に座る。

 

「ッ!?」

 

 座った瞬間。椅子が変形し、自動的に金属製の手枷、足枷、首枷がはめられて行く。

 機械的な拘束の仕方に皮膚の薄皮を挟むのではないかとヒヤヒヤしたが〈幸運〉にも肉が挟まれて痛い思いをすることはなかった。それでも一度、左手に新体操のリボンのように所持していた髪留めリボンが肉の代わりに機械の隙間に挟まって拘束が解除されるというハプニングはあったが、こちらが全自動全身拘束器具のしなやかな動きに衝撃を受けてわれを失っている(スタンしている)間に確実に再拘束されてしまった。

 この拘束によって両足首、両大腿、腹部、首、両肩、両腕の計10カ所が固定され、逃げようとする試みは困難を極めることは想像に難くない。しかも、この拘束椅子……私が逃げようという素振りを見せると血圧計のように拘束部位の内側が膨らんで身体の自由が余計に奪われ……っ!

 

ガシャッ

 

 抵抗も逃走も無駄と悟り、近未来の世界ではこんな便利な拘束具があるのかと技術の発展に関心もしながらその時を待つ。

 完全に拘束され冷めたジト目で待機する私に、桐生先生は様々な機材が詰め込まれたままの箱を鉄製の回診用カートの上に置き、自分はフカフカのソファーのような椅子に座り私と対面する。

 それから奴は私が逃げると思っているのだろう。なにやらカタカタとキーボードを弄っている。弄ったその時から、拘束具の固定具合が一層強くなる。

 

「おや?おやおやおや?……んぐっ。採血ごときで先生は私が逃げ出すとでも思っているのですか?」

「当たり前だ!あのふうまの小僧も尻尾を巻いて逃げ出したのだからな。貴重な実験体を今度は逃がさん」

「はいはい、ワロスワロ——……ス?」

 

 鼻で嗤い、少し小ばかにするような態度を取る私だったが、桐生先生にはまったく効いていない。

 ではこのタイプに一矢報いて、一泡蒸かしてやることのできる逆襲方法を模索していると、奴は機材箱から不衛生でぶっとい注射器を一本取り出した。

 

「…………。えぇ……?」

「フハハハハハッ! 流石にこれを見ても、そのつかみどころの無さそうなヘラヘラとした笑みを浮かべることなど出来なくなっただろう! あまり大人を舐めるなよ! このメスブタァ!!!」

 

 完全に身動きが取れない女子校生目前に、小物臭は拭いきれない桐生が勝ち誇ったような笑い声が聞こえてくるが、私は奴の取り出した注射器に注目しておりそれどころではなかった。

 両手に持ったそれは明らかに人間用のサイズではない。それは注射器と呼ぶには大きすぎて、むしろ浣腸器と呼んだ方が正しいだろう。針の太さも異常で、採血針の太さも普段献血で用いられている針より1周り程、太い。それ、私の腕の血管より太くない? え?

 そして私が目を丸くする要因になったことそれは……。

 

「え? 桐生先生、それで採血するんですか? なんか、メモリに1ℓ(1000ml)ってある様に見えるんですけど……?」

「ああそうだ! これからこの注射器で貴様の血を一滴残らず抜いてやる! 二度と俺様の前でヘラヘラ笑えなくしてやる!」

「ははは……ちょっと冗談きついっすよ」

 

 『冗談じゃないぞ、本気だぞ』と言いたげに、桐生先生の手の中にある浣腸器と針がギラリと光に反射する。

 五車学園の丈が短い紺色のスカートが桐生の手で強制的に捲し上げられる。露わになる私のショーツとプルンとして若々しくしっとりとした大腿部。

 おかげさまで引きつったかのような乾いた笑いが意に反して勝手に出ていくが、正直笑い事じゃなかった。

 人間は基本的に全血液量の約20%以上が短時間で消失すると出血性ショックに陥るとされている。30%も失えばそれは生命の危機に瀕する量だ。

 青空 日葵の現在の体重は約68㎏。血液の基本的な計算式として体重1㎏あたり70mlと仮定した時、体内血液量は4,760mlだ。その20%、30%ともなれば952ml、1428mlとなる。つまり、アレ一本分(1000ml)の血を抜かれた日には私はふつーに出血性ショックを引き起こす。

 ま、ままま、まままぁ? 『新クトゥルフ神話TRPG』や『CALL of CTHULHU クトゥルフ神話TRPG』における失血の定理はSTR(Strength)に一存、す、するし??? 『新クトゥルフ神話TRPG』ならば35頁“それぞれの値が意味すること”、『CALL of CTHULHU クトゥルフ神話TRPG』ならば42頁“STR(strength、筋力)”にSTRがゼロになってもベッドから起き上がれない状態にあるほど衰弱している程度で死ぬわけじゃないし??? あ、青空 日葵の身体だけど? い、今は釘貫 神葬ですし??? う、うふふ。 べべべべべべつに未知の駆け引きなんか、こわくなんかないですけどっ?

 

「か、勘弁してくださいよ。私の体重は約68㎏、952mlの血を消失すると間違いなく出血性ショックを引き起こします。せめてもう2周りぐらい小さな注射器はないんですか? あとシンプルに滅菌されてもいない使い回しの注射器を人にぶっ刺すのは止めろ。魔界医療を専攻した医者が基礎を無視するんじゃありません」

「ほぅ……? 貴様。躾のなっていないメスブタのわりに多少なりとも〈医学〉知識を持ち合わせているようだな……」

「……前に本で読んだだけです。それは……。それは、そうとしてその注射器を使うのは止めましょう。ほら早くそれをしまう!」

 

 少しは見直したとでも言いたげな桐生をあしらいながら、拘束されていない指先をヒラヒラと羽虫でも追い払うかのようにそっぽを向いて動かしてしまうように促す。

 しかし、私はこの桐生という男に常識というものが通じないことが欠如していた。

 

 ドスッ!!!

 

「痛ッ!? お前マジかよ!?」

 

 コイツゥ! 容赦なく大腿部の鼠径部付近の血管に採血針を突き刺しやがった!

 もうどこから突っ込んでいいか分からない。ひとまず、半分回っていない頭でコイツのしでかしたことを上げると、不衛生な注射器で採血をしている。使い回しの注射器で採血を始めた。採血する患部をアルコール消毒で吹き取っていない。刺した瞬間に片足が凄まじくしびれて、そのしびれが続いている……つまり〈医学〉的分野で、これは神経損傷をしている可能性があるということだ!

 おま、お前えぇぇえぇぇぇええええッッッ!!!!

 

「案ずるなメスブタ! 下等なお前が何を心配しているかは分からんが、万が一何があっても俺様の魔界医療で治せばすべて解決だーァッ!!!」

「治せば解決って話じゃないでしょうがぁ?! 医療従事者の思考回路が眞田 焔レベル(結果論)ってそれ一番ダメなやつでしょうが!!! がん細胞の摘出手術で完璧にがん組織を摘出できても、患者が死んでいたら意味ないんですよ!!?!」

「ゴチャゴチャとうるさいぞ! その喩えは魔界医療的には大成功だ! 過程の段階で死に絶えたとしても、クローン技術を用いて生き返らせればよいだけの話! そして俺様は貴様の血が抜ければそれでよいのだ!!!」

「テメェが良くても私はよくねぇんだよ! 魔界医療で治るとしても、やっていいこととやっちゃいけないことの分別ぐらいつけましょうよ! 医療従事者でしょ!?!?」

「うるさい!うるさい!!!黙って採血させろ!!!!」

「せめて200! せめて400ml程度にして! じゃないと騒ぐぞ! 暴れるぞ! この世の恐怖を感度3000倍にして宇宙的神話による恐怖をテメェに刻み込むぞ!!! オラッ! 正気度ロール感度3000倍!!!

 

………

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

………

 

「…………サイアク。……マジサイテー」

「モゴモゴとうるさいぞ、凡畜。今回の採血で身体に異常が出たならまた俺様のところに来て治せばいい話だろう」

「マジで、その眞田先輩論やめてくれます? 感染症によっては10年、20年後に発症する潜伏期間の長い病気もあることを御存じでしょうか? その頃には私、五車学園卒業しちゃって立派な社会人12年目なんですけど」

「だから?」

「だから?じゃないが。お前、あんまふざけたこと言ってっと、ホントにお星様にしますよ? ……ゴホン。……だいたい桐生先生はまた会いに来たいと思えるような人じゃないんですよ。もしかして自分が熱血漢で人格者だとでも思ってますか?」

「凡畜に問われずとも、俺様は完璧な人間な事は充分に承知している」

「ほざけ、この人格破綻者

 

 採血開始から、約10分。

 最終的に私の血液は700mlも抜かれてしまった。ただでさえ、女子あるあるな生理現象で貧血気味だというのに更に血液を700mlも抜かれてしまった。

 しかも、消毒も満足にされていないような不衛生な注射器と注射針で、だ。

 もうこれは幻滅ってレベルじゃねーぞ。私はこんな奴に今まで横隔膜やら左足やら熱傷を治してもらっていたのかと考えるとぞっとする。これ、治癒力の高めな私ならいいけど、他の五車学園の生徒だったら、ワンチャン医療ミスからの事故死の可能性しかないんだが??? 不祥事、やらかし、現場猫案件なのだが???

 あの私を監禁することで定評のある室井先生が、無害なお医者さんに見えるんだが? まだアルバート・シャイニー医師/Mr.Sの方がマシだぞ。

 

「さあお前も用済みだ!帰れ帰れ!」

「言われなくとも帰りますよ……室井先生以下のクソ医者」

 

 シッシッと羽虫でも追い払うような手首を動かす桐生を死んだ目で眺めながら部屋を後にしようとする。

 携帯には通知が6通入っており、いずれもふうま君からのメールで約1分30秒おきに送信されたようだった。

 すべてのメッセージには必ず写真が添付されていて、基本的に添付された写真には1箱あたり50,000円する差し入れのお菓子の1つを鹿之助くんが両手で持って小さなお口で美味しそうに食べている写真だった。

 あぁ^~、生き返るわぁ~。流石ふうま君、めっちゃ分かってる。

 この画像の鹿之助くん、きゃわわ(*´ω`*)

 特にね。この小さなお口でハムッと食べていながら、突然写真を撮られたのか視線だけがカメラに向いている写真なんかは構図が最高過ぎるのですよ。彼は机に腰を掛けて足をブラブラさせていて、彼の背後の窓から差し込む夕日と影が教室内を照らしている光景なんか……もう、なんていうか、最高。もう、ぱっと見で女の子にしか見えないよね。私は別に女の子が好きな訳じゃないし、Normal Loveだから男の子の方が好きなんだけど、これはね。もうね。ギャップ萌えってやつ? アークシステムワークスの対戦格闘ゲーム『ギルティギア』に登場するブリジットくんちゃんみたいな? 私に敏感棒が備わっていれば、きっと今頃股間がイライラしていたはずだ。それにこれはもう一種の芸術品だよね。この写真を印刷して絵画として自宅に飾りたいぐらいに完璧で幸福な写真なのですよ。

 見る麻薬、こちらはアヘアヘン、エクスタシー、鹿之助くんのマジックマッシュルームをペロイン。嗚呼、ガンジャ、ガンジャ。素晴らしき、大麻忍世界。ゾーンに入る。

 ひとまず、そんなかわいい鹿之助くんの写真(差分6種)を各種6枚分スマホに写真とiCold保存し、鹿之助くんに採血が終わったのでほっこりとした顔で今から戻る趣旨を伝える。

 

「…………そうだ。最後に2つばかり。桐生先生、先月と先々月。私の脚と横隔膜、それと熱傷を治して頂きありがとうございました」

 

 階段を上る手前で振り返って告げる。本当はこんな医者に傷の手当をしてもらったことに遺憾の意しか覚えないが、それでも最低限。私は人として礼を告げる。

 桐生は私の700mlもの血を冷蔵庫で保管するなり、さっそくよく分からない機材や遠心分離器に詰め込んで、興味など無さそうにしていたがそれでも何か気になることがあるのか私に向き直る。

 

「…………熱傷は覚えがあるが……横隔膜? なんのことだ?」

「2カ月前の、5月末のヤツですよ。この傷のことです。桐生先生が治してくれたんでしょ?」

「俺はそんな傷、治した覚えはないぞ」

「……は?」

「そもそもこの失敗のしない俺様が魔界医療で治したとしたら、採血中にボタンの隙間から見えていた胸元の傷は残ってはいない。だが横隔膜が破られ、胸にそんな大きな傷跡が残るような傷ならば現代の医学では治療は難しいところだろう。しかし、今貴様が生きているという事は、その傷は貴様の治癒力で治した証だな」

 

 桐生の指摘に思わず、私は唇をすぼめた。

 つまり、なんだ。この傷は……私の説明書に存在する『CALL of CTHULHU クトゥルフ神話TRPG』の64頁“治癒”に関する技法と『新クトゥルフ神話TRPG(117頁)“通常のダメージの回復”によって治癒しただけとなってしまう。

 いや、だがしかし。室井先生はあの時((Episode29))に『いくら桐生先生の魔界医療で治癒されて、人の顔面に飛び蹴りを入れられるからと言っても』と言っていたはずだ。でも当の本人はそんな傷を手当していないという。

 これがただ単に情報伝達のミスで……いやでも……その傷は現代の医学でも治療は難しいと言っている。じゃあ……?

 

「なんだ、随分と顔色が悪いな? これを期に少し瘦せたらどうだ? 贅肉まみれの凡畜風情が」

「……それは桐生先生が失血性ショックを引き起こしかねないギリギリの700ml採血したからですよ。ですが、なるほど、なるほど。残りの可能性として五車病院に入院する前に他の病院に搬送されたらしいですし、そこで魔界医療を受けた訳ですね! いやぁ、それはそれで安心できるなぁ!」

「いや、それは考えられないな。まさに浅はかな凡婦らしい猿人類的思考だが、今の俺様は貴様を不快な思いにさせられて気分が良い! だから教えてやろう、この人間界で魔界医療を施せるのは俺と、俺の姉と、師匠——」

「あー! じゃあ、きっとその病院にその人たちが居たわけですね! はい解決! 謎はすべて解けました!」

 

 墓穴を掘った発言を覆い隠すようにして、男の議論らしい大声での桐生の発言を押しつぶす。

 そうだ。きっとそうに違いない。室井先生が桐生先生の魔界医療と言っていたが、室井先生としては既に魔界医療で処置がされていることに気が付いて、それがきっと桐生先生が処置したものだと思ったんだ! だから、この話はこれでおしまい!

 私の横隔膜は、私の説明書の『CALL of CTHULHU クトゥルフ神話TRPG』の64頁“治癒”と『新クトゥルフ神話TRPG(117頁)“通常のダメージの回復”の技法も1枚噛んでいるが、それらが完治に導いたわけではない! きっとそうだ!

 ……頼むから、そうであってくれ。もしも、この治癒能力が対魔忍に発覚しようものなら私の未来は真っ暗なんだ……。このまま、五車学園で一般人として普通の生活させてくれ……。

 

「じゃあ最後にもう一つ! 先生って、きっと魔界医療の医師としての腕はいいのでしょうね!」

「……お前のようなマンカスまみれのキッズに言われなくとも、魔科医師としてそうだが?」

 

 内心ではすがりつくような思いで祈りながらも、散々人の身体を弄び、愚弄した正面の傲慢野郎に一矢報いるための話題を振る。

 反応としては私の言葉に相変わらずの人を小馬鹿にしたような笑い方で、こちらの神経を逆なでしてくるものだがこんなことで本命を見失ってはならない。幸いにも700mlも血液を抜かれている分、冷静さは保つことができている。

 10分間の間。拘束具から逃れようと決死の抵抗も虚しくただただ淡々と大腿部から血を抜かれながらも、一発逆転してやるために頭の中で構築していたこの男を不快にさせることのできる作戦を展開していく。

 

「でも見る目はないようですね」

「…………なに?」

「あの“お菓子”。何も気が付きませんでしたか?」

「俺は忙しいんだ。さっさと結論を言え」

「気が付きませんか……それは残念です」

「…………」

 

 奴は一見、興味無さそうな態度で振る舞ってはいる。しかし私の勿体ぶった言葉には、何か引っ掛かりを覚えたようで一通りの魔界医療治療可能性説を否定した後も、階段前にいる私のことを視界にとらえたままであった。

 

「どうやら桐生先生は紫先生に()()()()のようですが……。あの菓子折りは紫先生が『アイツに会う? アイツは癖があるからな。お前が門前払いされないようにアイツが喜ぶ菓子折りを教えてやる』と言って選んでくれた菓子折りだったんですよねぇ」

 

 だからこそ、ここまでの奴の言動や行動から奴に最もダメージを与えられる内容を『MMRマガジンミステリー調査班』の主人公キバヤシのような手の動きで盛大に披露してやる。

 

「なっ?! なんだと……っ!?」

 

 効果は、ごらんの有様。

 見る見るうちに悔しがる露骨な表情と震える桐生。

 

「あーぁ。紫先生に報告しておきますね。『桐生先生は“紫先生が選んでくれた”菓子折りに、これ以上に無いくらいのケチをつけてました』って。あ。そうだ。今、ふうま君からメールが来たんですけど。菓子折り美味しかったそうです。あー、そっか、そっかー。私が報告なんかしなくても、ふうま君達がその菓子折りを食べて居るのを見たら? ふうま君が事情を説明したら? 紫先生からとってしてみれば何があったのか()()()()。箱の角は潰れちゃってましたし、紫先生はどう思うだろうなぁー?」

 

 私は片手を顎に当ててもう片手で銃の形を作って指を振りながら、古畑任三郎が自身の推理を披露するかのようにグルグルと桐生の研究所を歩き回る。

 

「き、きさっ、きさま……そっ、そういうことなら、さ、先に……っ」

 

 素っ頓狂で天然っぽい声の〈言いくるめ〉話術に、奴は見事に乗せられている。

 やはり『紫先生』は奴にとってキーワードであることに違いはない。

 

「ギヒヒヒヒヒッ!『後悔、先に立たず』ですよ。じゃ、おつかれっしたー。反省会はお一人で、ね? き りゅ う セ ン セ イ?」

 

 そんな奴を一人研究室に残し、探偵コナンに登場する黒い人のようなギラギラ、ニタニタと笑いながら部屋を後にする。

 出入り口の扉が完全に閉まってから10秒後。〈聞き耳〉を立てたところ奴の非常に悔しそうな絶叫が響き渡った。

 

「クスクスクス……」

 

 紫先生の推奨の品なんて嘘だよバーカ。勝手に悔んでろ。

 

 




~桐生佐馬斗の報告書~
『□血液検査の結果』
 青空 日葵について。
 あの小賢しいクソガキクソアマは紛れもなく人間であり、ごく普通の一般人だ。
 ヤツは遺伝子学上、魔族関連の遺伝子を “一切” 持ち合わせてはいない。
 報告書は以上だ。

~あとがき~
 二次創作で分かった事なのですが、対魔忍ってけっこう報告書を書けない感じなのですか? それとも単純に脳筋、頭対魔忍的な意味でのそういうキャラ付け?
 ひとまず、そんな適当な報告書を書き上げてみました。
 ちなみに原作の桐生佐馬斗先生も、こんな感じで超適当です。魔科医としての腕は立ちますが、報告も含めてキャラ的には大体こんな感じでした。罵詈雑言も対魔忍RPG原作に近づけています。

 コミケ終わりました! が! 投稿頻度はそのままです。
 そのうち個人的な呟きを活動報告書などに執筆するかもです。


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