対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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Episode103 『カフェテリアでの閑話』

 五車学園の生徒達が指定された試験会場へ向かうためぞろぞろと退出している中。

 

 私とふうま君だけは待合室に設置されたカフェテリアの中央、向かい合わせのソファーに悠々と全身の力を抜く形で身を委ねていた。時間もできたことだし、ふうま君に指摘された服装に関してはロッカールームで既に着替えている。

 

 私はなんだかまだ(多分)されたことはないけど、陽葵ちゃんに全身を嘗め回されているかのような謎の悪寒に悩まされていた。ゆえに首と背部を背もたれへ完全に預けて天井を見上げながら、FXで有り金をすべて溶かしたような顔で悪寒を振り払うため精神統一。

 

 ふうま君は両ひざに両肘をついて五指の指先を合わせながら前かがみになりながら神妙な顔している。

 

 やがて、私の逆さまになった視点に映る最後の五車学園1年生の生徒の姿がカフェテリアからフェードアウトしていったのだった……。

 

 

「…………ふうま君」

 

「……なんだ?」

 

「最後の生徒が部屋から出ていきました……」

 

「…………そうか」

 

「……ふうま君?」

 

「……どうした」

 

「ふうま君は最近、何か悪いことしましたか? 私達だけこの部屋に取り残されるのって何か変なんですけど。これから蓮魔先生に呼び出しされて、こってり怒られるような雰囲気なのですけど」

 

「…………。俺は……青空さんほど、悪さはしてないな……。確かにつまらん授業はよくサボっているが……」

 

「あぁん!?」

 

「?!」

 

 

 ふうま君の言葉に私は全身脱力させていた上半身に力を入れて素早く起き上がる。

 

 仮にふうま君が私のタッチ圏内に居たのならば、えっちなお店で働いている蛇子ちゃんに展開したような鋭い〈頭突き〉が彼の鼻頭目掛けて突っ込んでいただろう。

 

 私のそんな動きに彼は、片目だけを丸くして私の動向に驚いているようだった。ビビるわぁ!

 

 

「今、聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするんですけど?! なんですか!?『青空さんほど悪さしてない』って!? まるでそれじゃ、私が極悪人みたいな言いぐさですね!?」

 

「い、いや、でも、そうじゃないか? 最近の青空さんの動向については噂でよく耳にするが……。病院で日ノ出さんを襲って、その日ノ出さんに課題を押し付けて……。エアコンを分解して、教卓の鍵をこじ開けて、出席名簿表を分解して、桐生先生を寝込ませて、つい先日も3年の上級生にドロップキックをかまして病院送りにしていたって聞いたぞ」

 

「お゙ぉい! お前ッ! ふうま君お前! この野郎! 私が陽葵ちゃんに襲われている現場に居合わせてよくそんなことが言えるな!? あと別に課題は押し付けてまーせーんー! あれは陽葵ちゃんとの合意の下で代理してもらっただーけーでーすぅー! エアコンは悪臭がするから修理しただけだし、教卓の鍵は適当に番号を押したら開いちゃっただけだし? 期末試験前日の上級生にドロップ〈キック〉をぶち込んで病院送りにした件は………………。原因は上級生(3年)が作りましたし、わたし悪くないんですけど!?」

 

「……十分じゃないか?」

 

「十分じゃないですよ?!」

 

「あと……青空さん、“高位魔族”……。泣かせたんだって?」

 

「ふぁっ、な、なぜその話を——ハッ! な……泣かせてないです」

 

「鹿之助から聞いたぞ。まえさき市で青空さん()何かをして高位魔族を泣かせたって——」

 

「だから泣かせてないですってば。(殴られたので、ちょっと小突いたら)勝手に泣いただけです。あれも(事の発端を辿れば)()()悪くないもん!」

 

「青空さん……」

 

(もぅっ! 鹿之助くんのおしゃべり……)

 

 

 鋭い尋問に足を組み、姉畑支遁のように頬をぷく~と膨らませて、そっぽを向きながら不機嫌そうにふてくされた顔をふうま君に見せる。これでまえさき市で人間風情に泣かされた高位魔族な方のえっちなお店を開いている蛇子ちゃんの話は強制終了できるはずである。これは明らかなふてくされた不機嫌な顔だった。

 

 以前、ふうま君は7月の最初の登校日、私のこういう顔に謝罪してきたのだ。私としてはふうま君とはその話をしたくはない。だから話を中断させるためにも頬を膨らまして、更なる追及を強制終了させるのだった。

 

 そんな私にふうま君は、前かがみだった上半身を起こして言葉には出さないが『参ったな……』とでも言いたげに前髪を左手で触り出す。

 

 

 ちなみに上級生にゴルシ(ドロップ)〈キック〉をかました件についてだが……。あれは、本当に。私は悪くない。

 

 事の発端と経緯は、鹿之助くんが赤ネクタイの上級生男児に絡まれていたことにあった。

 

 その上級生は以前、私の病室へとカチコミへとやってきた二車 骸佐(黙れドン太郎)の腰巾着野郎の1人だった。上級生をぶっ飛ばした後での鹿之助くんの話では彼が私に対して何か酷いことを言ったらしい。それで鹿之助くんが言い返したところ、下級生にもかかわらず先輩に舐めた口を訊いたとかで鹿之助くんの胸倉を掴み上げ、宙吊りにする程の喧嘩に発展したのだ。

 

 まぁ、そこの悪口に関して私はどうでもよかった。別に私を苦手とする奴等が陰口を叩くなら好きにすればいいし、そんなに気に入らないなら、五車学園の3年生の小童程度の存在ならばテキトーに相手になってやるから直接言いにくればいい。

 

 

 ……ただ。

 

 

 ——ただな?

 

 

 その3年生の上級生とあろうものが、その発言を咎めた年下の下級生(鹿之助くん)の顔面を、あれは多分……ライターの火が付いたままの手。(表現としてはこうなるが、私が確認した時にはまるで掌から火を噴いていた様子ではあった(カルティスト予備軍として認定済み。徹底的に素性を調べ上げて、危険なら一族もろとも根絶やしにしなきゃならない))

 

 そのような火の手で一般人である彼の顔を焼こうとしたのだけは許せなかった。それが例え脅しであってもな。

 

 まぁ、彼の顔面を殴るのは1000歩譲って許そう。あとで絶対お見舞いはしに行くし、顔面に青あざを作ったパンダ様相の鹿之助くんはきっとかわいいし、私の加虐心を煽ってくれるに違いないからだ。

 

 しかし、炎で彼の顔面を焼こうとしたことは許せなかった。顔面という将来、様々な場面で用いる外見的特徴に後遺症を残そうだなんて。例えそれが魔界医療で治せるものだとしても。

 

 

 そんなことをしていいのは、カルティストとその一族のみだと決まっている。

 

 

 ここまでくれば、あとはお察しの通り。

 

 

 丁度、思いがけず、偶然、たまたま、奇遇にも、計らずとも、〈幸運〉にも私が曲がり角の先でその殴る瞬間に居合わせていたものだから。胸倉から手を離されて、尻もちを着いてカルティストの拳から逃げられない鹿之助くんへカルティストの拳が着弾する前に、助走からの〈跳躍〉で身長の2倍……飛距離(約3m)を稼いでから顔面にゴルシ式〈キック〉(『わーい!わーい!とりゃー!』)を叩き込んだよね。

 

 その腰巾着の上級生は綺麗に吹っ飛んで、昇降口のガラス扉を突き破って体中をそのガラスでズタズタに引き裂かれたのだ。カルティストにしては柔らかい彼は、たかが女子生徒の一撃程度でガラスによる切り傷と脳挫傷で入院してしまった。

 

 それも期末試験の時期とも重なってざまぁみろって感じ。殺せないことは残念だが、殺すにはまだ期は熟していない。だから重傷を負わせる程度で済んで本当に良かった。まだ殺せない私を慰めるような彼のまるで電動マッサージ……いや、殺虫剤を吹きかけられた死にかけの蟲みたいに細かく足を痙攣させて、みじめな壊れた玩具みたいな挙動は気分晴らしにはできたし。

 

 当然、いつものように生徒指導部の蓮魔先生に絞られた訳だが……。なぜか三者面談には発展はしなかった。なんでも向こうの親御さんから今回の件は内密にしてほしいとの申し出があったらしい。自身の息子が負傷しているのだから、こういうものは目の色を変えて詰問してくるものだと、ついでに親族の顔を割る良い機会だと捉えていたのだが……。

 

 考えれば考える程に奇妙な話だ。この隠蔽気質、親族もろともやはりカルティストか。大ごとを隠蔽するための荒波を立てない工作活動に酷似しているな。

 

 とにかく、蓮魔先生から絞られているからこそ、この場に私とふうま君がカフェテリアで取り残された状況を鑑みた結果、私はこれ以上に叱られるような行動に見覚えはないのだ。結果的に消去法で考えるならば、私としてはふうま君の方が何かをやらかしたと考えに至った。

 

 ま。これが今。ふうま君の話している私が上級生にゴルシ式ドロップ〈キック〉を叩き込んだ経緯の話だ。

 

 

 ポコンッ

 

 

「あいたっ」

 

 

 そんな色々な追求を免れるためのふてくされた態度を取っていると、厚紙のバインダーか何かで後頭部を一発軽く頭を叩かれた。

 

 ふうま君と2人で取り残され、カフェテリア備え付けのソファーに座った時のように、そのまま背もたれに背中と後頭部を預けて背後……天井を見上げる。

 

 そこには今日も今日とて、藍色の髪を後頭部で束ねLEDライトのような赤い虹彩を持った紫先生が、呆れたかのような顔で私の背後に見下ろしながら立っているではないか。

 

 

「五車学園高等部、初めての期末試験前だというのに随分とリラックスしているようで何よりだ。青空、ふうま」

 

「…………」

 

「あ、紫先生。おはようございます。いやー、だって……ここのソファー高級ソファー張りにフカフカしてて座り心地が良いんですよ? ここでリラックスせずしていつリラックスするんですか。おっそうだ。紫先生もご一緒します?」

 

「不要だ。それよりもお前等の配属チームが決まった。無駄なおしゃべりなんかしてないで黙ってさっさと私についてこい」

 

「ですって。ふうま君。私達の名前が電子掲示板に乗ってなかったのは仕様だったみたいですね」

 

「…………ああ。そうみたいだな」

 

 

 紫先生の言葉に私達は立ち上がり、彼女の誘導に続く。

 

 通路にはモニターが設置されており既に道中では、五車学園の教師らしき人物がバインダー片手に実技試験の評価をしている姿が散見される。

 

 立ち止まると紫先生の叱責が飛ぶため、私も彼等に混じってまじまじとそのモニターの映像を眺めることは叶わなかったものの。

 

 そのモニターから得られた最低限の情報として、五車学園の校舎と校庭、校庭付近の森林地帯とプール区画が映し出されているのが見えた。これは期末試験の事前情報プリントに掲載されていた景色と同じ画面だった。さらに神経を研ぎ澄ませ〈聞き耳〉で周囲の様子を探る。なにやら複数のシミュレーションルーム室内から衝突音が聞こえたような気がした。

 

 地下にも関わらず、五車学園の校庭を舞台に戦闘を繰り広げていることについて疑問が沸き上がったが……。そういえば2カ月前に鹿之助くんやクラスメイト達がハードな屋外アスレチックを踏破していたこともあって、サバイバルゲームのように箱庭が設置されている部屋なのだろうと合点がいく部分もあって勝手に納得していた。

 

 進行の並び順としては、紫先生。私、ふうま君の順で歩いていており、私はご覧の通り大荷物だ。その荷物は正面の紫先生をすっぽりと覆い隠してしまうほどの量であったため、ふうま君が私に釣られて無関係な場所に行ってしまわぬように適宜背後を振り返っては、先頭に紫先生が居ることを示す。

 

 またその道中での彼の仕草と表情だが、私が振り返ると注目はするが、その注目の仕方が……どこか——何かを観察しているかのような……あの7月の登校初日と同じジロジロとした目をしていることに気付く。

 

 その異常者を見るような目は私としては気に喰わなかったが、ふうま君とは友人関係だ。必要以上に突っかかる必要はないと判断して見られている時は愛想笑いを返して置くのだった。

 

 




~あとがき~
 ちょこっと裏話。
 本当は今回のお話は8400文字、新書式だと長くなるので2分割しました。
 ただ不用意に2分割して週一投稿だとTNPが悪くなるのと、オリ主の期末試験話は年内には終わらせようと思っているので、次回は2022/10/27/20:37に投稿します!
 感想欄で東雲兄貴がチーム分けの予想を立ててくれていましたが、お預けにします!
 でも今週中にはちゃんと投稿しますよ!

 楽しみにしててね!

小説の書き方の書式について、Episode101の書式はどちらが見やすかったですか?(アンケート時期を変更してEpisode106まで集計を取ろうかと思います(挿絵のアンケートはEpisode-IFへ変更))

  • 新書式 (描写文にも適宜、行を空ける)
  • 従来型(行は描写とセリフの間のみ)
  • 両立型(作者の好きなように行を入れる)
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