対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。 作:槍刀拳
今回から、ちょっと血生臭いです。
「吹っ飛べ」
ガッ!!!
「ヴっ!!!」
ゼロ距離まで近づいて、弓走を肉壁として防護壁にしながら彼女の隙間を縫って神村の
いくらその乳が脂肪の塊とはいえ、メリケンサック付きの〈こぶし〉による一撃は衝撃を完全には緩和できないらしい。
バズーカ砲を持っていない方の手で自身の胸元を抑えては、まるで《心臓発作》でも受けたカルティストのように前かがみのまま殴られた部位を抑えて後ずさる。
「青空ァ!」
神村もまた
このまま『弓走 颯』を肉盾として起用したまま付け込める隙へ連撃と行きたいところだが、あくまで『弓走 颯』の存在は神村との距離を安全に縮めるための存在でしかない。
それに……。この神村から見れば卑怯とも言える手法を用いたままでは、
だからこそ、今更ではあるが十分な接敵に貢献してくれた弓走に敬意を払い、神村特攻の肉盾である彼女をそっと地面に転がして身構えた。
……。……少なくとも今の〈こぶし〉一撃で、砲撃と共に弾け飛んで行った私のパパス式絶叫を収録した27,500円の遺言用ICレコーダーの元は……。
……取れていないがこれから神村に追加加算として清算してもらうので、問題はない。
「こっからは小細工なしです! どちらが “憧れ” に近いか勝負と行きましょうか!」
「ざけんなァ!」
神村が体勢を立て直すのを待つ私に対して怒り狂ったかのように咆えたところで、こちらも某黎明卿のように腕を大きく横に広げて口元だけギラついた笑みを見せる。
まずは走り寄ってくる神村に対し〈近接戦闘(格闘)〉で殴りかかる。シャドーボクシングのように軽くステップを踏みながら、メリケンサック付きの拳で彼女の顎や喉仏、眉間や眼孔を狙ったメリケンサック付きの〈こぶし〉を突き刺す。
既に彼女と一度。洋館事件にて拳を交えているが……やはり単純に言えば強い。
私の方が彼女より小柄なため
この期末試験では、あの時のような “保護” の目的をいっさい兼ねていない——これまでの経験を生かした全力の手加減抜きの攻撃で仕留めかかりに行っているのに、すべて直撃寸前のところで〈回避〉されていく。
おまけに彼女は〈回避〉をしながらも私の振るった腕の動きをしっかりとその目で捉えており、瞬きすらしている様子はなかった。
これが、鹿之助くんが “憧れ” を抱くほどの彼女の強さ……。
恐らく授業で執り行っているらしい合同格闘技の授業以外にも、ヤンキーという事もあってそれだけ現場の喧嘩慣れしているという事か。
「チィッ! 憧れか何か知らねぇが、人様の急所ばかり狙ってきやがって! あんまりチョーシに乗ってんじゃねェ!!!」
「あれ? そうですか? すみません。それは意図してませんでした。では他の部位を狙うように努めますね?」
「ぶっ殺す!」
こちらの挑発に乗る大ぶりの右ストレート……!
〈応戦〉は……間に合うかわからないが、やってみる価値はあるだろう。
否。やってみる価値が有るか無いかの問題ではない。
——今回の
特に今回の戦闘では勝利することを念頭に置きつつ、その上で〈回避〉よりも〈応戦〉で神村をぶちのめしたい私が勝っている。単純な勝利を掴むのであれば、ふうま君のように〈回避〉を連続して相手が疲れを見せたところに打撃を打ち込む方が良いのだろうが……。この期末試験ではドドン太郎のように私情を挟んだ上で勝利を掴みたいのだ。
これは自分でも言ってて悲しくなってくるが、何しろ彼女より私の方が胸部の空気抵抗が少ない。では、この身体的長所を利用しない手はないな?
彼女の拳に合わせて、太極拳のように左足を後方に引き下げ身体を半身に翻して避ける。彼女の拳が私の左乳首を掠めたが、掠めた程度で乳首がロストするわけでもない。大きく振り抜いたところを左手腹部に向けて蜂のように突き刺し〈応戦〉するッ!
ドチュッという肉が潰れる音。
手ごたえありだ。
神村の顔が下痢でも漏れそうになっているかのような痛みの表情に歪む。完璧な
さぁ、みっともなく おしっこ をぶちまけてごらんなさい!
失禁と共にテメェの尊厳もぶち壊して差しあげますわよ!!!
「ぐっ……」
「ハッハー!」
「……イ゙ッテェなッ!」
神村は尿道括約筋を限界まで活用したのか、足を内股に捻り下唇に力を入れて失禁を耐えてみせる。
今度はそのまま力を込めた左手でボディブローが飛んできた。
これも〈応戦〉として拳をはたき落としてから、膝打ちを前かがみになって膀胱を抑える彼女の後頭部に肘打ちを叩き込ませてもらおうと動く。
「喰らえやァ!」
ガスッ!
「イッァッ!」
今度は〈応戦〉に失敗したようだ。左手のボディブローを〈受け流し〉として、はたき落としたところまでは完璧だったのだが……。そのまま彼女は身をひる返し、遠心力を掛けた裏拳をこっちの左顔面にぶち込んできた。眼球から頬骨、鼻背にかけて鈍痛が走る。
ドバーッ!と、喉の奥から口の中が鉄錆の味で満たされる。
げっ……。当たりどころが悪かったのだろう。斜眼にでもなったかのように歪む視界でもわかるのは、唇や上半身に生暖かい体温ほどの液体が滴り落ち、地面を赤く染めていた。
「ゴフッ……ゴホッゴホッ……」
…………なんだ?
私のようにメリケンサックを着用しているわけでもないただの〈こぶし〉にも関わらず、まるで〈キック〉を受けたかのような重量感のある一撃だ。ビルドが私より勝っていると仮定しても精々一回り程度しかないだろう。だがビルドが一回り上ならば、もっと彼女は
つまり、ここから導きだされる答えは筋肉が異様に発達していると考えるのが妥当かもしれない。だが、あの腕の細さでオリンピックの重量挙げ選手並みの筋力だとも考え難い。
クソっ……! このままじゃ、
神村の攻撃を受け続けていれば私の方が先にくたばっちまう!
しかしそれでも〈応戦〉のみでの勝利という縛りは解きたくない!
「ハっ。わかりやすい気難そうな顔しやがって。随分とマシな顔になったじゃねぇか!」
「……ぺっ。それは、お互い様ですよ。……ヤクザモンの娘っ子風情が……こんなもんじゃないですよね?」
ならば今度はこちら側の攻撃として、まえさき市でえっちなお店を開いている方の蛇子ちゃんを泣かせた実績を持つ〈頭突き〉を放つ。身動きが取れなくなったところで一気に片をつける!
私の頭部に対して彼女は拳を突き出し〈応戦〉でカチ割ろうとしてくるが、その彼女の右フックを潰すつもりで突き刺しにかかった。彼女の手から伝わる振動。ボキボキボキッという骨のきしむ音。突き出された拳が引き延ばされたゴムが収縮するように引っ込められる。
バキッ! ゴキンッ!
奴の泣きっ面も拝みながら一気に片付けようと顔を上げたところで、右頬を固い鈍器のようなハードカバーの本で殴られたかのような強い衝撃と片顎の関節が外れたかのような音。
日本酒を5合飲みほしたときのようにふわふわとした視界ではあったが、神村の勝利を確信したかのような嫌な笑顔を浮かべていること。
また奴のローファーの踵部がブーツ状にアレンジされた靴であり、〈跳躍〉で飛び上がりながら私の顔面へ回し蹴りを放ってきたことはわかった。
だがこちらも、鼻から濁流のように滴る血液が潤滑油として機能し、蹴りの一撃が滑ったおかげで衝げっげげげきはうまく緩和できたはずに違いない。また口の端もバックリ裂けてしまっているようだが、どうせ魔界医療で治癒すれば、すべてが元通りになるのだ。
それに、この程度の怪我で探索者が止まると思ったら大間違いだって見せてつけてやる。
だから激しく後方に吹き飛ばされても、転がりながらすぐに立ち上がって拳を構える。
「チッ!」
煩わしい羽虫を見るかのような目つきになる神村。よって奴を煽るために、顎を引きながら不敵な笑みをもう一度、浮かべてやる。
——しかのののすけくんの “憧れ” は私のものだ。お前じゃあない。
奴の攻撃は私なんかと比べ者なんかにならないぐらいに、パワーも、スピードも、一撃の重さも格上かもしれない。
……悔しいがドドン太郎のいう通り。彼女こそがこの6人の中で最も格闘技術に長けて、強い。のだろう。されども、それを理由に負けるわけにはいかないのだ。その程度の理由で負けるわけにはいかない。
では。勝つにはどうすればいいのか。
単調な攻撃では、早々にも私の攻撃に慣れてしまった奴に
〈
いいや。ビビってると思われるのは癪に障る。
ならば。更に戦法を変える。ひと手間加える。
次の神村の攻撃は、またもや私の腕の長さよりもリーチのある……安全靴のように鉄板を仕込んでいるのかと疑わしくなる蹴り技のヤクザキックだ。それも助走付きかつ慣性の法則入りの。
私はこれを〈組みつき〉で受け流す。
最初の〈組みつき〉で彼女の足首を掴み、次の〈組みつき〉で衝撃を受け流す。これは『CALL of CTHULHU クトゥルフ神話TRPG』における技法の……えーっと……なんだっけ?
いや、今はルールなんてどうだっていい。
ルールに記載されているならば、私はそれを実行できるのだから。
とにかく攻撃を〈受け流し〉して、今度は忌々しい蹴り技を放つ彼女の足首を掴んで〈応戦〉がてら空手に置ける瓦割りの要領で膝の皿へメリケンサックでの一撃をクリーンヒットさせる。彼女は自前のプロテクターで脛と膝を保護しており、メリケンサック程度の打撃では致命的なダメージを与えられないことは理解している。
だからこそ、今回は膝の皿を狙った……膝関節を狙わせてもらった。人間の足はどのようにしても可動域以上に折り曲げることは叶わない。だからこそ、今の膝への一撃は逆側へと折り曲げられたのは相当に響いただろう。これはいくら装甲に身を固めていようが、守りようがない人間ならではの弱点の1つだ。
「ぎっ…………ッ!!!」
よほど効いたらしい。神村は膝を抑えて、こちらを睨みつけながらも足を引きずって立ちはだかる。今ので彼女の凶悪な蹴り業は封殺した。ついでに私の
「
「ほざきやがれェッ!!!」
そのまま今度は重撃の〈こぶし〉を突き出してくるが、洋館でやられたことをお返しするように突き出された〈こぶし〉を〈応戦〉として〈組みつき〉で手首を掴み、勢いは殺さずに小柄な身長差を活かして懐へと潜り込む。そのまま腹部を狙うと見せかけて……! 肘の裏側から掌底打ちの要領で天井に突き上げるよう〈こぶし〉を振るうッ!
「ぁぁっ…………っ!!!」
いくら籠手で前腕を護ろうが、この攻撃は関節までをは護り切れまい。
無駄。
すべては無駄な抵抗なのだ。
そして実にかわいい悲鳴。加虐心がぞわぞわと刺激される。支配欲で子宮がイライラする。
だから……——もっと! 呻いてみせろォッ!!!
テメェのための
~あとがき~
わーい!わーい! Episode111だ~!
まえさき市でえっちなお店を開いている時の蛇子ちゃんと対峙したときは、一方的な蹂躙。
眞田先輩と黒田先輩と対峙したときは、基本防戦。逃走ルートの確保。
その後の眞田先輩との続きは描写する程もないほどに惨敗。
穂稀なお先輩の時は、全力逃走。
陽葵ちゃんの時は、ほぼほぼ敗退魔忍。
だったので、今回の一歩も譲らない・やや格上の相手の対処できる相手と戦うのは初めてですね。
オリ主の殺意が強くてな……。前半後半にお話を二分割しました。
次回もボコボコに殴り合う戦闘話になると思います。
実技試験として『3人1組』の期末試験が始まる
↓
まさかの神村 舞華が相手として登場する。
↓
ドドン太郎も、磯咲さんも目的は違えど一致団結の構え。
↓
鹿之助くんの“憧れ”を賭けて、神村 舞華と殴り合う。
↓
争いの戦火は五車学園から日本全土、全世界へと広がっていく
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身体は闘争を求める
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フロムがアーマードコアの新作を作る
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フロムがアーマード・コア最新作『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』を発表。
↓
2023年に発売予定。
ですね……!
還って来る……オレ達の“