対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。 作:槍刀拳
………
……
…
「——情報が纏まりました。お二人にはこれが打開策に見えるかどうか、どうか分かりかねますが……。少なくとも作戦立案にあたって前提条件である——二車くんは『ふうま君を張り倒したい』。私は『
「「…………」」
いよいよ期末試験も開始15分前となり、磯咲さんはこれから私より発せられるであろう作戦内容に対して身を乗り出すような形で顔を近づけてくる。
一方で黙れドン太郎は相変わらず私に対してそっぽを向き『テメェは何様だ?』と問い詰めたいぐらいには腕組みをしてふんぞり返り続けているが、眼帯の付けていない片目だけでチラチラと視線を送って来ていた。
まぁ、最初に黙れドン太郎の目的を言及したことで彼のプライドを傷つけることはなかったようだ。
うまく行ったことを確認しながら直筆のノートに手を添え、頭の中で構築した作戦に至る前の相手の情報について共有を済ませる。
「これから対峙する相手がどのような武器を持っていようとも、何かしら必ず弱点はあります。まず神村さんの武器であるバズーカ砲。これは高火力で、連射も効く。装弾数は無限のように見え、遠距離から範囲攻撃のできる一見最強の武器にも見えます」
「…………」
「——ですが。一方で、その高威力と範囲攻撃……そして彼女の性格を逆手にとってしまえば、何も恐いことはございません。こちらが相手に接近さえしてしまえば自分が巻き添えとなってしまうため、この攻撃を封殺することができます」
「…………」
「と言っても、そういった弱点を克服するためにも彼女自身が近接戦闘に長けているのかもしれませんが……。そこでこちらのお願いとして、ふうま君との接敵が叶ったのちは囮の私がたどり着くまでの間、彼女を抑えることを意識していただきたいです」
「目抜……ふうまを相手にする片手間で可能ならな」
「できる限りのことはするわ。弓走さんの脅威は残されたままだけど、彼女を野放しにしておくことも何か考えがあってのことなのよね?」
「もちろんです。次に弓走さんの武器の弓矢ですが、こちらは消音武器であり、なおかつ私達にはない超遠距離射程や曲射、剛腕で矢の威力を更に底上げする部分は脅威です。しかし連射に関してはバズーカ砲ほどの融通が効かない筈。弾数も限られているはずです。たとえ弓番えで連続攻撃に出てきたとしても3本が一度に限界でしょう。彼女の腕は少しばかり筋肉質ですが……それでも番え弓にするということは、弓の一本一本もさして重くはなく軽い材質を使用しているはずであり、この場合は磯咲さんの
「「…………」」
「弓走さんを真っ先に仕留めに行かないのは、神村さんの砲撃と比較してしまえばこちらを一網打尽にする範囲攻撃でもなく威力も存外大したことないこと。彼女達は互いに遠距離武器を用いているので固まって攻撃するよりも分散して攻撃してくると予想が付けられること。相手チームの長所やこちらの戦力をすり合わせた場合、予想される布陣では弓走さんはプール区間近辺に現れるであろうこと。磯咲さんの武器で着弾の軌道を逸らせるからですね」
「「…………」」
「最後のふうま君。彼は刀のみで特筆することがなく、最も注意するべきは礒咲さん曰く勉強家であること、人うまく扱うという特筆した能力で戦いの中で臨機応変の戦略を練られることが一番厄介になると思います。これから伝える予測される相手の動き、そして作戦が順調にうまく運んだら、新たな策略を練られる前に二車くんは彼を即無力化してください」
私の問いかけに黙れドン太郎は僅かに了承の意を返す。今、彼の意識は完全にふうま君達へのグループへと向いている。
同様に視点を広げてみれば、向こう側は作戦会議すらも終わったのか、こちらを見つめながら指をパキパキと鳴らすクラッキングでこちらを〈威圧〉する神村さん。丁寧な
……だから、そんな目でこっちを見んなよ。ふうま。
私がそのグループで人気ランク最低層に居ることは充分にわかったから。もうその視線に恐怖を覚えるレベルだから!
「二車くん、最後に1つだけ。これは予測される相手側の動きですが、向こう側がこちら側の
「…………あぁ、クソが。お前等が信頼しているふうまなら、その作戦を立ててくる可能性はあり得るな」
「きっと、その作戦で二車くんが釣れなかった場合時には……潜伏している私達を神村さんの砲撃で森を全体的に延焼させて、遮蔽物の少ない校庭側にあぶり出してくる……のかしら?」
「そこまでは流石に見通しは立てられませんが、絶対としてはありえない話ではないでしょう。だからこそ、その状態にも陥らない作戦の立案検討をする必要がありました」
「「…………」」
「本作戦は時間を掛けながらも、接敵後は短期決戦で決着をつけに行きます。私が囮になるので、お二人は奇襲の形でふうま君を叩いてください。これまでの情報を考慮すれば、ふうま君を叩くことで遠近両立型の神村さんがふうま君の援護に現れるはずです」
「「…………」」
「彼女達がふうま君を切り捨てたのならば、それはそれで結構。少なくともふうま君がいる状態では、鹿之助くんが “憧れ” る今の神村さんならば、容易に手出しはできないことは確証を得ているので。二車くんがふうま君を叩いている間は、磯咲さんは常に二車くんの援護をお願いします。兎に角ふうま君に接触して乱闘に持ち込んでしまえば、弓走さんの弓撃はともかく、神村さんの砲撃は無力化できるはずです。ただし接近するまでは砲撃や弓撃は必ず飛んできます。それを先ほど私に見せていただいた水鏡や水圧〈拳銃〉射撃で
私の作戦に磯咲さんは力強く頷いてくれる。ドドン太郎は、まぁ、無反応に近いが私の作戦をおおよそ聞いていれば問題はないだろう。
この作戦は、誰が欠けてもうまくは行かない。特に男として腕力へ長けたふうま君に闘志を燃やすドドン太郎も、カルティスト堕ちした際には抹殺予定の磯咲さんも、当然、囮となる私もだ。
模擬戦の面子がドーピングドン太郎と、水を操るカルティスト予備軍と、一般人なんて酷い組み合わせだが……向こう側の暴力団員の娘、由緒正しいお嬢様、遊び慣れた博識の青年という組み合わせと比較すれば…………。
やっぱ向こうのメンツの方がいいな。
私と神村さんを交換したら、完全に邪教一派と探索者による対決に近いものを感じるもん。
「さて、と」
ここで私はやらなければならないことがあるゆえに、荷物をまとめたのちに円陣を組んだ状態から立ち上がり周囲を見回す。
そんな私に続いて磯咲さんとドドン太郎も立ち上がった気配がして、更に退室していった紫先生が教室に入ってきたが……別に作戦時間を切り上げて開始しようって話ではない。
与えられた時間は最大限に使って事前準備に取り掛かる。それが私のモットーだ。
だからこそ、
「紫先生! 期末試験に入る前にトイレに行きたいです!!!」
米粒大ほどまで離れた紫先生にも聞こえるような、親しみのある渾名呼びでの超クソデカボイスで、トイレタイムの宣言を放った。
………
……
…
ぐすん、ぐすん。
みんな、酷いわ。
私は殴り合いありの期末試験を開始する前に失禁防止のため、他に誰かがトイレに行きたがっているのをさりげなく誘うために恥を忍んで「トイレへ行きたい」って選手宣言しただけなのに。
揃いも揃ってあんなにも異端児みたいな目で、集中線の如くこっちを見なくたっていいじゃない。
男共は尿道も長いし膀胱を殴打された程度では失禁しないだろうが、乙女は膀胱から外部までの尿道は短いのよ!? 女の子が大抵トイレを我慢して失禁する原因は、男性に比べて女性は尿道が短いことも一つの要因なんだからね!
この私がせっかく時間を作ったトイレタイムに、神村はついて来なかった。
それどころか、すれ違い様に『おまえ、マジかよ……』と軽蔑したかのような目でボソリと呟いたの聞き逃さなかったからな! お前は絶対に対魔忍世界らしく腹パンからの腹圧性公開尿失禁させてやるぅ! 覚えてろよ!
「そ、それじゃあ、青空さん……。私達は先に、シミュレーションルームで、ま、待ってるわね」
「まだ作戦会議時間が5分ほど残っているとはいえ、開始5分前行動は大人として当たり前の行動だ。いつまでも腹部に力を込めていないで、早く個室から出てくることだな」
「…………」
——ぜってぇ、神村を含め弓走の奴も泣かせてやる。
そもそも何がお嬢様だ。お嬢様言葉どころか、気の強い男勝りな口調じゃねぇか。
これは折檻ですわよ。正しいお嬢様語を叩き込んで差し上げますわ~。
さて、私のトイレタイムについてきてくれた磯咲さんと弓走は一足先にトイレから出て行く。
そのタイミングで私もトイレットペーパーを大量に手を取り陰部の尿を拭きとる。
弓走はあんなことを言っていたが、別にウンコは出ていない。まぁ、でも……ウンコを肛門から拭きとるぐらいには大量にトイレットペーパーを引き出してはいた。
いやぁ、五車学園のトイレットペーパーね。すっごい柔らかいのよ。もう鼻セレブぐらいに柔らかいの。
本来、こういう国立の施設って経費削減のために備品は安いもので抑えようとするから、格安業務用のペーパータオルを薄切りにしたかのような、紙やすりみたいなトイレットペーパーを使っているものだけど……。五車学園のトイレットペーパーは破天荒な生徒と教員に反して備品が高級感溢れる優しい感じがするの。
そりゃ、もう使うしかないよね!
前世では学費回収の為、大学のエアコンの設定温度やら、総務課からの汚職情報、コンセントから電力を抜き取ったりしまくったものだけど、五車学園では私はこのトイレットペーパーで学費を稼ぐ!
「……そろそろ、やろうかな」
洋式の便座から立ち上がり、洗浄のボタンを押す。
先ほどからヒヨヒヨとうるさい音姫のスイッチを切断して……。背後を振り返り、手元のスイッチを押しながら、便座の排水バーを引く——
そして排水音がかき消える程の野太い絶叫を上げるのだった。
——駆けつける教師陣と期末試験が終わり立ち寄る野次馬。
便器から溢れかえる大量のトイレットペーパーと私の薄められた濃縮尿。
「トイレ……詰まらせちゃった……。サランラップか
私は涙目でジェスチャーをしながら、そう告げた。
~あとがき~
今更ですが、300,000 UA 突破ありがとうございます!
前回は123話に到達していたみたいですね!
ことごとく記念話を見逃していくスタンス……やばたにえん。
そういえば、対魔忍GOGOがストアから消え去りましたね。
なぜかアプリケーションはスマホに入っているので、スクショを取ったり、たまに起動して主題歌を聞いたりしています。
いちプレイヤーからの意見としては、とにかく対魔忍GOGO開発は無茶しないで。無理して即サービス終了なんて望んでないし、安定を目指してから公開して欲しいなって思いました。ムリしなくていいから。お願いだから。
『対魔忍GOGO』あまちにも初発表からの公開発表があまりにも早すぎて、机上の空論ばっかりの案件を上司のゴリ押しや、営業の発表によって部下が泣いている図がなんか見えますよ……。『顧客が本当に必要だったもの』がチラつきますよ。
そういえば対魔忍RPGの勢力戦でも似たようなことがありましたね……。
小説の書き方の書式について、Episode101の書式はどちらが見やすかったですか?(アンケート時期を変更してEpisode106まで集計を取ろうかと思います(挿絵のアンケートはEpisode-IFへ変更))
-
新書式 (描写文にも適宜、行を空ける)
-
従来型(行は描写とセリフの間のみ)
-
両立型(作者の好きなように行を入れる)