対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。   作:槍刀拳

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Episode104 『組み合わせ』

「この部屋だ。入れ」

 

「はーい」

 

「はい」

 

 

 紫先生はある扉の前で立ち止まると、鋼鉄製の自動ドアを開けてまるで囚人を牢獄へと促す看守のように私達へ中に入るよう促してきた。

 

 私達はこれを特に拒否することなく室内に入る。

 

 ここまで来ると流石にこれから蓮魔先生と紫先生が雁首揃えて、説教サプライズではないかと覚悟を決めることになったが、嬉しいことにその予想は外れることになる。

 

 

「………………わぁ……」

 

 

 私はこの部屋に入るのは初めてだった。

 

 否、正確には2回目だが……。記念すべきその1回目が、眞田先輩によって半強制的に連行されたであり、この部屋をじっくりと見回すなんて余裕は与えられなかったことにある。

 

 あの時は入室と共に投げ飛ばされ、槍撃を往なし、〈回避〉するので精いっぱいであった。だからこうして、ゆったりと周囲を見渡すことができたのは初の試みとなる。

 

 私が普段の参加している体育の授業は常に地上で行われている。紫先生の監視下の元、中学生……中等部の学生に混じってのランニングや腕立て伏せなどの基礎体力作りが主な内容となっている。

 

 ゆえに今見ている光景は新鮮で……。今こそ普段映像越しで見ているようなそれらしい機材は設置されていないが、いつも鹿之助くん達はこの巨大なフィールドでアスレチック踏破などの専用機材を置いて訓練しているのかと驚いた次第だった。

 

 

………

……

 

 

 通された室内は巨大な一面が白い部屋だ。

 

 室内の床は東京の地下デパートに存在する光源のように見渡す限り正方形のライトが敷き詰められた空間で、天井はまるで地球防衛軍5で登場するベース228基地のような作りになっている。

 

 肝心の壁はまるでダムの壁面やブルドーザーの爪のような一定の間隔でくぼみがあって、そして一定の間隔で非常口と思しき出入り口が複数存在していた。

 

 私としてはおもむろに親指を突き出して、falloutシリーズに登場するValutボーイのように親指を突き立てて左右の片目をそれぞれ一定の間隔で開いたり閉じたりしながら、ぐるぐると室内を見渡す。

 

 

「何をやっているんだ?」

 

 

 ここでふうま君の声が掛かる。

 

 私が紫先生の誘導そっちのけで立ち止まり、親指を立てながら左右の片目を交互に開いたり閉じたりしていることが気になった様子だ。

 

 友人とはいえ、先ほどからジロジロとこちらを観察している彼からは気味の悪いものがあった事だし、下手に隠すことで交友関係が崩れてしまう事は好ましくないと判断して説明へと入る。

 

 

「室内の体積を測っています。大体この部屋の1辺は約75mぐらい。私達が入ってきた出入り口は特殊防火設備にも似た扉構造かつ、大きいサイズの扉を用いているので高さを2m30㎝と仮定した時。高さは約25m30㎝ですね。この部屋は壁にくぼみやら斜面があるので正確ではないですが、室内が直方体であると仮定した場合。体積は140,625㎥、底面面積は5,625㎡ですね」

 

「……空間把握能力がすごいな」

 

「いえいえ、そんなことはないですよ。ゲームやコミック本で学んだ知識と小学生の面積と体積の算出方法を用いただけなので、方式さえ理解していれば誰でもできるちょっとした計算です」

 

「なるほど。……」

 

「青空ッ! ふうまッ!」

 

 

 そんな疑問を投げかけてきたふうま君に対して解説をしていると、一足先を歩いている紫先生からの怒号が飛んできて……はいはい、そんなに怒鳴らなくてもすぐに行きますって。

 

 でも空間把握はとても大事なことなのだ。特に幅に制限のある室内での戦闘は、対象を壁際にどのようにして追い込めるかや、放火をした場合の煙……一酸化炭素の充満具合。攻撃の射程管理。爆発物の有効射程範囲などを計算するうえでかなり重要な判断材料となってくる。

 

 怒られてはしまったが、今の調査は十分な情報の収穫ではあった。

 

 

「……?」

 

 

 紫先生の進む先に4人の集団が居るのが目に入った。

 

 この部屋に入った当初や室内面積や距離を測っている際には、ひじきぐらいの大きさだった為『採点する教師の集団かな?』と思ったものだが、近づくにつれてその五車学園の制服姿や会話内容から、彼等が私達と同じ五車学園の生徒であることがわかる。

 

 おまけにその4人中、2人は既に私は見知った顔だった。

 

 

「なんで俺がてめえみたいな箱入りお嬢様と組まなきゃなんねーんだよ!」

 

「奇遇だな。私も貴様のような不良生徒と部隊戦など願い下げだ。出来ることならば私は磯咲さんと組みたかったよ。だが、これも先生方の取り決め。せいぜい私の邪魔をしなければ、良い成績だけは取らせてやる」

 

「てめえァ!何様のつもりだ!?」

 

 

 

「二車くん、今回の期末試験での作戦なのだけど……」

 

「見ろ、あいつ等は仲間割れをしている。作戦なんかが必要だと思うのか?」

 

「そ、そうは言っても、無策で戦闘を試みるのは——」

 

 

 そこに居た見知った顔とは、神村 舞華(鹿之助くんの“憧れ”)()二車 骸佐(黙れドン太郎)だった。

 

 今日も今日とて当然のようにバズーカ砲を持参している神村さんは、銀色に輝く金属製アーチェリー用の弓を片手に携えた、漫画ドリフターズに登場する那須 与一のような髪型をした女子生徒と口論している。

 

 一方で二車 骸佐(黙れドン太郎)は大太刀を腰に差しながら、左右の両腰部にはホルスターと拳銃を身に着けた健気に話しかけているイエローゴールド色のメガネを掛けた優等生っぽい女子生徒と口数少ない一匹狼風を気取って話している様子が伺えた。

 

 

「……」

 

 

 うん。なんだろうな。私の服装はごく一般的なキャンプで使用される軽装な服装から制服に着替えたおかげで馴染んではいるんだけど……五車学園の制服を纏った彼女達を見ていると、ふうま君の指摘が無かったら今頃、私ひとりだけが場違いな場所に居合わせてしまったかのような状況に晒されただろう。

 

 仮にその場の空気を例えるならば……そう……大手企業の面接で私服の格好で来てくださいと言っていたのに、実際に会場に来てみたら参加者全員リクルートスーツだった時のような……。前世での苦い思い出。しかも、建前を読み取れない学生として分類されて落とされるまでがセット。

 

 お前が『私服で来てください』(『ラフな格好でええから』)って言ったんちゃうか!言ったんちゃうか!?って、採用担当者の首を絞めたくなるやつ。……今回に限っては私が情報の精査を怠ったせいによるものだけど。

 

 ……まだ就活生が居るのにトイレ前の休憩室で同僚とゲラゲラと笑い話で不採用の話をする面接官。大手企業だからこそ笑えない。人の心とかないんか?

 

 

「ふうま。お前は弓走(ゆばしり)神村(かみむら)のチームに入れ。青空は二車(にしゃ)磯咲(いそさき)のチームだ」

 

 

 既に『なかよく・きょうりょく!』なんて不可能そうな雲行きが怪しい現場で、紫先生はさっくりと簡潔に私とふうま君をこの2グループで余った一枠に割り振った。

 

 割り振られたチームの反応はまちまちだ。ふうま君が向かったチームでは……。

 

 

「げっ。寄りにもよって私のチームは不良生徒2人がメンバーか。まぁ、青空と組まされるよりはマシかもしれないが……」

 

「青空に比べたら、ふうまの方がまだマシってのは……言いたいこと、わかんねーでもねーな

 

「…………」

 

 

 私を一瞥してから右手で後頭部の髪を掻き上げる神村さんと、初対面の弓走さんに汚物を見るような目つきでなじられる私。一呼吸置いて複雑そうな顔でこちらをみるふうま。

 

 

 ……。……そんな目でこっち見んな、ふうま。

 

 

 そのグループの中で、最低の人気層に居る私をそんな目で見るんじゃあない。

 

 

 神村さんはともかくとして、既に弓走とかいう面識のない女子生徒からボコボコにされているのに、私に与えられる追加の精神的ダメージがハンパないことになってるでしょうが。

 

 そんな憐れんだ目で見られるぐらいなら、ジロジロと視姦されていた方がまだマシだ。

 

 あぁ……鹿之助くんが恋しい。鹿之ニュウムアセトシカアノニンシカアルロンSONに加えてオッキ♂シカアトシンの補充が必要だ。直ちに鹿之助くんとの触れ合いが必要だ。

 

鹿之メーターWARNING! WARNING!

 

 

「ふうま、貴様にも言っておくが私の邪魔だけはするなよ」

 

「ハンッ! この場合、遠方からちくちくヤワい攻撃をすることしか能がねぇてめえが俺達に指示してんじゃねぇよ。てめえの存在の方が、邪魔になる間違いじゃねぇのか?」

 

「貴様ァ……。二度とその減らず口を開けないよう、ここで射貫いてやろうか!?」

 

 

 そういえば今回はちゃんと最初に指定されていた通りに3人1組の団体戦のままで行くようだが、あっちのチームは連携がガタガタになりそうな予感はある。と言っても——

 

 

あ、青空さん、こ、今回の実技試験……よろしくお願いしますね」

 

「……はい。今回はよろしくお願いします。……えと、磯咲さん。……あと二車さんも」

 

「チッ」

 

「…………」

 

 

 こちらは既に彼女の笑顔が引きつっているとはいえ、磯咲さんが友好的なので何とかなりそうだ。

 

 でも黙れドン太郎に対しては————怒っちゃイカン。怒っちゃイカン。どうせ、コイツとは期末試験の短い間の付き合いなのだ。こちらの勝ちが確定したところで、“背後からの不意打ち”で後頭部をノックアウト打撃して張り倒しても構わないだろうが今はぐっとこらえる。

 

 

「寄りにもよって不謹慎特盛爆走女と一緒か。まぁ、この試験であのメヌケに引導を渡せることを考えりゃ、これはこれでありだな。俺の方が優れてるってこと、見せつけてやる」

 

 

 ……あぁん? いまお前、私のことを不謹慎特盛爆走女っつったか?

 

 まず、どこからその渾名が生成されたのか尋問したいところだが……。

 

 ふふ、面白いことを言うではないか小僧。

 

 前言撤回。

 

 やはりいつかおまえには、ミッドサマー流:愚者の皮剥ぎマークか、血の鷲と化したサイモン、森の熊さんクリスチャン……好きな最期(さいご)を選ばせてやろう。

 

 

 




~あとがき~
 以前。感想欄にて、ななみん兄貴姉貴という方がとあるイベントが起きてないとの気づきを得られていましたが、そのイベントが起きてないせいで間引きも発生せず「2人ペア作って〜的な、あまりの発生という忌まわしいイベント」が発生していません。
(えっ!? その感想を貰ったのは、1年と1カ月と半月前!? うっそやろお前!)

 さてはて、これで91話目『Episode79』の願いが叶いそうですね!
 今回の組み分けは対魔忍RPG原作になぞって構築してみました。
 ななみん兄貴姉貴の気づきの件もありますが、ここのところずっと対魔忍RPG原作になぞったイベントを描いていなかったので……。今回の16章は準じたいと思います!
 と言っても原作を知っている兄貴姉貴達に告げると校長先生は出てこないですけど。

 次回は2022/10/31の20:37に投稿します!

 これぐらいのテンポで投稿出来たらいいのになぁ……。


-追記(補足)-
 オリ主が五車学園を一般学校だと思っているにも拘わらず、3人1組で団体戦を挑むことについて何も疑念を抱いていないですが……これに関してはきっちり理由があるので時が来た時に、オリ主自ら何を思っているのか、何を思ってこの乱闘系期末試験に臨んでいるのかお話するときが出ると思います。
 気になった閲覧者兄貴姉貴は、それまでしばらくお待ちくださいませ。

小説の書き方の書式について、Episode101の書式はどちらが見やすかったですか?(アンケート時期を変更してEpisode106まで集計を取ろうかと思います(挿絵のアンケートはEpisode-IFへ変更))

  • 新書式 (描写文にも適宜、行を空ける)
  • 従来型(行は描写とセリフの間のみ)
  • 両立型(作者の好きなように行を入れる)
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